99 / 758
貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
幸せな誕生日。
そして、やってきました誕生日。
ルフナー家兄弟以外は特に呼ぶ人もおらず、兄姉達のように夜会開催する訳でも無く、ほぼほぼ家族だけの団欒誕生日である。こちとら寧ろこっちが良い。
食卓には豪華な料理が並び、それを食べ終えると大きなバースデーケーキが運ばれてくる。ちなみにバースデーケーキという概念をこの家に文化として持ち込んだのは私だ。誕生日の歌と蝋燭を吹き消す習慣も。
クリーム自体は存在している。自然分離のクリームでは足りない泡立て効率を上げる為に卵白を使うというもの。しかし植物の枝や茎を使ってホイップし、泡を少しずつ掬い取るという、私から見て非常に問題のあるやり方をしていたので、慌てて泡立て器を作らせたものだ。
金属のピックに立てられた十四本の蝋燭に火が灯される。テーブルの上の燭台の火が消された。
義兄アールやグレイはきっと初めてだろう。「一体何が起こるの、マリー?」と囁かれる。
「うふふ、うちの誕生日を祝う習慣なの。ケーキの蝋燭は年齢の数だけ灯すのよ。見てて……」
サリーナがリュートを手に取って音楽を奏で始める。それに合わせて家族や使用人が歌いだした。
『あなたの誕生日に幸あらん~♪ あなたの誕生日に幸あらん~♪ 親愛なるマリアージュの誕生日に幸あれ~♪』
文法が英語と近しいので翻訳も楽だった。
歌が終わったところで、私は全体見渡してありがとうと言って微笑み、ケーキの蝋燭を吹き消した。皆口々におめでとうと言い、拍手を始める。使用人達が燭台に再び火を灯した。
ケーキが切り分けられ、めいめいに配られる。紅茶も運ばれてきた。
「素敵な習慣だね。さっきの歌も初めて聞いたよ」
「ありがとう。単純で覚えやすいでしょう? 誕生日はいつもこうするの」
「……サイモン様とか蝋燭は凄い数にならない?」
「ああ、その場合は十を大きめの蝋燭にするとか、数字を型取った蝋燭を使うとか色々やり方があるのよ」
「成程……」
私はケーキを口に入れた。葡萄と桃のコンポートが挟んである。正直クリームは前世程ではないが、薔薇の香りがほんのり付けられていて、これはこれでそこそこいける。
ケーキを食べ終えると今度はプレゼントである。
父サイモンからは新聞事業の株式。母ティヴィーナからは秋冬用のドレス。
姉二人からは「今後、必要があると思って」とヴェールとレースの手袋を貰った。
しかし同じ理由で兄二人からは……何故か装飾付きのSな意味での女王様っぽい仮面。
何これ、と訊くと、「仮面舞踏会とかで使う奴だ。顔を隠すのにはうってつけだろう?」との事。
しかしである。これとお婆様の襟を装着して乗馬鞭でも持った日には、アダルト的な意味で奴隷が量産出来そうな勢いなんだが……まあ女王様のバイトは前世やったことがあるけれども。
微妙な気持ちになったが、一応私の事を考えてくれたんだろうからと受け取った。
サリーナからはお手製の下着。実用的である。ちなみに馬の脚共はクジャクの檻を用意してくれているそうだ。流石付き合いの長い分、主人の思考回路を読むのに長けている。明日礼を言わねばな。
義兄アールからは大粒の真珠のネックレスだった。
「グレイから聞いたのですが、マリーは海がお好きだそうですね。なので少しでも身近に感じられるものを、と思いまして」
何でも、温暖な南国の海で採れるものだそうだ。見事なネックレス。これ程のものは相当値も張っただろうな。
真珠は割と使いまわしの出来るアクセサリーなので素直に嬉しい。
グレイにはお米を頼んでいるので、と思いきや。手に何か布が掛かった大きなものを持っていた。
「ごめん、やっぱりオコメは間に合わなかったよ。手ぶらで来るのも何だし、これを」
と言って布を取って渡してくれたのは、大きな鳥籠に入ったオカメインコだった。しかも、異世界だからか桃色である。地球には無かった色だ。
私は目を輝かせた。オカメインコは前世の子供の頃飼っていた事がある。インコはロックな鳥なので大好きだ。
「まぁ、可愛い!」
「マリーは鳥が好きだよね。これは異国の鳥で、人の言葉を覚えるらしいんだ。まだ羽が生えそろったばかりで人に慣れるから、手乗りに出来るよ」
「えっ、本当!?」
詳しく訊けば、挿し餌も終わっていて自分で餌を食べられるそう。餌は粟やキビ、燕麦等の穀物をあげるらしい。多分セロリとかも喜ぶだろう。
「嬉しい……大事にするね、グレイ」
きゅっと手を握って礼を言うと、彼は少し恥ずかしそうにはにかんだ。
***
誕生日が終わって。
私は自室でグレイと二人きりにしてもらった。
