わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

戴冠式

8

　承認、誓い、聖別、叙位、王座。
　戴冠式が進んでいき、拍手や熱気がどんどん高まっていく。
　王冠を乗せて王座に座ったリューラはもう俺の後ろを付いて歩いてすぐに泣いたあの頃の面影はない。
　しっかり前を向くその堂々とした姿は先代が亡くなって意識して過ごしてきたこの二年の間に既に身に付き始めているらしい。
　その頼もしい姿に舌打ちさえ出なかった。
　眠いし、疲れたし、すぐにでも帰りたかった俺でも自然と姿勢を正して拍手をしている。
　カッコよくて、キラキラ輝いているように見えるリューラ。
　何となく目が合った気がするが、こんな大勢の中だし気のせいだろう。

「シルベルタ王国第十七代王、誕生!!」

　どこかから声が上がってラッパの音が響いた。
　すぐに祝砲も上がって外からの声援もこの聖堂まで届く。
　今日どれだけの人間がリューラのために集まっているのだろう。
　どれだけの期待がリューラに掛けられているのだろう。
　それだけの大きな期待を背負うリューラはこれからどうなっていくのだろう。
　これまで宣言されていただけの間もかなりの重責を担ってきたようだが、今日からは正式な王だ。
　まだ十八なのに……あいつはもう国のために生きて自由はない。
　ここに居る各国の王たちより圧倒的に若く、下手したら孫と言っていいくらい歳も離れている国もあるのに、それと対等に渡り合っていかなければいけないから。
　鳴り止まない拍手が少し怖かった。