恋なんて必要ないけれど

三木からの提案

6

「こういう時って助けてくれるもんじゃないのー？」

　ムッとした三木が腰に手を当ててこっちに来る。
　俺はその右足がやはり少し引き摺られているのを見てため息を吐いた。

「何で俺が？関係ないだろ？」

　面倒ごとに関わる気はない。
　それに俺が出て行って解決する訳でもないし、もし大事おおごとになったりして部活動バスケに支障が出たら困る。

「薄情者～」
「何とでも言え」

　関係ないのは事実。
　ヘッと薄く笑っていると、三木に左腕を掴まれた。

「……ねぇ、小嶋って私に興味ないよね？」
「は？」
「だから、付き合わない？私たち」

　三木が真剣な顔をしているのはわかる。
　だが、言われた言葉の意味がわからない。

「な、何言ってるの!?」

　言葉が出てこなかった俺より先に慌てたのは菊川。

「彼氏のフリだよ！『彼氏居る』って言えたら解決じゃん！それに小嶋なら面倒くさがって連絡とか束縛もないだろうし、お互い生活変わんないでしょ？」
「いや、でもね！」

　名案のようにキラキラした顔で話す三木の腕を菊川が掴んだ。

「小嶋だっていいよね？女の子に告られたり面倒なんでしょ？付き合ってることにすればそれがなくなる訳だし！」

　菊川と俺の間にあったことは知らないらしい三木はこっちに笑顔を向ける。
　眉を寄せている菊川。
　突拍子もない三木の提案に乗るメリットが思い浮かばない。

「フザけてるのか？」
「違う！あぁやってキクまで怖い目に遭わせたくないの！」

　キュッと唇を噛んだ三木の手が僅かに震えているのを見て、俺は深いため息を吐いた。