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貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
グレイ・ルフナー(89)
トルトリノの港に錨を下ろすと、船室からマリー達が出て来た。
皆顔色が悪い。カレル様とエヴァン修道士に至っては船酔いもあるだろう、土気色。二人は前脚ヨハンと後ろ脚シュテファンにそれぞれ背負われている。
マリーは僕に目を留めると、多少よろめきつつ、サリーナに助けられながら真っ直ぐに歩いてきた。
「グレイ。本当に良かったわ、無事に町に着いて。カレル兄様から訊いたのだけど、海賊に襲われていたんですってね。砲撃の音が何度もした時は、生きた心地がしなかったわ」
そう言って少し震えながら僕に抱き着くマリー。ほのかに薔薇の香りがした。
彼女は見ていないから分からなかっただろうけど、生きた心地がしなかったのは寧ろ海賊の方じゃないかと思いつつ。
僕は彼女を抱きしめ返し、宥めるように背中をポンポンとした。それで少し気を持ち直したのか、マリーは顔を上げる。
「グレイ、後で私達の結婚について相談があるの」
「ああ、僕も丁度その事を話さなければと思っていたんだ。ここじゃ何だし、宿を取ったらそこで話そうか」
「ええ」
タラップが下ろされ、さて船を降りようかという時だった。
「『そこの船! 検問である! 船を降りたければ先に検問を受けよ!』」
船着き場で役人達が十名ばかり、松明を片手に口々にこちらへ叫んでいた。カチャカチャという金属がぶつかる音――彼らは武装していて、物々しい雰囲気だ。
僕とファリエロは顔を見合わせる。
「この町ってそんなに警備厳重だったっけ?」
「いや、俺も初耳だぜグレイ坊」
「な、何なの……」
「検問を受けろ、だってさ」
マリーの疑問に答える。何があったのかは分からないが、僕達はとりあえず検問に応じる事にした。
船のタラップをこちらの動きを警戒しながら上がって来る役人達。彼らは無遠慮に僕達をじろじろと見てきた。
「『正直に答えるように。嘘を吐けば豚箱行きだからな! 船籍は?』」
「『トラス王国だ』」
「『所属は?』」
「『キーマン商会』」
「『キーマン商会!? あの大店の!』」
ファリエロが商会の名を口にすると、役人の態度が少し軟化した。
「『失礼。北の方では地揺れの被害が酷かったと聞いていたのだが、そんな中をここまで? 積み荷もあまり運んでは居ない様子だが……』」
少しだけ丁寧な言葉になった役人。ファリエロは肩を竦める。
「『商船だが、今回はやんごとないお客様を乗せているんでね。ちなみにそこの坊ちゃんは商会の御曹司さ』」
「『グレイ・ルフナーだ。トラス王国のルフナー子爵家の者でもある』」
「『こ、これは……貴族様でいらっしゃいましたか』」
役人達は帽子を脱いで僕に挨拶をする。言葉が更に丁寧になった。
「『あの、子爵様。やんごとないお客様、とは……』」
恐る恐る切り出した役人。僕は枢機卿猊下達の方を手で示した。
「『あちらにいらっしゃるトラス王国の枢機卿猊下及び聖地巡礼の方々、いずれも僕より身分が高いお方でいらっしゃるからくれぐれも失礼はしないで貰いたい』」
「枢機卿」「僕より身分が高いお方」と聞いた役人達はすっかり及び腰になった。
「『わ、分かりました! では、大変お手数ですが、身分証明のみ改めさせて頂いても宜しいでしょうか? 勿論普段はそこまでしないのですが、こちらにも事情が御座いまして』」
平身低頭しながらも証明書を改めていく役人。暗い中、ランタンや松明の灯りを頼りに行うのでなかなか進まない。
「検問はまだ終わらないのかしら。海賊に襲われたばかりだし早く宿で体を休ませたいのに」
マリーが溜息を吐いて文句を言った。その言葉に一人の役人が驚いた表情の顔を上げる。
「『あの、すみません。そちらのご令嬢がトラス王国語で『海賊』と仰りませんでしたか?』」
トラス王国語が出来るらしいその役人に、ファリエロが説明した。
「『ええ、ここに来る前、アヤスラニ帝国のものらしき海賊船に追いかけられましてね。幸いマストを撃ち抜いて行動不能にしてやれたのでここへ来れた訳ですが』」
役人達は驚きの声を上げて顔を見合わせる。役人の代表らしき男が口を開いた。
「『実は、こうした検問を行っているのもその異国の海賊の所為なのです。奴らはこの町に上陸しようとしたのですが、海賊船でしたので追い払ってやりました。
加えて今朝方、コリピサから連絡がありまして、そちらにも異国の海賊船が数隻現れて商船を襲ったそうで警戒されたしとの旨でした。コリピサの方は幸い南部諸侯の軍艦によって駆逐されたとの事ですが、皆様を襲って来た海賊船はその残党だったのかも知れません。
奴らは海賊、いつこの町に再び何かを仕掛けて来るか分かりませんし、報復の可能性もあったので警戒していたのです。
王都ティタルミノーザからはコスタポリ救援の為に軍艦が出動したと聞いておりますし、その情報を掴まれたのか……』」
役人達は身分証明を改めた後、「『ご協力感謝致します』」と言ってペコペコしながら戻って行った。
***
トルトリノの高級宿の一室。時間を取られた分、役人の一人に走って貰って宿を取る事が出来た。
役人の検問の顛末の説明を僕から受けて、ぐったりとソファーに凭れ掛かっていたマリーは「そう言う事だったのね……」と呟いた。彼女の隣にはカレル様がぐったりしている。
「まあでも地揺れで海上警備が手薄になったという情報を掴んだというのは違うような気がするわ。アヤスラニ帝国ってかなり遠いんでしょう?」
マリーの推測に僕も頷く。
「そうだね。コリピサよりもずっとずっと遠く、東に行ったところが帝国なんだ。でも、偶然とは言い切れないような気もしてる」
これは僕の勘だけれど。明らかに不自然な状況だと思う。あの海賊船は何か意図するところがあってあの海域に居たに違いない。
「偶然じゃなかったとしたら……何がしたかったんだあの海賊」
カレル様が呟く。しかしそれ以上情報がある訳でもなく、その話はそれで終わりになった。
「ところで、結婚についての話って言ったよね」
「ええ、その事よ。やはり聖域で結婚してしまった方が良いと私は思うの……グレイは、その……どう思うの?」
「ああ、僕も考え直したんだけどさ。仮に僕とマリーが結婚したとしても、『聖女』という肩書の力を欲して無理やり別れさせられる可能性があるって気付いたんだ」
僕は懸念をマリーに話す。処女ではない場合、王妃は無理でも側室、という手があるのだと。
「何ですって!? 絶っっっ対に嫌よ、そんなの!!!」
マリーは叫び、すぐにぱったりとソファーに倒れ込んだ。
「おい、叫ぶな。頭に響く……うぅ」
カレル様が力無く言い、サリーナが「マリー様、お気を確かに」と水を差し出している。
コップを受け取って飲み干した彼女は徐に起き上がるとギラギラとした目でこちらをギッと見据えた。
――く、食われる!?
まるで狼が獲物を見詰めるような眼差しに少々身の危険を感じていると、やけに低く抑えられた迫力のある声でマリーは言った。
「……グレイ、もうね。事此処に至っては結婚するだけじゃ足りないわ。教皇猊下に後ろ盾になって貰う位じゃないと」
「そうだな……マリーが聖女だとバレてる可能性の方が大きいし、その方が安全だろう。トラス王国の王子二人でも厄介なのに、ガリア王国の王子も参加したら目も当てられん」
頷くカレル様。マリーは困ったように首を傾げる。
「うーん、シルはあくまでもお友達だし大丈夫だと思うけど……」
「お前が聖女だってバレても目の色を変えない自信はあるか? 本人はそのつもりじゃなくても回りの人間が動く場合もある」
確かにそうだ、と僕も思う。聖女と知られればガリアの王子というか、王国自体がマリーを欲して取り込もうと動くだろう。
きっと、シルヴィオ王子がマリーと既知である事を利用して、周りの人間があの手この手で動くに違いない。
「何事も想定しておくことに越したことはないよ、マリー」
「……そうね」
カレル様と僕の言葉に、マリーはいまいち腑に落ちなさそうな表情だったが頷いていた。
「まあいいわ。聖地に着いたら教皇猊下に私達の結婚と後ろ盾をお願いする方向で。グレイ、早速今日から一緒に寝ましょ?」
「寝ません。というか、明日また出航なんだよ、マリー」
思わず間髪入れず答えた僕。
「一緒に寝ちゃったら、その……辛くなるじゃないか、色々と」
頬を熱くしながら羞恥を我慢してそう言うと、マリーは目を丸くした。
サリーナがスン…とした表情になり、カレル様が溜息を吐く。
「お前ら、いちゃつくなら他所でやれ……」
皆顔色が悪い。カレル様とエヴァン修道士に至っては船酔いもあるだろう、土気色。二人は前脚ヨハンと後ろ脚シュテファンにそれぞれ背負われている。
マリーは僕に目を留めると、多少よろめきつつ、サリーナに助けられながら真っ直ぐに歩いてきた。
「グレイ。本当に良かったわ、無事に町に着いて。カレル兄様から訊いたのだけど、海賊に襲われていたんですってね。砲撃の音が何度もした時は、生きた心地がしなかったわ」
そう言って少し震えながら僕に抱き着くマリー。ほのかに薔薇の香りがした。
彼女は見ていないから分からなかっただろうけど、生きた心地がしなかったのは寧ろ海賊の方じゃないかと思いつつ。
僕は彼女を抱きしめ返し、宥めるように背中をポンポンとした。それで少し気を持ち直したのか、マリーは顔を上げる。
「グレイ、後で私達の結婚について相談があるの」
「ああ、僕も丁度その事を話さなければと思っていたんだ。ここじゃ何だし、宿を取ったらそこで話そうか」
「ええ」
タラップが下ろされ、さて船を降りようかという時だった。
「『そこの船! 検問である! 船を降りたければ先に検問を受けよ!』」
船着き場で役人達が十名ばかり、松明を片手に口々にこちらへ叫んでいた。カチャカチャという金属がぶつかる音――彼らは武装していて、物々しい雰囲気だ。
僕とファリエロは顔を見合わせる。
「この町ってそんなに警備厳重だったっけ?」
「いや、俺も初耳だぜグレイ坊」
「な、何なの……」
「検問を受けろ、だってさ」
マリーの疑問に答える。何があったのかは分からないが、僕達はとりあえず検問に応じる事にした。
船のタラップをこちらの動きを警戒しながら上がって来る役人達。彼らは無遠慮に僕達をじろじろと見てきた。
「『正直に答えるように。嘘を吐けば豚箱行きだからな! 船籍は?』」
「『トラス王国だ』」
「『所属は?』」
「『キーマン商会』」
「『キーマン商会!? あの大店の!』」
ファリエロが商会の名を口にすると、役人の態度が少し軟化した。
「『失礼。北の方では地揺れの被害が酷かったと聞いていたのだが、そんな中をここまで? 積み荷もあまり運んでは居ない様子だが……』」
少しだけ丁寧な言葉になった役人。ファリエロは肩を竦める。
「『商船だが、今回はやんごとないお客様を乗せているんでね。ちなみにそこの坊ちゃんは商会の御曹司さ』」
「『グレイ・ルフナーだ。トラス王国のルフナー子爵家の者でもある』」
「『こ、これは……貴族様でいらっしゃいましたか』」
役人達は帽子を脱いで僕に挨拶をする。言葉が更に丁寧になった。
「『あの、子爵様。やんごとないお客様、とは……』」
恐る恐る切り出した役人。僕は枢機卿猊下達の方を手で示した。
「『あちらにいらっしゃるトラス王国の枢機卿猊下及び聖地巡礼の方々、いずれも僕より身分が高いお方でいらっしゃるからくれぐれも失礼はしないで貰いたい』」
「枢機卿」「僕より身分が高いお方」と聞いた役人達はすっかり及び腰になった。
「『わ、分かりました! では、大変お手数ですが、身分証明のみ改めさせて頂いても宜しいでしょうか? 勿論普段はそこまでしないのですが、こちらにも事情が御座いまして』」
平身低頭しながらも証明書を改めていく役人。暗い中、ランタンや松明の灯りを頼りに行うのでなかなか進まない。
「検問はまだ終わらないのかしら。海賊に襲われたばかりだし早く宿で体を休ませたいのに」
マリーが溜息を吐いて文句を言った。その言葉に一人の役人が驚いた表情の顔を上げる。
「『あの、すみません。そちらのご令嬢がトラス王国語で『海賊』と仰りませんでしたか?』」
トラス王国語が出来るらしいその役人に、ファリエロが説明した。
「『ええ、ここに来る前、アヤスラニ帝国のものらしき海賊船に追いかけられましてね。幸いマストを撃ち抜いて行動不能にしてやれたのでここへ来れた訳ですが』」
役人達は驚きの声を上げて顔を見合わせる。役人の代表らしき男が口を開いた。
