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貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
旅に出ます。
運動した後は食事が美味い。
お昼になったので、手を洗って食事を採る。結局カレーは臭うという事で却下となったのは残念だったが、代わりにサンドイッチやハンバーガー、フライドポテト、フライドチキン、梨やリンゴといった果物に舌鼓を打ち、紅茶を楽しむ。
メティもシルも一口食べて「美味しい!」と声を上げていた。
「あれ、メティは以前アン姉様に呼ばれていた事があったけど、食べた事無かったっけ?」
「アン様とは何度かお招き頂いたけれど、食べた事があるのはお菓子だけだったのよ。あれも美味しかったわ」
「メティからキャンディ伯爵家の食事は美味だと聞いていたが、これは聞きしに勝るものだな。ガリアの王宮でも通用する味だ」
「それは良かった。お菓子は今日もとびっきりのだから期待してて。お土産にも焼き菓子を作らせてあるから」
「まぁ、ありがとう!」
続いて園遊会の話をすると、メティだけでなくシルもお腹を抱えて笑っていた。
「マリーは変わっているね。いや、良い意味だよ。面白い子だなぁ」
「でしょう? シル。だからお友達になりたいって思ったの」
「もう。これでもこっちは必死なんですけど。権力争いとか怖いし、人の嫉妬や恨み買うような立場になりたく無い。苦労したくないし、のんびり暇を持て余したマダムの生活をしたいんだもの」
「確かにそれは王子様には叶えられない事だね」
昼食が終わると、すぐ激しく動くのも何だし(というか私自身が疲れるから)大人しめの遊びをすることにした。
鏡と桶で虹を作ったり、ブーメランを飛ばしたり。フリスビーやフラフープ、竹馬等も遊んだ。小腹が空けばシュークリームやケーキを気軽に摘まみ、お茶を飲む。お菓子も好評だった。
最後の締めは最近完成した玩具の飛行機。
と言っても、前世百円ショップでも売ってたような、ゴムが無いプロペラが付いているだけのグライダー飛行機である。
木と薄布等でなるべく軽くして作った。
「それは? 鳥みたいだが」
保護の為の箱から飛行機を取り出すと、シルが興味深そうに見ている。
「ええと。今からやるのは飛行機飛ばし大会。こうやって飛ばすの。見てて」
飛行機を飛ばすとプロペラが回り、真っ直ぐに飛んでいく。妨害する風も少なかったので割とバランスのよい飛行を見せたと思う。
航空力学とか良く知らないなりに、記憶を辿りながら何度も試行錯誤で苦労した。
「おお!」
数メートル先にポトリと飛行機が落ちる。馬の脚共がそこへ印を付け、メジャーを持ってきて距離を測った。
「これをなるべく遠くまで飛ばした人が勝ち!」
ちなみに弟妹達は背が足りないので踏み台を使っても良しとする。遠くまで飛ばすにはある程度の技巧が必要で、力任せにしても綺麗に飛んでいかない。
バドミントンのリベンジをさせてもらう! ……と意気込んでいたのも束の間。
背丈のある方が有利なのか一番はやっぱりシルであった。畜生。
しかし当人は勝負などどうでも良い様ですっかりグライダーがお気に召した様子。
魅せられたようにキラキラとした瞳ではしゃいでいる。
「マリー、図々しくて申し訳ないが……この玩具を貰えないだろうか? 頼む。お土産にしたいんだ」
「良いけど……これは今日使った物だし。シルは何時帰るの? 間に合うなら新しいのを用意させるけど」
「本当か!? 有難い!」
彼はまだ数日トラス王国に居るらしい。
ちなみにシルが祖国から持ってきてくれたお土産は、石鹸やオリーブオイル等の物産に加え、メティが私に渡したかったものであるガリア王国で有名なガラス工芸品のペンだった。
その優美で繊細、かつ豪華な美しさはかなりのお品に見える。
事実、後で父や母に見せてみると、ガリア王国でさえ王族が使ってもおかしくない程のものらしい。トラス王国ならもっと値が張るだろうとの事。
「お前には不相応な程のものだから決して壊さぬように」と念を押された。そこまでの逸品であれば書く時に緊張で震えて文字がのたうちそうだが……大事に使っていこう。
明らかにグライダー飛行機に見合ってない。二人分の小物入れも発注しておくか。やられたらやり返す――倍返しだ!