先日あった事を話す。ギャヴィンに出くわした事や第一王子殿下に会った事。
グレイは少し険しい顔をして黙って聞いていたが、「ウエッジウッド子爵には気を付けた方が良いね」とぽつりと言った。
「ウエッジウッド子爵? アルバート殿下ではなくて?」
「うん。実際この家の奥までやってきたのは殿下じゃなくて子爵だよね。実は先日、子爵がソルツァグマ修道院にやってきたと聞いたんだ。その時は殿下の使いで視察に来たついでに恋人の為に季節外れのラベンダーを求めたという事らしいけど。父によれば、子爵に恋人はいない筈なんだよ」
一瞬背筋に氷が下りて来たような思いがした。
確かにそれは怪しい。私の身辺が探られているのだろう。
「なるべく子爵には会わない方が良いよ、マリー」
「……分かったわ。きっと大丈夫よ、もう会う事はないと思うし」
「うん」
話が途切れかけたその時。私はグレイに頼み事があったのだと思い出し、重々しい空気を払拭するようにぱちんと手を叩いた。
「それよりも! グレイ、金貨十二枚でクジャク何羽買えるの?」
「えっ……クジャク!?」
目を丸くするグレイ。私はクジャク行為カウントについて話した。
「それでね、金貨十二枚になったの!」
話を聞くにつれ小刻みに震えだし、笑いを堪えていた彼はとうとう大笑いを始めた。
「ク、クジャク行為……しかも数えるなんて! あは、あははっ、ザイン様もお気の毒に! 分かったよ、そう言う事なら金貨十二枚の予算でクジャクを用意してあげる」
金貨十二枚ならより珍しい純白のクジャクも買えるそうだ。純白と普通のクジャクを用意してくれるらしい。
ただ、クジャクは蛇意外にも小鳥を食べる事もある割と凶暴な鳥なので、飼育には気を付けた方が良いと言われた。後で馬の脚共に注意事項を言っておかねばな。
クジャク、楽しみだ。
さて。
「ね、グレイ」
「何?」
「歌って欲しいわ。誕生日の歌」
「えっ、今?」
「グレイにはまだ歌って貰ってないんだもの。歌は覚えてる?」
「覚えてるけどさ……恥ずかしいよ」
困った様子のグレイ。じっと期待するように見つめると、ぼりぼりと後頭部を照れ隠しのように掻いて、小さな声で歌ってくれた。
幸せな夜は更けていく。来年、この人と夫婦になるんだなぁと私はたどたどしくも優しいその歌声に耳を傾けた。
ルフナー家兄弟以外は特に呼ぶ人もおらず、兄姉達のように夜会開催する訳でも無く、ほぼほぼ家族だけの団欒誕生日である。こちとら寧ろこっちが良い。
食卓には豪華な料理が並び、それを食べ終えると大きなバースデーケーキが運ばれてくる。ちなみにバースデーケーキという概念をこの家に文化として持ち込んだのは私だ。誕生日の歌と蝋燭を吹き消す習慣も。
クリーム自体は存在している。自然分離のクリームでは足りない泡立て効率を上げる為に卵白を使うというもの。しかし植物の枝や茎を使ってホイップし、泡を少しずつ掬い取るという、私から見て非常に問題のあるやり方をしていたので、慌てて泡立て器を作らせたものだ。
金属のピックに立てられた十四本の蝋燭に火が灯される。テーブルの上の燭台の火が消された。
義兄アールやグレイはきっと初めてだろう。「一体何が起こるの、マリー?」と囁かれる。
「うふふ、うちの誕生日を祝う習慣なの。ケーキの蝋燭は年齢の数だけ灯すのよ。見てて……」
サリーナがリュートを手に取って音楽を奏で始める。それに合わせて家族や使用人が歌いだした。
『あなたの誕生日に幸あらん~♪ あなたの誕生日に幸あらん~♪ 親愛なるマリアージュの誕生日に幸あれ~♪』
文法が英語と近しいので翻訳も楽だった。
歌が終わったところで、私は全体見渡してありがとうと言って微笑み、ケーキの蝋燭を吹き消した。皆口々におめでとうと言い、拍手を始める。使用人達が燭台に再び火を灯した。
ケーキが切り分けられ、めいめいに配られる。紅茶も運ばれてきた。
「素敵な習慣だね。さっきの歌も初めて聞いたよ」
「ありがとう。単純で覚えやすいでしょう? 誕生日はいつもこうするの」
「……サイモン様とか蝋燭は凄い数にならない?」
「ああ、その場合は十を大きめの蝋燭にするとか、数字を型取った蝋燭を使うとか色々やり方があるのよ」
「成程……」
私はケーキを口に入れた。葡萄と桃のコンポートが挟んである。正直クリームは前世程ではないが、薔薇の香りがほんのり付けられていて、これはこれでそこそこいける。
ケーキを食べ終えると今度はプレゼントである。
父サイモンからは新聞事業の株式。母ティヴィーナからは秋冬用のドレス。
姉二人からは「今後、必要があると思って」とヴェールとレースの手袋を貰った。
しかし同じ理由で兄二人からは……何故か装飾付きのSな意味での女王様っぽい仮面。
