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貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
金剛石かはぐれか悩ましい。
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あれから早十数日が過ぎ、気がつくと月が替わっていた。時が過ぎるのはあっという間である。
大事件だったのに、結局何事もなく、いつもの平和な日常が戻ってきていた。
ただ、変わった事がある。
私の習慣だ。逃げるにしても体力があまりにも無さ過ぎたので、一日小一時間程度のウォーキングを始めたのだ。ランニングじゃないのかと言ってはいけない。こういうのは継続性が大事である。最初からハードモードにしては続かないのだ。
外はまだ怖かったし、屋敷内限定で歩いている。汚れないし天気も関係ない。この時ばかりは無駄な広さに感謝した。健康効果があったのか、お蔭で最近体調が頗る良い。
***
父から、曲者はカーフィ・モカ男爵に雇われた男だったと聞いた。何でもリプトン伯爵の借金の契約書を盗みに来たらしい。
誰それ? と思ってたら、グレイが詳しく教えてくれた。
義兄を嵌めようとドルトン侯爵家の影で画策し、暗躍していた高利貸し上がりの新興貴族だそうだ。リプトン伯爵家との婚姻に至るまでの経緯を聞いて、因縁だったんだなぁと納得する。
ただ、件の男爵は今現在何故か行方不明になっているとか。曲者がうちで捕まったから恐れて隠れたんだと兄達は言うけど、話聞く限り執念深そうな印象なんで油断は出来ない。
不安そうな私を心配してくれたのだろう、グレイは忙しいだろうにここのところこまめに会いに来てくれている。
頼んでいた望遠鏡についてもちゃんと忘れず動いてくれていた。先月末に手配して今取り寄せ中とのことで、太陽観察を頼んだ人(何とラベンダー修道院の人だった、私も会ってるかも知れない)はそれが来るまで歴史を調べてくれているらしい。
自室での一件で気恥ずかしかったけど、彼は本当に私に寄り添って大事にしてくれているのが分かる。
時折義兄も見掛けるので、そっちはそっちでアナベラ姉と順調に仲を深めているのだろう。銀行立ち上げも頑張っているようだ。婚約式も今月末に決まった。アナベラ姉もここのところ幸せそうにしている。
となると気になるのは義兄アールの評判だ。母や姉達によれば社交界はドルトン侯爵家メイソンとリプトン伯爵家フレール嬢の結婚話で持ちきりになっているとか。義兄アールの噂はそれで下火になってきている模様。
私の小説執筆はラストまであと一息。ステマ要素も色々と盛り込んである。これを仕掛けてどれだけ心理操作効果が得られるかは未知数だが急がねばなるまい。
ただアナベラ姉とは裏腹に、アン姉が最近浮かない顔をしているのが気になっている。理由を訊いても何でもないと返されるのでどうしようもない。婚約者であるあの気取った公爵家子息ザインと何かあったんだろうか?
***
ザインのクジャク野郎、アン姉を粗略にすればただじゃ済まさん。
脳内で奴を処しつつ私は針をブスブスと刺し、自室で古いコルセットの鎧化作業に没頭していた。一つ一つ四隅に穴があいた小さな薄い鉄板パーツを縫い付けていく。
注文していたコルセット鎧化パーツとマキビシ。これらには思いの外時間を要した。機械で量産出来る訳でもなく、全て鍛冶職人の手によるものだ。最初の内はまだかまだかとサリーナを通じて催促をしていたけれど、職人曰く、特にテトラ構造のマキビシに手間が掛かったらしい。数日前にやっと出来上がってきた塩梅である。
ちなみにマキビシは即行父に見つかって説明を求められ、幾つか譲るはめになった。内通者は勿論分かっている、有能な侍女サリーナだ。
「ほう、常に尖った部分が上に来るのだな。しかも返しが付いている」と感心していたので、警備に利用するのかも知れない。
「よし、出来た」
私は糸切り鋏を使い、満足して頷いた。最後のパーツをやっと縫い終わったのだ。何せ時間だけはあるニート。鎧化コルセットも数日で完成、と。
いそいそと早速着てみる。
「……」
うん。分かってたけど、想像以上にずっしりと重い……これを着て走って敵から逃げるのは至難の業かも知れない。