***
「あー、海風が気持ちいい!」
それに懐かしい潮の香り――!
私は息を大きく吸って、うんと伸びをする。
目の前には雄大な大海原が広がっていた。念願の、海だ。
ここはトラス王国の南にある港町ナヴィガポール。
いやー、ここまで馬車に揺られてやって来るのは本当大変だった。今は体調を調整する為にこの町でのんびりしている最中である。
実はメティ達と遊んだ数日後、サングマ教皇猊下からお返事が来た。小物入れのお礼に加えて、是非一度聖地へお越しくださいとのお誘いがあったのだ。
どの道聖地へは初代聖女の手記を読みに行かねばならない。ただ、それを何時にするか――悩ましい。
父サイモンに相談すると、「諸事情を考慮すれば出来るだけ早い方が良いだろう」との事。メンデル修道院長とも相談の上、日程を決めた。
貴族令嬢は色々支度もあり、旅はどうしても普通の人よりも歩みは遅くなる。それも考慮に入れたものなので、実にのんびりとした日程である。
港町ナヴィガポールで陸路の疲れを癒しコンディションを整えた後は船旅になる。と言うのも、船の方がずっと時間短縮出来るから。
ラベンダー修道院で教えて貰ったが、聖地は隣国ガリア王国の傍にある島であり、中央大神殿は山の上に聳え立って独立を保っているとの事。
ちなみに陸路の場合はモンサンミッシェルのように、引き潮の時に島への道が出来るそうなのでそれを伝って歩いていかねばならない。
船旅……酔うだろうなぁ。前世の巨大クルーズ船でさえ酔う時は酔う。ましてやこの世界の文明レベルの船は間違いなく揺れまくるだろう。そう、キーマン商会の立派な商船であっても。
隣にいるグレイに船酔いの懸念を零すと、「こればかりは慣れるしかないよ」と苦笑交じりに返された。
「どうしても辛かったら釣床で寝ていれば良いから」
私専用の新しいハンモックを用意してくれているらしい。うむ、一日中寝ている一択だな。
そう決意した私はワインの水割りを飲み干した。
お昼になったので、手を洗って食事を採る。結局カレーは臭うという事で却下となったのは残念だったが、代わりにサンドイッチやハンバーガー、フライドポテト、フライドチキン、梨やリンゴといった果物に舌鼓を打ち、紅茶を楽しむ。
メティもシルも一口食べて「美味しい!」と声を上げていた。
「あれ、メティは以前アン姉様に呼ばれていた事があったけど、食べた事無かったっけ?」
「アン様とは何度かお招き頂いたけれど、食べた事があるのはお菓子だけだったのよ。あれも美味しかったわ」
「メティからキャンディ伯爵家の食事は美味だと聞いていたが、これは聞きしに勝るものだな。ガリアの王宮でも通用する味だ」
「それは良かった。お菓子は今日もとびっきりのだから期待してて。お土産にも焼き菓子を作らせてあるから」
「まぁ、ありがとう!」
続いて園遊会の話をすると、メティだけでなくシルもお腹を抱えて笑っていた。
「マリーは変わっているね。いや、良い意味だよ。面白い子だなぁ」
「でしょう? シル。だからお友達になりたいって思ったの」
「もう。これでもこっちは必死なんですけど。権力争いとか怖いし、人の嫉妬や恨み買うような立場になりたく無い。苦労したくないし、のんびり暇を持て余したマダムの生活をしたいんだもの」
「確かにそれは王子様には叶えられない事だね」
昼食が終わると、すぐ激しく動くのも何だし(というか私自身が疲れるから)大人しめの遊びをすることにした。
鏡と桶で虹を作ったり、ブーメランを飛ばしたり。フリスビーやフラフープ、竹馬等も遊んだ。小腹が空けばシュークリームやケーキを気軽に摘まみ、お茶を飲む。お菓子も好評だった。
最後の締めは最近完成した玩具の飛行機。
と言っても、前世百円ショップでも売ってたような、ゴムが無いプロペラが付いているだけのグライダー飛行機である。
木と薄布等でなるべく軽くして作った。
「それは? 鳥みたいだが」
保護の為の箱から飛行機を取り出すと、シルが興味深そうに見ている。
