遊戯超過

小判鮫

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天使

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 何時間前にゲームに誘った、リュウくんからの返信がまだこない。既読もつかない。いつもならば、すぐとは言わないが、一時間以内には返信がくるのに。しかも、今日は違う現場だったから、全然会えてないし、寮内ですれ違うことも、見かけることもなかった。何だか俺がすげー会いたい奴で気持ち悪くも感じたけれど、今はちょっとでいいから会いたい気分だ。チトセさんとヒロさんが帰ってしまって、やかましさを失ったこの部屋に一人でいると、静かすぎて、これが普通なんだけど、違和感を感じる。あの二人、元々パチスロ仲間で仲良いから、俺の部屋なのに、ずっと蚊帳の外だったのもあって、慣れない恋愛漫画を読んだものあって、とっくに寝る時間はすぎているのに、寝れない。何かをぎゅーって抱きしめたい。胸の中がドロドロとした気持ち悪さでいっぱいになって、どうしようもないけど、どうかしたくて、何かしたいのに、しちゃダメなんだって、分かってるからできないでいる。ああ、気が狂いそうだ。助けてほしい。目の前にある禁断の果実を食べたくて、いや、これはただの依存症なんだけど、カッターに触れてしまったら、俺の負け。
 「寝れない」
 午前二時、こんなメッセージを送るなんて、俺はきっとどうかしている。そして、あの音で飛び起きて、一目散に外へ出ていった。メッセージに既読がついた。バイクのヘルメットを片手に彼が作業着のまま、そこにいる。
 「テンテン、寝れないの?」
 と柔和な笑顔を見せられた。抱きしめたい衝動に駆られながらも、今まで蓄積したストレスを吐き出すように怒ってしまった。
 「ああっ、もう、馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿、何やってんの?」
 顔も見れずに目を覆って、しゃがみ込んで、相手に怒っているのか自分に怒っているのかわかんなくなった。
 「どうしたの?」
 と覗き込むように近づいてくる、彼の作業着を掴んで立ち上がった。
 「何で俺に言ってくんないのっ!」
 「え?」
 「俺じゃあ頼りないって?ああ、そうだよ、そうだけど、俺も、俺なりに、何かしてあげたいって、思うんだよ」
 彼の胸ぐらを掴んだまま、切なる願いのように訴えた。
 「僕は大丈夫だよ」
 と手袋をした手で頭を軽く叩かれた。
 「大丈夫じゃないの、俺が」
 「ふふっ、何?」
 「はあああ、生きててよかったあ」
 不格好にもほどがある、そのまま彼の胸というか肩に顔をうずめて泣いてしまった。リュウくんのストレスはバイクをかっ飛ばして消えてしまっているだろうが、俺のストレスは消えることを知らない。とにかく、リュウくんが事故らなくてよかった。彼にとっては要らぬ心配だろうが、本当によかった。
 「テンテーン、僕はこうやって、頼られていたい。いい人間でいたいんだ」
 と俺を慰めるように抱きしめてくれた。だけど、彼の言葉には、「だから、貴方には弱さを見せられない」というのが含まれている気がした。
 「それでも、時には俺を頼ってくださいよ」
 「あれ、テンテン、右耳、どうしたの?」
 「え?ああこれ、裂けちゃって、けど、ほらここ、ちゃんとお揃いなの、付けてますから」
 初めて指摘されて、思い出したように右耳の絆創膏を触る。そして、左耳のお気に入りを自慢げに見せた。
 「そっか、それで十分」
 天使かな?、と思わせるような笑顔で、また人懐っこく抱きしめられた。俺には彼の笑顔が最も眩しく、輝いてみえる。
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