異常者のスローなダンジョン生活 ~ 助けろ?   めんどいので他を当たって下さい!

azuma

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翌日。

少し早めに50階層のセーフティエリアに向かう。

「なあ、シオン。」

「なに?」

「最下層まで先行頼んでいいか?
 一昨日回った時は特に罠とかなかったと思うが、念のため。」

「ん、わかった。」

「それと、出会い頭以外の戦闘はボクが受け持つ。
 お前は魔物モンスターを見かけたら、いったん下がってくれ。」

「なんで? この辺りなら全然問題ないよ?」

「あー、彼ら、多分皇国関係者だ。できるだけ手の内をさらしたくない。
 お前は優秀な斥候職としてだけ認識させたい。変にスカウトされても
 困るしな。特にドロップ関係。」

「ああ、行く途中でレアドロップいくつも出たりしたらまずいか...」

「そーいうこと。」

シオンの場合それが有り得るからな。攻撃に参加しなきゃドロップには
影響しないことは確かめてある。まあ自分のドロップ運の悪さに改めて
涙したわけだが...あの時の実入りって1日使って金貨2枚だっけ・・・

「ん、わかった。おとなしくしておく。ボス戦は?」

「瞬殺するんだし、ボス戦も見学かな?
 1回で終わるとは思うけど、ことによったら2,3回周回するかも。
 暇だろうけど我慢してくれ。」

「...わかった。その代わり報酬は6-4ね。」

「っ! 仕方ない...」

たくましく育ったものだ。ちょっと複雑な気分だが...




50階層のセーフティエリアでしばらく待っていると、彼らも到着した。

「おはようございます、皆さん。」

「おはよう、クロウくん、シオンさん。」

ジークムントさんが挨拶を返してくる。他の面々はちょっと頭を下げて
来ただけだ。まあ、今まで話をしたこともなかったからな。

「さて、今日の予定ですが、最下層まではシオンを先行させます。
 戦闘はボクが受け持ちます。」

「大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ。シオンはトップレベルの斥候職ですから。
 まあ、この辺りなら戦闘も問題はないですが、時間節約のため、
 ボクが一掃します。」

「了解した。」

「それと、ドロップは基本全て放置します。必要があればそちらで
 拾ってもらっても構いませんが。」

「良いのか?」

「構いません。あ、万一、本当に万一ですが、ボス戦でステータス
 宝珠オーブが出た時はください。」

「...それは構わないが、ボス戦では普通にでるだろう?」

「・・・ボクのみの戦闘ですから...」

自分で言ってて悲しくなる。

「そうなのか...」

ジークムントさんの優し気な表情がつらい...


気を取り直して、

「...さて、そちらの準備がよろしければ移動しましょう。」

ジークムントさんがパーティの方に振り向く。

「行けるか?」

パーティの面々が肯定を返す。

「シオン、先行を頼む。」

「OK」

シオンが先行し、皆で移動を開始する。



最下層に着いた。
途中の戦闘も、出会い頭はなく10階層降りる間に14回。
最短距離を移動したとはいえ、運が良い。
まあ、雑魚一掃時に複数展開した魔法陣を見た彼らは、びっくり
していたが。当然瞬殺した。

ボス部屋前には待ちのパーティもおらず、そのままボス部屋へ。


「では確認のために。
 これから行う攻撃は、ボクが番人ゲートキーパーを初回討伐した時の威力に
 調整した爆裂魔法フレアです。
 当時は瞬殺出来ませんでしたが、現在は瞬殺できることを確認
 出来ましたので、威力調整はそういう感じです。
 取り巻きは事前に一掃します。
 何かご質問は?」

パーティメンバーを見やったジークムントさんが答える。

「いや、特にない。始めてくれて構わない。」

「了解です。では、始めます。」


魔法陣を展開する。今日の取り巻きは16体。
ボクの周りに展開された17個の魔法陣を見た彼らは、やはり
驚いている。何度も見ただろうに。
爆裂魔法フレアの威力調整も、一昨日に検証しているから割と楽だ。


