12 / 18
第12話
しおりを挟む
肩が痛い。 そう思って目を開けると、見開いた紅目と視線がぶつかり、驚くと紅い目が跳ねるように遠のいていく。
背中の上ではなく、ベッドに転がされていることに気がつき、喉の渇きに気持ち悪さを感じる。
「……あ、えと……」
「悪い。 起きなかったから心配で……覗き込んだ」
「あ、いえ、おはようございます」
「おはよう」
食べ物の匂い。 見回すと、窓がない以上には特徴のない部屋で、机の上に大量の料理が置かれていた。
「あれを食べればいい」
「すみません、用意させて……」
「あれなら足りるか?」
「……すみません、食べきれそうにないです」
「多かったか」
じっと見つめられて、気まずさを覚えながら、期待されているようだったので椅子に座って……フォークもスプーンもないことに気がつく。
「あの、フォークとか、スプーンとか……」
「……あ、忘れていた。 そうだな。 ちょっと待ってくれ。 確か、以前に売りつけられて……っと、あった。
他に足りないものはないか?」
「……お水があれば……助かります」
「ああ、待っていてくれ」
急いで別の部屋に取りに行き、コップと共にスプーンとフォークが置かれる。
長く見つめられながら食べるのは気まずいけれど、僕もアレンさんが血を飲むのが物珍しく見つめていたので、何かを言うことが出来ず、コップに手を伸ばして口につける。
空いたお腹に入っていく感覚が少し気持ち悪く、長く飲まず食わずでいすぎたらしい。
興味がそんなにあるのか、じっと見つめられながら、スープに手を伸ばして、出来る限り行儀よく食べる。
「汁っぽいのが好きなのか?」
「いえ、ちょっと食べていなかったので、いきなり色々入れたら、気持ち悪くなるんです」
「なるほど」
パン、お肉、お魚、と食べる。 アレンさんはじっと僕を見つめる。
「あの、どうかしましたか?」
耐えきれずに尋ねると、アレンさんは小さく謝ってから理由を話す。
「美味いか?」
「え、あ……はい。 とても」
とても……ではないけれど、好きな人に見つめられながら食べるご飯の味が分かるほど図太くはない。
多分、ちょっとしょっぱい。
珍しく笑ったアレンさんを見て、なんとなく口角が上がってしまう。
いつもは……とは言っても、吸血鬼としての彼を見たのは少しで、ほとんどは図書館でゆっくりと過ごしていただけだけど、あまり笑う人ではない。
嬉しくなって、ニコニコとしてみれば、彼は目を逸らしてご飯を勧めてくる。 変な顔をしてしまっただろうか。
行儀よく、綺麗に、と気を張りながら食べるけれど、量が多すぎて食べきれない。 どうしよう。
「食べきれないなら捨てるからいい」
「もったいないですし……」
「人は無理すると苦しんで死ぬんだろ。 生きるための行為で苦しむ必要はない」
日持ちしなさそうなものから順に出来る限りたくさん食べて、後にでも食べることにする。
「そういえば、今は……」
「日が出ている時間だ」
「朝ですか? 昼ですか?」
「さっき明けたところだから、朝だな」
じゃあ、もうアレンさんも寝るのだろうか。棺桶とかだろうかと思っていると、彼は眠たそうにしながらクローゼットから布を引っ張り出してそれに包まってベッドに転がる。
「棺桶じゃないんですね」
「家の中に入られたらすぐにバレるだろ、そんなの。 ……家の中は好きに使ってくれていい。 悪い寝る」
それはそうである。 ……それにしても、あまりに活動時間が違いすぎていて、あまり話すことも出来ない。 おそらく彼の家だろうけど、土地が分からないのは少し不安だ。 けれど、起こすのは忍びないので仕方なく黙る。
……部屋の掃除でもしておこう。 暇だし、しばらく空けていたからか埃が溜まっている。
起きないように別の部屋から音を立てないように埃を集めて捨てていく。
「褒められたりしますでしょうか」
頭を撫でられる想像をしてみるけれど、申し訳なさそうに頭を下げるだろうな、と小さく笑う。 それも彼らしいので嫌ではない。
そんなことを思っていたらそう広くもない掃除はすぐに終わってしまい、仕方なく元の部屋に戻ってアレンさんが包まっている布を見る。
一人だと暇だ。この前まで文字を読めなかったので当然だけど、本もないので暇を潰せない。
背中の上ではなく、ベッドに転がされていることに気がつき、喉の渇きに気持ち悪さを感じる。
「……あ、えと……」
「悪い。 起きなかったから心配で……覗き込んだ」
「あ、いえ、おはようございます」
「おはよう」
食べ物の匂い。 見回すと、窓がない以上には特徴のない部屋で、机の上に大量の料理が置かれていた。
「あれを食べればいい」
「すみません、用意させて……」
「あれなら足りるか?」
「……すみません、食べきれそうにないです」
「多かったか」
じっと見つめられて、気まずさを覚えながら、期待されているようだったので椅子に座って……フォークもスプーンもないことに気がつく。
「あの、フォークとか、スプーンとか……」
