45 / 47
天使
しおりを挟む
何時間前にゲームに誘った、リュウくんからの返信がまだこない。既読もつかない。いつもならば、すぐとは言わないが、一時間以内には返信がくるのに。しかも、今日は違う現場だったから、全然会えてないし、寮内ですれ違うことも、見かけることもなかった。何だか俺がすげー会いたい奴で気持ち悪くも感じたけれど、今はちょっとでいいから会いたい気分だ。チトセさんとヒロさんが帰ってしまって、やかましさを失ったこの部屋に一人でいると、静かすぎて、これが普通なんだけど、違和感を感じる。あの二人、元々パチスロ仲間で仲良いから、俺の部屋なのに、ずっと蚊帳の外だったのもあって、慣れない恋愛漫画を読んだものあって、とっくに寝る時間はすぎているのに、寝れない。何かをぎゅーって抱きしめたい。胸の中がドロドロとした気持ち悪さでいっぱいになって、どうしようもないけど、どうかしたくて、何かしたいのに、しちゃダメなんだって、分かってるからできないでいる。ああ、気が狂いそうだ。助けてほしい。目の前にある禁断の果実を食べたくて、いや、これはただの依存症なんだけど、カッターに触れてしまったら、俺の負け。
「寝れない」
午前二時、こんなメッセージを送るなんて、俺はきっとどうかしている。そして、あの音で飛び起きて、一目散に外へ出ていった。メッセージに既読がついた。バイクのヘルメットを片手に彼が作業着のまま、そこにいる。
「テンテン、寝れないの?」
と柔和な笑顔を見せられた。抱きしめたい衝動に駆られながらも、今まで蓄積したストレスを吐き出すように怒ってしまった。
「ああっ、もう、馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿、何やってんの?」
顔も見れずに目を覆って、しゃがみ込んで、相手に怒っているのか自分に怒っているのかわかんなくなった。
「どうしたの?」
と覗き込むように近づいてくる、彼の作業着を掴んで立ち上がった。
「何で俺に言ってくんないのっ!」
「え?」
「俺じゃあ頼りないって?ああ、そうだよ、そうだけど、俺も、俺なりに、何かしてあげたいって、思うんだよ」
彼の胸ぐらを掴んだまま、切なる願いのように訴えた。
「僕は大丈夫だよ」
と手袋をした手で頭を軽く叩かれた。
「大丈夫じゃないの、俺が」
「ふふっ、何?」
「はあああ、生きててよかったあ」
不格好にもほどがある、そのまま彼の胸というか肩に顔をうずめて泣いてしまった。リュウくんのストレスはバイクをかっ飛ばして消えてしまっているだろうが、俺のストレスは消えることを知らない。とにかく、リュウくんが事故らなくてよかった。彼にとっては要らぬ心配だろうが、本当によかった。
「テンテーン、僕はこうやって、頼られていたい。いい人間でいたいんだ」
と俺を慰めるように抱きしめてくれた。だけど、彼の言葉には、「だから、貴方には弱さを見せられない」というのが含まれている気がした。
「それでも、時には俺を頼ってくださいよ」
「あれ、テンテン、右耳、どうしたの?」
「え?ああこれ、裂けちゃって、けど、ほらここ、ちゃんとお揃いなの、付けてますから」
初めて指摘されて、思い出したように右耳の絆創膏を触る。そして、左耳のお気に入りを自慢げに見せた。
「そっか、それで十分」
天使かな?、と思わせるような笑顔で、また人懐っこく抱きしめられた。俺には彼の笑顔が最も眩しく、輝いてみえる。
「寝れない」
午前二時、こんなメッセージを送るなんて、俺はきっとどうかしている。そして、あの音で飛び起きて、一目散に外へ出ていった。メッセージに既読がついた。バイクのヘルメットを片手に彼が作業着のまま、そこにいる。
「テンテン、寝れないの?」
と柔和な笑顔を見せられた。抱きしめたい衝動に駆られながらも、今まで蓄積したストレスを吐き出すように怒ってしまった。
「ああっ、もう、馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿、何やってんの?」
顔も見れずに目を覆って、しゃがみ込んで、相手に怒っているのか自分に怒っているのかわかんなくなった。
「どうしたの?」
と覗き込むように近づいてくる、彼の作業着を掴んで立ち上がった。
「何で俺に言ってくんないのっ!」
「え?」
「俺じゃあ頼りないって?ああ、そうだよ、そうだけど、俺も、俺なりに、何かしてあげたいって、思うんだよ」
彼の胸ぐらを掴んだまま、切なる願いのように訴えた。
「僕は大丈夫だよ」
と手袋をした手で頭を軽く叩かれた。
「大丈夫じゃないの、俺が」
「ふふっ、何?」