何これ、と訊くと、「仮面舞踏会とかで使う奴だ。顔を隠すのにはうってつけだろう?」との事。
しかしである。これとお婆様の襟を装着して乗馬鞭でも持った日には、アダルト的な意味で奴隷が量産出来そうな勢いなんだが……まあ女王様のバイトは前世やったことがあるけれども。
微妙な気持ちになったが、一応私の事を考えてくれたんだろうからと受け取った。
サリーナからはお手製の下着。実用的である。ちなみに馬の脚共はクジャクの檻を用意してくれているそうだ。流石付き合いの長い分、主人の思考回路を読むのに長けている。明日礼を言わねばな。
義兄アールからは大粒の真珠のネックレスだった。
「グレイから聞いたのですが、マリーは海がお好きだそうですね。なので少しでも身近に感じられるものを、と思いまして」
何でも、温暖な南国の海で採れるものだそうだ。見事なネックレス。これ程のものは相当値も張っただろうな。
真珠は割と使いまわしの出来るアクセサリーなので素直に嬉しい。
グレイにはお米を頼んでいるので、と思いきや。手に何か布が掛かった大きなものを持っていた。
「ごめん、やっぱりオコメは間に合わなかったよ。手ぶらで来るのも何だし、これを」
と言って布を取って渡してくれたのは、大きな鳥籠に入ったオカメインコだった。しかも、異世界だからか桃色である。地球には無かった色だ。
私は目を輝かせた。オカメインコは前世の子供の頃飼っていた事がある。インコはロックな鳥なので大好きだ。
「まぁ、可愛い!」
「マリーは鳥が好きだよね。これは異国の鳥で、人の言葉を覚えるらしいんだ。まだ羽が生えそろったばかりで人に慣れるから、手乗りに出来るよ」
「えっ、本当!?」
詳しく訊けば、挿し餌も終わっていて自分で餌を食べられるそう。餌は粟やキビ、燕麦等の穀物をあげるらしい。多分セロリとかも喜ぶだろう。
「嬉しい……大事にするね、グレイ」
きゅっと手を握って礼を言うと、彼は少し恥ずかしそうにはにかんだ。
***
誕生日が終わって。
私は自室でグレイと二人きりにしてもらった。
先日あった事を話す。ギャヴィンに出くわした事や第一王子殿下に会った事。
グレイは少し険しい顔をして黙って聞いていたが、「ウエッジウッド子爵には気を付けた方が良いね」とぽつりと言った。
「ウエッジウッド子爵? アルバート殿下ではなくて?」
「うん。実際この家の奥までやってきたのは殿下じゃなくて子爵だよね。実は先日、子爵がソルツァグマ修道院にやってきたと聞いたんだ。その時は殿下の使いで視察に来たついでに恋人の為に季節外れのラベンダーを求めたという事らしいけど。父によれば、子爵に恋人はいない筈なんだよ」
一瞬背筋に氷が下りて来たような思いがした。
確かにそれは怪しい。私の身辺が探られているのだろう。
「なるべく子爵には会わない方が良いよ、マリー」
「……分かったわ。きっと大丈夫よ、もう会う事はないと思うし」
「うん」
話が途切れかけたその時。私はグレイに頼み事があったのだと思い出し、重々しい空気を払拭するようにぱちんと手を叩いた。
「それよりも! グレイ、金貨十二枚でクジャク何羽買えるの?」
「えっ……クジャク!?」
目を丸くするグレイ。私はクジャク行為カウントについて話した。
「それでね、金貨十二枚になったの!」
話を聞くにつれ小刻みに震えだし、笑いを堪えていた彼はとうとう大笑いを始めた。
「ク、クジャク行為……しかも数えるなんて! あは、あははっ、ザイン様もお気の毒に! 分かったよ、そう言う事なら金貨十二枚の予算でクジャクを用意してあげる」
金貨十二枚ならより珍しい純白のクジャクも買えるそうだ。純白と普通のクジャクを用意してくれるらしい。
ただ、クジャクは蛇意外にも小鳥を食べる事もある割と凶暴な鳥なので、飼育には気を付けた方が良いと言われた。後で馬の脚共に注意事項を言っておかねばな。
クジャク、楽しみだ。
さて。
「ね、グレイ」
「何?」
「歌って欲しいわ。誕生日の歌」
「えっ、今?」
「グレイにはまだ歌って貰ってないんだもの。歌は覚えてる?」
「覚えてるけどさ……恥ずかしいよ」
困った様子のグレイ。じっと期待するように見つめると、ぼりぼりと後頭部を照れ隠しのように掻いて、小さな声で歌ってくれた。
幸せな夜は更けていく。来年、この人と夫婦になるんだなぁと私はたどたどしくも優しいその歌声に耳を傾けた。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。
しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。