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貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
合縁奇縁。
「ググググレイッ!? うひゃあっ!」
「っ――危ない!」
リディクトがすかさず動いて人参を食べ始める。動揺と、いきなりの揺れに私は姿勢を崩して落ちそうになり、後ろ脚に受け止められて下ろされた。サリーナがすかさず釣り竿だけを回収。
「あ、あの……これは、違うの。違うの」
地面に無事立つことが出来た私は、まるで浮気現場に夫に踏み込まれた妻のような言い訳をしながら視線を彷徨わせて言葉を探す。グレイの目をまともに見れなかった。
「プッ……ククッ」
聞こえてくる忍び笑い。顔をそっと上げてグレイを窺うと、それはやがて大笑いに発展していった。
「あはははは、馬の顔の前に人参をぶら下げるって、本当にやる人がいたなんて! おも、面白過ぎるよマリー!」
腹を抱えるグレイ。私は気まずさと恥ずかしさでいっぱいになった。
「そ、そんなに笑わなくたって……」
しかし彼の離席中に勝手に馬に乗って実験していたのである。見つかってしまった以上は素直に謝る事にした。
「勝手にリディクトに乗ってごめんなさい、ちょっとした好奇心だったの。幻滅した?」
しょんぼりとして上目遣いで見上げると、グレイは目尻を拭ってから首を振った。
「いや、マリーらしいね。でも、リディクトは賢い馬だから動かないのも当然だよ。ちゃんとマリーが人参の先の釣り竿を持ってる以上は食べられないって分かってるんだ。釣り竿を取り落としたらすぐ食いついてたしね」
言って、私に近づいて来る。ほっぺたを軽く抓られた。
「驚かせちゃった僕が言うのも何だけど、あまり馬に悪戯しちゃ駄目だよ。庭師の彼が居てくれたから大丈夫だったけれど、さっきも落ちそうになってたし。本当に危ないから、くれぐれも気を付けてね」
落ちそうになった時は肝を冷やしたよ、というグレイ。ぐぅの音も出ない。私は心の底から反省した。
***
丁度お昼時になったので、私達は屋敷に戻った。これから祖父母を交えての昼食である。勿論他の家族も全員一緒だ。
ダイニングルームへ行くと、義兄アールと目が合って会釈された。時間を作って来てくれたらしい。
祖母ラトゥはグレイを見るなり、嬉しそうに目を大きく見開いた。
「まあ、あなたがグレイなの」
「はい。初めまして。先日はお会い出来ずに申し訳ありませんでした。マリー様と婚約者としてお付き合いをさせて頂いております。グレイ・ルフナーと申します」
「これはご丁寧に。こちらこそ、マリーの祖父のジャルダン・キャンディだ」
「初めまして、マリーちゃんの祖母、ラトゥ・キャンディよ。まあぁ、まぁ。お兄さんと同じで優しそうな子ねぇ」
「恐縮です」
グレイはやや緊張しているようだったが、丁寧に挨拶をこなした。さりげなくお土産としてクァイツを渡している。祖父も祖母もニコニコしているので、グレイを気に入ったようだ。良かった。
挨拶も終わり、昼食が始まる。
今日ばかりはお爺様達に合わせて普通のカトラリーだ。
テーブルの上にはパンや果物、肉等に加え、グレイの釣ったであろう鯉の香草焼があった。
「この立派な大きな鯉はグレイが釣り上げたのですわ。是非召し上がって頂きたいと」
グレイの手柄を伝える。じゃあ早速頂いてみようか、と祖父母。
「うむ、良い鯉だ」
「本当に。美味しいわ、魚は大好きなの。年を取ると肉が重たく感じてねぇ」
「恐れ入ります。たまたま釣れて幸運でした」
うん、反応も上々。グレイの株を上げたぞ! 他の皆にも香草焼きは好評だった。
和やかな時間が過ぎていく。祖父母はルフナー家兄弟に家族について質問したりしていた。祖母の様子が少し変わったのは彼らの祖母の名を耳にしてからだった。目を輝かせて喜色を浮かべている。
「まあ、パレディーテ!? フォートナム男爵家の? 彼女が貴方達のお婆様なの?」
「はい、そうですが……祖母とお知り合いでしたか?」
「うふふ…昔、少うしお手伝いしたのよ。彼女はお元気かしら?」
「ええ、恙無く過ごしております」
「なら良かったわ。それにしてもご縁なのねぇ。まさかお二人のお婆様が」
しみじみといった様子の祖母。祖父も少し驚いた様子だ。
「貴方達が帰る前に書くから、お手紙を頼んでも良いかしら。久しぶりにお会いしたいものだわ」
「かしこまりました。祖母も喜ぶでしょう」
手紙の件は義兄アールが代表して請け負った。何だ何だ、昔の知り合いだったのか。しかし『少うしお手伝い』って、気になる……。
「ところで話は変わるけれど、グレイ。あなたはマリーちゃんとどこまでいったの?」
唐突な祖母ラトゥのぶっこみに、グレイは食べ物を喉に詰まらせた。咳き込んでいるので慌てて飲み物を差し出し、背中を叩いたり擦ってやる。
「もう、お婆様ったら! いきなりそんな質問するからグレイが驚いてしまいましたわ」
「ごほっ、し、失礼しました……」
