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それぞれの思い

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「今日は楽しんでおいで、車でこの後出掛けないといけないから。夕方になったら電話して」
カフェの目の前まで着いたと同時にそう言付ける。
「分かりました」
そう言った彼女の瞳には既に彼に会えることへの嬉しさが呼吸や話し方で伝わる。連れてき良かったと心から思った。
「うん、何が美味しかったとか楽しい土産話待ってる」
出来るだけ自然に微笑み彼女を送り出す。自分に置き換えてみると簡単だ。昔とても好きだった女の子が時空を越えた先でどうなってるのかなんて誰でも気になるだろう。
例え気持ちが残っていなかったとしても。そう考えると何だか楽しくなってきた。悲観的にとらえていたが、あの有名なアニメのあれを使って時空の先に居ると考えるとわくわくする。
気が付くと重かった足取りが次第に早くなり目的地につく頃にはすっかり負の感情は消え去っていった。
その頃カフェで目的の人物に会えた本人はとても楽しそうに会話に勤しんでいた。
「楓先輩」
「うん」
「楓先輩…!」
「何」
「いや、本当にそうなんだって感動してつい」
「………」
楓としてもここまで来るに至った経緯に関しては聞かずとも知れたことと言ったように把握していた。
「安藤ちゃん」
「はい!」
「ちょっと場所変えない?」
自分としてここで触れられたりしてあの人共々悲壮感を味わいこの目の前にいる女の子の瞳に涙を浮かべさせることだけは避けたかった。そんな顔の彼女を見たくはないのとただ単に癪だった。

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