「はあああ、生きててよかったあ」
不格好にもほどがある、そのまま彼の胸というか肩に顔をうずめて泣いてしまった。リュウくんのストレスはバイクをかっ飛ばして消えてしまっているだろうが、俺のストレスは消えることを知らない。とにかく、リュウくんが事故らなくてよかった。彼にとっては要らぬ心配だろうが、本当によかった。
「テンテーン、僕はこうやって、頼られていたい。いい人間でいたいんだ」
と俺を慰めるように抱きしめてくれた。だけど、彼の言葉には、「だから、貴方には弱さを見せられない」というのが含まれている気がした。
「それでも、時には俺を頼ってくださいよ」
「あれ、テンテン、右耳、どうしたの?」
「え?ああこれ、裂けちゃって、けど、ほらここ、ちゃんとお揃いなの、付けてますから」
初めて指摘されて、思い出したように右耳の絆創膏を触る。そして、左耳のお気に入りを自慢げに見せた。
「そっか、それで十分」
天使かな?、と思わせるような笑顔で、また人懐っこく抱きしめられた。俺には彼の笑顔が最も眩しく、輝いてみえる。
3
あなたにおすすめの小説
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
愛おしい、君との週末配信☆。.:*・゜
立坂雪花
BL
羽月優心(はづきゆうしん)が
ビーズで妹のヘアゴムを作っていた時
いつの間にかクラスメイトたちの
配信する動画に映りこんでいて
「誰このエンジェル?」と周りで
話題になっていた。
そして優心は
一方的に嫌っている
永瀬翔(ながせかける)を
含むグループとなぜか一緒に
動画配信をすることに。
✩.*˚
「だって、ほんの一瞬映っただけなのに優心様のことが話題になったんだぜ」
「そうそう、それに今年中に『チャンネル登録一万いかないと解散します』ってこないだ勢いで言っちゃったし……だからお願いします!」
そんな事情は僕には関係ないし、知らない。なんて思っていたのに――。
見た目エンジェル
強気受け
羽月優心(はづきゆうしん)
高校二年生。見た目ふわふわエンジェルでとても可愛らしい。だけど口が悪い。溺愛している妹たちに対しては信じられないほどに優しい。手芸大好き。大好きな妹たちの推しが永瀬なので、嫉妬して永瀬のことを嫌いだと思っていた。だけどやがて――。
×
イケメンスパダリ地方アイドル
溺愛攻め
永瀬翔(ながせかける)
優心のクラスメイト。地方在住しながらモデルや俳優、動画配信もしている完璧イケメン。優心に想いをひっそり寄せている。優心と一緒にいる時間が好き。前向きな言動多いけれど実は内気な一面も。
恋をして、ありがとうが溢れてくるお話です🌸
***
お読みくださりありがとうございます
可愛い両片思いのお話です✨
表紙イラストは
ミカスケさまのフリーイラストを
お借りいたしました
✨更新追ってくださりありがとうございました
クリスマス完結間に合いました🎅🎄
僕の部下がかわいくて仕方ない
まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?
【完結】取り柄は顔が良い事だけです
pino
BL
昔から顔だけは良い夏川伊吹は、高級デートクラブでバイトをするフリーター。25歳で美しい顔だけを頼りに様々な女性と仕事でデートを繰り返して何とか生計を立てている伊吹はたまに同性からもデートを申し込まれていた。お小遣い欲しさにいつも年上だけを相手にしていたけど、たまには若い子と触れ合って、ターゲット層を広げようと20歳の大学生とデートをする事に。
そこで出会った男に気に入られ、高額なプレゼントをされていい気になる伊吹だったが、相手は年下だしまだ学生だしと罪悪感を抱く。
そんな中もう一人の20歳の大学生の男からもデートを申し込まれ、更に同業でただの同僚だと思っていた23歳の男からも言い寄られて?
ノンケの伊吹と伊吹を落とそうと奮闘する三人の若者が巻き起こすラブコメディ!
BLです。
性的表現有り。
伊吹視点のお話になります。
題名に※が付いてるお話は他の登場人物の視点になります。
表紙は伊吹です。
月曜9時の恋人 ――上司と部下のリモート勤務録
斎宮たまき/斎宮環
BL
「おはようございます」から始まる恋がある。
在宅勤務の上司と部下、画面越しに重なっていく生活音と沈黙。
誰もいない夜、切り忘れたマイクから漏れた吐息が、心の距離を壊していく。
社会的距離が恋の導火線になる――
静かな温度で燃える、現代オフィスBLの新形。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる