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二十八話 お妃様に乾杯を
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今日のエリーズはヴィオルと共に、隣国バレスフィーアの建国記念日を祝う晩餐会に出席していた。会場である大広間には長いテーブルがいくつも用意され、その上には各国の要人をもてなすための料理が所せましと並べられている。給仕係に加えてバレスフィーアの貴族たちがテーブルの間を縫って動き回り、客人と杯を傾けて会話に華を咲かせていた。それがこの国における客人のもてなし方だという。
バレスフィーアの王太子エリオットがヴィオルとエリーズの元にやって来た。彼とヴィオルは馴染みの仲だ。以前に開かれたエリーズのお披露目の夜会にもエリオットはバレスフィーアの代表として出席し、新王妃の誕生を祝福してくれた。
「ヴィオル、今日は来てくれてありがとう。王妃殿下もお元気そうで何よりです」
「こちらこそ招待に感謝するよ。バレスフィーアに栄光あれ」
「またお会いできて嬉しいです、エリオット様」
三人で酒杯を持って乾杯の仕草をする。エリオットとヴィオルは酒杯に口をつけて中身を飲んだ。
「相変わらず仲が良いみたいだね。最近、わたしの周りではヴィオルのことを『紫水晶の君』でなくて『愛妻王』なんて呼ぶ人間が増えているよ」
「そちらの方が何百倍も名誉だ。君からもっと広めておいて」
「ははは。お二人の傍にいるだけで火傷してしまいそうだ」
エリオットは白い歯を見せて笑い、エリーズの方に顔を向けた。
「王妃殿下、初めてのバレスフィーアはいかがですか?」
「雰囲気が明るくて皆さま親切な方ばかりで、とても素晴らしい国だと思います」
エリーズは笑顔で答えた。おべっかではなく本心だ。アルクレイドとバレスフィーアは、現国王ヴィオルと次期国王エリオットの間柄を反映したかのように良好な関係を築いている。気さくな者が多い国のようで、エリーズがバレスフィーアに到着してから晩餐会が始まるまで世話をしてくれた使用人も丁寧でありながら話しやすい人物だった。
「お褒め頂き光栄です。どうぞ心ゆくまでお楽しみください」
それでは、と会釈し、エリオットは酒杯片手に別の客人のもとへ向かう。彼は父王に次ぐバレスフィーアの顔だ。ヴィオルたちばかりに構ってはいられない。
宴が進むに連れ、場の人々には程よく酒がまわり出したようだ。招待客は相応の礼儀が身に染み込んだ貴族ばかりのため粗々をする者はいないが、あちこちで聞こえる話し声は始めの頃より大きくなってきている。
エリーズはテーブルの上の酒杯ではなくグラスに手を伸ばし、葡萄のジュースを飲み干した。すかさず給仕係がエリーズの横に来てお代わりを注ぐ。エリーズが礼を言うと、給仕は笑みを浮かべて立ち去った。
バレスフィーアは葡萄の栽培が盛んだ。ワインを作る工場がいくつもあり、今日の晩餐会でも最高級の品が提供されている。
しかしながらエリーズは酒の類がどうしても受け付けられず、それには口をつけていない。王妃となって間もない頃に何度か試したものの、どれも匂いや味が受け付けず舐めるだけが精いっぱいなのだ。ヴィオルが無理をする必要はないと言ってくれたので、晩餐会ではいつも酒以外のものを飲んでいる。バレスフィーア自慢の葡萄を絞って作られたジュースは、濃厚だが喉越しがよく毎日でも飲みたいほどだった。
「ご機嫌いかがですかな、アルクレイド国王陛下、王妃様」
明るい声を響かせながら、小太りの男性がエリーズたちのもとへ近づいてきた。バレスフィーアの宰相、バジルだ。程ほどに酔っているのか顔が赤くなっている。自ら客人に酒を注ぐ役目を引き受けているようで、酒杯の他にワイン瓶を手にしていた。
バジルはエリーズの前にある、ジュースで満たされたグラスに目を留めた。
「王妃様、我が国のワインはお気に召しませんかな。今日のために用意された逸品ばかりでございますよ」
にこにこと笑いながらバジルがワイン瓶を示す。エリーズもアルクレイドの代表という立場上、本来なら好意を受け入れるべきだが――
「申し訳ない、宰相殿。我が王妃はどうしても酒が飲めない体なんだ。体に障るといけない」
すかさずヴィオルが割って入る。それを聞いたバジルはぺこぺこと頭を下げた。ほろ酔い状態とはいえ、アルクレイド国王の不興を買えばどのようになるかは分かっているようだ。
「いやはや、それは失礼致しました」
「代わりに僕が頂こう」
ヴィオルが空の酒杯をバジルに差し出すと、宰相はそこに波々とワインを注いだ。ヴィオルはそれを躊躇いなくあおる。
「ありがとう。バレスフィーアに栄光あれ」
「宰相様、ジュースもとても美味しいです。今まで飲んだ中で一番ですわ」
ヴィオルの飲みっぷりとエリーズの褒め言葉にバジルは再び上機嫌な様子に戻り、やや千鳥足気味に別のテーブルへと向かう。エリーズたちの席へ来るバレスフィーア貴族の足が途絶えたところで、エリーズは小さくため息をついて俯いた。
またヴィオルに助けられてしまった。酒の味が苦手だなどと子供のようなことを言って、ちっとも王妃らしくない――
「エリーズ、気にしなくていいよ。飲めるから偉いなんてことは全くないんだから」
エリーズの表情が曇っているのにいち早く気づき、ヴィオルが優しく声をかける。
エリーズは顔を上げ、彼の顔を見た。晩餐会が始まってそれなりに経ちヴィオルもかなりの量のワインを飲んでいるはずだが、顔色も話し方も全く変化がない。
「ヴィオル、全然酔っていないように見えるわ」
「そうだね。僕はどうも酔いにくい体らしくて」
酒の回りやすさには個人差があるという。今のところ舐めるだけが限界のエリーズに、自分が酒に強いか弱いかを知る手段はない。
「……でも、本音を言うとそろそろ勘弁して欲しいんだけどな」
「どうしたの? 気分が悪いの?」
いや大丈夫だよ、と言いつつもヴィオルは拗ねたような表情を浮かべた。
「酒臭い男なんて嫌だろう? でも今夜は寝る前のキスを我慢しないといけないと思うと耐えられそうにないんだ」
「ふふっ」
エリーズは思わず吹き出した。可愛らしいことを言う夫の膝に、そんなの気にしないわ、の意味をこめて手を伸ばす。テーブルには床ぎりぎりのところまでクロスがかかっているので、周りからは見えない。
膝に置かれた妻の手を、ヴィオルは下から掬い取るようにして握った。
「……君に酔いそうだ。いや、もう酔ってる」
新たなバレスフィーア貴族に声をかけられるまで、二人はこっそりテーブルの下で手を繋いでいた。
***
それから少し経ったとある日の晩。食事と湯浴みを終えてもまだ寝室へ行くには早い時間だったので、エリーズは私室で本を読んでいた。
部屋の入り口の扉が静かにノックされる。エリーズが返事をすると、ひょこっとヴィオルが顔を出した。
「まあヴィオル、今日のお仕事はもういいの?」
エリーズは本を置き、すでに夜用のガウンに着替えているヴィオルの元に駆け寄った。彼の早い戻りは予想外で驚いたが、同時にとても嬉しいものだ。
「頑張って終わらせてきた。実はちょっといいものが手に入ってね。君と一緒に楽しみたくて」
「いいもの?」
「すぐに使用人が持ってきてくれるよ」
二人並んで部屋の長椅子に腰かけて待っていると、程なくして使用人がやって来た。長椅子の手間に置かれたテーブルの上にワイン瓶と二人分のグラス、チーズやビスケット、切った果物が盛られた皿を静かにかつ手早く並べ、夫婦の時間を邪魔するまいとさっと一礼して部屋を立ち去る。
ヴィオルが瓶を手にとった。瓶には丸い果物の絵が描かれている。
「それはお酒?」
「そう。でもワインや麦酒なんかとは少し違うんだ。砂糖や果物を多く使ってあるから甘みが強い。これならエリーズでも飲めるんじゃないかと思って」
挑戦してみない?と聞かれエリーズは頷いた。今まで口にした酒は苦みが強く感じられるものばかりだったので、甘いものならヴィオルの言う通り飲めるかもしれない。
