151 / 758
貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
広げよう襟友の輪。
「あらあ、誰かと思えばマクシム坊やのところのベルちゃんじゃないのぉ。この間まで粗相をして泣いていたと思っていた幼い女の子が今や殿方に娼婦のように大胆にくっつくようになるなんてぇ。
時が経つのは早いですわぁ。最近の若い子は随分と情熱的なのねぇ~。それともお母様似かしらぁ~?」
エリザベル嬢の方を振り返ったピュシス夫人はねっとりと絡みつくような声色で声を掛けた。ピュシス夫人の声はかなりデカい。わざと周囲に聞かせているのだろう。
エリザベル嬢は顔を赤くしたり青くしたりしながら意味のなさない言葉を呻きぱっと第二王子殿下から離れた。
「い、いえ、これは……あの、その……」
「確かにムーランス伯爵夫人ドゥニーズ様は恋多き女性ざます。言われてみればそっくりざますね」
エリザベル嬢はそれまでの勢いはどこへやら、おろおろとし始めた。ひそひそと年配の貴族達が遠巻きに噂をし始める。貴族令嬢の集団からそっと離脱する者が出始め――そこへ慌てて一人の中年貴族男性が現れた。エリザベル嬢がほっとしたように「お父様!」と声を上げたので、きっとこの人がムーランス伯爵なのだろう。
「これはお三方、ご機嫌麗しく。娘が何か粗相をしましたのでしょうか?」
ピュシス夫人の前に立った伯爵は、顔を少し引き攣らせながらも紳士の礼を取った。
夫人の腕の中の白い小型犬――確かガスィーちゃんという名前だった――が、何かが気に入らないのか、ウーと唸り声を上げている。
「まあ、マクシム坊や。久しぶりねぇ。いえね、人前で大胆に殿方にくっつくなんて若いって良いわねぇって話をしていたんですのよぉ。私達の時代と今とは常識が違うみたいでぇ」
「ええ、そうざますわ。今のお若い方の感性では私達の時代に流行った襟飾りはまるで喜劇役者のように見えるそうざます。時代の流れを感じるざます」
扇を広げてゆったり動かし始めるホルメー夫人。にこやかにどぎつい言葉を吐かれ、ムーランス伯爵は事の次第を察したのか顔色を変えた。勿論傍にいる殿方は第二王子殿下のみ。
夫人達の話は続く。
「それにしてもあの時代に戻ったような気分ですわ。ラトゥお姉様は社交界の華でしたもの。そうそう、恐れ多くも陛下は王太子時代に憧れてらしたとか」
「有名な話ですわねぇ。先程も幻の姫のそのお姿にお姉様の事を重ねられて、陛下も感じ入られて当時の襟をわざわざ侍従に持って来させてまで付けられたに違いありませんわぁ。
私も懐かしくって嬉しくって昔の襟を出してきて付けたくなりましたものぉ。残念ながらあの襟を付けられた陛下の御心を慮る事も出来ず、古臭いみすぼらしい等と侮辱なさるおつむの軽い方が何人かいらっしゃったようですけれどもぉ……陛下をも侮辱するなんてぇ」
「無知とは恐ろしいざますわね。大変嘆かわしいざます。まったく親の教育を疑うざます」
矢継ぎ早の言葉にムーランス伯爵は顔を真っ赤にして娘を睨みつけた。ひっと息を飲んで怯むエリザベル嬢。伯爵は深々と頭を下げた。
「ジェレミー殿下、そして皆様――娘がお騒がせして失礼致しました。どうやら甘やかし過ぎたようです。ベル、お前には心底失望した。帰るぞ」
言って、娘の肩を無理やり抱いてその場を離れて行くムーランス伯爵。
去り際の一瞬、エリザベル嬢はキッとこちらを睨みつけたが、大人しく連行されていった。
***
彼らが去った後。いつの間にか第二王子殿下を取り巻いていた貴族令嬢達は居なくなっていた。所在なさげにぽつんと佇むジェレミー殿下。
「おほほほほ、甘やかされて育ったのはマクシム坊やも同じでしょうにぃ」
「困ったものだわ、意地でもキャンディ伯爵家の人間には謝りたくないのね」
「あの親にしてこの子あり、ざます」
三夫人が口々に言って笑いながらこちらに顔を向ける。確かに私に謝罪はしなかったな、あの男。
まあ終わった事はさておき、個性的な夫人達――私はにっこりと微笑んで淑女の礼を取った。
「お初にお目にかかります、ピュシス夫人、エピテュミア夫人、ホルメー夫人。ラトゥの孫娘、マリアージュ・キャンディと申します。先程はありがとうございました。祖母より譲り受けたこの襟は、私の大切な宝物なのです」
「うふふ、初めましてぇ。素敵よぉ、よく似合っているわぁ」
「本当にラトゥお姉様にそっくりね」
「懐かしいざます」
優しい眼差しで私を見詰める三夫人。
「実は、夏の蛍の頃に我が家でお三方をお見掛けしていて。その時から是非お近づきになりたいと思っておりましたの! 祖母からも、経験豊富で素敵な頼れる御婦人達だと伺っておりまして――こうしてお会いできた事は心からの喜びです!」
胸の前で手を組み、私は情熱を込めて訴えた。驚いたように顔を見合わせる三夫人。周囲の貴族は「えっ、マジで!?」みたいな愕然とした顔をしているが、そんなの関係ねぇ!
