728 / 758
うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【2】
食らえ、秘儀『疑惑擦なすり付け返し』!
青天の霹靂ではあっても、何らかの対応はせねばなるまい。
当人グレイは、と隣を見ると。
どうしよう、外見も意識も魂を飛ばして真っ白になっているー!
本人的にも精神的キャパを超えているようだ。
……ここは妻として私がしっかりせねば。
私はそう覚悟を決めてアルビオン王の方を見る。こちらは驚きはしたものの、直ぐに立ち直った模様。
「……これはこれは、そのような突拍子もない冗談を言うとは。リュサイは少し緊張しているのかな。
その男が、オブライエン王家の血を引いているなどと……」
冗談だと切り捨てる形で笑顔を浮かべているが、眼光は剣呑としている。そこへ火を注ぐのはやはり。
「嘘ではないぞ、アルビオン王――見よ、これなるは数百年前に失われたオブライエン王家の印璽! これはグレイ猊――いや、陛下の家に代々伝わってきた本物であるということは、このドナルド・マクドナルドが確認している!」
陛下呼びなのは外堀を埋めるつもりなのか、ランランルー。何だかグレイの意志を無視して状況だけお膳立てされてることにだんだん腹が立ってきた。この頭ハッピーセットめが!
後でお前の名前を無断でーガー屋に使って広めてやるぞこの野郎。
「ほう……冗談ではないと? ならばこれは一大事となるぞ、高地の騎士よ。何せトラス王国が国ぐるみでカレドニアの王家の血筋を一貴族として遇しておったのだからな。
つまりトラス王国が、カレドニア王国を乗っ取ろうと画策していた、ということになる。ここに居る諸国人からこの事は広まり、この国の信頼性は地に落ちるやも知れぬな――オディロン陛下も見かけによらず大した野心をお持ちだ」
「……」
沈黙を守るオディロン王。口を開いたのは傍に控えていた宰相だった。
「アルビオン国王陛下、お待ちを……先程カレドニア女王陛下の言われたこと、そしてグレイ・ダージリン伯爵の指輪の存在とその真偽は我が国は把握しておりません」
「ふん、その言葉に如何ほどの信頼性があろうか?」
……この流れは少々不味い。
私は意を決して立ち上がった。
「ちょっと宜しいかしら? そもそもの話、何故アルビオン王がカレドニアの王位継承に異を唱えていらっしゃるの?
第一、先の戦争の時もカレドニアを併合せずに独立国として残したのでしょう? カレドニア女王としてリュシー様が決定された事に他国があれこれ仰るなんて、アルビオンこそが国ごとカレドニアを乗っ取っているも同然のように思えますけれど」
食らえ、秘儀『疑惑擦り付け返し』!
私の言葉に、アルビオン王は小馬鹿にするようにフゴッと鼻を鳴らした。
不意打ちに思わず口元を抑える私。駄目よ、ここで噴き出してはいけないわ、マリー!
「乗っ取りなど人聞きの悪いことを。聖女様にはお分かりにならぬでしょうな。統治には時がかかるもの。カレドニア人――特にそこな高地の騎士のような者は野生の獣と同じ、徐々に牙を折り矜持と戦意を削いでいかねばならぬのですよ。リュサイとの婚姻で完全な併合が実現する筈であったのに……」
「貴様ァ……誇り高き高地の騎士へ何たる侮辱、その首、ここで――」
「待て、ドナルド卿!」「駄目ですよ!」
柄に手を掛け引き抜こうとするランランルーを、カレル兄とグレイが必死で引き留めている。
「……でも、そうはならずに残念でしたわね。それで? アルビオン王陛下は今のこの状況でどうなさるおつもりなのかしら?」
私は小首を傾げて相手を煽る。
どの道、こちらの手の者に囲まれている状況で下手なことは出来ないだろうからな。
「別に何も。ここで余が出来ることは何もない……」
言いかけたところで、見る見る内にアルビオン王の目が胡乱になり、巨体がぐらついた。ヨハン達が一斉に飛びのいたところにバターン! と地響きを立てて倒れ込み、広間中に悲鳴が上がる。
一時的な覚醒状態も何時までも続く訳ではない。恐らく今になってその効果がプツリと切れたのだろう。
当人グレイは、と隣を見ると。
どうしよう、外見も意識も魂を飛ばして真っ白になっているー!