「ええと。今からやるのは飛行機飛ばし大会。こうやって飛ばすの。見てて」
飛行機を飛ばすとプロペラが回り、真っ直ぐに飛んでいく。妨害する風も少なかったので割とバランスのよい飛行を見せたと思う。
航空力学とか良く知らないなりに、記憶を辿りながら何度も試行錯誤で苦労した。
「おお!」
数メートル先にポトリと飛行機が落ちる。馬の脚共がそこへ印を付け、メジャーを持ってきて距離を測った。
「これをなるべく遠くまで飛ばした人が勝ち!」
ちなみに弟妹達は背が足りないので踏み台を使っても良しとする。遠くまで飛ばすにはある程度の技巧が必要で、力任せにしても綺麗に飛んでいかない。
バドミントンのリベンジをさせてもらう! ……と意気込んでいたのも束の間。
背丈のある方が有利なのか一番はやっぱりシルであった。畜生。
しかし当人は勝負などどうでも良い様ですっかりグライダーがお気に召した様子。
魅せられたようにキラキラとした瞳ではしゃいでいる。
「マリー、図々しくて申し訳ないが……この玩具を貰えないだろうか? 頼む。お土産にしたいんだ」
「良いけど……これは今日使った物だし。シルは何時帰るの? 間に合うなら新しいのを用意させるけど」
「本当か!? 有難い!」
彼はまだ数日トラス王国に居るらしい。
ちなみにシルが祖国から持ってきてくれたお土産は、石鹸やオリーブオイル等の物産に加え、メティが私に渡したかったものであるガリア王国で有名なガラス工芸品のペンだった。
その優美で繊細、かつ豪華な美しさはかなりのお品に見える。
事実、後で父や母に見せてみると、ガリア王国でさえ王族が使ってもおかしくない程のものらしい。トラス王国ならもっと値が張るだろうとの事。
「お前には不相応な程のものだから決して壊さぬように」と念を押された。そこまでの逸品であれば書く時に緊張で震えて文字がのたうちそうだが……大事に使っていこう。
明らかにグライダー飛行機に見合ってない。二人分の小物入れも発注しておくか。やられたらやり返す――倍返しだ!
***
「あー、海風が気持ちいい!」
それに懐かしい潮の香り――!
私は息を大きく吸って、うんと伸びをする。
目の前には雄大な大海原が広がっていた。念願の、海だ。
ここはトラス王国の南にある港町ナヴィガポール。
いやー、ここまで馬車に揺られてやって来るのは本当大変だった。今は体調を調整する為にこの町でのんびりしている最中である。
実はメティ達と遊んだ数日後、サングマ教皇猊下からお返事が来た。小物入れのお礼に加えて、是非一度聖地へお越しくださいとのお誘いがあったのだ。
どの道聖地へは初代聖女の手記を読みに行かねばならない。ただ、それを何時にするか――悩ましい。
父サイモンに相談すると、「諸事情を考慮すれば出来るだけ早い方が良いだろう」との事。メンデル修道院長とも相談の上、日程を決めた。
貴族令嬢は色々支度もあり、旅はどうしても普通の人よりも歩みは遅くなる。それも考慮に入れたものなので、実にのんびりとした日程である。
港町ナヴィガポールで陸路の疲れを癒しコンディションを整えた後は船旅になる。と言うのも、船の方がずっと時間短縮出来るから。
ラベンダー修道院で教えて貰ったが、聖地は隣国ガリア王国の傍にある島であり、中央大神殿は山の上に聳え立って独立を保っているとの事。
ちなみに陸路の場合はモンサンミッシェルのように、引き潮の時に島への道が出来るそうなのでそれを伝って歩いていかねばならない。
船旅……酔うだろうなぁ。前世の巨大クルーズ船でさえ酔う時は酔う。ましてやこの世界の文明レベルの船は間違いなく揺れまくるだろう。そう、キーマン商会の立派な商船であっても。
隣にいるグレイに船酔いの懸念を零すと、「こればかりは慣れるしかないよ」と苦笑交じりに返された。
「どうしても辛かったら釣床で寝ていれば良いから」
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