手を上げて非礼を詫びるグレイ。だけど今のは不可抗力だと思うの。
「っ――危ない!」
リディクトがすかさず動いて人参を食べ始める。動揺と、いきなりの揺れに私は姿勢を崩して落ちそうになり、後ろ脚に受け止められて下ろされた。サリーナがすかさず釣り竿だけを回収。
「あ、あの……これは、違うの。違うの」
地面に無事立つことが出来た私は、まるで浮気現場に夫に踏み込まれた妻のような言い訳をしながら視線を彷徨わせて言葉を探す。グレイの目をまともに見れなかった。
「プッ……ククッ」
聞こえてくる忍び笑い。顔をそっと上げてグレイを窺うと、それはやがて大笑いに発展していった。
「あはははは、馬の顔の前に人参をぶら下げるって、本当にやる人がいたなんて! おも、面白過ぎるよマリー!」
腹を抱えるグレイ。私は気まずさと恥ずかしさでいっぱいになった。
「そ、そんなに笑わなくたって……」
しかし彼の離席中に勝手に馬に乗って実験していたのである。見つかってしまった以上は素直に謝る事にした。
「勝手にリディクトに乗ってごめんなさい、ちょっとした好奇心だったの。幻滅した?」
しょんぼりとして上目遣いで見上げると、グレイは目尻を拭ってから首を振った。
「いや、マリーらしいね。でも、リディクトは賢い馬だから動かないのも当然だよ。ちゃんとマリーが人参の先の釣り竿を持ってる以上は食べられないって分かってるんだ。釣り竿を取り落としたらすぐ食いついてたしね」
言って、私に近づいて来る。ほっぺたを軽く抓られた。
「驚かせちゃった僕が言うのも何だけど、あまり馬に悪戯しちゃ駄目だよ。庭師の彼が居てくれたから大丈夫だったけれど、さっきも落ちそうになってたし。本当に危ないから、くれぐれも気を付けてね」
落ちそうになった時は肝を冷やしたよ、というグレイ。ぐぅの音も出ない。私は心の底から反省した。
***
丁度お昼時になったので、私達は屋敷に戻った。これから祖父母を交えての昼食である。勿論他の家族も全員一緒だ。
ダイニングルームへ行くと、義兄アールと目が合って会釈された。時間を作って来てくれたらしい。
祖母ラトゥはグレイを見るなり、嬉しそうに目を大きく見開いた。
「まあ、あなたがグレイなの」
「はい。初めまして。先日はお会い出来ずに申し訳ありませんでした。マリー様と婚約者としてお付き合いをさせて頂いております。グレイ・ルフナーと申します」
「これはご丁寧に。こちらこそ、マリーの祖父のジャルダン・キャンディだ」
「初めまして、マリーちゃんの祖母、ラトゥ・キャンディよ。まあぁ、まぁ。お兄さんと同じで優しそうな子ねぇ」
「恐縮です」
グレイはやや緊張しているようだったが、丁寧に挨拶をこなした。さりげなくお土産としてクァイツを渡している。祖父も祖母もニコニコしているので、グレイを気に入ったようだ。良かった。
挨拶も終わり、昼食が始まる。
今日ばかりはお爺様達に合わせて普通のカトラリーだ。
テーブルの上にはパンや果物、肉等に加え、グレイの釣ったであろう鯉の香草焼があった。
「この立派な大きな鯉はグレイが釣り上げたのですわ。是非召し上がって頂きたいと」
グレイの手柄を伝える。じゃあ早速頂いてみようか、と祖父母。
「うむ、良い鯉だ」
「本当に。美味しいわ、魚は大好きなの。年を取ると肉が重たく感じてねぇ」
「恐れ入ります。たまたま釣れて幸運でした」
うん、反応も上々。グレイの株を上げたぞ! 他の皆にも香草焼きは好評だった。
和やかな時間が過ぎていく。祖父母はルフナー家兄弟に家族について質問したりしていた。祖母の様子が少し変わったのは彼らの祖母の名を耳にしてからだった。目を輝かせて喜色を浮かべている。
「まあ、パレディーテ!? フォートナム男爵家の? 彼女が貴方達のお婆様なの?」
「はい、そうですが……祖母とお知り合いでしたか?」
「うふふ…昔、少うしお手伝いしたのよ。彼女はお元気かしら?」
「ええ、恙無く過ごしております」
「なら良かったわ。それにしてもご縁なのねぇ。まさかお二人のお婆様が」
しみじみといった様子の祖母。祖父も少し驚いた様子だ。
「貴方達が帰る前に書くから、お手紙を頼んでも良いかしら。久しぶりにお会いしたいものだわ」
「かしこまりました。祖母も喜ぶでしょう」
手紙の件は義兄アールが代表して請け負った。何だ何だ、昔の知り合いだったのか。しかし『少うしお手伝い』って、気になる……。
「ところで話は変わるけれど、グレイ。あなたはマリーちゃんとどこまでいったの?」
唐突な祖母ラトゥのぶっこみに、グレイは食べ物を喉に詰まらせた。咳き込んでいるので慌てて飲み物を差し出し、背中を叩いたり擦ってやる。
「もう、お婆様ったら! いきなりそんな質問するからグレイが驚いてしまいましたわ」
「ごほっ、し、失礼しました……」
手を上げて非礼を詫びるグレイ。だけど今のは不可抗力だと思うの。
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