遊戯超過

小判鮫

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人生のセーブポイント

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 唐突だが、ゲームの世界にはセーブという機能がある。もし死んでもセーブした地点からまたやり直せるんだ。だから、ゲームは強い敵を倒すまで前に進めないし、強い敵を倒した後にはセーブをして、もうその敵とは戦わないようにする。時々、考えることがある。俺の人生のセーブポイントは何処だろうか?高校受験か、大学受験か、はたまた、小学生や幼稚園児のときかもしれない。どれもどれにもいま考えると、俺の人生はセーブができるほど完璧じゃなくて、何処からやり直すかというより、この人生そのものをやり直した方が良さそうだった。何処の地点でも、戻りたいと思った瞬間、嫌だった場面が思い浮かぶのだから。それなら、もし俺がセーブを使える人間で、人生を何一つ失敗しないように何度も何度もやり直せるというなら、と考える。良いかもしれない、理想を叶えられるかもしれない。ゲームの世界では、ラストのボスを倒した者にだけ、エンドロールを閲覧する資格が手に入る。壮大なエンドロールで今までの強敵との思い出をしみじみと想起して感動する。けれども、俺がそんな能力を手に入れたとしても、結局は何も成し遂げられることはできないだろう。俺の人生には目的も意味も何もないのだから、そこに完璧やクソという評価を付けるのはナンセンスというもので、お門違いに感じてしまう。人生において、何かを成し遂げる人間ってのは、それに人生の大半の時間をかけているんだ。だから、俺の人生はみんな中途半端に思えてしまう。中高大とそこそこで生きてきて、人生においては誰もが主人公だと言われるけれど、俺の人生を題材に作られた小説やドラマなんて、見るに堪えないだろう。それほどまでに、何もない。感動や喜ばしい記憶が薄らとしか残らない。つらくて苦しい記憶だけが滲み出てくる人生だ。ゲームをして、酒を飲んで、人生の残りの時間を削っていく。俺の人生最大の目標と言えば、勿論、死ぬこと。もうこれ以外ありえないほど、俺の狂った頭ではこれしか思いつかない。そして、そそれ達成するために、やることは、ただその方法を決めて実行するだけと思われがちだが、意外とその他にもやることはある。まずは、スマホをぶっ壊さなければならない。写真フォルダやお気に入り登録しているエロサイトなどを遺族達を見られた日には、死んでも死にきれない。祟として復活するかもしれない。他にも、現在プレイ中のゲームの完全クリア。葬儀代と墓地代の確保。遺書の作成。最後の晩餐のメニュー決め。などこれをリスト化するだけで死期が遠のく。まあでも、死ぬまでに時間はたっぷりある。なんて思っていたら、突発的に死んじゃうかもしれない。現に今も、仕事のつらさで死にそうになっている。けれど、仕事を始めて一人暮らしを始めたことで、死期が半歩だが近づいた気がした。俺の中間目標としては、母をあまり悲しませないように死ぬことだ。だから、母との物理的距離を強制的にとることで、心理的距離がとれ、葬式で泣く涙の量を何パーセントか減らせた気がする。将来、そういう誰かを悲しませる行動をAIが分析して、評価して、スマホアプリで手軽に確認できれば、もっと俺のモチベーションが上がるのに。それに、もっと効率的に誰かを悲しませる行動を避けられるかもしれない。俺が死んだとしても、大半の人間は「ふーん」と言って聞き流すだろう。涙を流すのは、母ぐらいだ。その母の悲しみを攻略するまでは、俺は死ねない。馬鹿らしいけど、俺の人生ゲームはこういうものだ。億万長者とか夢の国に一番乗りとか、そういうのではまったくない。そして、俺の最小目標はなるべくはやくマトモな人間になることだ。こうやって聞くと「あれ?こいつ、生きる気満々じゃん」って思われるかもしれない。俺も最初は戸惑った。けれど、これには列記とした理由が三つある。まず一つ目は、マトモな人間になることで母の悲しみが減らせるからだ。母が悲しんでいるのは、育った環境のせいで、俺がこんなうつ病になってしまった、と思い込んでいるからだ。そして、その環境を改善できない自分を責めているからだ。そのため、その誤解を解くために、俺は建前上でも何でも「うつ病が治りました」と母に証明しなければならないのだ。そして二つ目は、働ける人間にならないと葬儀代や墓地代、最後の晩餐代が払えないからだ。それに、奨学金の借金もあると考えたら頭が痛くなった。最後に三つ目は、マトモな人間にならないと、俺自身がつらいからだ。ここまで考えが及ぶと、こんがらがってくる。けど、誰しもつらい人生ってのは嫌なもので、逃げて死ぬか、強くなってうまく生きるか、のどちらしかない。死ぬまでの準備期間、騙し騙しでも生きなくてはいけない。そう考えたら、ちょっと強化した地点で準備が整うまで、それなりに生きたいと思うのは普通だろう?
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