猫の国(オッサンが異世界転生したら、そこは猫の国でした)

楠乃小玉

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二十三話 洗脳結界

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 カール先生の研究をサポートするため、大学の図書館で調べ物をしていると、ふと
 背筋がゾクゾクっとした。

 この世に神なんか存在しないんだ。
 
 大人は汚い、自分のことしかかんがえてないんだ。

 人のタメに犠牲になるなんてソンだよな、自分さえよければいいんだ

 王なんていなければいい。一人で王国内の富をあつめ、贅沢三昧している。

 王を殺せ!王を殺せ!王を殺せ!

 どうせ死後の世界なんてないんだ。


 グルグルと言葉が頭の中で巡る。

 俺ははっと気付いた。

 いや、死後の世界はあるし。

 そう思った瞬間、頭の中でパリンとガラスが割れたような衝撃が走った。

 この本だ。

 本の上に手を置く。

 「結界破り!」

 バキーンと音がして、本の周囲を覆っていた目に見えない結界が砕け散り、細かい破片となって
 バラバラと床に落ちた。

 これは大変だ。

 俺はすぐに大学事務局に行って事情を話した。

 大学事務局はすぐに警察を呼んだ。

 警察から機動隊とともに刑事が来た。

 「やあ、君が通報してくれた学生かね」

 ハスキーな渋い低音のイケメンボイスが俺の背後から聞こえた。

 この声はハスキーだ、きっとシベリアンハスキーに違いない。

 「はい!」

 俺は振り向いた。

 そこには、五十センチくらいの身長のポメラニアンが刑事風のコートを着て立っていた。

 うわっ!チッコい、かわいい!

 「こんにちわ、捜査一課の刑事、ポメラニアンだ……
 おい貴様、今オレを見てかわいい、とかチッコイとか思っただろ!」

 「いいえ、思ってません」

 「そうか、それならいい、疑ってすまなかったな」

 「ところで、誰がこんな悪質なイタズラをしたんでしょうね」

 「ここの学生にこんな高度な結界を貼れるものはいなさ。
 できるとすれば、我々と敵対する北の隣国植民王国の連中だ」

 「北の植民王国ですか」

 「ああ、我々は北の原住民の猿どもと戦っているが、
 その背後には北の植民王国がついている。あいつらが猿どもを
 洗脳して猿どもに我らが王国を襲わせているのだ。
 まったく悪質なキツネどもだ」

 「キツネなんですね」

 「そうとも、かつてはジャンヌ・フォックスとかいう魔女キツネをしたてて
 王国本土に攻め込んできたこともある悪質な連中だ。こいつら戦争は弱いくせに
 悪知恵だけは働くからな」

 「じゃあ、逆結界を貼ってみましょうか」

 「逆結界?」

 「そうです、この図書館に結界を貼りに来た者全員に、自分が作った
  暗示が反射してかかってしまう罠です。もし、我が国の国王に反逆して
  反乱を起こすように暗示をかけたなら、自分達が自分の国に対して
 反乱を起こしたくなるようにします」

 「そんな事ができるのかね」

 「ええ」

 俺は即答した。

 「すごいな君!」

 ポメラニアン刑事がこの事を学校の事務局に伝え、
 事務局が学長に結界の敷設の許可を取りに行った。

 これはトラップであるので、その詳細は一般には開かされなかったが、
 俺がすごい魔法を開発したという噂は学校中に広まり、
 文化系の女子たちから羨望の熱いまなざしで見られるようになってしまった。

 あ~、まあいいんだけど、クラスの大多数の女子たちからラブな熱視線で
 見られ続けるのも、ちょっと疲れるなあ。

 そこまでは良かったんだけど、
 次の日から図書館の本、一冊ずつ結界を貼る日々がつづいた。

 めんどくせえ。

 
 
 
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