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ギルドについた。

相変わらず、買取窓口は混んでいるな。
窓口の数は多いんだが、帰ってきた奴らは皆あそこに行くわけだからなぁ。

ダンジョン内で消費したもの(ポーションとかステータス宝珠オーブとかw)
と依頼でとってきたもの以外は、ギルドに売るルールだ。
自分たち用に取っておきたい装備とかは、いったんギルドが買い取るが、
申告すればギルドの買値で買い戻せる。

フィールド階層で普通の魔物モンスターにでも合わない限り、収穫はドロップだけ
だから、商人たちもこのダンジョンにはあまりうまみを感じていない
ようだし、まあ妥当なルールだな。


買取窓口を見ながら、そんなとりとめのないことを考えて食堂に向かう。

「晩飯には少し早いか...」

ボクは飲み物と軽いつまみを頼んで席に着く。
シオンはといえば、サラダボウルと焼き肉の山盛りを持ってきた。
時々思うんだが、あれだけ食べて太りもしないこいつの燃費の悪さって
いったいなんなんだろう。
まあ幸せそうだからどうでもいーか。

「そーいや、シオンは何も持ってなかったのか?」

「ん?」

「ザックたちと周回したんだろ? ドロップだよ。
 おまえも収納魔法使えるのにな? ザックも知ってるだろうに。」

「あ、みんなが持たなくていいって。」

ファンクラブか。さもありなん。

「それに今回は大きなものってほとんどなかったし。」

「そっか」

ぽつぽつと話しながらザックを待つ。
シオンの焼き肉がなくなるころ、ようやくザックたちがやってきた。

「おう、待たせた。」

メンバーは隣のテーブルについて好き勝手にエールやら頼み始めている。
表情を見る限り、相当実入りがよかったんだろうな。

「ほれ、これがシオンちゃんの取り分、でこっちが買い取りの明細だ。」

「おいおい、すごいじゃんか。」

シオンに渡された明細をのぞき込むと、総額で金貨は257枚ちょっと。
ザックも満面の笑みでそれにこたえる。

「おう、シオンちゃんさまさまだよ。
 あれが金貨150枚で買ってもらえたしな。」

「転移石か...需要があるのかな?結構な値だなー」

そこに、渡された袋から分け前を数えていたシオンが口をはさむ。

「ちょっと多い。」

「ああ、頭割りで一人金貨36枚、端数を全部シオンちゃんにな。」

「いいの?」

「メンバー全員から礼だ。受け取ってくれ。」

「わかった。ありがと。」

この辺り、見知った仲だ。遠慮なんてない。

「にしても、一人頭で金貨36枚とは大漁だったなー」

ザックが大きく頷いた。

「周回回数がいつもより少なかったのに、これだからな。
 ここまでの大当たりは初めてだよ。今までの最高は
 金貨19枚ちょっとだったからな。」

ザックが笑い、それを聞いていた隣の席でも歓声が上がる。

「というわけで、今晩宴会をするんだが、シオンちゃん連れて
 クロウもどうだ?」

「お呼ばれするか。シオンもいいよな?」

「おごりなら。報酬の上定食とは別だよね?」

笑いながらシオンがいうと、隣の席から歓声が上がる。

「「「もちろん!!」」」

「ちゃっかりしてるな、おい」

シオンを小突きながら一緒になって笑う。平和だ。



そんな場に、ギルド職員がやってきた。

「クロウさん、ちょっとよろしいですか?」

「ん? なんでしょ?」

「クロウさんに指名で依頼が入りました。
 依頼内容はこちらになります。」

渡された依頼書を見ると、依頼内容が『最下層ボス戦への同行と
戦闘指導』、報酬が金貨50枚とある。

「ああ、これ相談されてたやつです。受けますよ。
 依頼人との顔合わせは...明日の午後一で調整してもらえますか?
 今晩宴会なんで。」

「ふっ...了解です。飲みすぎないでくださいね。
 こんな高額の依頼は珍しいですから。」

職員は軽く笑って戻っていく。ギルドとしても指名依頼の手数料10%で
金貨5枚なんて、長期依頼でもなければそうそうないだろうからな。


「指名依頼とは珍しいな。クロウが依頼を受けるのも珍しいが。」

ザックが興味深そうに聞いてくる。

「まあな。ちょっとした縁でな。」

「今日のボス戦もその絡みか...」

「おいおい、いい勘してるな。」

「そりゃぁ、クロウがこっちのエリアに顔をだすなんざ、よほどの
 ことがなきゃないだろうからな。
 ま、頑張ってくれ。あ、あと宴会は広間を取ってある。7時からな。」

「わかった。じゃぁまたな。」

ザックが隣の席へ移るのに合わせて席を立つ。

「シオン、ちょっと休んでくる。お前はどうーする?」

「ん、一緒に休む。」

「んじゃ、帰るか。」

シオンと共に宿に帰って仮眠をとった。



その夜の宴会は予想通り派手になった。
シオンはファンクラブに囲まれて幸せそうに食べていたが...
一体いくらかかったんだろうか?



