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貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
先を見通すカレーライス。
「……という事があったんだけど」
「予想はしていたが……」
翌日、月が替わった初日。
父サイモンの執務室にて、私とグレイは今後の相談をしていた。事実、事件後に第一王子殿下の言った通り王妃殿下にメイソンの事で私個人に謝罪がしたいので会わせて欲しいと言われていたそうだ。メイソンの事件で父は両勢力の板挟み状態で厄介な立場になっているらしい。
ちなみに子供の代で縁組云々の話はひとまず保留となった。私は断固お断りだったけれど、グレイは早急に判断を下さない方が良いという見方。
その代わり、「保留と言いましたが、今後の殿下次第で判断させて頂きます。私達の力をあてにせず、御自分の力で功を成して見せて頂きたい」としっかり釘を刺していた。という事はグレイが保留したのは前世でいう「善処します」的な感じなのだろうか。曖昧にして逃げるみたいな。
それよりも、目下の王妃殿下――第二王子派対策である。
聖女として結んだ教会との密約は、飽くまでも最後の切り札――あの日、アルバート第一王子殿下がそれを出す前にあっさり引いてくれて良かったと思う。
ただ、第二王子殿下――王妃殿下はそうではないようだ。アルバート殿下は王妃殿下が私達を婚約破棄させる為に動くだろうと予測していた。
王妃の目的は父サイモンを取り込む事。恐らくメイソンの被害者である私と第二王子の縁組で父に恩を売り、醜聞を美談にしようとする。だから妹のメルローズには話は持って行かないだろうと。
そうなれば婚約者のグレイが邪魔になり、どうにかして排除に動くだろう。自分の息の掛かった御令嬢と娶せるか、それを拒否すれば殺してしまうか。
私達の説明に、父サイモンは深い溜息を吐く。
「確かに、殿下の予想は高確率で起こりそうだな」と認めた。
「ただ、飽くまでも殿下の主観での予想に過ぎない。メリーに縁談が来る可能性もある」
そうなったら断るのは難しいだろうと頭を抱える父。私はふむ……と考えた。
「それが来る前に先回りしてメリーをどなたかと婚約させたらどう? 信頼のおける人に事情を話して頼むとかは」
「それしかあるまいな。グレイ、お前に暫くうちの使用人を貸してやる。くれぐれも身辺には気を付けるように」
「はい。ご配慮ありがとうございますサイモン様」
私はグレイの肩に手を置いた。
「グレイ、状況次第では切り札を使いましょう」
切り札は勿論教会との密約、即入籍の事である。私の言葉にグレイもそうだねと頷き、父に向き直った。
「サイモン様、その場合恐らく許可を頂いている暇が無いと思います」
「ああ、了承した。既にお前達のサインだけで済むように整えられている。安心するがいい」
***
「わあ、立派なレンコン!」
「こないだ採った時より大分大きいね」
次の日は雲一つない秋晴れだった。ルフナー子爵家の池。蓮はすっかり枯れてしまっている。先月は収穫祭やらアン姉の結婚式やらがあってグレイも忙しかったので、本日収穫と相成った。
ルフナー家の庭師に交じって馬の脚共が池に入りレンコンを収穫している。大量である。余ったレンコンはお土産としてくれるそうだ。
「これ……本当に食べられるの、マリー」
「異国の商人に訊いたりして調べてみたのですが、食べられるそうですよ」
レンコンをしげしげと見つめているのはアナベラ姉。その傍で義兄アールが寄り添っている。アン姉は嫁いでしまったし、二人ともルフナー家に嫁ぐので、どうせならと交流がてらアナベラ姉も連れて来ていたのだ。
「レンコンは健康にとっても良い野菜なの。穴が開いているから、『先を見通す』って言われてたりもするわ」
「へぇ、何だか望遠鏡みたいだね」
グレイが感心したように言い、確かにそうねと私は笑った。
収穫祭の時にゲットした香辛料もあるし、カレーのルーは予め作って持ってきている。一時期スパイスカレーに嵌った経験が役に立った。それでも危うい部分はあったので何度か配合を変えて試作して納得行くものを作り上げた――私ではなく我が家の料理人達が。
基本的なスパイスであるクミン、コリアンダー、チリ、ターメリック。そして玉ねぎ、ニンニク、生姜を使う。ベースはバターと小麦粉と塩。少しマイルドにする為に蜂蜜で甘みを追加。
ちなみに試作品はうちの使用人や家族の腹に収まった。ビジュアル的に最初引かれたものの、一口食べた後、辛いけど美味だという事で評判は悪くなかった。
勿論料理人を連れてきている他、カレーライスにするのでお米も持参している。味を深める為の特製ブイヨンスープもだ。今日はレンコンカレーでダブルお家デートなのである!
