神龍殺しの転生者。、生贄の少女のために龍を殺したら勝手に救世主にされた件〜地位も名誉もハーレムもいらないんだが〜

ウサギ様

文字の大きさ
3 / 42
神龍殺しは少女のために

神龍殺しは少女のために③

しおりを挟む
 俺はあまりの驚きに息を詰まらせながら、手に持っていた袋を落とす。雑に袋に詰めてしばらく経っていたからか、鳥の声は聞こえなかった。

「えっと、それは……」
「……一飯の恩だ。食え」

 袋を突き出すと、ニエは驚いたような表情を浮かべる。

「え、あ……こ、こんなにたくさんは、いただけません。鳥肉なんて貴重ですし……お魚も……えっと……あ、カバネさんのお料理に使いますね。お腹空いていますよね」
「……まぁ」

 ニエはパタパタと動いて、鳥の羽を毟っていく。手慣れた様子を見て俺も真似をするが……どうにも不慣れだし、生々しくてやりにくい。

 子供に手際で負けていることを少し気にしてしまうが、ニエの方は気にしてはいないらしい。

「こんなにたくさん捕まえるのって凄いです」
「……大きくはなっているが、巣立ち前だったからな」

 見た目はもう飛べそうだが、まだ巣立ってはいなかった。
 俺が一羽をむしり終える前にニエが他の鳥をむしり終えて、部位ごとに切り分けていく。

 血が出るグロテスクさに目を背けているうちに、今日食べる分だけ切り分けられたのか、野草と豆一緒に煮ていく。
 ……その残った豆も入れてしまうのか。

 料理を終えたらしいニエはトンと俺の前に皿を置く。

「お待たせしました」
「……お前の分は?」
「い、いえ、私は大丈夫ですよ。夕飯はもう食べたので……」
「食べるものなかっただろ。お前のために取ってきたんだ、食え」

 ニエは困惑した様子で俺に目を向ける。

「……あ、あの……その、なんで、ですか?」
「腹が減ってるだろ」
「いや、まぁその……そうですけど、過分と、思いまして、理由が知りたいと言いますか……」

 ……おさない子供が痩せているのが嫌だった? ……一飯の恩?
 どうにも、しっかりとこない。少女の顔を見て、火のついていない松明を見て、俺の前に置かれた豆の入った煮込み料理を見る。

「……ああ。好きになったからだ」

 その高潔な精神が。腹も空いているだろうに、それでも人のために動こうとするのが、幼い身体では夜は怖いだろうに、それでも人を助けに行こうとするのが。
 やせぎすな幼子ではあるが、俺には物語の高潔な騎士のように……あるいはそれよりも美しいものであると感じたのだ。

 俺のその想いを吐露しようとしたら、ニエは明らかに目をキョロキョロと動かして、手足をアタフタとバタつかせる。

「す、すすす、好きっ!?」
「……どうした?」
「そ、その……な、なんと言いますか」

 ニエの顔はみるみる内に真っ赤に染まっていき、パッと両腕で顔を隠す。

「お、男の人に……好きと言われたのは初めてでして……」

 ……いや、そんなつもりで言ったわけじゃない。
 ニエの顔はなおも赤くなり、チラリと覗いた耳まで真っ赤になっていた。


 ◇◆◇◆◇◆◇

「……本当に赤いな」

 随分と赤い鱗だ。
 生物の色には意味がある。多くの生物は環境に紛れる保護色を採用しており、人間の目には目立って見える虎やシマウマの縞模様も、多くの動物の目には赤色が見えないために保護色として機能している。

 あるいは毒を持つ蜂や蛇がカラフルな色をしているのは、己の危険さを知らしめることで外敵が自分から逃げるようにするためだ。

 ……だとすると、この龍の赤はなんだ。

 俺は全力で後ろに走って逃げながら考える。

 多くの動物は赤色が見えない。それはこの世界に置いても同じことだろう。植物が似通っているので、それに対応する動物も似通っているはずだ。

 赤色が見えない生物にとって龍の赤色が目立たないわけではないだろうから保護色ではない。

 ……だとするとこの龍の赤色は、赤色が見える生物に対してのものだ。その生物は何か……決まっている。

「人間に逃げてほしいのか。お前は」

 あまりに大きすぎる巨体は森の中では不利に働く。森に逃げ込んだ俺を見て、龍は木々をなぎ倒しながら進むが、木々が障害になっているのは間違いない。

 飛ぶための翼がある生き物だというのに、木々をなぎ倒して走るこの異常な頑強さと膂力……間違いなく、元の世界ではありえない異常。

 この世界特有の……【魔力】というルール。

 スリングショットを構えながら、龍を注視すると、龍が吠える。爆発に似た音に全身が押される。先に濡れた布を詰めていた耳にも痛みが走るが、事前の準備のおかげで鼓膜が割れるほどではなかった。

 如何に巨大な生き物でもありえないほどの轟音。この世界の人間は理解していないらしいが……この声は通常の生物ではありえない【魔法】だ。

 気が狂いそうな恐怖の中、口元を無理矢理ニンマリと笑わせる。笑え、震える足を動かすために。

「ここまで、完全に計画通りだ」

 スリングショットでそこらの石を飛ばしてこちらに意識を向けさせる。

「来い、来い、来いよ! 龍! 世界最強の生き物!」

 もしも龍が完全に動きを止めて殺されることに協力したとしても、かなりの時間がかかるだろう。抵抗する今だったらどんな攻撃をしようと傷一つ付けられない事は分かっている。
 傷一つつけられてなかろうが……それでも、殺す手段はある。

 この世界はどうか定かではないが……俺の育った地球という世界においては【弱肉強食】などというルールは存在しなかった。

 強ければ勝てるなどと、そんな甘ったれた楽な世界ではなかった。

 地球はあくまでも【適者生存】であり、強さなど大した意味を持っていない。
 大きく、硬く、尚且つ強く、その上に空まで飛ぶ。
 正しく最強。……だから、勝ち目はある。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

処理中です...