猫の国(オッサンが異世界転生したら、そこは猫の国でした)

楠乃小玉

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二十一話 チキンとスイカ

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 「やあ、ひさしぶりだな」

 明るい声をあげながら魔法学校のボンベイ先生が手を振った。

 「あ、今回はありがとうございます」

 何でオーガ討伐で俺がデイトン市から表彰を受けたので、お祝いに
 ステーキを奢ってくれるという。

 「私が前に校長先生から奢ってもらったことのあるステーキハウスを予約していてね。
 なかなか美味しかったよ」

 「気をつかっていただいてすいません」

 「なあに、君は我が校の誇りだからな」

 「ところで、クーガーは元気にしてますか?」

 「相変わらずだけど格闘技の成績はいつも学校で3位だよ」

 「三位って微妙ですね、一位と二位は誰なんですか?」

 「一位は薩摩黒足、二位は石虎」

 「ああ……」

 俺は苦笑した。

 俺とボンベイ先生は予約しておいたステーキハウスに入り、イスに座った。

 しばらくすると、ウエーターの狼男がフライドチキンとスイカを持ってきた。

 俺の前にはピーナツバターを塗った焼いていないパン。

 「あの君、これは私達が注文したものとは違うよ、それを注文した人が待っているだろう。
 下げてくれ」

 「あれ?そうですか?あなたにはお似合いですよ」

 「どういう意味だ」

 「そのままの意味です」

 「私が注文したのはステーキだ」

 「どうせ、ステーキなんて注文しても金払えないでしょ、よくいるんだ、黒猫の食い逃げ」

 「おい、お前!」
 
 俺は思わず席を立った。

 「おいおい、サルがキャッキャ騒ぐなよ、お前、ピーナツは大好物だろ」

 「おい君、こちらはカラバ侯爵のご子息だ。頭に耳が付いていないのは、
 火事で子猫を助けたときに焼け落ちたからだ」

 ボンベイ先生がそう言うと、狼男は驚いて、急にオドオドしだした。

 「こ、こ、こ、これは失礼いたしました。奴隷をお連れになる場合は、
 一言いっていただけると、個室を用意いたしますので。オープン席では
 ご不快になられるお客様もおられます」

 「もういい、いきましょう先生」

 俺はテーブルに1キャットコインをチップとして置いて店を出た。

 「すまない、お祝いするつもりが不愉快にさせてしまったね」

 「いいえ、大丈夫ですよ、気にしてません」

 「あ、そうだ、お詫びといっては何だが、大学の教授に友達がいてね、
 いつも不思議な魔法を作る研究をしているんだが、その教授が助手を探していてね。
 君にとっても新しい発見があるんじゃないかと思うんだ」

 「それは面白そうですね、でも、ボクなんかでいいんですか?」

 「実はその教授は複合型の新しい魔法の開発をしていてね、
 複合型の魔法は自分の本来の属性を弱体化させる可能性があるので、
 あんまり誰も手伝いたがらないんだ。君は才能にあふれているから
 大丈夫かと思ってね」

 「恐縮です。面白そうですので、一度、その先生にお会いさせていただいても
 よろしいですか」

 「うむ、それは良かった。早速、その友達に連絡をとるよ」

 ボンベイ先生はニッコリと笑った。

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