「『実は、こうした検問を行っているのもその異国の海賊の所為なのです。奴らはこの町に上陸しようとしたのですが、海賊船でしたので追い払ってやりました。
加えて今朝方、コリピサから連絡がありまして、そちらにも異国の海賊船が数隻現れて商船を襲ったそうで警戒されたしとの旨でした。コリピサの方は幸い南部諸侯の軍艦によって駆逐されたとの事ですが、皆様を襲って来た海賊船はその残党だったのかも知れません。
奴らは海賊、いつこの町に再び何かを仕掛けて来るか分かりませんし、報復の可能性もあったので警戒していたのです。
王都ティタルミノーザからはコスタポリ救援の為に軍艦が出動したと聞いておりますし、その情報を掴まれたのか……』」
役人達は身分証明を改めた後、「『ご協力感謝致します』」と言ってペコペコしながら戻って行った。
***
トルトリノの高級宿の一室。時間を取られた分、役人の一人に走って貰って宿を取る事が出来た。
役人の検問の顛末の説明を僕から受けて、ぐったりとソファーに凭れ掛かっていたマリーは「そう言う事だったのね……」と呟いた。彼女の隣にはカレル様がぐったりしている。
「まあでも地揺れで海上警備が手薄になったという情報を掴んだというのは違うような気がするわ。アヤスラニ帝国ってかなり遠いんでしょう?」
マリーの推測に僕も頷く。
「そうだね。コリピサよりもずっとずっと遠く、東に行ったところが帝国なんだ。でも、偶然とは言い切れないような気もしてる」
これは僕の勘だけれど。明らかに不自然な状況だと思う。あの海賊船は何か意図するところがあってあの海域に居たに違いない。
「偶然じゃなかったとしたら……何がしたかったんだあの海賊」
カレル様が呟く。しかしそれ以上情報がある訳でもなく、その話はそれで終わりになった。
「ところで、結婚についての話って言ったよね」
「ええ、その事よ。やはり聖域で結婚してしまった方が良いと私は思うの……グレイは、その……どう思うの?」
「ああ、僕も考え直したんだけどさ。仮に僕とマリーが結婚したとしても、『聖女』という肩書の力を欲して無理やり別れさせられる可能性があるって気付いたんだ」
僕は懸念をマリーに話す。処女ではない場合、王妃は無理でも側室、という手があるのだと。
「何ですって!? 絶っっっ対に嫌よ、そんなの!!!」
マリーは叫び、すぐにぱったりとソファーに倒れ込んだ。
「おい、叫ぶな。頭に響く……うぅ」
カレル様が力無く言い、サリーナが「マリー様、お気を確かに」と水を差し出している。
コップを受け取って飲み干した彼女は徐に起き上がるとギラギラとした目でこちらをギッと見据えた。
――く、食われる!?
まるで狼が獲物を見詰めるような眼差しに少々身の危険を感じていると、やけに低く抑えられた迫力のある声でマリーは言った。
「……グレイ、もうね。事此処に至っては結婚するだけじゃ足りないわ。教皇猊下に後ろ盾になって貰う位じゃないと」
「そうだな……マリーが聖女だとバレてる可能性の方が大きいし、その方が安全だろう。トラス王国の王子二人でも厄介なのに、ガリア王国の王子も参加したら目も当てられん」
頷くカレル様。マリーは困ったように首を傾げる。
「うーん、シルはあくまでもお友達だし大丈夫だと思うけど……」
「お前が聖女だってバレても目の色を変えない自信はあるか? 本人はそのつもりじゃなくても回りの人間が動く場合もある」
確かにそうだ、と僕も思う。聖女と知られればガリアの王子というか、王国自体がマリーを欲して取り込もうと動くだろう。
きっと、シルヴィオ王子がマリーと既知である事を利用して、周りの人間があの手この手で動くに違いない。
「何事も想定しておくことに越したことはないよ、マリー」
「……そうね」
カレル様と僕の言葉に、マリーはいまいち腑に落ちなさそうな表情だったが頷いていた。
「まあいいわ。聖地に着いたら教皇猊下に私達の結婚と後ろ盾をお願いする方向で。グレイ、早速今日から一緒に寝ましょ?」
「寝ません。というか、明日また出航なんだよ、マリー」
思わず間髪入れず答えた僕。
「一緒に寝ちゃったら、その……辛くなるじゃないか、色々と」
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