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貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
【最終話②】最後の直線でグランドフィナーレ!【完結】
儀式も無事終わり、私達は来賓からのフラワーシャワーを浴びながら来た道を戻る。
馬車に乗り込む手前で立ち止まった。
「未婚の御令嬢は花嫁達の後ろにお集まり下さいませ」
未婚の令嬢達は戸惑っている様子だ。「えっ!?」とか「まあ、何をするのかしら?」とかいう声が聞こえる。
「これより花嫁達が花束を後ろ向きのまま投げます。その花束を受け取る事が出来た方は、幸せな結婚をすると言われております!」
「「「「何ですって!?」」」」
説明が終わった瞬間、背後から尋常じゃない圧が掛かる。
パッパカパー!
ラッパが吹き鳴らされ、私とアナベラ姉は花束を投げる準備をした。
「では参ります。三、二、一!」
それっと花束を思い切り放り投げると、背後で熾烈な争いがなされている模様。
とりあえず振り返って来賓達に礼を取る。
司会進行の者がこれから私達はお色直し、来賓達は披露宴会場である薔薇園へ移動である旨を高らかに喧伝しているのをBGMに、再び馬車に乗って退出した。
部屋に戻ると役者も斯くやとばかりに早着替えである。
アナベラ姉は赤薔薇をモチーフにした豪奢なドレス。そして私は美女と野獣のヒロインをイメージした金と黄のドレス、髪には赤い薔薇飾りをあしらった。
薔薇園へ降りるバルコニーまで移動すると、客達がざわざわと騒ぐ声が聞こえてきた。その理由は直ぐに分かった。
――空に浮く、大きな気球。
「あれは」
「ジャルダン様ですよ」
成る程これが祖父のサプライズか。
私達の到着を知らせる声が上がった。
花々や蔦、リボンで飾り付けられたバルコニーの階段を花婿のエスコートを受けながら一歩一歩降りて行く。
そして先導する使用人にそのまま気球の下までと連れて行かれた。祖父ジャルダンが得意気な顔で立っている。
気球は縄で引っ張られて浮かんでいた。
人を乗せられる大きさではないものの、丸い物が括りつけられており、そこから紐が垂れ下がっている。
「こんなに大きな気球……凄いわ」
「ええ、私も驚いたわ、お爺様」
私とアナベラ姉の言葉に、祖父は悪戯っぽくウインクをする。
「皆を驚かそうと秘密にしていたのだ。二人でこの紐を持って、司会者の合図で引きなさい」
「紳士淑女の皆様、この空に浮く不思議なものは気球というものでございます! 前キャンディ伯爵ジャルダン様から花嫁達への餞であり、これより紐を引く事で素敵な事が起こるでしょう!
では、花嫁様方、これより数を数えて合図をします。三、二、一!」
紐を引っ張ると、くす玉が割れて中から色とりどりの花びらが一斉に降り注いだ。
「何と美しい……!」
「素晴らしい演出でございますわね!」
「花びらの雨だなんて……素敵」
風に吹かれて舞い落ちる花びらの雨に、驚きの溜息と夫人や令嬢、子供達がきゃあきゃあとはしゃぐ声が聞こえる。
礼を言うと、祖父ジャルダンは「幸せになるのだぞ」と満足げに微笑む。そして来賓の方へ向き直ると紳士の礼を取った。私達もそれに倣う。
「それではお席にご案内致します」
興奮冷めやらぬ中。私達は高砂席へ、そして来賓方はそれぞれに準備されたテーブルへと移動して行った。
先程の祖父に涙ぐんでいたところで、父サイモンと母ティヴィーナ、義父ブルックと義母レピーシェがそれぞれ来てくれた事への挨拶を述べる。
「趣向を凝らせた料理や催しを用意させております。楽しんで行って頂ければ幸いに存じます」
やがて、食前酒が運ばれて来る。司会が乾杯をする旨を伝え、私達は立ち上がった。
「では、新たに誕生する夫婦達を祝して――乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」」
私達はグラスを掲げた後、向き直ってクロスハンドでワインを飲んだ。
***
食事が始まると、楽団が穏やかな音楽を奏で始める。
