社会の落ちこぼれから最強パーティーのリーダーになるお話

佐藤大芽

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終焉の予兆

第2-2話

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「ホント、昨日は死ぬかと思ったよ……システィーナは怪我とかはしなかったのか?」
「はい、多少の傷は負いましたが自分で治せる程度だったので……」

 昨日のモンスターの件もあり祭りの開催が危ぶまれたが、何とか無事に百年祭を開催することができた。

「けど、あの人何だったんだろうな……」

 俺は昨日の出来事を思い出す。
 なぜか、彼女の姿をはっきりと覚えていないが、声だけはしっかりと覚えている。

 たしか……若そうな声だったよな……

「なあ、システィーナは昨日の彼女覚えてるか? サーペントデーモンを一人で倒した彼女」

 そう聞くとシスティーナもまた俺と同じように思い出せないでいた。

 何かがおかしい……なんだ、このモヤモヤは……

「そういえば、中央広場の噴水前で百年に一度だけ姿を現す術師が占いを無償で行なっているみたいです。ぜひ行きましょうよ!」

 この前システィーナが言ってたやつか……占いとかは信じない方だけど無償ならいいかな……

 俺たちは術師のもとに向かった。

 王都アストロヘイム中央広場噴水前にて。
 紫色の綺麗なテントが張られており、中は暗く外からでは何も見えなかった。
 俺たちが来る頃には人がたくさん集まっており、よく見てみると身なりの整った騎士のような男たちが外敵から守るようにテントを囲んでいた。

 すっげー人だな……

「あの重装備をしている方々はアストロヘイムの国家騎士の方々で、特に顔に大きな傷が切り込まれている方は国家騎士団長のアルベルトさまです。アルベルトさんは騎士団団長なのにも関わらず、災害で家が倒壊してしまった方々の手伝いや、迷子の子供の保護だったりと、この国の人たちから慕われている存在なのです」

 システィーナはアルベルトさんについて説明してくれた。

「アルベルトさま~~!」

 俺とシスティーナはアルベルトのところに行った。

「ん?」

 システィーナがアルベルトを呼ぶとそれに気づいたのか振り返った。

「お! 久しぶりじゃないか、システィーナお嬢さま!」

 アルベルトはからかっているようにシスティーナの髪をわしゃわしゃ撫でていた。

「アルベルト様、痛い、痛いです……」

 ジト目でシスティーナはアルベルトを見る。

「あ、すまんすまん……」

 アルベルトはシスティーナの頭から手を離すと俺に気づいたのか俺を見るなりシスティーナにこんなことを聞いていた。

「システィーナお嬢さま、こちらの青年はお嬢さまの殿方ですか?」

 いやいや、そんなんじゃないです……ただのパーティー仲間です……

「ゆ、ユイトさんが、私の殿方なんて、あわあわ、た、ただのパーティーメンバーですよ!」

 なぜか、脈ありのような反応を見せるシスティーナ。

「ほんとにそうか~~?」
「ほんとうです!」
 なにやら楽し気にからかっている気がするのだが……

「ユイト君! 君はどうなんだね? システィーナお嬢さまは君にとってどういった存在なのかわたしに教えてくれ!」

 なんだ? アルベルトさんもまさかカップルじゃないかって疑ってるのか……

「システィーナは俺のかけがえのない大切な仲間です!」

 俺は言い切った。
 すると、システィーナは顔がボッと赤くなる。

「大切な仲・間・……ねえ~~」

 俺が仲間だと言い切っても信じてないのか、まだにやけている。

 もういいや……

「コホン! まあ、からかうのはこのくらいにして……今日はあの方に会いに来たんだろ?」

 やっぱりからかってたんじゃねえか……

「あの方って術師の事か?」
「ああ、そうだ。あの方の予言は絶対に外れない。わたしも身をもって体感したんだ」

 今まで笑っていた彼だったが表情が変わり真面目な顔つきになった。
 俺はただ事ではないことが予言されたと思い真剣に話を聞く。

「あれは昨日の事でした。わたしがあの方を護衛するのにあたってわたしは城に呼び出されました。そして、用事を済ませたわたしは門を出ようとするとあの方が追いかけてきたんです。すると、あの方はわたしにむかってこう言い放ったんです。「あなたから不運の相が見えます。天翔ける獣にお気を付けてくださいませ」と。わたしは言われたときには気にしていなかったのですが、任務で国を出ていた時にその言葉の意味を理解しました」

 なに? 何が起こったの?

