舞雪の霊感事件日誌

弓狩ヨゾラ

文字の大きさ
4 / 12
第1章「警察官になりました」

4話「写真の迷信」

しおりを挟む
ある人はここに写真館があるという。
ある人はここに写真館はないという。

矛盾した二つの事実。片や霊感の無い人間の事実、片や
霊感のある人間の事実。幕末、写真というものが登場すると
日本の人々は写真を撮られると魂を吸われると思っていた。
今回の事件は全員何らかの理由であるようでない、ないようである
写真館で撮影を行ってから仮死状態で病院に運ばれている。

「月影写真館…私たちにはあるようにしか見えないね」

立てかけられた看板には開店時間と閉店時間が書かれている。違和感は
あるはずなのに不思議とこの店では当たり前であると考えてしまう。
夜の6時に店を開け朝の8時に閉店する。可笑しな店、よく考えればそう
思うことが出来るのに。

「そういった術を掛けているのかもな。溶け込むための術、
違和感がある看板を見ても客はそれが普通だと思っちまうのさ。霊感の
無い人間にはここは壁にしか見えていない。傍から見れば俺たちが
変人に見えるかもな」

冗談抜きでその通りだ。霊の存在の有無が科学的根拠もない。信じる人は
とことん信じる。信じない人は決して信じない。しかし世の中には
見えないものが見えて被害に遭う人も少なくない。今の状況がそうだ。
店の中に入り、思わず舞雪は顔を顰めた。瘴気がそこら中から
湧いている。特に酷いのはもっと奥、恐らく撮影所。

「いらっしゃいませ。おや?若いですなぁ、兄妹ですかい?」

中年の女が声をかけて来た。彼女は月影ユリと名乗る。この店の店長であり
唯一の店員。この女が首から下げているカメラからも異様な瘴気が
漂っていた。

「いえ、同じ職場で働いているんです。ただのサラリーマンとOLですよ」

ここで警察だと言ったらすぐに怪しまれる。ユリは真貴の嘘をすぐに信じた。

「この店って最近開店したばかりですか?」
「そうですよ。1週間前に開いて、何人かご利用してくださいました」

事件の最初の被害者も丁度1週間前にこの店に来ていた。被害者はお客様
第一号だったと言う事か。

「見た事ないカメラですね」
「それですか。若い人たちは見たことが無いでしょうね。かなり古いカメラ
ですから」

今昔のカメラがいくつも並んでいる。その全てからどす黒い瘴気が放たれている。
気分は良くない。しかし店員はまんざらでもない様子だ。
小さなホワイトボードにはカメラレンタルも可能と書かれている。

「レンタルも出来るんですか!?」
「はい」
「私、ちょっと使ってみたいです。このカメラ、レンタルしても良いですか?」
「構いませんよ」

ユリからカメラを受け取り、カメラマンらしい構えを取ってみる。
明日には必ず返すという約束をしてカメラを持ち帰る。そのカメラから色々
情報を集めることが出来ないか試してみたいのだ。


持ち帰ると全員一瞬、顔を顰める。

「大丈夫なんですか、舞雪さん。このカメラ、かなり瘴気が溜まってますよ。
不調になっても可笑しくありません」
「私は全然大丈夫だったんだけど…そんなに?」

鏡原仁は頷いた。彼もまた苦悶の表情を終始浮かべていた。瘴気があるのは
分かっているがそこまで苦しくはない。単に彼女はこういった瘴気に強いのかも
しれない。
監察に回してから店員の事、そして特に店にあるカメラから瘴気が漂っていたことを
周りに伝えた。

「月影ユリって女からは霊力らしい霊力は感じられなかったな…能力もな」
「ではカメラにだけ?」

頷いた。彼女の事も少し調べるべきかもしれない。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

いくら時が戻っても

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
大切な書類を忘れ家に取りに帰ったセディク。 庭では妻フェリシアが友人二人とお茶会をしていた。 思ってもいなかった妻の言葉を聞いた時、セディクは――― 短編予定。 救いなし予定。 ひたすらムカつくかもしれません。 嫌いな方は避けてください。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...