これから交流タイムという事で、私達は挨拶回りに立ち上がった。案外花婿花嫁は忙しくて食事が出来ない。
「おお、アナベラ嬢に聖女様。このような結婚式は寡聞にして聞いた事がありません。しかしあの気球という物と言い、目新しいものばかりで楽しませて頂いておりますぞ」
とオディロン王。「恐れ多い事ですわ」と礼を言い、隣のサリューン枢機卿に儀式のお礼を伝える。
「いえいえ、私も楽しんでおりましたから。あの『誓いの言葉』、というのは素晴らしいですね。ご夫婦幸せを私も祈っております」
かと思えば。
「この度はご結婚おめでとうございます。あの気球と言い、キャンディ伯爵家には素敵な隠し玉がまだまだありそうですね」
と、にっこり嫌な笑顔を浮かべたのはアルバート第一王子。
それをこちらも作り笑顔でスルーすると、隣のジェレミー第二王子に「聖女様、先日は母が申し訳ありませんでした……それと、ご結婚おめでとうございます」と控えめに言われ。
気にしないで下さいと言ってメティの所へ行くと、彼女がブーケを受け取っていた。
結婚のお祝いを言った後、「面白い結婚式ね!」と言うメティ。次はきっと君の番だろうから幸せな結婚をして欲しい。
アナベラ姉達と二手に別れて行った三魔女の所ではお祝いを言われた後、
「まあぁ、何て綺麗なのかしらぁ~! 結婚式でドレスを着替える事をお色直しっていうのぉ? 素敵ねぇ~!」
「本当に眼福ですわね、黄色いドレスは一歩間違えれば下品になりますけれど、マリーちゃんのは品があって素晴らしいですわ!」
「同感ざます。ドレスだけじゃなく、乾杯の所作は物語の一幕のようで素敵ざました」
やった、褒められた!
ピュシス夫人、エピュテミア婦人、ホルメー夫人は楽しんでくれているようだ。
三人の「「「お幸せに」」」の言葉を背に、母方の祖父母等の親戚やラベンダー修道院の面々、パント前伯爵等、お世話になっている人達の所を回って行く。
挨拶回りを終えて高砂席に戻ると、ウェディングケーキが運ばれて来ていた。
「ケーキ入刀!」
夫婦としての初めての共同作業。
リボン飾りの付いた新品のナイフを一緒に持ってケーキを切った。ファーストバイトをする時、グレイのほっぺたが羞恥で真っ赤になっていて眼福だったのはここだけの話。
***
劇団(聖女劇を王宮で演じてくれた面々)による結婚にまつわる歌や寸劇は好評だった。
豪華景品が当たるビンゴ大会は最初戸惑われたけれど、最後には大盛り上がり。
おお、次のイベントは私の出番か。
「さて、皆様。これより幸せの贈り物を天から撒きます。お席ではちょっと不便ですので、贈り物を受け取りたい方は広い芝生の方へお越しくださいませ」
今度は何をするのだろう? とワクワクした表情の客達が移動する。
「ぶつからないように離れて下さい! 小さなお子様はお母様の傍へ!」
さて、幸せの雨を降らせようか愚民共。今日ばかりはお前達が施す役だ。
私はクスリと笑って精神感応を使った。
水鳥達は嘴に、そしてカラス達は足にそれを掴む。飛び上がってある程度の高度まで来ると離して落下させた。
鈴と造花のチャームが長い房やリボンをたなびかせながら落ちて行く。
続けて小袋に入ったクッキーや飴も。
下に居る貴族達は歓声を上げながらそれをキャッチしたり拾ったりして大騒ぎである。
特に女性と子供は大喜び。
って、トラス王やサリューン枢機卿も混ざってる――!?
そこだけぽっかりと半径二メートル位空いているのは流石であった。
***
「それでは花婿花嫁達が退場致します。皆様、拍手を以ってお見送り下さいませ」
そろそろ披露宴もお開きという事で、私達はその場を移動する。来賓達を見送る為に玄関へ先回りするのだ。
それも普通の移動じゃない。パレードをするのである。
タンタンタカタカタンタン! タンタンタカタカタンタン!
楽団が軽快な音楽を奏で始め、パレードの服装に着替えて来た劇団の役者達が舞い踊って人々の目を楽しませる。
私とグレイはリディクトに乗って先頭を、そしてアナベラ姉と義兄アールはその後ろをオープン馬車で――って、何故ここに愛馬が!?
リディクトが居る筈のそこに、聖女仕様の愛馬が何故。
――しかもこんな衆目の前で!