というか、自慢ではないがさっきのエリザベル嬢からして私は同年代と仲良くなれる気が全くしていない。第二王子も然り。勿論グレイは婚約者枠だから別だけど。
「あ、あらあ嬉しいわねぇ、こんな可愛らしい子にそう言って貰えるなんてぇ」
「うふふ、少し面映ゆくて恥ずかしいですわ」
「困ってしまうざます、こんな事を言って貰えたのは生まれて初めてざますから」
私が本気で言っている事が伝わったのか、三者三様、少し恥じらいながらも嬉しそうに頬を染める夫人達。おばちゃんの照れる様子は可愛いな。
それから。
私は婚約者のグレイを紹介したり、襟談義にも花を咲かせたり。三夫人との交流を深めていった。
わんこの話になった時はガスィーちゃんを撫でさせて貰った。屁っこき令嬢だとミスリードさせる為にキャンディ伯爵家から連れて来ていた茶色いわんこのヘヒルちゃんをガスィーちゃんに紹介したり。性別違いだったので喧嘩せず仲良くなってくれて良かったと思う。
第二王子のジェレミー殿下と言えば、暫く手持無沙汰そうにこちらを窺ってうろうろ。しまいにはサブリナ王妃殿下や第一王子アルバート殿下もやってきていたが――三夫人とずっと話しているとやがて諦めて去って行ったので助かった。
三魔女という言葉も聞いたし、彼女達は余程社交界で恐れられているのか。凄いぞ三夫人!
弟妹達が遊びから戻って来たので夫人達に紹介し、挨拶させた後、わんこと一緒に遊ばせて貰いもした。
今度、ドレスコードがエリザベス女王襟のお茶会にお招きする事も約束したし、実に和やかで楽しい充実した一時を過ごせたと思う。
時が経つのは早いですわぁ。最近の若い子は随分と情熱的なのねぇ~。それともお母様似かしらぁ~?」
エリザベル嬢の方を振り返ったピュシス夫人はねっとりと絡みつくような声色で声を掛けた。ピュシス夫人の声はかなりデカい。わざと周囲に聞かせているのだろう。
エリザベル嬢は顔を赤くしたり青くしたりしながら意味のなさない言葉を呻きぱっと第二王子殿下から離れた。
「い、いえ、これは……あの、その……」
「確かにムーランス伯爵夫人ドゥニーズ様は恋多き女性ざます。言われてみればそっくりざますね」
エリザベル嬢はそれまでの勢いはどこへやら、おろおろとし始めた。ひそひそと年配の貴族達が遠巻きに噂をし始める。貴族令嬢の集団からそっと離脱する者が出始め――そこへ慌てて一人の中年貴族男性が現れた。エリザベル嬢がほっとしたように「お父様!」と声を上げたので、きっとこの人がムーランス伯爵なのだろう。
「これはお三方、ご機嫌麗しく。娘が何か粗相をしましたのでしょうか?」
ピュシス夫人の前に立った伯爵は、顔を少し引き攣らせながらも紳士の礼を取った。
夫人の腕の中の白い小型犬――確かガスィーちゃんという名前だった――が、何かが気に入らないのか、ウーと唸り声を上げている。
「まあ、マクシム坊や。久しぶりねぇ。いえね、人前で大胆に殿方にくっつくなんて若いって良いわねぇって話をしていたんですのよぉ。私達の時代と今とは常識が違うみたいでぇ」
「ええ、そうざますわ。今のお若い方の感性では私達の時代に流行った襟飾りはまるで喜劇役者のように見えるそうざます。時代の流れを感じるざます」
扇を広げてゆったり動かし始めるホルメー夫人。にこやかにどぎつい言葉を吐かれ、ムーランス伯爵は事の次第を察したのか顔色を変えた。勿論傍にいる殿方は第二王子殿下のみ。
夫人達の話は続く。
「それにしてもあの時代に戻ったような気分ですわ。ラトゥお姉様は社交界の華でしたもの。そうそう、恐れ多くも陛下は王太子時代に憧れてらしたとか」
「有名な話ですわねぇ。先程も幻の姫のそのお姿にお姉様の事を重ねられて、陛下も感じ入られて当時の襟をわざわざ侍従に持って来させてまで付けられたに違いありませんわぁ。
私も懐かしくって嬉しくって昔の襟を出してきて付けたくなりましたものぉ。残念ながらあの襟を付けられた陛下の御心を慮る事も出来ず、古臭いみすぼらしい等と侮辱なさるおつむの軽い方が何人かいらっしゃったようですけれどもぉ……陛下をも侮辱するなんてぇ」
