貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン

文字の大きさ
159 / 758
貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

旅に出ます。

 運動した後は食事が美味い。

 お昼になったので、手を洗って食事を採る。結局カレーは臭うという事で却下となったのは残念だったが、代わりにサンドイッチやハンバーガー、フライドポテト、フライドチキン、梨やリンゴといった果物に舌鼓を打ち、紅茶を楽しむ。
 メティもシルも一口食べて「美味しい!」と声を上げていた。

 「あれ、メティは以前アン姉様に呼ばれていた事があったけど、食べた事無かったっけ?」

 「アン様とは何度かお招き頂いたけれど、食べた事があるのはお菓子だけだったのよ。あれも美味しかったわ」

 「メティからキャンディ伯爵家の食事は美味だと聞いていたが、これは聞きしに勝るものだな。ガリアの王宮でも通用する味だ」

 「それは良かった。お菓子は今日もとびっきりのだから期待してて。お土産にも焼き菓子を作らせてあるから」

 「まぁ、ありがとう!」

 続いて園遊会の話をすると、メティだけでなくシルもお腹を抱えて笑っていた。

 「マリーは変わっているね。いや、良い意味だよ。面白い子だなぁ」

 「でしょう? シル。だからお友達になりたいって思ったの」

 「もう。これでもこっちは必死なんですけど。権力争いとか怖いし、人の嫉妬や恨み買うような立場になりたく無い。苦労したくないし、のんびり暇を持て余したマダムの生活をしたいんだもの」

 「確かにそれは王子様には叶えられない事だね」

 昼食が終わると、すぐ激しく動くのも何だし(というか私自身が疲れるから)大人しめの遊びをすることにした。

 鏡と桶で虹を作ったり、ブーメランを飛ばしたり。フリスビーやフラフープ、竹馬等も遊んだ。小腹が空けばシュークリームやケーキを気軽に摘まみ、お茶を飲む。お菓子も好評だった。

 最後の締めは最近完成した玩具の飛行機。
 と言っても、前世百円ショップでも売ってたような、ゴムが無いプロペラが付いているだけのグライダー飛行機である。
 木と薄布等でなるべく軽くして作った。

 「それは? 鳥みたいだが」

 保護の為の箱から飛行機を取り出すと、シルが興味深そうに見ている。

 「ええと。今からやるのは飛行機飛ばし大会。こうやって飛ばすの。見てて」

 飛行機を飛ばすとプロペラが回り、真っ直ぐに飛んでいく。妨害する風も少なかったので割とバランスのよい飛行を見せたと思う。
 航空力学とか良く知らないなりに、記憶を辿りながら何度も試行錯誤で苦労した。

 「おお!」

 数メートル先にポトリと飛行機が落ちる。馬の脚共がそこへ印を付け、メジャーを持ってきて距離を測った。

 「これをなるべく遠くまで飛ばした人が勝ち!」

 ちなみに弟妹達は背が足りないので踏み台を使っても良しとする。遠くまで飛ばすにはある程度の技巧が必要で、力任せにしても綺麗に飛んでいかない。

 バドミントンのリベンジをさせてもらう! ……と意気込んでいたのも束の間。

 背丈のある方が有利なのか一番はやっぱりシルであった。畜生。
 しかし当人は勝負などどうでも良い様ですっかりグライダーがお気に召した様子。
 魅せられたようにキラキラとした瞳ではしゃいでいる。

 「マリー、図々しくて申し訳ないが……この玩具を貰えないだろうか? 頼む。お土産にしたいんだ」

 「良いけど……これは今日使った物だし。シルは何時帰るの? 間に合うなら新しいのを用意させるけど」

 「本当か!? 有難い!」

 彼はまだ数日トラス王国に居るらしい。

 ちなみにシルが祖国から持ってきてくれたお土産は、石鹸やオリーブオイル等の物産に加え、メティが私に渡したかったものであるガリア王国で有名なガラス工芸品のペンだった。
 その優美で繊細、かつ豪華な美しさはかなりのお品に見える。
 事実、後でダディママンに見せてみると、ガリア王国でさえ王族が使ってもおかしくない程のものらしい。トラス王国ならもっと値が張るだろうとの事。
 「お前には不相応な程のものだから決して壊さぬように」と念を押された。そこまでの逸品であれば書く時に緊張で震えて文字がのたうちそうだが……大事に使っていこう。
 明らかにグライダー飛行機に見合ってない。二人分の小物入れも発注しておくか。やられたらやり返す――倍返しだ!


***


 「あー、海風が気持ちいい!」

 それに懐かしい潮の香り――!

 私は息を大きく吸って、うんと伸びをする。
 目の前には雄大な大海原が広がっていた。念願の、海だ。

 ここはトラス王国の南にある港町ナヴィガポール。
 いやー、ここまで馬車に揺られてやって来るのは本当大変だった。今は体調を調整する為にこの町でのんびりしている最中である。

 実はメティ達と遊んだ数日後、サングマ教皇猊下からお返事が来た。小物入れのお礼に加えて、是非一度聖地へお越しくださいとのお誘いがあったのだ。
 どの道聖地へは初代聖女の手記を読みに行かねばならない。ただ、それを何時にするか――悩ましい。

 父サイモンに相談すると、「諸事情を考慮すれば出来るだけ早い方が良いだろう」との事。メンデル修道院長とも相談の上、日程を決めた。

 貴族令嬢は色々支度もあり、旅はどうしても普通の人よりも歩みは遅くなる。それも考慮に入れたものなので、実にのんびりとした日程である。

 港町ナヴィガポールで陸路の疲れを癒しコンディションを整えた後は船旅になる。と言うのも、船の方がずっと時間短縮出来るから。
 ラベンダー修道院で教えて貰ったが、聖地は隣国ガリア王国の傍にある島であり、中央大神殿は山の上に聳え立って独立を保っているとの事。
 ちなみに陸路の場合はモンサンミッシェルのように、引き潮の時に島への道が出来るそうなのでそれを伝って歩いていかねばならない。

 船旅……酔うだろうなぁ。前世の巨大クルーズ船でさえ酔う時は酔う。ましてやこの世界の文明レベルの船は間違いなく揺れまくるだろう。そう、キーマン商会の立派な商船であっても。
 隣にいるグレイに船酔いの懸念を零すと、「こればかりは慣れるしかないよ」と苦笑交じりに返された。

 「どうしても辛かったら釣床ハンモックで寝ていれば良いから」

 私専用の新しいハンモックを用意してくれているらしい。うむ、一日中寝ている一択だな。

 そう決意した私はワインの水割りを飲み干した。
感想 1,014

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」