わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

多忙の中で

7

「うん、シーバスから聞いてない？」
「は？父さん？」

　覗き込まれてさすがに近過ぎて背を伸ばす。

「父さんと先王が恋バナしてるとか想像できねぇけど？」

　いつも先を歩く先王の少し後ろで微笑んでいた父さん。
　仲はよかったがそういう個人的な話もしていたとは思えない。

「そうじゃないよ」

　リューラはペラペラと日記をめくる。

【シーバスが結婚する。「私のことなんて忘れろ」なんて……できるはずがない。それなら王になんてなりたくない。】

　示されたページには濡れたのかポツポツと滲んだ文字。
　言葉にならなくて顔を上げると、リューラはギュッと俺を抱き締めてきた。

「シーバスが結婚して父さんは母さんとの結婚を受け入れたらしいよ」
「え、でも……」

　聞いたこともなかった話に戸惑う。

「母さんの言い方だと付き合ってたんじゃないかな？」
「は？」

　父さんが先王と？
　頭が追いつかないが、日記には父さんが結婚してしまうことを耐えられない様子が他にも書かれていた。

「いや、でも……」

　クラッとする頭を押さえると、

「シーバスが身を引いて先に身を固めて、父さんは傷心のまま母さんと結婚して王になった」

　リューラは俺の肩を支えてくる。

「サラが今そうしようとしているようにね」
「……俺は別に……」

　じっと見られて困った。

「本当に？」

　頬に手を添えられて顔が近付いてくる。
　キスをされる……それはわかるのにあの青い目から逸らせない。