「では行きます。取り巻きを一掃した後、一拍置きますから、
 見逃さないでくださいね。」

念のため魔法盾マジックシールドを数枚出して駆け出す。

魔法矢マジックボルト

取り巻きを一掃。

一呼吸おいて、爆裂魔法フレアをかます。で、瞬殺。

シオンがドロップを見に行ったが首を振っている。
さもありなん。放置だ。


「では一旦戻りましょうか。」

振り返ると、ジークムントさんをはじめ、皆さん口を開けて放心
している? もしもーし?

「ジークムントさん、聞こえてます?」

体を揺らすというわけにもいかず、何度か呼びかける。
何回か呼びかけて、やっとシークムントさんが我に返った。
驚きすぎだろう?

「...すまない。なんだろうか?」

「いえ、いったん戻りましょう。」

皆が我に返るまで、更に時間がかかった。
転移陣で地上に戻る。


「さて、お見せするものはお見せしましたし、この後は?」

ジークムントさんの表情がやや硬い。

「...この後は話というか相談をを考えていたが。」

いまいち歯切れが悪い。何だろう?

「クロウ、そろそろお昼...」

シオンが口をはさむ。こいつ、狙ってないか?

「そうだな? ジークムントさん、どうします?
 食べながらというわけにもいかなそうですし、昼食後に
 どこかで落ち合いますか?」

はっとしたようにジークムントさんが答える。

「いや、この間の個室に昼食も用意してもらっている。
 このまま宿に向かおう。」

そういうことになった。
シオンの口元が緩んでいる。やっぱり狙ってたな?



~~~~(ジークムント視点)~~~~

我らは国でもトップに立つ精鋭ぞろいだ。
情報を得て、この試練の迷宮で最下層のボス戦をこなして
限界突破した。
レベル99で止まっていたのが、いきなりレベル120越え
までアップした時はさすがに驚いたし、レベルアップ酔いには
しばらく苦しんだが、情報を得た際の限界突破者たちもレベル
120に達した者はほとんどいなかった。
我らは精鋭なのだ。
国の威信をかけたこのパーティには、陛下から伝説の神装装備
ではないものの、それに準じる高性能の装備を賜っている。

だが、番人ゲートキーパーには歯が立たなかった。

クロウくんから指摘され、後になって気づいたが我らが放った
攻撃は通じていなかった。クリティカルで通じた時でも奴の
回復が上回っていた。

クロウくんのいう、レベル60台で挑戦していたという例えも
後知恵だがなるほどよくわかる。

だが、国の威信を高めるためにも、限界突破した高レベルの
パーティというだけでは弱い。
限界突破しているパーティが複数いるにもかかわらず、あの
ダンジョンの探索は遅々として進んでいない。
レベル99の時でもトップパーティの一角にはいたが、抜きん
出るにはレベルだけでは心もとない。
故に番人ゲートキーパー討伐者の名を欲している。
攻略の主導を国が保つためだ。

運よくクロウくんという討伐者に出会えた。
その力の一旦でも手に入れられればと思っていたが...

だが、あれはなんだ?
あんなものが魔法だというのか?

目の前で見せられたものが信じられない。

今の我らであれば、最下層のボスも手こずることはない。
だが、我ら6人でかかっても討伐に数分程度はかかる。
それもバフやデバフを駆使して、だ。
ソロであれば最悪数時間はかかるだろう。

それを瞬殺。しかも手加減して...

実は番人ゲートキーパー討伐をレベル70台のペアで行ったという話も信じて
いなかったが、あれを見せられては信じるしかない。

彼を取り込むことも視野には入れていたが、あれはだめだ。
リスクが高すぎる。機嫌を損ねれば皇城が灰燼と化すかも
しれない。止められるものもいない。

この後の話し合いで、何とかあの実力の一端でも吸収でき
ればよいのだが...





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