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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【2】
のうまくさんまんだー。
人類の文明が爛熟した前世の世界において、数多の変態を見聞きしてきたつもりだったが――まさか、この世界で前世基準での横綱級が存在していようとは。流石のマリーちゃんでも思いもよらなかった事態である。
その横綱級のアルビオンの好色王は、青いツナギの男も顔負けな程――男も女も、更には実の息子であろうと関係ない――相手が見目麗しければ即性欲の対象になるという異常性癖持ちだった。
いや、原因は分かっている。
生まれやその立場上、人の上に立つ人間は、孤独や人間不信、様々なストレスに苛まれ続けている。故に、おかしくなりそうな精神の平衡に保つ為に何がしかの代償を求めるものだ。
それは大抵その人間の真逆の性質――例えば、普段他者を支配している場合は支配されることだったりする。実際、前世鞭を振るう副業での私の顧客達がそうだった。
奴も例外ではなく。その精神を少しばかり深掘りしたところ、醜い自身の劣等感や自己嫌悪、底なし沼のような孤独を抱えていた。
とりわけエレーヌ王妃への執着がおぞましい程で、まともな恋愛感情というものがない。エレーヌ王妃亡き後は彼女に似ているリュシー様やラドに執着がシフト。ラドへの性欲を抑えきれず、そこで男色趣味も始まった、と。
きっと性依存症という奴なのだろう。きっとホルモンを司る内分泌系や理性を司る前頭葉も何らかの異常をきたしているに違いない。
もっとより深く掘り下げて精神を読めば、もしかしたら幼少期に何らかの虐待やトラウマが見つかるのかも知れないが――生憎、私はそこまで面倒を見てやるつもりも義理も無い。
というのも――
『くくく、楽しみだのう……手始めは聖女やキャンディ伯爵の目の前であの美しい夫人を犯して絶望に苦しむ様を――』
――薄汚ねぇ妄想も大概にしろよ、この腐れ雄豚野郎。
怒りのあまり、ビキビキと音を立てんばかりの顔の血管。大広間を進みながら、私は笑顔を崩さぬままにギリィ…と奥歯を噛み締める。
精神感応で読み取った好色王の脳内では、成人向けも真っ青な変態乱痴気祭りが開催されていたのである。しかも、好色王の相手をさせられているのは何と、他ならぬ大事な家族達!
――糞みてぇな性欲を! 私どころか、ママンや家族全員に向けやがって!
私は、奴を燃やすのを蜘蛛の糸一本の理性でギリギリ踏み留まっていた。
――まあ、一旦落ち着こうか自分。この糞豚野郎は祖国で断頭台が待ち構えていると考えれば……。
『キャンディ伯爵やその息子達は兎も角、あの汚らわしい色をしている聖女の夫は気に食わぬな。今は亡き、憎きカレドニア王を思い出す。あ奴だけは残虐に嬲り殺してやるとしよう』
脳裏に伝わってくる、見るも無残な血塗れの状態で、どこかの城門に吊り下げられたグレイの姿。
瞬間、張り詰めた何かがブツンとぶち切れた。
「……ス」
「マリー?」
思わず歩みを止めた私。
漏らした声が聞こえたのか、グレイが姿勢を保ったまま怪訝そうに小声で名を呼ぶ。しかし私の精神状態はそれに返事をするどころではなかった。
――ブッ●●ス! 絶対に許さん……最早、燃やすのさえ生温い!
私の中の大日如来が忿怒相の不動明王となり、全身からゆらりと紅炎を立ち昇らせつつ立ち上がる。
さながら超大型台風の目、暴風域の中央が凪いでいるが如く――炎を超えた高温プラズマ渦巻くその中心を天に向かって貫くのは、絶対零度の氷剣。
――悪業や煩悩は断ち切り、チリ一つ残さず滅せねばなるまい。
グレイににこりと微笑みかけて、私は再び歩き出した。
精神感応で読み取った腐れ雄豚野郎の脳内乱痴気劇場。それを馬の脚共やサリーナ、男家族達に共有しながら(流石にママンや姉達にはキツ過ぎる情報なので配慮)。
案の定、自分も対象になっているのか、と顔を青褪めガクブルしている父。兄二人も心で絶賛大絶叫、大パニックである。
ちなみに聖女誘拐計画に関しては、隠密騎士や雪山の傭兵達が連携を組んで対策済。好色王に付き従う毒竜ことテール・リザード男爵の脳内を精査しても、土壇場計画変更は無かったので一安心。
と。
私をエスコートする腕が小刻みに振動しているのに気付いた。
『あら、そんなに震えなくても大丈夫よグレイ。大丈夫、マリーちゃんが守ってあげるからね!』
『おっ……お手柔らかにね?』
えっ、グレイが怖いのは好色王より私だったの? あらやだ、うふふふふふっ♪
---------------------------
※タイトルは不動明王の真言
『ノウマクサンマンダバザラダンセンダマカロシャダヤソワタヤウンタラタカンマン』から。