「……あ、忘れていた。 そうだな。 ちょっと待ってくれ。 確か、以前に売りつけられて……っと、あった。
他に足りないものはないか?」
「……お水があれば……助かります」
「ああ、待っていてくれ」
急いで別の部屋に取りに行き、コップと共にスプーンとフォークが置かれる。
長く見つめられながら食べるのは気まずいけれど、僕もアレンさんが血を飲むのが物珍しく見つめていたので、何かを言うことが出来ず、コップに手を伸ばして口につける。
空いたお腹に入っていく感覚が少し気持ち悪く、長く飲まず食わずでいすぎたらしい。
興味がそんなにあるのか、じっと見つめられながら、スープに手を伸ばして、出来る限り行儀よく食べる。
「汁っぽいのが好きなのか?」
「いえ、ちょっと食べていなかったので、いきなり色々入れたら、気持ち悪くなるんです」
「なるほど」
パン、お肉、お魚、と食べる。 アレンさんはじっと僕を見つめる。
「あの、どうかしましたか?」
耐えきれずに尋ねると、アレンさんは小さく謝ってから理由を話す。
「美味いか?」
「え、あ……はい。 とても」
とても……ではないけれど、好きな人に見つめられながら食べるご飯の味が分かるほど図太くはない。
多分、ちょっとしょっぱい。
珍しく笑ったアレンさんを見て、なんとなく口角が上がってしまう。
いつもは……とは言っても、吸血鬼としての彼を見たのは少しで、ほとんどは図書館でゆっくりと過ごしていただけだけど、あまり笑う人ではない。
嬉しくなって、ニコニコとしてみれば、彼は目を逸らしてご飯を勧めてくる。 変な顔をしてしまっただろうか。
行儀よく、綺麗に、と気を張りながら食べるけれど、量が多すぎて食べきれない。 どうしよう。
「食べきれないなら捨てるからいい」
「もったいないですし……」
「人は無理すると苦しんで死ぬんだろ。 生きるための行為で苦しむ必要はない」
日持ちしなさそうなものから順に出来る限りたくさん食べて、後にでも食べることにする。
「そういえば、今は……」
「日が出ている時間だ」
「朝ですか? 昼ですか?」
「さっき明けたところだから、朝だな」
じゃあ、もうアレンさんも寝るのだろうか。棺桶とかだろうかと思っていると、彼は眠たそうにしながらクローゼットから布を引っ張り出してそれに包まってベッドに転がる。
「棺桶じゃないんですね」
「家の中に入られたらすぐにバレるだろ、そんなの。 ……家の中は好きに使ってくれていい。 悪い寝る」
それはそうである。 ……それにしても、あまりに活動時間が違いすぎていて、あまり話すことも出来ない。 おそらく彼の家だろうけど、土地が分からないのは少し不安だ。 けれど、起こすのは忍びないので仕方なく黙る。
……部屋の掃除でもしておこう。 暇だし、しばらく空けていたからか埃が溜まっている。
起きないように別の部屋から音を立てないように埃を集めて捨てていく。
「褒められたりしますでしょうか」
頭を撫でられる想像をしてみるけれど、申し訳なさそうに頭を下げるだろうな、と小さく笑う。 それも彼らしいので嫌ではない。
そんなことを思っていたらそう広くもない掃除はすぐに終わってしまい、仕方なく元の部屋に戻ってアレンさんが包まっている布を見る。
一人だと暇だ。この前まで文字を読めなかったので当然だけど、本もないので暇を潰せない。
0
あなたにおすすめの小説
【完結/番外追加】サリシャの光 〜憧れの先へ〜
ねるねわかば
恋愛
彼女は進む。過去に囚われた者たちを残して──
大商会の娘サーシャ。
子どもの頃から家業に関わる彼女は、従妹のメリンダと共に商会の看板娘として注目を集めていた。
華々しい活躍の裏で、着実に努力を重ねて夢へと向かうサーシャ。しかし時には心ないことを言う者もいた。
そんな彼女が初めて抱いた淡い恋。
けれどその想いは、メリンダの涙と少年の軽率な一言であっさり踏みにじられてしまう。
サーシャはメリンダたちとは距離をおき、商会の仕事からも離れる。
新たな場所で任される仕事、そして新たな出会い。どこにあっても、彼女が夢を諦めることはない。
一方、光に囚われた者たちは後悔と執着を募らせていき──
夢を諦めない少女が、もがきながら光を紡いでいく軌跡。
※前作「ルースの祈り」と同じ世界観で登場人物も一部かぶりますが、単体でお読みいただけます。
※作中の仕事や制作物、小物の知識などは全てフィクションです。史実や事実に基づいていないことをご理解ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
離した手の温もり
橘 凛子
恋愛
3年前、未来を誓った君を置いて、私は夢を追いかけた。キャリアを優先した私に、君と会う資格なんてないのかもしれない。それでも、あの日の選択をずっと後悔している。そして今、私はあの場所へ帰ってきた。もう一度、君に会いたい。ただ、ごめんなさいと伝えたい。それだけでいい。それ以上の願いは、もう抱けないから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる