恋なんて必要ないけれど

水ノ瀬 あおい

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やっぱり

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 本当に何一つ変わらない生活にホッとして既に気にもしなくなっていたのに……

「おいっ!セイっっ!!」

 凄い勢いでトモが走ってきてせいで、机が思いっきりズレる。

「あのなぁ……」
「アリスちゃんと付き合ってるってマジっ!?」

 呆れて文句を言おうとした俺の言葉に勢いよくカブせられて、周りの目も一気にこっちへ向いた。
 急に静かになった教室。
 注目され過ぎて息さえし辛い気がする。
 立ち上がって無言でトモの胸元を掴むと、俺はそのまま耐えきれずに教室を出た。

「え?ちょっ、昼飯は?」
「なら戻って食べろよ」

 ある程度人も少なくなった階段まできて手を離す。
 しゃがみ込んで開いた膝の間に上半身を入れて項垂れた。
 面倒くさい。
 そればかりが頭を占めていて他の考えなんて浮かばない。

「なぁ、セイ……昨日、剣道部の奴がアリスちゃんに告って『彼氏が居るから』って断られたらしくて大騒ぎなんだよ!」

 平和だったのはまだ誰も告ってはいなかったからだと知ってため息しか出なかった。

「そいつが『それって男バスの?』って聞いても微笑んだだけらしいけどさぁ……お前しか居ないじゃん?」

 明言を避けたことで騒ぎになっているのか、俺だと既に突き止められて騒がれているのか。
 どっちにしても鬱陶しい。
 関わりたくもない。

「でも、彼女ができたってのはさ!めでたいじゃん!」

 隣にしゃがんだトモに言われても顔なんて上げられなかった。
 めでたい?
 何が?何で?
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