私があわあわとしていると、
「マリー様の馬は我らをおいて他にはおりませぬ!」
「グレイ様にマリー様、どうぞお乗り下さいませ。我らからの『さぷらいず』にございます!」
「大丈夫ですよー、三人ですからー」
前脚、後ろ脚、そして中脚――ご丁寧にも二人乗り用の鞍でスレイプニル仕様になっていた。
「お前ら……」
というか、リディクトはどうした。内心焦っていると、グレイがクスリと笑う。
「折角だから乗らせて貰おうか、マリー。どうせ結婚式だけのものだって思われてるだろうから大丈夫だよ」
さあ、と手を伸ばされる。ちらりと後ろを見ると、幸い招待客はこれも余興なのだろうと思ってくれているようだった。
日常使用しているとは分からないならセーフである。
えいままよ、と前に乗り込む。今度は間違えずにちゃんと横乗りだ。グレイが後ろに跨った。
「ハイヨー!」
「「「ぶひひひーん!」」」
招待客の中を祝福を受けながら走り出す私達。
馬がハリボテである事や、目付きのヤバさに拍手をしながらクスクスと笑っている人も居たが、私達にはこういうので丁度良いのかも知れない。
それでも少しでもインパクトを和らげようと、招待客の目を楽しませる為に放っていたクジャクや愚民共を集め、精神感応を使う。
メァオー、メァオー、バサァー。
クジャク達が示し合わせたように一斉に尾羽を開き、招待客達は驚きと感動のどよめきを上げた。
続いて愚民共に命じると、音楽に合わせてお尻を振り振り、羽をバサバサ、可愛らしいダンスを踊る。
そこへ興奮した小型犬のガスィーちゃんとヘヒルちゃんが乱入し、愚民共は一斉に空へと飛び立った。
競馬でいうなら最後の直線だ。披露宴会場がぐんぐん遠くに離れて行く。
春の日差しに優しく包まれた私達は、何となく顔を見合わせて笑い合う。
そして、幸せの真っ只中で蕩けるようなキスを交わしたのだった。
貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。 終
---------------------------------------------------------------------
これにて一旦終幕とさせて頂きます。
長らくの連載でしたが、読んで下さりありがとうございました。
馬車に乗り込む手前で立ち止まった。
「未婚の御令嬢は花嫁達の後ろにお集まり下さいませ」
未婚の令嬢達は戸惑っている様子だ。「えっ!?」とか「まあ、何をするのかしら?」とかいう声が聞こえる。
「これより花嫁達が花束を後ろ向きのまま投げます。その花束を受け取る事が出来た方は、幸せな結婚をすると言われております!」
「「「「何ですって!?」」」」
説明が終わった瞬間、背後から尋常じゃない圧が掛かる。
パッパカパー!
ラッパが吹き鳴らされ、私とアナベラ姉は花束を投げる準備をした。
「では参ります。三、二、一!」
それっと花束を思い切り放り投げると、背後で熾烈な争いがなされている模様。
とりあえず振り返って来賓達に礼を取る。
司会進行の者がこれから私達はお色直し、来賓達は披露宴会場である薔薇園へ移動である旨を高らかに喧伝しているのをBGMに、再び馬車に乗って退出した。
部屋に戻ると役者も斯くやとばかりに早着替えである。
アナベラ姉は赤薔薇をモチーフにした豪奢なドレス。そして私は美女と野獣のヒロインをイメージした金と黄のドレス、髪には赤い薔薇飾りをあしらった。
薔薇園へ降りるバルコニーまで移動すると、客達がざわざわと騒ぐ声が聞こえてきた。その理由は直ぐに分かった。
――空に浮く、大きな気球。
「あれは」
「ジャルダン様ですよ」
成る程これが祖父のサプライズか。
私達の到着を知らせる声が上がった。
花々や蔦、リボンで飾り付けられたバルコニーの階段を花婿のエスコートを受けながら一歩一歩降りて行く。
そして先導する使用人にそのまま気球の下までと連れて行かれた。祖父ジャルダンが得意気な顔で立っている。
気球は縄で引っ張られて浮かんでいた。
人を乗せられる大きさではないものの、丸い物が括りつけられており、そこから紐が垂れ下がっている。
「こんなに大きな気球……凄いわ」
「ええ、私も驚いたわ、お爺様」
私とアナベラ姉の言葉に、祖父は悪戯っぽくウインクをする。
「皆を驚かそうと秘密にしていたのだ。二人でこの紐を持って、司会者の合図で引きなさい」
「紳士淑女の皆様、この空に浮く不思議なものは気球というものでございます! 前キャンディ伯爵ジャルダン様から花嫁達への餞であり、これより紐を引く事で素敵な事が起こるでしょう!