翌朝。

二日酔いにはならなかった。
シオンも普通通りだ。朝飯もいつも通り、平常運転だ。

「さて、昼までどこで時間をつぶすか。」

「私はちょっと武器屋のおっちゃんの所へ行ってくる。
 昨日の戦闘で鏢を使ったから、ちょっとみてもらう。」

「欠けたのか?」

「ううん、見たとこ問題なさそうだけど、久しぶりに
 使ったから。」

「そっか、じゃあ、付き合うわ。」

連れだって行きつけの武器屋に向かう。
結局シオンの鏢は問題なかったが、おっちゃんとの世間話で
いい具合に時間はつぶせた。


早めの昼飯のあとギルドの受付に顔を出す。

「こんちわ。指名依頼の顔合わせ、午後一で調整してもらってる
 はずなんですが。」

「クロウさん、いらっしゃい。...2番の応接室ですね。」

「ありがとう。依頼人は?」

「まだいらっしゃってはいないと思いますが。」

「じゃ、先に行って「クロウくん。」...」


ジムさん達がやってきた。

「依頼人も来ましたね。鍵ください。」

「ご案内しますよ。今は昼過ぎで混んでませんから。」

ジムさん達と応接室に案内された。
受付の人に人数分の果実水を頼んで、ジムさん達に向き合う。


「改めて。依頼を受けるクロウとシオンです。」

「あ、ああ。こちらも改めて自己紹介させてもらおう。
 ギルドではジークムントを名乗っている。パーティ名は
 『頂を目指す者たち』という。
 各メンバーの名も必要かね?」

「いえ、結構です。」

(名乗っている、か。こりゃ深入りしない方が無難だな。)

「ジムさ...失礼、ジークムントさん。
 依頼内容は先日お話しした通りに、最下層のボスを瞬殺する
 火力をお見せするということでよろしいですね?」

「基本的にはそれでお願いする。ただ、依頼書にも書いたのだが、
 戦闘指導として戦闘後に、見せてもらう火力を我々が身に着ける
 方策について相談もしたい。」

「まあ、短時間なら構いませんが。指導という形で拘束されるよう
 なら別途追加の依頼にしてくださいね。こちらも手の内をさらす
 つもりはありませんので、あまり過度な期待はしないでください。」

「...わかった。その辺は戦闘後の相談時に話し合うとしよう。」

「それで結構です。で、こちらからの相談なんですが。
 実は昨日最下層のボス相手に検証してみたんですが、番人ゲートキーパー戦とは
 異なって、レベル補正が大きいんですよ。」

「? どういうことだろうか?」

「ボクが初回討伐したころ、最大火力でボスは瞬殺出来なかったこと
 はお話ししましたよね。」

「ああ。」

「あの頃の最大火力に相当する火力で、瞬殺できちゃったんです。
 あの頃からボクのレベルが20近く上がっているので、レベル
 補正のせいだと考えています。
 番人ゲートキーパーに通用する火力という意味では正しいのでしょうが、
 お見せする火力は大きめになることだけご了承ください。
 使う魔法は爆裂魔法フレアです。」

「...そういうことか。それは致し方ないな。レベル補正の度合いは
 わからないのだろう?」

「ええ。その検証まではしていません。多分相当時間がかかるでしょうね。
 レベルが上がらないとわからないのと、ボクの場合検証するための相手が
 非常に限られているので、下手すると数年はかかります。」

「...了解した。では日程についてだが、明日で構わないか?」

「良いですよ。朝早いのは勘弁してほしいですが。」

「では、明日の10時にダンジョン入り口で落ち合うということで。」

「了解です。...あ、忘れてました。」

「なんだろうか?」

「最下層への行き方なんですが、ボクは50階層のセーフティエリアへの
 転移石しかもっていませんので、50階層から最下層へは普通に移動
 することになります。ご了承ください。道中の戦闘はこちらで受持ち
 ますが。」

「行き方か。考えていなかったな。私たちも50階層への転移石は持って
 いるから、落ち合う場所は50階層のセーフティエリアにするか。」

「それでよろしいのであれば。
 では、明日の10時に50階層のセーフティエリアで。」

「よろしく頼む。」

































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