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貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
そんなに深く考えないで欲しい。
使用人を入れようとすると、メテオーラ嬢……メティ様からストップが入った。
「お待ちになって、マリー様。まだ人払いをお願い出来ますかしら。余人を交えずマリー様とお話してみたいと思っておりましたの」
「何でしょうか?」
余人を交えず? アン姉に関わる事だろうか。ソファーに座り直し、不思議に思って訊き返せば、メティ様は少し頬を紅潮させて身を乗り出して私の手を握った。
「マリー様! 早速ですが私、貴女のお考えになった教育制度に感服致しておりましたの! 素晴らしいですわ、こんな賢い女性がいらっしゃったなんて!」
「ふぇっ!?」
「私は生来常日頃政治的な事等に関心がございまして。けれども、同じ年頃の女性達はドレスや宝石といった服飾の流行、甘味等の話題しかしないもの。話が合う方がどこにもおらずつまらなく思っておりましたのよ。
けれどマリー様、貴女は違います。貴女のお手紙を殿下に読ませて頂いた時、やっと古くからの知己を見つけたような気持ちになりましたもの!」
力説するメティ様に、私は少々面食らう。
「は、はぁ……どうも?」
「そこで、貴女と一度じっくりお話してみたいと思っておりましたのよ。嬉しいですわ、お会い出来て」
「メティ様は独立心旺盛な女性なのですね」
成程、彼女は「私に任せろー(バリバリー)」なキャリアウーマンタイプか。トーマス兄の婚約者キャロライン嬢と同じである。確かに宝塚とかだったら男役演りそうだもんな。背が高くすらっとしてて、声もアルトだし。
政治とかに興味があるのであれば、一般的なご令嬢とは話が合わず、きっと浮いていたのだろう。そこへ私のような変わり種を見つけたと。
「ガリア王国もこの国と同じで保守的な気風なんですの? 他国の事は良く分からなくて……」
「ええ、もう。父は私が男勝りに学問を志す事に眉を顰めるんですの。執務のお手伝い位はさせて貰えるのですが、女は政治に口を出すものではないと常日頃言われておりますわ」
普段から父親に説教されてるのか、何か親近感が湧くな。
「まぁ……私も令嬢らしからぬと父には良くお小言を頂いておりますが、メティ様は私と違ってちゃんとお父様を補佐なさっていらっしゃるのですね。凄いですわ」
しかしお手伝いをして貢献してる分だけメティ様の方が偉いと思う。私は自分の手を汚さず、「男が働け」で楽をするタイプで遊び暮らしているだけだからなぁ。
私の言葉にメティ様は首を傾げた。
「マリー様はご自分で政治に携わってみたいとお思いになりませんの?」
「お恥ずかしながら私は素人ですし、どちらかと言えば父や兄達に我儘を言う事の方が多いんですの。その方が波風が立たずすんなり物事が運びますので」
「……惜しいですわね、せめて女性の官吏が認められていれば、是非お勧めしましたのに」
メティ様の残念そうな声色に苦笑いを浮かべる。認められていたとしてもきっとブラックになりそうなので私はごめんである。
ただ……
「メティ様ならきっと優秀な官吏になられるでしょうね」
それは間違いないだろう。
使用人不在の為、私はもてなす女主人として紅茶を淹れ直した。メティ様は礼を言って一口飲むと、「ところで、」と話題を変える。
「マリー様はアルバート殿下に一度しかお目通りしないとの約束で会われたそうですわね。王族が苦手でいらっしゃいますの?」
「それは私も知りたいですね。普通の貴族子女なら未来の王妃の座を考え喜ぶものですが……マリアージュ様は全く反応が違いましたので。」
ギャヴィンも疑問に思っていたのか口を挟む。メティ様は兎も角、こいつにはしっかりと伝えておいた方が良いかも知れない。私は少し考えた。
「そうですわね……私は三女で自由気儘、気楽に過ごしている身なので、いつうっかり無礼な事を仕出かしてしまうか気が気でありませんの。
血反吐を吐くような努力を強いられる上に苦労の多い未来の王妃になりたいとは微塵も思いませんし、何よりも恐れ多くて。たとえて言うなら獅子を恐れるウサギのような気持ちですわ。獅子が歩き回っている間は、じっと住処に隠れていたいというような」
「血反吐……しかし考え過ぎでは? 殿下は良い方ですし、貴女を取って喰うなどはなさいませんよ」
過剰反応ではないか、と呆れたようなギャヴィン。私は首を横に振った。
「相手がどのような方であれ、この国における権力というものの性質をよくよく考えれば、王族の御前に立つという事は常に銃口を突きつけられているような心地が致しますの」
「……」
「ですので、王族に対する敬意は御座いますが、同時に畏れてもおりますの。遠ければ遠い程私は安心して暮らせるのです。私は臆病ですから」
メティ嬢が成程、と呟く。
「マリー様は本当に賢くていらっしゃるわ。言われてみれば、社交界で殿下に群がるご令嬢達は身の程知らず、獅子に群がる警戒心の無いウサギのように見えますわね」
「……権力の性質、ですか」
ギャヴィンは顎に手を当て、真剣な顔で考え込んでしまった。
……本当の理由であるニートが出来なくなるし面倒臭いのと公開初夜は絶対にごめんだというのを正直に言う訳にもいかず、適当にそれらしい理由をでっち上げて並べ立てただけなので、そんなに深く考えないで欲しい。
アン姉達が戻って来たところで私は客人達に別れを告げる。メティ嬢とは文通の約束をした。彼女には是非、義姉キャロライン嬢の存在を教えてあげようと思う。ギャヴィンも仲間に入りたそうにしていたが、心の狭い私は「だがお前はダメだ」と笑顔でスルー。
殿下御一行のお見送りが終わった後、義兄ザインとアン姉は二人揃って父サイモンの所へ行って事の顛末を報告するそうだ。
ひょっとすると、一発ぐらいは殴られるかもしれんなザイン。南無ー。
私は内心手を合わせておいた。
「お待ちになって、マリー様。まだ人払いをお願い出来ますかしら。余人を交えずマリー様とお話してみたいと思っておりましたの」
「何でしょうか?」
余人を交えず? アン姉に関わる事だろうか。ソファーに座り直し、不思議に思って訊き返せば、メティ様は少し頬を紅潮させて身を乗り出して私の手を握った。
「マリー様! 早速ですが私、貴女のお考えになった教育制度に感服致しておりましたの! 素晴らしいですわ、こんな賢い女性がいらっしゃったなんて!」
「ふぇっ!?」
「私は生来常日頃政治的な事等に関心がございまして。けれども、同じ年頃の女性達はドレスや宝石といった服飾の流行、甘味等の話題しかしないもの。話が合う方がどこにもおらずつまらなく思っておりましたのよ。
けれどマリー様、貴女は違います。貴女のお手紙を殿下に読ませて頂いた時、やっと古くからの知己を見つけたような気持ちになりましたもの!」
力説するメティ様に、私は少々面食らう。
「は、はぁ……どうも?」
「そこで、貴女と一度じっくりお話してみたいと思っておりましたのよ。嬉しいですわ、お会い出来て」
「メティ様は独立心旺盛な女性なのですね」
成程、彼女は「私に任せろー(バリバリー)」なキャリアウーマンタイプか。トーマス兄の婚約者キャロライン嬢と同じである。確かに宝塚とかだったら男役演りそうだもんな。背が高くすらっとしてて、声もアルトだし。
政治とかに興味があるのであれば、一般的なご令嬢とは話が合わず、きっと浮いていたのだろう。そこへ私のような変わり種を見つけたと。
「ガリア王国もこの国と同じで保守的な気風なんですの? 他国の事は良く分からなくて……」
