遊戯超過

小判鮫

文字の大きさ
16 / 47

ハッピーデスデーをお祝いしよう

しおりを挟む
 こんなことばっか、ぐるぐるぐるぐるくだらねえことを考えていると、辺りが暗くなっていて、日が落ちていることに気づいた。手首もぐるぐるぐるぐる回していたせいで、腱鞘炎になりそうだ。太陽がいなくなって、「よっしゃ、俺の時間が来た」みたいな何処かの吸血鬼じゃないけれど、暗いところってのは、心が安らぐ。俺の汚れが目立たなくなる気がする。そのまま存在感が薄れていって、バースデーケーキのロウソクの火を消すように、ふっと俺が消えてしまえばいいのに。ハッピーバースデーじゃなくて、ハッピーデスデーをお祝いしよう。招待客は誰もいないけど。スマホ画面よりも目に有害そうな、車のヘッドライトを真正面から浴びて、目眩がしながら、赤い誘導棒をサイリウムのように振り回す。アイドルオタクみたいだ。アイドルなんていないけど。ヘッドライトに見蕩れて轢かれる鹿になりたい。誘導棒と反射テープが俺の命を守ってくれる頼りがいのある相棒である。
 「お疲れさーん!」
 この声を聞くことができる仕事終わりが、一日の中で最も気持ちが高ぶる瞬間。そして、達成感と疲労感に包まれて、頭ん中がスーッと真っ白になる。鈍痛がする。脳内の細胞がプチプチと潰れて死んでいく。緊張の糸が途切れて、足取りがおぼつかなくなっていることで、想像以上の疲れがあることに気づく。何もないところで、つまづきすぎて笑う。テンションが上がってんだから、笑っちゃうのはしょうがねえな。勢いと空元気で車に乗り込んだ次の瞬間、全身の力が抜けた人形のように落ちた。頭で車の揺れを感じる。鈍痛に響く。笑う。あははっ、俺の人生すげえ幸せじゃん!なんて、馬鹿なことしか考えられない。思考を制限してくれる極度の疲労が好きだ。単純なことしか考えられなくなるから。
 「酒ですか?飲みますぅ」
 と酔っているように答えて、コンビニに寄った。けど、車が止まった瞬間、俺の身体も止まってしまったように動かない。ドアを開ける気力も力もたぶんないし、狸寝入りしてしまおうか、なんて、するかしないか考えていると、勝手にドアが開いて、本当はヒロさんが開けてくれたんだけど、ドアに乗せていた頭が落ちて、そのまま頭から駐車場に落ちそうだった。シートベルトがあったから良かったものの、心臓に悪い。いや、別に俺の扱いなんてゴミと同じでいいんだけど。
 「悪ぃ、寝てたか?」
 とまったく悪びれる様子もなくヒロさんが笑うので、無理やりにでも起こしにかかったんだと察した。
 「いいえ、起きてました」
 と無意味に目を擦りながら、不貞腐れたように言った。いや、別にいいんだけど。足が重かったし、ふらついた。車止めにつまづいた。暗がりの中のコンビニの明かりは、スマホと車のヘッドライトの中間だと思った。瞼も重かったので、それぐらいの明かりで目覚めさせてくれるのは有難い。店内に入ると度数九パーセントのストロングチューハイを迷わず手に取って、サッとレジに通す。慣れた手つきで薬物の購入する人みたいだ。車に戻ってまた寝ようとすると、ツマミを選んでいるヒロさんに捕まった。
 「テン、ツマミいらねえのか?」
 俺の肩を肘置きにしながら、既に何個か手に持っているのにも関わらず、そう尋ねてきた。
 「ああ、ツマミはあんま食わないっすね。俺、酔ったらすぐに寝ちゃうんで」
 「なんだよそれ、つまんねえ」
 と言いながらも、「これは?」と何故か俺のツマミの好みを探られた。帰する所、マカダミアナッツチョコレートが好きなのがバレた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?

perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。 その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。 彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。 ……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。 口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。 ――「光希、俺はお前が好きだ。」 次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

愛おしい、君との週末配信☆。.:*・゜

立坂雪花
BL
羽月優心(はづきゆうしん)が ビーズで妹のヘアゴムを作っていた時 いつの間にかクラスメイトたちの 配信する動画に映りこんでいて 「誰このエンジェル?」と周りで 話題になっていた。 そして優心は 一方的に嫌っている 永瀬翔(ながせかける)を 含むグループとなぜか一緒に 動画配信をすることに。 ✩.*˚ 「だって、ほんの一瞬映っただけなのに優心様のことが話題になったんだぜ」 「そうそう、それに今年中に『チャンネル登録一万いかないと解散します』ってこないだ勢いで言っちゃったし……だからお願いします!」  そんな事情は僕には関係ないし、知らない。なんて思っていたのに――。 見た目エンジェル 強気受け 羽月優心(はづきゆうしん) 高校二年生。見た目ふわふわエンジェルでとても可愛らしい。だけど口が悪い。溺愛している妹たちに対しては信じられないほどに優しい。手芸大好き。大好きな妹たちの推しが永瀬なので、嫉妬して永瀬のことを嫌いだと思っていた。だけどやがて――。 × イケメンスパダリ地方アイドル 溺愛攻め 永瀬翔(ながせかける) 優心のクラスメイト。地方在住しながらモデルや俳優、動画配信もしている完璧イケメン。優心に想いをひっそり寄せている。優心と一緒にいる時間が好き。前向きな言動多いけれど実は内気な一面も。 恋をして、ありがとうが溢れてくるお話です🌸 *** お読みくださりありがとうございます 可愛い両片思いのお話です✨ 表紙イラストは ミカスケさまのフリーイラストを お借りいたしました ✨更新追ってくださりありがとうございました クリスマス完結間に合いました🎅🎄

僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

【完結】取り柄は顔が良い事だけです

pino
BL
昔から顔だけは良い夏川伊吹は、高級デートクラブでバイトをするフリーター。25歳で美しい顔だけを頼りに様々な女性と仕事でデートを繰り返して何とか生計を立てている伊吹はたまに同性からもデートを申し込まれていた。お小遣い欲しさにいつも年上だけを相手にしていたけど、たまには若い子と触れ合って、ターゲット層を広げようと20歳の大学生とデートをする事に。 そこで出会った男に気に入られ、高額なプレゼントをされていい気になる伊吹だったが、相手は年下だしまだ学生だしと罪悪感を抱く。 そんな中もう一人の20歳の大学生の男からもデートを申し込まれ、更に同業でただの同僚だと思っていた23歳の男からも言い寄られて? ノンケの伊吹と伊吹を落とそうと奮闘する三人の若者が巻き起こすラブコメディ! BLです。 性的表現有り。 伊吹視点のお話になります。 題名に※が付いてるお話は他の登場人物の視点になります。 表紙は伊吹です。

月曜9時の恋人 ――上司と部下のリモート勤務録

斎宮たまき/斎宮環
BL
「おはようございます」から始まる恋がある。 在宅勤務の上司と部下、画面越しに重なっていく生活音と沈黙。 誰もいない夜、切り忘れたマイクから漏れた吐息が、心の距離を壊していく。 社会的距離が恋の導火線になる―― 静かな温度で燃える、現代オフィスBLの新形。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

処理中です...