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貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
謀。
中立派の貴婦人達は口々に、王位継承権争いが激化していく事に対する不安と不満を言い始めた。
「何気ない会話をするだけでも、やれ第一王子派と話しただとか第二王子派と話しただとか勘ぐられるのですわ」
一人が溜息を吐けば、
「そうそう、中立派を自陣営に引き込もうと勧誘されたりねぇ。お断りするんですけれど、その度に不快な思いをさせられますの!」
と別の一人が柳眉を逆立てる。
「まあ、貴女も? 私もなのよ。最近はマリー様が聖女様だという事で掌を返して取次ぎを頼まれたり」
と言ったのは家庭教師の一人の奥方で男爵夫人。
マジか……。
「申し訳ありません、私のせいで……」
大変なご迷惑になってしまっている。宝くじ高額当選金状態の私は、あの手この手で方々から欲望の魔の手を伸ばされているのだろう。それなのに庇ってくれている。
私だったら人間不信になっているところだ。申し訳なさで頭を下げた。
「いえ、マリー様の所為では」
ピュシス夫人が閉じた扇の先を顎に当てて思案するように口を開いた。
「このままですとぉ、どちらの王子殿下が勝っても禍根を残しそうですわよねぇ~。両陣営の貴族も納得して素直に従うとは思えませんわぁ」
確かに、と頷く。
結末は最悪、勝った方が負けた方を謀殺という流れになるのだろう。どっちに転んでも内乱待ったなし。
祖母ラトゥが静かにティーカップから口を外した。
「かと言って、オディロン陛下に男児は二人の王子殿下のみ……他に候補者がいらっしゃるのかしら?」
そこへ、ホルメー夫人が「あら、候補者なら、」と口を開いた。
「何も王子達に跡目を継がせずとも。時にサリューン枢機卿猊下は還俗なさるご予定はおありざます?」
「サヴァン先代伯爵夫人――!? お茶会の場で物騒な会話はやめて頂きたい!」
流石に聞き捨てならぬとばかりに叫ぶように言うサリューン枢機卿。しかし相手はどこ吹く風。
「物騒? 何の事ざましょう? 私はまだまだお若い猊下の還俗とご結婚の可能性についてお訊ねしただけざます」
等と言って、パラリと扇を開いて口元を隠し、しれっととぼけるホルメー夫人。ピュシス夫人がぱっと笑顔になって手を胸の前で合わせた。
「まああ、そうねぇ! その手があったわぁ! 落ち着いた方の方が国も安定しそうだし、王子殿下達も文句は言えないでしょうねぇ!」
「カヴァルリ先代子爵夫人まで!」
サリューン枢機卿には悪いが、他の貴婦人達の表情を見る限り「それも悪くない、いやむしろ良い案では」と考えているのが精神感応せずとも何となく分かる。
「まあまあ、猊下。不毛な争いで国が疲弊する事を考えれば、色々な可能性がありますわよね」
祖母ラトゥが宥めるように言うと、母ティヴィーナもそうですわ、と頷いた。
「勿論私達中立派の貴族達は、その可能性の中でも穏やかな結末を望んでおりますの」
続いて私も口を開く。
「サリューン枢機卿……来月にはガリア王国からアヤスラニ帝国にかけて災厄が訪れますわね。
その影響で来年は食料危機になる可能性が高まります。貴族を二分して跡目争いをしている場合ではないのですわ」
そう、その事でしなければならない事があるのだ。
本来なら国一丸でやるべき事なのだが、このままだと国主導じゃなく教会主導も考えねばならなくなるかもと懸念していたのだ。
「災厄?」
貴婦人の一人から質問が飛んだので、私はイドゥリースの占星術と合わせて聖女の能力で知り得たと説明する。勿論その内容と、来年が不作である可能性が高いという事も。
貴婦人達はショックを受けたようだったが、すぐに「国が円満に纏まらねばなりませんわね。私達に何か出来る事はないかしら」と立ち直った。
「……オディロン陛下を巻き込んででも、時間稼ぎでも良いから私達でそれなりの落としどころを作っていかねばならないざますわね」
ホルメー夫人がポツリと呟く。エピテュミア夫人がそうですわねと相槌を打った。
「ラトゥお姉様、聖女帰還の祝宴は、きっと良い機会になりますわ。聖女がどちらの王子に味方するのか、という事に注目が集まるに違いありませんもの。それをここに居る皆様で逆に利用できないものかしら」
「利用?」
「ええ、例えば――」
…………
……
…
***
『週刊ヌーヴェル 【特別増刊号 聖女様特集!】
弊社、ジュルナル新聞社の出資元であるキャンディ伯爵家の三番目の姫君、マリアージュ姫が聖地巡礼の末、聖女様として我が国にお戻りになられました。
数ある新聞社の中でもジュルナル新聞社のみが特別に取材を認められ、聖女マリアージュ様(以下マリー様と記す)が聖女様となられた経緯とその旅程について特集記事を組んでおります。
更には父君キャンディ伯爵様への独占インタビューも掲載!
聖女様再臨は我が国を挙げての慶事であり、この号を記念とされる事を推奨します!
聖女様ご帰還の祝宴が来たる●×日に宮廷で開催される予定。それまで王都内では初代聖女様にちなんだ劇が催され、一見の価値あり。
キャンディ伯爵様のご厚意により、特集の中には観劇料半額、キーマン商会での買い物優待チケットも掲載、切り取ってお使いを! 期間限定公演の為、まだ観ていないのならばお急ぎあれ!』
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本来なら国一丸でやるべき事なのだが、このままだと国主導じゃなく教会主導も考えねばならなくなるかもと懸念していたのだ。
「災厄?」
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貴婦人達はショックを受けたようだったが、すぐに「国が円満に纏まらねばなりませんわね。私達に何か出来る事はないかしら」と立ち直った。
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