溺愛Domの優しいコマンド

野外活動

9

「先生、いい野活でしたね」

　DVDの音声より、児童たちの寝息が聞こえるバスの中で微笑まれて思い返してみる。
　俺自身、今回は教師になって二回目の野活だった。
　初めてではない分、少し落ち着いて児童たちを見ていられた気はする。
　カレー作りでも大きなトラブルはなかったし、風呂もパンツを忘れた奴が居たくらい。
　夜も一部遊んでいたメンバーは居たが、多くはさっさと寝ていたし。
　ウォークラリーも一人木の根っこに引っ掛かって転んだ子が居ただけだ。
　体調を崩すことも、大きな怪我をした子も居なかったし、みんなルールはしっかり守って時間内に行動はできていた。

「まぁ、そう……ですかねぇ？」

　答えながら頭に舌を出した洋平が浮かんで変な答え方になったが、

「ほら、見て下さい」

　先生に後ろを指差されて振り返ってみる。
　そこには隣の宏太こうたに寄り掛かって口元に笑みを浮かべながら眠る洋平が居た。

「ね？熊野くんも酒井さかいくんもいい顔をして寝てますよね？」

　先生は表情を緩めているが、この二人はいつもうちのクラスで騒ぐしうるさいトラブルメーカーだ。
　部屋を分けてやったら叫び、カレー班を別にしたら何日も文句を言い続けた。
　ウォークラリーなんて一緒にできるわけもなかったが、いつの間にか洋平が宏太のグループに入り込んでいて結局雷を落とす結果になった。
　帰りのバスだけは、と俺と深谷先生の後ろで見張れるようにはしたが……まぁ、このあどけない寝顔は和むのかもしれない。