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第1章「警察官になりました」
3話「月輪の女児」
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翌日から兎澤舞雪は本格的に警察として働くことになった。
事件に向かう際は必ず誰かが舞雪と同行していること、という約束がある。
彼女が警察として働きだして、早一週間。
資料室に度々入り浸っては月輪について調べていた。
「舞雪さん?」
「仁さん。どうしたんですか」
鏡原仁は小さな鬼の式神を連れて資料室を覗く。
血色は悪く、細い男。見た目は不健康に見えるが、至って健康だ。
「月輪の事を調べているんですか?」
「だって、気になっちゃうんだもん」
しかしイマイチ位置を把握できていない舞雪では探し出すのは
難しい。そこで仁はある提案をした。探すのではなく、聞いてみるのは
どうかと。連れて来られたのは霊能者のみを収監する留置所。
そこに一人の男が拘束されている。
「煙草、持ってきてくれたか」
「えぇ。これで良いですか?」
「あぁ?そっちの女じゃねえのか?」
手錠を掛けられた男は舞雪に目を向けた。
「笠松さん、実は彼女は未成年ですよ。貴方だって元
霊障対策課の職員だったんですから、こちらの特例は知っているでしょう?」
笠松という男は仁の言葉で納得した。扉の前で彼を監視する看守の警官も
驚いてはいたが、その事情を理解した。
「話があるのは彼女です。さぁ、舞雪さん。こちらに座ってください」
「分かりました…」
鉄パイプの椅子に座り彼と対面する。彼もまた舞雪を真っ直ぐ見つめる。
「月輪という名前について、何か知りませんか?」
そう聞くと笠松は眉をひそめた。
「どうして知ってるんだ」
「ここに来るキッカケになった事件で月輪だと言われたんです。私、施設に
入る前の記憶はほとんどなくて…だから、何か知っていたらと思って」
「そんな沢山は知らない。結構前の記憶だからほんの一部しか分からない。
忘れていた方が良いこともあるだろうが諦めねえだろうし…良いだろう。
俺が知ってる情報を一つ教えてやる」
笠松は両手をデスクの上に置き、前屈みになる。
「月輪ってのは山奥の村に住む神事を執り行う一族だ。何ていう村か、どんな
神事なのかは覚えてねえ。だがアンタのような霊力を持つ女児を使って
何かをしていた」
「何かの儀式、ですかね?」
「そうかもな。言ったろ?前の記憶だからほとんど覚えてねえって。俺が
覚えてるのはこれだけだ。悪かったな」
「いいえ、少しだけでも話が聞けて良かったです。ありがとうございました」
警官によって再び彼は牢屋に連れられて行く際、忠告をした。
「もしかしたら聞いてるかもしれねえけど、アンタは一人で霊障に関わるなよ。
誰でも良い、他の職員と必ず一緒に行動しろ」
留置所を後にして歩いていた。
「彼にも言われてしまいましたね、舞雪さん。本当に貴方、異常ですよ」
「それ、もしかして私の事を変人扱いしてる?」
「違いますよ。霊能者として異常だと言ってるんです。穂積さんにも言われ、
笠松さんにも言われ…これは冗談半分だとは思わない方が良いかと思います」
洒落にならない忠告。一人で霊障に関わるな、関わるのなら誰かと一緒に
行動しろ。そして月輪という一族は霊力を持つ女児を使って何かしらの
儀式を行っていた。まるで人を道具の様に扱っているとでも言いたげな表現だ。
「そんなに気を落とさないでください。消えた記憶に一歩近づいたとしてプラスに
考えましょう」
「そうだね…」
「お、嬢ちゃんと鏡原さんじゃねえか」
目立つ和柄のYシャツを着込んだ男は此方に軽く手を振った。彼も霊障対策課の職員で
名前を織恵真貴という。彼は雷獣の子を通して雷を扱うことが出来る。
落雷というよりは雷を纏って直で殴るという戦法を取る。
「…女児を使って何らかの儀式を行う、ねぇ。アンタはどう考えてるよ。雷様」
『月輪か。良い噂は聞かないから、知らぬほうが良いと思うがな』
「なんだ。珍しいな」
『本当に頭の可笑しい一族だからだ。世のため人の為、さらには神の為と謳って
何人の女が犠牲になっていると思っているのだ』
「それを言われても何も知らないから、何とも言えないな」
その通りだ。真貴の言葉に頷いていると小さな雷獣は舞雪に目を向けた。
『お前が本当に月輪の血族であるなら、その馬鹿みたいな霊力にも頷けるがな』
それだけ言って後はグースカと眠ってしまった。
