遊戯超過

小判鮫

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真っ黒の世界

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 「まじで消えてしまいたい」
 壁を背にしたまま、座り込んで、現実を見ないように、背を丸めた。真っ黒の世界に塞ぎ込んで、このざわめきも聞こえなくなってしまえ。ゴッホが耳を切り落とした気持ちが今なら分かる。
 「どうしたんすか?」
 人目に付くところで見せ付けるようにしゃがみこんでいた俺に、声をかけてくれる人がいた。見た目は俺よりも若々しくて、俺よりも活発そうで、優しそうな金髪の男の子だった。
 「すいません。アキさん、知ってませんか?」
 急に誰にも声がかけられなかった俺が、この子よりも子供に思えてきて、不甲斐なさと恥ずかしさでいっぱいになった。もちろん、いつも通りに目を逸らして、ぼそっと呟くのも、自分が嫌になる要因だ。
 「ああ、橋下さんっすか?三浦さんと仲良い。あっ、何なら呼んできましょうか?」
 自分の知らない苗字達を出されて、戸惑ってしまった。これで人違いだったら、かなり気まずいので、
 「いや、あの、お願いです。連れて行ってください。何ならその、一旦、遠目から見させていただけるとありがたいです」
 とかなり不審に思われるお願いをした。にも関わらず、その子は大人びた様子で二つ返事をして、俺をたぶんアキさんの元へ、連れて行ってくれている。
 「あっ、俺、テンって言います」
 「ああ、あのテンさん。あっ、僕はリュウタロウです。気軽にリュウって呼んでください」
 と人懐っこそうな笑顔を見せられた。
 「テンさん、仕事にはもう慣れました?」
 「いや、まだ、全然」
 「初めはキツいっすよねえ。僕も最初の方は、よくへばっては怒鳴られてましたよ」
 「そうなんですか」
 と俺が愛想笑いして相槌を打つと会話が途切れる。でも、それ以外に言う言葉が見つからなくて、必然的にこうなってしまう。リュウさんを悩ませてしまっている気がする。冷たいと思われたかな。会話がないと色々と勘ぐってしまう。
 「そう言えば、テンさんって大卒なんすか?」
 「一応、まあ」
 「凄いっすね。めっちゃ頭良いってことじゃないっすか」
 とお世辞でも、目を輝かせて褒めてくれる彼には、悪い気はしない。むしろ、調子に乗りそう。
 「そんな、今はもう、勉強してないですしい」
 「いやあでも、俺、高卒なんで、ほんと尊敬するっすよ」
 うん、素直に言うと、気分が良い。お立て上手で世渡り上手だな、この子は、と歪んだ角度から評価してしまったことを心の中で少し悪く思った。
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