ちなみにカレーに入れる肉や野菜はルフナー家持ち。大鍋を使ってカレーとご飯を作って、皆でわいわい言いながらピクニック気分で食べるのである。カレーにうるさいマナーは要らない。ドレスコードは汚れても構わないような服。
ごはんも土鍋で炊いた事があるので問題無い。貰ったお米は籾殻付きだったので脱穀の一手間があったが、小麦脱穀用の水車小屋を流用する事で解決した。出来上がったのは玄米よりのお米だけど、こっちの方が健康的だから構わないだろう。
吸水の時間がある為、お米は先に炊かせておいてあった。勿論練習の成果あって良い感じの炊きあがりである。
剥いて切った後水で晒し、あく抜きをしたレンコンを他の野菜や肉と共に煮込み、ルーを加えてとろみが出たところで完成。
レンコンが余っていたようだったので、醤油と蜂蜜、チリで即席きんぴらも作らせた。
うーん、良い香り。
「予想はしていたが……」
翌日、月が替わった初日。
父サイモンの執務室にて、私とグレイは今後の相談をしていた。事実、事件後に第一王子殿下の言った通り王妃殿下にメイソンの事で私個人に謝罪がしたいので会わせて欲しいと言われていたそうだ。メイソンの事件で父は両勢力の板挟み状態で厄介な立場になっているらしい。
ちなみに子供の代で縁組云々の話はひとまず保留となった。私は断固お断りだったけれど、グレイは早急に判断を下さない方が良いという見方。
その代わり、「保留と言いましたが、今後の殿下次第で判断させて頂きます。私達の力をあてにせず、御自分の力で功を成して見せて頂きたい」としっかり釘を刺していた。という事はグレイが保留したのは前世でいう「善処します」的な感じなのだろうか。曖昧にして逃げるみたいな。
それよりも、目下の王妃殿下――第二王子派対策である。
聖女として結んだ教会との密約は、飽くまでも最後の切り札――あの日、アルバート第一王子殿下がそれを出す前にあっさり引いてくれて良かったと思う。
ただ、第二王子殿下――王妃殿下はそうではないようだ。アルバート殿下は王妃殿下が私達を婚約破棄させる為に動くだろうと予測していた。
王妃の目的は父サイモンを取り込む事。恐らくメイソンの被害者である私と第二王子の縁組で父に恩を売り、醜聞を美談にしようとする。だから妹のメルローズには話は持って行かないだろうと。
そうなれば婚約者のグレイが邪魔になり、どうにかして排除に動くだろう。自分の息の掛かった御令嬢と娶せるか、それを拒否すれば殺してしまうか。
私達の説明に、父サイモンは深い溜息を吐く。
「確かに、殿下の予想は高確率で起こりそうだな」と認めた。
「ただ、飽くまでも殿下の主観での予想に過ぎない。メリーに縁談が来る可能性もある」
そうなったら断るのは難しいだろうと頭を抱える父。私はふむ……と考えた。
「それが来る前に先回りしてメリーをどなたかと婚約させたらどう? 信頼のおける人に事情を話して頼むとかは」
「それしかあるまいな。グレイ、お前に暫くうちの使用人を貸してやる。くれぐれも身辺には気を付けるように」
「はい。ご配慮ありがとうございますサイモン様」
私はグレイの肩に手を置いた。
「グレイ、状況次第では切り札を使いましょう」
切り札は勿論教会との密約、即入籍の事である。私の言葉にグレイもそうだねと頷き、父に向き直った。
「サイモン様、その場合恐らく許可を頂いている暇が無いと思います」
「ああ、了承した。既にお前達のサインだけで済むように整えられている。安心するがいい」
***
「わあ、立派なレンコン!」
「こないだ採った時より大分大きいね」
次の日は雲一つない秋晴れだった。ルフナー子爵家の池。蓮はすっかり枯れてしまっている。先月は収穫祭やらアン姉の結婚式やらがあってグレイも忙しかったので、本日収穫と相成った。
ルフナー家の庭師に交じって馬の脚共が池に入りレンコンを収穫している。大量である。余ったレンコンはお土産としてくれるそうだ。
「これ……本当に食べられるの、マリー」
「異国の商人に訊いたりして調べてみたのですが、食べられるそうですよ」
レンコンをしげしげと見つめているのはアナベラ姉。その傍で義兄アールが寄り添っている。アン姉は嫁いでしまったし、二人ともルフナー家に嫁ぐので、どうせならと交流がてらアナベラ姉も連れて来ていたのだ。
「レンコンは健康にとっても良い野菜なの。穴が開いているから、『先を見通す』って言われてたりもするわ」
「へぇ、何だか望遠鏡みたいだね」
グレイが感心したように言い、確かにそうねと私は笑った。
収穫祭の時にゲットした香辛料もあるし、カレーのルーは予め作って持ってきている。一時期スパイスカレーに嵌った経験が役に立った。それでも危うい部分はあったので何度か配合を変えて試作して納得行くものを作り上げた――私ではなく我が家の料理人達が。
基本的なスパイスであるクミン、コリアンダー、チリ、ターメリック。そして玉ねぎ、ニンニク、生姜を使う。ベースはバターと小麦粉と塩。少しマイルドにする為に蜂蜜で甘みを追加。
ちなみに試作品はうちの使用人や家族の腹に収まった。ビジュアル的に最初引かれたものの、一口食べた後、辛いけど美味だという事で評判は悪くなかった。
勿論料理人を連れてきている他、カレーライスにするのでお米も持参している。味を深める為の特製ブイヨンスープもだ。今日はレンコンカレーでダブルお家デートなのである!
ちなみにカレーに入れる肉や野菜はルフナー家持ち。大鍋を使ってカレーとご飯を作って、皆でわいわい言いながらピクニック気分で食べるのである。カレーにうるさいマナーは要らない。ドレスコードは汚れても構わないような服。
ごはんも土鍋で炊いた事があるので問題無い。貰ったお米は籾殻付きだったので脱穀の一手間があったが、小麦脱穀用の水車小屋を流用する事で解決した。出来上がったのは玄米よりのお米だけど、こっちの方が健康的だから構わないだろう。
吸水の時間がある為、お米は先に炊かせておいてあった。勿論練習の成果あって良い感じの炊きあがりである。
剥いて切った後水で晒し、あく抜きをしたレンコンを他の野菜や肉と共に煮込み、ルーを加えてとろみが出たところで完成。
レンコンが余っていたようだったので、醤油と蜂蜜、チリで即席きんぴらも作らせた。
うーん、良い香り。
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