たったこれだけ、されどこれだけの情報が手に入った。そして雷獣の口ぶりはまるで
兎澤舞雪が本当は月輪舞雪であると言いたいように聞こえた。
事件に向かう際は必ず誰かが舞雪と同行していること、という約束がある。
彼女が警察として働きだして、早一週間。
資料室に度々入り浸っては月輪について調べていた。
「舞雪さん?」
「仁さん。どうしたんですか」
鏡原仁は小さな鬼の式神を連れて資料室を覗く。
血色は悪く、細い男。見た目は不健康に見えるが、至って健康だ。
「月輪の事を調べているんですか?」
「だって、気になっちゃうんだもん」
しかしイマイチ位置を把握できていない舞雪では探し出すのは
難しい。そこで仁はある提案をした。探すのではなく、聞いてみるのは
どうかと。連れて来られたのは霊能者のみを収監する留置所。
そこに一人の男が拘束されている。
「煙草、持ってきてくれたか」
「えぇ。これで良いですか?」
「あぁ?そっちの女じゃねえのか?」
手錠を掛けられた男は舞雪に目を向けた。
「笠松さん、実は彼女は未成年ですよ。貴方だって元
霊障対策課の職員だったんですから、こちらの特例は知っているでしょう?」
笠松という男は仁の言葉で納得した。扉の前で彼を監視する看守の警官も
驚いてはいたが、その事情を理解した。
「話があるのは彼女です。さぁ、舞雪さん。こちらに座ってください」
「分かりました…」
鉄パイプの椅子に座り彼と対面する。彼もまた舞雪を真っ直ぐ見つめる。
「月輪という名前について、何か知りませんか?」
そう聞くと笠松は眉をひそめた。
「どうして知ってるんだ」
「ここに来るキッカケになった事件で月輪だと言われたんです。私、施設に
入る前の記憶はほとんどなくて…だから、何か知っていたらと思って」
「そんな沢山は知らない。結構前の記憶だからほんの一部しか分からない。
忘れていた方が良いこともあるだろうが諦めねえだろうし…良いだろう。
俺が知ってる情報を一つ教えてやる」
笠松は両手をデスクの上に置き、前屈みになる。
「月輪ってのは山奥の村に住む神事を執り行う一族だ。何ていう村か、どんな
神事なのかは覚えてねえ。だがアンタのような霊力を持つ女児を使って
何かをしていた」
「何かの儀式、ですかね?」
「そうかもな。言ったろ?前の記憶だからほとんど覚えてねえって。俺が
覚えてるのはこれだけだ。悪かったな」
「いいえ、少しだけでも話が聞けて良かったです。ありがとうございました」
警官によって再び彼は牢屋に連れられて行く際、忠告をした。
「もしかしたら聞いてるかもしれねえけど、アンタは一人で霊障に関わるなよ。
誰でも良い、他の職員と必ず一緒に行動しろ」
留置所を後にして歩いていた。
「彼にも言われてしまいましたね、舞雪さん。本当に貴方、異常ですよ」
「それ、もしかして私の事を変人扱いしてる?」
「違いますよ。霊能者として異常だと言ってるんです。穂積さんにも言われ、
笠松さんにも言われ…これは冗談半分だとは思わない方が良いかと思います」
洒落にならない忠告。一人で霊障に関わるな、関わるのなら誰かと一緒に
行動しろ。そして月輪という一族は霊力を持つ女児を使って何かしらの
儀式を行っていた。まるで人を道具の様に扱っているとでも言いたげな表現だ。
「そんなに気を落とさないでください。消えた記憶に一歩近づいたとしてプラスに
考えましょう」
「そうだね…」
「お、嬢ちゃんと鏡原さんじゃねえか」
目立つ和柄のYシャツを着込んだ男は此方に軽く手を振った。彼も霊障対策課の職員で
名前を織恵真貴という。彼は雷獣の子を通して雷を扱うことが出来る。
落雷というよりは雷を纏って直で殴るという戦法を取る。
「…女児を使って何らかの儀式を行う、ねぇ。アンタはどう考えてるよ。雷様」
『月輪か。良い噂は聞かないから、知らぬほうが良いと思うがな』
「なんだ。珍しいな」
『本当に頭の可笑しい一族だからだ。世のため人の為、さらには神の為と謳って
何人の女が犠牲になっていると思っているのだ』
「それを言われても何も知らないから、何とも言えないな」
その通りだ。真貴の言葉に頷いていると小さな雷獣は舞雪に目を向けた。
『お前が本当に月輪の血族であるなら、その馬鹿みたいな霊力にも頷けるがな』
それだけ言って後はグースカと眠ってしまった。
たったこれだけ、されどこれだけの情報が手に入った。そして雷獣の口ぶりはまるで
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