猫の国(オッサンが異世界転生したら、そこは猫の国でした)

楠乃小玉

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四十九話 ダメだ殺される

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 カール先生の前に石虎がたちはだかる。

 「え~な~に?」
 
 カール先生は首をかしげる。

 「カール先生にげろーっ!」

 俺は大声で怒鳴った。

 その瞬間、石虎がカール先生の頭上にアニメのポスターを丸めたものを振り下ろす。

 「きゃっ」

 カール先生はそれを手で払う。

 ペコッ

 ポスターがおれ曲がる。

 「うおおおおおおおー! 萌え燃えミャオちゃんのポスターがあああああ!」

 石虎はポスターにはめている輪ゴムを外してポスターを地面に敷き、一生懸命、
 折れたところのシワを伸ばそうとする。

 「ごめんねー、だって急に叩くんだもん」

 石虎はポスターのシワを伸ばしてもう一度丸め、輪ゴムをはめる。

 その丸めたポスターを凝視する。

 「……」

 石虎は小首をかしげる。
 
 石虎は森のほうに向かう。

 「ふん!」

 ポスターで森の木を横になぎ倒す。

 スタン! スタン! スタン! スタン! スタン!

 森の木々が軒並みなぎ倒されて、平原になる。

 「あらあら、森の木を勝手に切っちゃだめよ」

 カール先生が右手を石虎の肩にポンと乗せる。

 するとその手を乗せた部分から亀甲模様の青い光の網がどんどん石虎の体にひろがっていく。

 しかし、しばらくするとその浸透は止まり、今度はその亀甲模様は赤に塗り変わっていき、
 カール先生の手のひらのところまで来た。

 ジュッ!

 カール先生の手のひらが焦げる。

 「あっちっち、すっごーい! 君は封印魔法を内部から破壊できるお友達なんだね!」
 
 カール先生は平気な顔をしているが、あきらかに手のひらがヤケドでズルズルに皮がむけている。

 「ドカンちゃん、チカンちゃん、薩摩黒足を押さえておいてくれ、
 倒さなくていい、時間稼ぎだけでいいから!」


 俺はそう叫んで石虎のほうに向かう。

 「あら、これなかなか外れないなあ、ごめんね大地さん」

 そう言ってカール先生はヤケドでズルズルになった手のひらで地面を触る。

 「転写!」

 すると地面から煙りがあがり、ドロドロと溶けた溶岩になっていった。
 
 カール先生と石虎はそこから飛び退く。

 俺は飛び退いた石虎めがけて飛び上がり、その背中に手を付ける。

 「双手合十!#単語_ソウシュジュウゴウ!__#」

 石虎は体をスルリとくねらせ、地面に降り立つ。

 「お前の相手はこっちだー! 」

 薩摩黒足が俺の背後から突進してくる。

 その前にドカンちゃんとチカンちゃんが立ちふさがる。

 「ドカンちゃんはすごいんだぞ!」

 虹色の巨大な盾が出来てそこに薩摩黒足がゴン! と当たる。

 「くそっ、こげなもん!」

 薩摩黒足は虹色の盾をクロケットのバットで殴り倒すが、
 ガン! と音がしてビリビリと盾が振動するだけだった。

 石虎がのしのしと俺の向かって歩いてくる。

 ヤバイ! ヤバイ! ヤバイ! ヤバイ!

 「カール先生、援護射撃してくれー!」

 「結界解除と結界防御に全振りしてるから、それ無理」

 カール先生は言った。

 やばい、なんとかしないと。

 大地の気を吸収して一気に放出する。

 そのために時間がいる。

 時間稼ぎをしないと。

 「あのさー、石虎は何でアニメのポスターもってんの?
 それ、異世界から落ちてきたもんだよね、この世界では
 アニメやってないよねー」

 石虎は無言で横蹴りを食らわせてきた。

 バシン!

 俺はそれを反射的に腕で受け止めてしまった。

 まずい、今ので全気力の半分ふっとんだ。

 こいつ、ボケーっとしてるくせに、気を全力でうちこんできてる。

 と思っているうちに石虎は俺が腕で気を受け止める事を計算に入れて、
 回し蹴りの反動で俺の腕を軸にしてクルリと廻りながらもう一方の足で俺の背中を蹴りつける。

 やばい!マトモにくらったら肺を蹴り潰される。

 俺は思わず、背中に結界を貼った。


 ズドーン!俺ははね飛ばされて、先ほど目の前に出来たマグマだまりの上に吹っ飛ばされる。

 「アイシクルシールド!」

 俺はマグマを氷結させる。

 ツルーと滑ってカール先生のところまいく。

 カール先生は俺の背中に手を当てる。

 「これが私の全力全開! 」

 「アガガガガガ!」

 膨大な気のエネルギーがものすごい勢いで俺の体の中になられこみ、

 俺の体がガクガクする。
 
 「さあ、いってらっしゃい! 」

 カール先生が俺を蹴り飛ばす。

 俺はまた、ツルーっとすべって石虎の前まで行く。

 「やばい! 逃げろ石虎」

 薩摩黒足が叫ぶ。

 「大丈夫だよー、パンチで粉々にするから~」

 セキコは右腕をグルグル回しはじめる。


 俺は氷の上を滑って体の自由がきかない。

 ここで、確実に相手を倒す方法はある。

 メテオクライシスを撃てば、こいつらは灰になって消し飛ぶ。

 しかし、それを使えば、クーガーもヤスケも、ドカンちゃんもチカンちゃんも
 灰になって死ぬ。

 それはイヤだ!

 たとえ自分が死んだとしても!


 「てえい! 」
 
 俺は氷の上でジャンプした。

 慣性がついているので俺はそのまま前に突っ込む。

 「ヴォイ!」

 石虎が俺にパンチを繰り出す。

 おれは体中の筋肉に強化魔法をかけて加速し、
 その腕を跳び箱の要領で叩いて上に跳ねた。

 そして両手で石虎の頭を掴む。

 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおー! 」

 カール先生から貰った気を全力で石虎の頭にぶち込んだ。

 これで勝てなかったら、石虎に体を握り潰されて殺される。

 ポテッ

 石虎はその場に尻餅をついた。

 石虎の鼻からツーッと鼻血がたれる。

 俺は地面にひっくり返る。
 
 全力で気を放出したので動けない。

 「よっこいしょういち」

 石虎が立ち上がった。

 ダメだ殺される。

 石虎は薩摩黒足のほうを見た。

 「尻餅ついちゃった」

 「おう、そうか、ぞれじゃ、お前の負けだ、帰るぞ」
 
 そう言って薩摩黒足は足早に、まだ切り倒されていない森のほうに
 駆け去っていった。

 「あ~、うん、わかった」

 石虎は俺を見下ろす。

 「今回はお前の勝ちだ。 また遊ぼうね」

 石虎は無表情にそう言うと、そのまま、ノシノシと歩いて森の中に消えていった。

 「か……勝ったのか……」

 俺は、まだガクガクと体の震えが止まらなかった。
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