本人的にも精神的キャパを超えているようだ。
……ここは妻として私がしっかりせねば。
私はそう覚悟を決めてアルビオン王の方を見る。こちらは驚きはしたものの、直ぐに立ち直った模様。
「……これはこれは、そのような突拍子もない冗談を言うとは。リュサイは少し緊張しているのかな。
その男が、オブライエン王家の血を引いているなどと……」
冗談だと切り捨てる形で笑顔を浮かべているが、眼光は剣呑としている。そこへ火を注ぐのはやはり。
「嘘ではないぞ、アルビオン王――見よ、これなるは数百年前に失われたオブライエン王家の印璽! これはグレイ猊――いや、陛下の家に代々伝わってきた本物であるということは、このドナルド・マクドナルドが確認している!」
陛下呼びなのは外堀を埋めるつもりなのか、ランランルー。何だかグレイの意志を無視して状況だけお膳立てされてることにだんだん腹が立ってきた。この頭ハッピーセットめが!
後でお前の名前を無断でーガー屋に使って広めてやるぞこの野郎。
「ほう……冗談ではないと? ならばこれは一大事となるぞ、高地の騎士よ。何せトラス王国が国ぐるみでカレドニアの王家の血筋を一貴族として遇しておったのだからな。
つまりトラス王国が、カレドニア王国を乗っ取ろうと画策していた、ということになる。ここに居る諸国人からこの事は広まり、この国の信頼性は地に落ちるやも知れぬな――オディロン陛下も見かけによらず大した野心をお持ちだ」
「……」
沈黙を守るオディロン王。口を開いたのは傍に控えていた宰相だった。
「アルビオン国王陛下、お待ちを……先程カレドニア女王陛下の言われたこと、そしてグレイ・ダージリン伯爵の指輪の存在とその真偽は我が国は把握しておりません」
「ふん、その言葉に如何ほどの信頼性があろうか?」
……この流れは少々不味い。
私は意を決して立ち上がった。
「ちょっと宜しいかしら? そもそもの話、何故アルビオン王がカレドニアの王位継承に異を唱えていらっしゃるの?
第一、先の戦争の時もカレドニアを併合せずに独立国として残したのでしょう? カレドニア女王としてリュシー様が決定された事に他国があれこれ仰るなんて、アルビオンこそが国ごとカレドニアを乗っ取っているも同然のように思えますけれど」
食らえ、秘儀『疑惑擦り付け返し』!
私の言葉に、アルビオン王は小馬鹿にするようにフゴッと鼻を鳴らした。
不意打ちに思わず口元を抑える私。駄目よ、ここで噴き出してはいけないわ、マリー!
「乗っ取りなど人聞きの悪いことを。聖女様にはお分かりにならぬでしょうな。統治には時がかかるもの。カレドニア人――特にそこな高地の騎士のような者は野生の獣と同じ、徐々に牙を折り矜持と戦意を削いでいかねばならぬのですよ。リュサイとの婚姻で完全な併合が実現する筈であったのに……」
「貴様ァ……誇り高き高地の騎士へ何たる侮辱、その首、ここで――」
「待て、ドナルド卿!」「駄目ですよ!」
柄に手を掛け引き抜こうとするランランルーを、カレル兄とグレイが必死で引き留めている。
「……でも、そうはならずに残念でしたわね。それで? アルビオン王陛下は今のこの状況でどうなさるおつもりなのかしら?」
私は小首を傾げて相手を煽る。
どの道、こちらの手の者に囲まれている状況で下手なことは出来ないだろうからな。
「別に何も。ここで余が出来ることは何もない……」
言いかけたところで、見る見る内にアルビオン王の目が胡乱になり、巨体がぐらついた。ヨハン達が一斉に飛びのいたところにバターン! と地響きを立てて倒れ込み、広間中に悲鳴が上がる。
一時的な覚醒状態も何時までも続く訳ではない。恐らく今になってその効果がプツリと切れたのだろう。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。
しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。