ヴィオル手ずから瓶を開け、グラスに中身を注いでエリーズに渡してくれた。赤っぽい色をしたそれを、エリーズはゆっくり口に含む。
「美味しい……」
思わず漏れた声を聞き、ヴィオルは顔を輝かせた。
「本当?」
「ええ。あんまりお酒の味が強くないから飲みやすいわ」
ヴィオルも自分のグラスに同じ酒を注いで少し舌の上に乗せ、「悪くないね」と呟いた。
「それじゃあ改めて、僕のダイヤモンドに乾杯」
二人で同時にグラスに口をつける。大人になれたような気がするのが嬉しくて、エリーズは笑みをこぼした。
「こういうので慣らしていけば、いつかはワインとかも美味しく思えるようになるかもね」
「そうなれたらいいわ。ヴィオルと一緒にお酒が飲めるの、すごく楽しいもの」
お互いのグラスに酒を注ぎ合いチーズや果物をつまんで、夫婦二人だけの時間は穏やかに過ぎていく。
バレスフィーアの王太子エリオットがヴィオルとエリーズの元にやって来た。彼とヴィオルは馴染みの仲だ。以前に開かれたエリーズのお披露目の夜会にもエリオットはバレスフィーアの代表として出席し、新王妃の誕生を祝福してくれた。
「ヴィオル、今日は来てくれてありがとう。王妃殿下もお元気そうで何よりです」
「こちらこそ招待に感謝するよ。バレスフィーアに栄光あれ」
「またお会いできて嬉しいです、エリオット様」
三人で酒杯を持って乾杯の仕草をする。エリオットとヴィオルは酒杯に口をつけて中身を飲んだ。
「相変わらず仲が良いみたいだね。最近、わたしの周りではヴィオルのことを『紫水晶の君』でなくて『愛妻王』なんて呼ぶ人間が増えているよ」
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「ははは。お二人の傍にいるだけで火傷してしまいそうだ」
エリオットは白い歯を見せて笑い、エリーズの方に顔を向けた。
「王妃殿下、初めてのバレスフィーアはいかがですか?」
「雰囲気が明るくて皆さま親切な方ばかりで、とても素晴らしい国だと思います」
エリーズは笑顔で答えた。おべっかではなく本心だ。アルクレイドとバレスフィーアは、現国王ヴィオルと次期国王エリオットの間柄を反映したかのように良好な関係を築いている。気さくな者が多い国のようで、エリーズがバレスフィーアに到着してから晩餐会が始まるまで世話をしてくれた使用人も丁寧でありながら話しやすい人物だった。
「お褒め頂き光栄です。どうぞ心ゆくまでお楽しみください」
それでは、と会釈し、エリオットは酒杯片手に別の客人のもとへ向かう。彼は父王に次ぐバレスフィーアの顔だ。ヴィオルたちばかりに構ってはいられない。
宴が進むに連れ、場の人々には程よく酒がまわり出したようだ。招待客は相応の礼儀が身に染み込んだ貴族ばかりのため粗々をする者はいないが、あちこちで聞こえる話し声は始めの頃より大きくなってきている。
エリーズはテーブルの上の酒杯ではなくグラスに手を伸ばし、葡萄のジュースを飲み干した。すかさず給仕係がエリーズの横に来てお代わりを注ぐ。エリーズが礼を言うと、給仕は笑みを浮かべて立ち去った。
バレスフィーアは葡萄の栽培が盛んだ。ワインを作る工場がいくつもあり、今日の晩餐会でも最高級の品が提供されている。
しかしながらエリーズは酒の類がどうしても受け付けられず、それには口をつけていない。王妃となって間もない頃に何度か試したものの、どれも匂いや味が受け付けず舐めるだけが精いっぱいなのだ。ヴィオルが無理をする必要はないと言ってくれたので、晩餐会ではいつも酒以外のものを飲んでいる。バレスフィーア自慢の葡萄を絞って作られたジュースは、濃厚だが喉越しがよく毎日でも飲みたいほどだった。
「ご機嫌いかがですかな、アルクレイド国王陛下、王妃様」
明るい声を響かせながら、小太りの男性がエリーズたちのもとへ近づいてきた。バレスフィーアの宰相、バジルだ。程ほどに酔っているのか顔が赤くなっている。自ら客人に酒を注ぐ役目を引き受けているようで、酒杯の他にワイン瓶を手にしていた。
バジルはエリーズの前にある、ジュースで満たされたグラスに目を留めた。
