溺愛Domの優しいコマンド

忙殺

6

　大好きなマグロなのに味がわからない。
　ドキドキし過ぎて飲み込むタイミングさえわからなくなってきた。

「先生？」

　ふわりと笑う先生にグラスを差し出されて綺麗な緑色をした冷たい緑茶を喉に流し込む。
　冷えたお茶が喉を通って、沸いてしまっていた俺自身も落ち着けてくれる気がした。

「……緊張し過ぎじゃないですか？」

　先生は空になったグラスを手にしてまた笑う。
　うぐっと俺が言葉に詰まると、先生はグラスをテーブルに置いてからこっちを見た。

「先生……“Kissキスして”」
「へ!?っっっ!?」

　声をすっ飛ばして驚く俺を抱えるように持ち上げられて、もう言葉にもならない。
　先生は持ち上げた俺を横抱きにして抱いたままいつものように足を揃えて座る。
　完全に乗ってしまった俺はただただ狼狽えた。

「ね？これならしやすいですよね？」

　なのに平然としている先生はトンとその唇に指が当てて微笑む。
　そんな姿にまたドキッとした。
　ゆっくり目を閉じてくれたのを見て、そろりと顔を近づける。
　なのに触れる直前でパッと目を開けられて、慌てて離れかけたのを腕を引いて引き寄せられた。

「……して」

　何でそんな色っぽい声を出すのか。
　軽く触れるだけのキスなのに、それでも嬉しそうに笑う先生に胸が何かキュンとする。
　先生がかわいく見えて……またさっきの足を開いて座った男らしい先生も思い出して一気に顔が熱くなった。