恋なんて必要ないけれど

水ノ瀬 あおい

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三木からの提案

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「駅まで一緒に行ってくれる?」

 無言で菊川を見ると、菊川は手を合わせて頭を下げる。

「三木に甘過ぎないか?」

 言いながら三木を見ると、さっきまでそこに居たのに姿がない。

「……ごめんなさい」

 辺りを見回した俺は三木の声がしてそっちを見た。
 三木は青いジャージの見知らぬ男に謝っているらしい。

「あ、彼氏が居るとか?」
「いえ……そうではないですけど」
「それなら付き合ってみない?俺を知ってもらってからダメか判断してよ!」

 断られたのに男は諦めないようで、明らかに三木が困っている。
 三木のこともよく知らないだろうに……とある意味感心していると、菊川がそっちに歩いていった。

「ミキ!集合!」
「ごめん。今、告白してんの。空気読んでくれる?」

 菊川は微笑んで声をかけたが、男は迷惑そうに眉を寄せる。それでも、

「すいません。もうミキがお断りしていたのでお話は終わったかと」

 頭二つ分は違う男に菊川は笑顔で一切引かない。

「は?何、お前」

 明らかに機嫌が悪くなった男を見て、三木は菊川の前に立った。

「Je suis désolé, mais Je ne suis pas intéressé.(ごめんなさい。あなたに興味ないんで)」
「え?」
「Adieu !(もう二度と……さようなら)」

 とびきりの笑顔。
 だが、その声は少し離れている俺でもゾクッとするほど、とてつもなく冷え切っていた。
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