「無知とは恐ろしいざますわね。大変嘆かわしいざます。まったく親の教育を疑うざます」
矢継ぎ早の言葉にムーランス伯爵は顔を真っ赤にして娘を睨みつけた。ひっと息を飲んで怯むエリザベル嬢。伯爵は深々と頭を下げた。
「ジェレミー殿下、そして皆様――娘がお騒がせして失礼致しました。どうやら甘やかし過ぎたようです。ベル、お前には心底失望した。帰るぞ」
言って、娘の肩を無理やり抱いてその場を離れて行くムーランス伯爵。
去り際の一瞬、エリザベル嬢はキッとこちらを睨みつけたが、大人しく連行されていった。
***
彼らが去った後。いつの間にか第二王子殿下を取り巻いていた貴族令嬢達は居なくなっていた。所在なさげにぽつんと佇むジェレミー殿下。
「おほほほほ、甘やかされて育ったのはマクシム坊やも同じでしょうにぃ」
「困ったものだわ、意地でもキャンディ伯爵家の人間には謝りたくないのね」
「あの親にしてこの子あり、ざます」
三夫人が口々に言って笑いながらこちらに顔を向ける。確かに私に謝罪はしなかったな、あの男。
まあ終わった事はさておき、個性的な夫人達――私はにっこりと微笑んで淑女の礼を取った。
「お初にお目にかかります、ピュシス夫人、エピテュミア夫人、ホルメー夫人。ラトゥの孫娘、マリアージュ・キャンディと申します。先程はありがとうございました。祖母より譲り受けたこの襟は、私の大切な宝物なのです」
「うふふ、初めましてぇ。素敵よぉ、よく似合っているわぁ」
「本当にラトゥお姉様にそっくりね」
「懐かしいざます」
優しい眼差しで私を見詰める三夫人。
「実は、夏の蛍の頃に我が家でお三方をお見掛けしていて。その時から是非お近づきになりたいと思っておりましたの! 祖母からも、経験豊富で素敵な頼れる御婦人達だと伺っておりまして――こうしてお会いできた事は心からの喜びです!」
胸の前で手を組み、私は情熱を込めて訴えた。驚いたように顔を見合わせる三夫人。周囲の貴族は「えっ、マジで!?」みたいな愕然とした顔をしているが、そんなの関係ねぇ!
というか、自慢ではないがさっきのエリザベル嬢からして私は同年代と仲良くなれる気が全くしていない。第二王子も然り。勿論グレイは婚約者枠だから別だけど。
「あ、あらあ嬉しいわねぇ、こんな可愛らしい子にそう言って貰えるなんてぇ」
「うふふ、少し面映ゆくて恥ずかしいですわ」
「困ってしまうざます、こんな事を言って貰えたのは生まれて初めてざますから」
私が本気で言っている事が伝わったのか、三者三様、少し恥じらいながらも嬉しそうに頬を染める夫人達。おばちゃんの照れる様子は可愛いな。
それから。
私は婚約者のグレイを紹介したり、襟談義にも花を咲かせたり。三夫人との交流を深めていった。
わんこの話になった時はガスィーちゃんを撫でさせて貰った。屁っこき令嬢だとミスリードさせる為にキャンディ伯爵家から連れて来ていた茶色いわんこのヘヒルちゃんをガスィーちゃんに紹介したり。性別違いだったので喧嘩せず仲良くなってくれて良かったと思う。
第二王子のジェレミー殿下と言えば、暫く手持無沙汰そうにこちらを窺ってうろうろ。しまいにはサブリナ王妃殿下や第一王子アルバート殿下もやってきていたが――三夫人とずっと話しているとやがて諦めて去って行ったので助かった。
三魔女という言葉も聞いたし、彼女達は余程社交界で恐れられているのか。凄いぞ三夫人!
弟妹達が遊びから戻って来たので夫人達に紹介し、挨拶させた後、わんこと一緒に遊ばせて貰いもした。
今度、ドレスコードがエリザベス女王襟のお茶会にお招きする事も約束したし、実に和やかで楽しい充実した一時を過ごせたと思う。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。
しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。