「任務を終え国に帰る途中でした。私は愛竜のランスロットにまたがって草原を走っていると、地面に大きな影が現れました。わたしはとっさに空を見上げるとワイバーンの糞が顔を直撃し危うく死んでしまうところでした。いやーワイバーンとはいえ侮れませんな全く。ははは」

 ははは……じゃないだろうが! 滅茶苦茶どーでもいい話じゃないか! ほら、もうちょっとこう……巨大なドラゴンが街を襲ってくるとか、グリフォンが鉱山に住み着いて街全体が不況になるとか……いろいろあるだろ……

「そういえば、なにか他に言っていた気がするんだが……うーん、思い出せないな!」

 話が終わると一人の騎士が慌てて走ってきた。

「団長! 支部から報告です! アストロヘイムより南方のグリムガル高原にてワイバーンが暴走しているとのことです。いかがなさいますか?」

 なにやら巻き込まれそうな予感……

「そうか~~ワイバーンか……放っておくのも危ないしな! だが、あの方の護衛につかなければならないのでな……どうしたものか……」

 しばらくの間、アルベルトは考え込んだ。
 すると、俺とシスティーナを見てニヤリとしこう言い放った。

「なあ、君たち、わたしに雇われてみないか?」

 ……は?

「わたしは今からワイバーン討伐に向かう、その間君たちにはわたしの代わりとしてここで護衛をしていて欲しい。システィーナお嬢さまは昔から、けた外れの魔力を持っているから安心して任せられる。それにユイト君だって君が腰に下げている剣。それはかなりの業物だ。だからたとえ駆け出しでもかなりの戦力になるだろう」

 システィーナのことはかなり褒めてるって言うのが分かったけど、俺の戦力見くびりすぎじゃないのか? まあ、駆け出し冒険者で、まだ剣もまともに振ったこともないけど? 中学時代剣道部だったから? それなりに動けると思うんだけどな! 剣道部って言っても公式戦で一度も勝てなかった雑魚だったけど……

「分かりました! アルベルト様! お力になれるかどうか分かりませんがお引き受けいたします!」

 システィーナ⁉

「君はどうする? ユイト君?」

 パーティーメンバーがしたいって言ったんだ引き受けるしかないか……

「分かりました。引き受けましょう」

 結局、流れ的に引き受けることになってしまった。

 噴水前に来て時間が経ち昼が過ぎた頃になるとテント内からくたびれた感じ赤紙の女性が出てきた。

「あ~熱いよ~疲れたよ~もうヤダ~」

 じっと見ていたら、向こうもこっちに気づいたみたいで目があってしまった。
 俺は気まずいと思い目線を逸らす。
 すると、彼女は俺に近づいてきてこう言い放つ。

「今、目合ったよね? なんで逸らしたの? ねえ、なんで?」

 胸倉をつかんで俺は持ち上げられてしまった。

 この人、力つよっ——

「早く答えて!」

 彼女はなぜか泣き目になっている。

「はいはい答えますから! ちゃんと答えるので、持ち上げながら揺らさないでください!」

 やっとおろしてもらえた……

「なんで、目を逸らしたの……?」

「なんでって言われても……初対面の人と目があったら気まずいからですよ……それに綺麗な方だなと思って……」

 俺が最後の方をぼそりというと彼女は涙ぐみながら「聞こえなかった……」といった。
 さっきから思ってたんだけど、この人なんで泣いてるの?

「あの……さっきから思うんですけど、なんで泣いてるんですか?」
「え? なんでって、君に無視されたからに決まってるでしょ?」

 ……はい?

 彼女は首を傾げている。

 え? 何この傷つきやすい人、なんかすごい人に絡まれちゃたかもしれない……

「あ、あの、さっきは目を逸らしてごめんなさい!」

 これって謝るほどの事かな……?

「買い物……付き合って……」

 えーっと……なんですか?
 買い物に付き合えと……この俺が?

「え、えっと、あのー」
 目をウルウルさせながら俺を見てくる。
 そんな目で俺を見ないでくれ! 断れなくなるじゃないか!

「わかりました! けど、俺は仕事を頼まれているので早く帰ってきますよ! いいですね?」
「え? ほんとにいいの⁉ やったー! ありがとう」

 あれ? 泣いてるんじゃなかったの?

「じゃあ、行こっか!」

 彼女はそう言うと俺の右手首をがっしり掴み引っ張ってきた。

「システィーナ! 少し離れるけど、騎士団の人たちと護衛を頼む!」

 俺はそう言い残すと、人ごみに隠れてしまった。
 システィーナは困惑気味にこちらを見ていた。

 絶対あとで何か言われるな……

 こうして、俺は名前も知らない彼女と買い物をすることになった。
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