防御力を選ぶか敏捷度を選ぶか究極の選択だ。逃げるのなら後者一択になるんだが、うーん。
RPGの主人公の育成みたいな悩みをまさかリアルで抱くとは。
大事件だったのに、結局何事もなく、いつもの平和な日常が戻ってきていた。
ただ、変わった事がある。
私の習慣だ。逃げるにしても体力があまりにも無さ過ぎたので、一日小一時間程度のウォーキングを始めたのだ。ランニングじゃないのかと言ってはいけない。こういうのは継続性が大事である。最初からハードモードにしては続かないのだ。
外はまだ怖かったし、屋敷内限定で歩いている。汚れないし天気も関係ない。この時ばかりは無駄な広さに感謝した。健康効果があったのか、お蔭で最近体調が頗る良い。
***
父から、曲者はカーフィ・モカ男爵に雇われた男だったと聞いた。何でもリプトン伯爵の借金の契約書を盗みに来たらしい。
誰それ? と思ってたら、グレイが詳しく教えてくれた。
義兄を嵌めようとドルトン侯爵家の影で画策し、暗躍していた高利貸し上がりの新興貴族だそうだ。リプトン伯爵家との婚姻に至るまでの経緯を聞いて、因縁だったんだなぁと納得する。
ただ、件の男爵は今現在何故か行方不明になっているとか。曲者がうちで捕まったから恐れて隠れたんだと兄達は言うけど、話聞く限り執念深そうな印象なんで油断は出来ない。
不安そうな私を心配してくれたのだろう、グレイは忙しいだろうにここのところこまめに会いに来てくれている。
頼んでいた望遠鏡についてもちゃんと忘れず動いてくれていた。先月末に手配して今取り寄せ中とのことで、太陽観察を頼んだ人(何とラベンダー修道院の人だった、私も会ってるかも知れない)はそれが来るまで歴史を調べてくれているらしい。
自室での一件で気恥ずかしかったけど、彼は本当に私に寄り添って大事にしてくれているのが分かる。
時折義兄も見掛けるので、そっちはそっちでアナベラ姉と順調に仲を深めているのだろう。銀行立ち上げも頑張っているようだ。婚約式も今月末に決まった。アナベラ姉もここのところ幸せそうにしている。
となると気になるのは義兄アールの評判だ。母や姉達によれば社交界はドルトン侯爵家メイソンとリプトン伯爵家フレール嬢の結婚話で持ちきりになっているとか。義兄アールの噂はそれで下火になってきている模様。
私の小説執筆はラストまであと一息。ステマ要素も色々と盛り込んである。これを仕掛けてどれだけ心理操作効果が得られるかは未知数だが急がねばなるまい。
ただアナベラ姉とは裏腹に、アン姉が最近浮かない顔をしているのが気になっている。理由を訊いても何でもないと返されるのでどうしようもない。婚約者であるあの気取った公爵家子息ザインと何かあったんだろうか?
***
ザインのクジャク野郎、アン姉を粗略にすればただじゃ済まさん。
脳内で奴を処しつつ私は針をブスブスと刺し、自室で古いコルセットの鎧化作業に没頭していた。一つ一つ四隅に穴があいた小さな薄い鉄板パーツを縫い付けていく。
注文していたコルセット鎧化パーツとマキビシ。これらには思いの外時間を要した。機械で量産出来る訳でもなく、全て鍛冶職人の手によるものだ。最初の内はまだかまだかとサリーナを通じて催促をしていたけれど、職人曰く、特にテトラ構造のマキビシに手間が掛かったらしい。数日前にやっと出来上がってきた塩梅である。
ちなみにマキビシは即行父に見つかって説明を求められ、幾つか譲るはめになった。内通者は勿論分かっている、有能な侍女サリーナだ。
「ほう、常に尖った部分が上に来るのだな。しかも返しが付いている」と感心していたので、警備に利用するのかも知れない。
「よし、出来た」
私は糸切り鋏を使い、満足して頷いた。最後のパーツをやっと縫い終わったのだ。何せ時間だけはあるニート。鎧化コルセットも数日で完成、と。
いそいそと早速着てみる。
「……」
うん。分かってたけど、想像以上にずっしりと重い……これを着て走って敵から逃げるのは至難の業かも知れない。
防御力を選ぶか敏捷度を選ぶか究極の選択だ。逃げるのなら後者一択になるんだが、うーん。
RPGの主人公の育成みたいな悩みをまさかリアルで抱くとは。
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