猫の国(オッサンが異世界転生したら、そこは猫の国でした)

楠乃小玉

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四十八話 格が違う

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 エルパソへの旅は拍子抜けのような旅だった。

 誰も襲ってこない。

 フェニックスまでは何事もなく、食料と水を調達して先に進んだ。

 ここまで敵襲を警戒してずっと見通しのよい平地を通ってきた。

 しかし、襲撃などただの取り越し苦労だったようだ。

 我々はエルパソへ急ぐため、近道の峠を越えることにした。

 スーペリアからグローブに抜ける道だ。

 峠を越えるのはこのわずかな区間だけだ。

 そこを抜ければ、あとはまた見晴らしのよい平地を進む。

 少しくらい大丈夫だろう。


 山の中に入っても俺たちは順調に進んでいった。

 途中ですれ違う人もなく、とにかく馬車は進んだ。

 途中、小さな猫が道の真ん中に立っていた。

 避けてくれればいいものの、

 道の真ん中に突っ立っている。

 「おいどけ! 」

 コヨーテの馭者が怒鳴る。

 でもどかない。

 「てめえ、ひき殺すぞ」

 言ってもどかないので、馭者は馬車を止める。

 「ちっ、面倒だな」

 ぶつくさいいながら馭者は馬車をゆっくりと横に避けて道の端っこを通る。

 前の高級馬車が止まったので、俺は後ろの幌馬車から顔を出した。

 なんか、ちっこい猫が道の真ん中に立っている。

 クリケットのバットを手にもって肩にかついでいる。

 なんか漢字が書いているな。漢字とは珍しい。

 俺は漢字を読んだ。

 「精神注入棒……精神注入棒!」

 「おい、全速力で逃げろ! 」

 俺が叫ぶが早いか、猫はそのクリケットのバットで高級馬車を殴りたおした。

 メキメキメキッ

 高級馬車が一瞬で叩きつぶされる。

 「ひーっ!」

 馭者は馬車から転げ落ちると、一目散にどこかに逃げていった。

 馬車が潰される瞬間、ドカンちゃんとチカンちゃんは馬車から飛び出していた。

 「円月斬!」

 ドカンちゃんが竹定規をふるう。

 猫はそれを素早くよけながら、クリケットのバットでドカンちゃんの頭を殴りに来る。

 「ドカンちゃんはすごいんだぞ!」

 チカンちゃんが叫ぶとドカンちゃんの前に虹色の盾ができる。

 ガン

 鈍い音がしてバットは跳ね返される。


 「おい薩摩黒足、何してんだ! 」

 俺は叫んだ。

 「お前こそ何をしている。
 そいつは、俺たち猫がネズミを殺すのを禁止にしようとしている。

 ネズミは神が我らに与えたもうた玩具だ、それを取り上げるなど神への冒涜だ!」

 薩摩黒足は目を怒らせて怒鳴った。

 「ネズミにだって命があるんだ。勝手に殺していいわけがない」

 「そうやってネズミをかまっても、お前らはかえってネズミに罪を
 かぶせられて、なぶり殺しにされるだろう。ネズミは皆殺しにすべきなんだ!」

 薩摩黒足の理屈は俺にはまったく理解不可能だった。

 その時、森からもう一匹、ものすごく背の高いメス猫が出てきた。

 石虎セキコだった。

 「そうだね、ネズミどもは、この平面な大地が球形だとかでたらめを言いふらしている。
  私達は神様がオス猫の肋骨を引き抜いて作ったんだ。それが、猿から変化して出来たって
 言いふらしている。いままで猫から猿が生まれたのを見たことがあるかい?
 ネズミは悪い奴らだ。皆殺しにしないと」

 「お前らがそれを信じるのは自由だ。でも、ネズミが世界が球形だと信じるのも自由だろ、
 言論の自由だろ! 」

 「そんな神を冒涜する自由なんてない」

 「それは神への冒涜ではない」

 その騒ぎを聞きつけて、後ろの幌馬車からカール先生が出てくる。

 「え~何、何?」

 石虎は背中のリュックサックからアニメのポスターを一本引き抜く。

 そしてノソノソとカール先生に近づいて行く。
 
 「この野郎!」
 
 幌馬車からクーガーが飛び出してきて、薩摩黒足に殴りかかろうとする。
 そのクーガーの後ろからヤスケが飛び出してきて、後ろからクーガーを羽交い締めにする。

 「やめろ! 我らにかなう相手ではない。殿におまかせするのだ」

  そう言うとクーガーを担ぎ上げて、後ろに引き下がった。

 「やめろー! はなせー!」

 うーガーが叫ぶ。

 「ヤスケ、クーガーを守ってやってくれ。前衛に出してくるな」

 俺は叫んだ。

 「心得た」

 完結にヤスケが答えた。

 ヤスケはよく分かっている。

 こいつらは格が違うのだ。


 
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