「王妃様、我が国のワインはお気に召しませんかな。今日のために用意された逸品ばかりでございますよ」
にこにこと笑いながらバジルがワイン瓶を示す。エリーズもアルクレイドの代表という立場上、本来なら好意を受け入れるべきだが――
「申し訳ない、宰相殿。我が王妃はどうしても酒が飲めない体なんだ。体に障るといけない」
すかさずヴィオルが割って入る。それを聞いたバジルはぺこぺこと頭を下げた。ほろ酔い状態とはいえ、アルクレイド国王の不興を買えばどのようになるかは分かっているようだ。
「いやはや、それは失礼致しました」
「代わりに僕が頂こう」
ヴィオルが空の酒杯をバジルに差し出すと、宰相はそこに波々とワインを注いだ。ヴィオルはそれを躊躇いなくあおる。
「ありがとう。バレスフィーアに栄光あれ」
「宰相様、ジュースもとても美味しいです。今まで飲んだ中で一番ですわ」
ヴィオルの飲みっぷりとエリーズの褒め言葉にバジルは再び上機嫌な様子に戻り、やや千鳥足気味に別のテーブルへと向かう。エリーズたちの席へ来るバレスフィーア貴族の足が途絶えたところで、エリーズは小さくため息をついて俯いた。
またヴィオルに助けられてしまった。酒の味が苦手だなどと子供のようなことを言って、ちっとも王妃らしくない――
「エリーズ、気にしなくていいよ。飲めるから偉いなんてことは全くないんだから」
エリーズの表情が曇っているのにいち早く気づき、ヴィオルが優しく声をかける。
エリーズは顔を上げ、彼の顔を見た。晩餐会が始まってそれなりに経ちヴィオルもかなりの量のワインを飲んでいるはずだが、顔色も話し方も全く変化がない。
「ヴィオル、全然酔っていないように見えるわ」
「そうだね。僕はどうも酔いにくい体らしくて」
酒の回りやすさには個人差があるという。今のところ舐めるだけが限界のエリーズに、自分が酒に強いか弱いかを知る手段はない。
「……でも、本音を言うとそろそろ勘弁して欲しいんだけどな」
「どうしたの? 気分が悪いの?」
いや大丈夫だよ、と言いつつもヴィオルは拗ねたような表情を浮かべた。
「酒臭い男なんて嫌だろう? でも今夜は寝る前のキスを我慢しないといけないと思うと耐えられそうにないんだ」
「ふふっ」
エリーズは思わず吹き出した。可愛らしいことを言う夫の膝に、そんなの気にしないわ、の意味をこめて手を伸ばす。テーブルには床ぎりぎりのところまでクロスがかかっているので、周りからは見えない。
膝に置かれた妻の手を、ヴィオルは下から掬い取るようにして握った。
「……君に酔いそうだ。いや、もう酔ってる」
新たなバレスフィーア貴族に声をかけられるまで、二人はこっそりテーブルの下で手を繋いでいた。
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「それはお酒?」
「そう。でもワインや麦酒なんかとは少し違うんだ。砂糖や果物を多く使ってあるから甘みが強い。これならエリーズでも飲めるんじゃないかと思って」
挑戦してみない?と聞かれエリーズは頷いた。今まで口にした酒は苦みが強く感じられるものばかりだったので、甘いものならヴィオルの言う通り飲めるかもしれない。
ヴィオル手ずから瓶を開け、グラスに中身を注いでエリーズに渡してくれた。赤っぽい色をしたそれを、エリーズはゆっくり口に含む。
「美味しい……」
思わず漏れた声を聞き、ヴィオルは顔を輝かせた。
「本当?」
「ええ。あんまりお酒の味が強くないから飲みやすいわ」
ヴィオルも自分のグラスに同じ酒を注いで少し舌の上に乗せ、「悪くないね」と呟いた。
「それじゃあ改めて、僕のダイヤモンドに乾杯」
二人で同時にグラスに口をつける。大人になれたような気がするのが嬉しくて、エリーズは笑みをこぼした。
「こういうので慣らしていけば、いつかはワインとかも美味しく思えるようになるかもね」
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