※太陽神ソルヘリオスつながりで大日如来、その怒りの側面としての化身である不動明王
というネタでした(*'ω'*)
その横綱級のアルビオンの好色王は、青いツナギの男も顔負けな程――男も女も、更には実の息子であろうと関係ない――相手が見目麗しければ即性欲の対象になるという異常性癖持ちだった。
いや、原因は分かっている。
生まれやその立場上、人の上に立つ人間は、孤独や人間不信、様々なストレスに苛まれ続けている。故に、おかしくなりそうな精神の平衡に保つ為に何がしかの代償を求めるものだ。
それは大抵その人間の真逆の性質――例えば、普段他者を支配している場合は支配されることだったりする。実際、前世鞭を振るう副業での私の顧客達がそうだった。
奴も例外ではなく。その精神を少しばかり深掘りしたところ、醜い自身の劣等感や自己嫌悪、底なし沼のような孤独を抱えていた。
とりわけエレーヌ王妃への執着がおぞましい程で、まともな恋愛感情というものがない。エレーヌ王妃亡き後は彼女に似ているリュシー様やラドに執着がシフト。ラドへの性欲を抑えきれず、そこで男色趣味も始まった、と。
きっと性依存症という奴なのだろう。きっとホルモンを司る内分泌系や理性を司る前頭葉も何らかの異常をきたしているに違いない。
もっとより深く掘り下げて精神を読めば、もしかしたら幼少期に何らかの虐待やトラウマが見つかるのかも知れないが――生憎、私はそこまで面倒を見てやるつもりも義理も無い。
というのも――
『くくく、楽しみだのう……手始めは聖女やキャンディ伯爵の目の前であの美しい夫人を犯して絶望に苦しむ様を――』
――薄汚ねぇ妄想も大概にしろよ、この腐れ雄豚野郎。
怒りのあまり、ビキビキと音を立てんばかりの顔の血管。大広間を進みながら、私は笑顔を崩さぬままにギリィ…と奥歯を噛み締める。
精神感応で読み取った好色王の脳内では、成人向けも真っ青な変態乱痴気祭りが開催されていたのである。しかも、好色王の相手をさせられているのは何と、他ならぬ大事な家族達!
――糞みてぇな性欲を! 私どころか、ママンや家族全員に向けやがって!
私は、奴を燃やすのを蜘蛛の糸一本の理性でギリギリ踏み留まっていた。
――まあ、一旦落ち着こうか自分。この糞豚野郎は祖国で断頭台が待ち構えていると考えれば……。
『キャンディ伯爵やその息子達は兎も角、あの汚らわしい色をしている聖女の夫は気に食わぬな。今は亡き、憎きカレドニア王を思い出す。あ奴だけは残虐に嬲り殺してやるとしよう』
脳裏に伝わってくる、見るも無残な血塗れの状態で、どこかの城門に吊り下げられたグレイの姿。
瞬間、張り詰めた何かがブツンとぶち切れた。
「……ス」
「マリー?」
思わず歩みを止めた私。
漏らした声が聞こえたのか、グレイが姿勢を保ったまま怪訝そうに小声で名を呼ぶ。しかし私の精神状態はそれに返事をするどころではなかった。
――ブッ●●ス! 絶対に許さん……最早、燃やすのさえ生温い!
私の中の大日如来が忿怒相の不動明王となり、全身からゆらりと紅炎を立ち昇らせつつ立ち上がる。
さながら超大型台風の目、暴風域の中央が凪いでいるが如く――炎を超えた高温プラズマ渦巻くその中心を天に向かって貫くのは、絶対零度の氷剣。
――悪業や煩悩は断ち切り、チリ一つ残さず滅せねばなるまい。
グレイににこりと微笑みかけて、私は再び歩き出した。
精神感応で読み取った腐れ雄豚野郎の脳内乱痴気劇場。それを馬の脚共やサリーナ、男家族達に共有しながら(流石にママンや姉達にはキツ過ぎる情報なので配慮)。
案の定、自分も対象になっているのか、と顔を青褪めガクブルしている父。兄二人も心で絶賛大絶叫、大パニックである。
ちなみに聖女誘拐計画に関しては、隠密騎士や雪山の傭兵達が連携を組んで対策済。好色王に付き従う毒竜ことテール・リザード男爵の脳内を精査しても、土壇場計画変更は無かったので一安心。
と。
私をエスコートする腕が小刻みに振動しているのに気付いた。
『あら、そんなに震えなくても大丈夫よグレイ。大丈夫、マリーちゃんが守ってあげるからね!』
『おっ……お手柔らかにね?』
えっ、グレイが怖いのは好色王より私だったの? あらやだ、うふふふふふっ♪
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※タイトルは不動明王の真言
『ノウマクサンマンダバザラダンセンダマカロシャダヤソワタヤウンタラタカンマン』から。
※太陽神ソルヘリオスつながりで大日如来、その怒りの側面としての化身である不動明王
というネタでした(*'ω'*)
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