神龍殺しの転生者。、生贄の少女のために龍を殺したら勝手に救世主にされた件〜地位も名誉もハーレムもいらないんだが〜

ウサギ様

文字の大きさ
15 / 42
誰かの祈りに応えるものよ

誰かの祈りに応えるものよ④

しおりを挟む
 ヘタれた。
 自分の欲に従うことすら出来ず、かと言って高い規範意識から我慢したものでもない。
 魅力的に感じすぎ、あまりの緊張で何も出来なかっただけのことである。

 一緒のベッドで寝たが、それもお互いベッドの端に寄っていたため何もあるわけでなく終わった。
 もはや後悔しかない。

 気持ちよさそうに寝ているユユリラを他所に、俺とニエは二人で村人に別れの挨拶をしにいく。
 井戸の前でペコペコと頭を下げながら挨拶していくニエを遠くで見ながら、面白くないと思うが……仕方ない。

 最後まで村人達に邪険にされているのは見ていて心苦しい。……ニエが優しいからと言って傷つかないなんてわけではないだろう。

 家に戻るとユユリラがバタバタと身体を動かしていた。

「んー、よく寝たッス。さあ、行くッスよー」
「……ああ」
「……はい」

 俺とニエのグッタリと落ち込んだ様子に、ユユリラは不思議そうに首を傾げる。

「あれ、まだ怪我の具合が良くないッスか?」
「……まぁ、一日二日ではな。少しマシにはなったが。武器もないし、戦えないから獣が出たら任せるぞ」
「了解ッス。嬢ちゃんの方はどうッス?」
「ただの寝不足なので、お気になさらず」

 幸先の悪い状況だと思いながら、龍の死体の方を一瞥する。

「あ、近くの街に着いたらアレの回収の依頼を組合に出すつもりだけどいいッスか?」
「死体の? ああ、何か使い道でもあるのか」

 独力だと退かすことも解体することも出来ないし、多少村から離れた儀式のための場所にあるので放っておくつもりだったが、使い道があるならそれでいいか。
 腐らせて疫病が発生してもいい気分というわけでもないしな。

「まぁ、何かあるかもッスし、ないかもッス。まぁ使い道がなくても好事家が高い金を落としてくれると思うッスよ」
「……金があるに越したことはないな」

 改めて出発しようとすると、道がなくなっていた。

「……は?」

 と、ユユリラが呆気に取られる。
 龍が燃やしたせいで木の根っこによる土を絡めて保持する力がなくなっているところに大雨が降ったことで大規模な土砂崩れが発生したらしい。

「……通るのは無理だな。崩れた泥の上を歩くのは危険すぎる」
「マジッスか」

 二次災害……いや、三次災害か。
 こうやって改めて見返してみると、とんでもない規模の破壊だ。これが一匹の生物が引き起こした事態だというのは、俺の知っている常識から大きく外れている。

 ……俺、よく生き延びたな。大半の時間はただ逃げ回っていただけだが、同じことをもう一度やれと言われても絶対に断る。殺さないとニエの身が危ない場合がまた来ない限りは、もう二度と龍とは戦わない。

 ユユリラに目を向けると困ったように頰を掻いていた。

「別の道はないのか?」
「んー、ないことはないんスけど、遠回りになるッスし、今日中に街に着くのは無理そうなんで……。龍の死骸の回収も街で頼みたかったんスけど、遅くなると困るッスし……やっぱりここを突っ切った方が……」
「……ニエには歩かせられないな」

 面倒でも、体力の劣るニエでは歩けないような道だし、最悪再び土砂崩れが起きて巻き込まれる可能性もある。

「どうしても早く龍の死骸を解体する必要があるのか?」
「まぁそうッスね」
「……なら、一度別れるか? 俺とニエは別の道から街に向かうから、お前はこの道を突っ切る」
「んー、でも逃げられたら困るし……いや、どうかな……」
「子供を連れている怪我人が逃げられるわけがないだろ。そもそもこっちは飯を食うのにも困る状況だ。むしろはぐれることになったらこっちが困る」

 ユユリラはポリポリと頰を掻いてから頷く。

「んー、まぁ確かに。じゃあ、あっちの道を歩いたら一日二日で着くッスから、後で合流ッスね」
「ああ、合流するのはどこにする?」
「それはそっちの街にある【海鳥の足運び】って店でお願いッス」
「了解。ああ、食料と金をくれ」
「しゃーないッスね。逃げたりしたら酷いッスよ?」

 俺は頷いてからポケットから取り出した龍の鱗を渡す。

「それ、どれぐらい金になるのかは知らないが、逃げたら龍を殺した分を取りっぱぐれるだろ」
「まぁ……そっすね」
「お前の望みはなんだ? 俺はニエと二人で暮らせたらそれでいい」

 ユユリラは納得したのか、あるいは他に手がないと諦めたのか、小さく頷く。

「じゃあまた後日、集合ってことで」
「気を付けろよ?」

 ユユリラと一度別れてから別の道に向かう。
 村から伸びる木が生えていないだけの乱雑な道を前にして、ニエが俺の持っている荷物を引く。

「どうかしたのか?」
「あ、えっと、カバネさんは怪我をしてるので持とうかと……」
「大丈夫だ。というか、これはかなり重いぞ。保存食じゃなくて生だしな」
「重いなら尚更……」

 まぁ、怪我のせいでしんどいのは確かだ。一応は道のため普段の狩りのときよりかは歩きやすいが、一歩歩くごとによく分からない場所の骨折に響き鈍い痛みが走る。
 そうでなくとも全身は傷だらけでまだ塞がり切っていない裂傷や火傷が擦れて傷む。

 ……が、好きな子の前では格好つけたい。昨日、目の前で情けなく泣いたばかりではあるが。

「……それより、本当によかったのか?」

 村人達に疎まれて、生贄にまでされていたというのにわざわざ挨拶をして……最後の最後まで辛くなかったのだろうか。

「何がですか?」
「……いや、何でもない」

 不思議そうに首を傾げるニエを見て、その心の強さに見惚れる。
 優しい優しいとずっと思ってきていたが、その優しさは心の強さに裏付けられたものだったのかもしれない。

「……ニエはかっこいいな」
「えっ……そ、そうでしょうか」
「少し憧れる」
「それはその……買いかぶりです。そ、それより、荷物持ちますっ。私は元気ですから」

 ニエは耳を真っ赤にしながら、ぐいぐいと荷物を引っ張る。

「ニエ、まず先に言うと俺は格好付けの見栄っ張りだ」
「そんなことはないと思いますが……」
「いや、ある。それでな、女性に荷物を持たせる男は格好いいとは思えないから、荷物を持ちたい」

 ニエは俺の方を見て小さな手足を大きく動かして、俺の前に出る。

「私はカバネさんの生贄です。カバネさんがそう言いました。生贄が主人に荷物を持たせるのはおかしくないでしょうか」
「……知り合いに生贄いないから分からないな」
「生贄が生贄について言うんだから間違いないです」

 それはどうだろうか。まぁそこまで言うなら一つぐらいは大丈夫か。一番軽い荷物をニエに渡すと、満足そうに肯く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

処理中です...