「ええ、もう。父は私が男勝りに学問を志す事に眉を顰めるんですの。執務のお手伝い位はさせて貰えるのですが、女は政治に口を出すものではないと常日頃言われておりますわ」
普段から父親に説教されてるのか、何か親近感が湧くな。
「まぁ……私も令嬢らしからぬと父には良くお小言を頂いておりますが、メティ様は私と違ってちゃんとお父様を補佐なさっていらっしゃるのですね。凄いですわ」
しかしお手伝いをして貢献してる分だけメティ様の方が偉いと思う。私は自分の手を汚さず、「男が働け」で楽をするタイプで遊び暮らしているだけだからなぁ。
私の言葉にメティ様は首を傾げた。
「マリー様はご自分で政治に携わってみたいとお思いになりませんの?」
「お恥ずかしながら私は素人ですし、どちらかと言えば父や兄達に我儘を言う事の方が多いんですの。その方が波風が立たずすんなり物事が運びますので」
「……惜しいですわね、せめて女性の官吏が認められていれば、是非お勧めしましたのに」
メティ様の残念そうな声色に苦笑いを浮かべる。認められていたとしてもきっとブラックになりそうなので私はごめんである。
ただ……
「メティ様ならきっと優秀な官吏になられるでしょうね」
それは間違いないだろう。
使用人不在の為、私はもてなす女主人として紅茶を淹れ直した。メティ様は礼を言って一口飲むと、「ところで、」と話題を変える。
「マリー様はアルバート殿下に一度しかお目通りしないとの約束で会われたそうですわね。王族が苦手でいらっしゃいますの?」
「それは私も知りたいですね。普通の貴族子女なら未来の王妃の座を考え喜ぶものですが……マリアージュ様は全く反応が違いましたので。」
ギャヴィンも疑問に思っていたのか口を挟む。メティ様は兎も角、こいつにはしっかりと伝えておいた方が良いかも知れない。私は少し考えた。
「そうですわね……私は三女で自由気儘、気楽に過ごしている身なので、いつうっかり無礼な事を仕出かしてしまうか気が気でありませんの。
血反吐を吐くような努力を強いられる上に苦労の多い未来の王妃になりたいとは微塵も思いませんし、何よりも恐れ多くて。たとえて言うなら獅子を恐れるウサギのような気持ちですわ。獅子が歩き回っている間は、じっと住処に隠れていたいというような」
「血反吐……しかし考え過ぎでは? 殿下は良い方ですし、貴女を取って喰うなどはなさいませんよ」
過剰反応ではないか、と呆れたようなギャヴィン。私は首を横に振った。
「相手がどのような方であれ、この国における権力というものの性質をよくよく考えれば、王族の御前に立つという事は常に銃口を突きつけられているような心地が致しますの」
「……」
「ですので、王族に対する敬意は御座いますが、同時に畏れてもおりますの。遠ければ遠い程私は安心して暮らせるのです。私は臆病ですから」
メティ嬢が成程、と呟く。
「マリー様は本当に賢くていらっしゃるわ。言われてみれば、社交界で殿下に群がるご令嬢達は身の程知らず、獅子に群がる警戒心の無いウサギのように見えますわね」
「……権力の性質、ですか」
ギャヴィンは顎に手を当て、真剣な顔で考え込んでしまった。
……本当の理由であるニートが出来なくなるし面倒臭いのと公開初夜は絶対にごめんだというのを正直に言う訳にもいかず、適当にそれらしい理由をでっち上げて並べ立てただけなので、そんなに深く考えないで欲しい。
アン姉達が戻って来たところで私は客人達に別れを告げる。メティ嬢とは文通の約束をした。彼女には是非、義姉キャロライン嬢の存在を教えてあげようと思う。ギャヴィンも仲間に入りたそうにしていたが、心の狭い私は「だがお前はダメだ」と笑顔でスルー。
殿下御一行のお見送りが終わった後、義兄ザインとアン姉は二人揃って父サイモンの所へ行って事の顛末を報告するそうだ。
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