では、花嫁様方、これより数を数えて合図をします。三、二、一!」
紐を引っ張ると、くす玉が割れて中から色とりどりの花びらが一斉に降り注いだ。
「何と美しい……!」
「素晴らしい演出でございますわね!」
「花びらの雨だなんて……素敵」
風に吹かれて舞い落ちる花びらの雨に、驚きの溜息と夫人や令嬢、子供達がきゃあきゃあとはしゃぐ声が聞こえる。
礼を言うと、祖父ジャルダンは「幸せになるのだぞ」と満足げに微笑む。そして来賓の方へ向き直ると紳士の礼を取った。私達もそれに倣う。
「それではお席にご案内致します」
興奮冷めやらぬ中。私達は高砂席へ、そして来賓方はそれぞれに準備されたテーブルへと移動して行った。
先程の祖父に涙ぐんでいたところで、父サイモンと母ティヴィーナ、義父ブルックと義母レピーシェがそれぞれ来てくれた事への挨拶を述べる。
「趣向を凝らせた料理や催しを用意させております。楽しんで行って頂ければ幸いに存じます」
やがて、食前酒が運ばれて来る。司会が乾杯をする旨を伝え、私達は立ち上がった。
「では、新たに誕生する夫婦達を祝して――乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」」
私達はグラスを掲げた後、向き直ってクロスハンドでワインを飲んだ。
***
食事が始まると、楽団が穏やかな音楽を奏で始める。
これから交流タイムという事で、私達は挨拶回りに立ち上がった。案外花婿花嫁は忙しくて食事が出来ない。
「おお、アナベラ嬢に聖女様。このような結婚式は寡聞にして聞いた事がありません。しかしあの気球という物と言い、目新しいものばかりで楽しませて頂いておりますぞ」
とオディロン王。「恐れ多い事ですわ」と礼を言い、隣のサリューン枢機卿に儀式のお礼を伝える。
「いえいえ、私も楽しんでおりましたから。あの『誓いの言葉』、というのは素晴らしいですね。ご夫婦幸せを私も祈っております」
かと思えば。
「この度はご結婚おめでとうございます。あの気球と言い、キャンディ伯爵家には素敵な隠し玉がまだまだありそうですね」
と、にっこり嫌な笑顔を浮かべたのはアルバート第一王子。
それをこちらも作り笑顔でスルーすると、隣のジェレミー第二王子に「聖女様、先日は母が申し訳ありませんでした……それと、ご結婚おめでとうございます」と控えめに言われ。
気にしないで下さいと言ってメティの所へ行くと、彼女がブーケを受け取っていた。
結婚のお祝いを言った後、「面白い結婚式ね!」と言うメティ。次はきっと君の番だろうから幸せな結婚をして欲しい。
アナベラ姉達と二手に別れて行った三魔女の所ではお祝いを言われた後、
「まあぁ、何て綺麗なのかしらぁ~! 結婚式でドレスを着替える事をお色直しっていうのぉ? 素敵ねぇ~!」
「本当に眼福ですわね、黄色いドレスは一歩間違えれば下品になりますけれど、マリーちゃんのは品があって素晴らしいですわ!」
「同感ざます。ドレスだけじゃなく、乾杯の所作は物語の一幕のようで素敵ざました」
やった、褒められた!
ピュシス夫人、エピュテミア婦人、ホルメー夫人は楽しんでくれているようだ。
三人の「「「お幸せに」」」の言葉を背に、母方の祖父母等の親戚やラベンダー修道院の面々、パント前伯爵等、お世話になっている人達の所を回って行く。
挨拶回りを終えて高砂席に戻ると、ウェディングケーキが運ばれて来ていた。
「ケーキ入刀!」
夫婦としての初めての共同作業。
リボン飾りの付いた新品のナイフを一緒に持ってケーキを切った。ファーストバイトをする時、グレイのほっぺたが羞恥で真っ赤になっていて眼福だったのはここだけの話。
***
劇団(聖女劇を王宮で演じてくれた面々)による結婚にまつわる歌や寸劇は好評だった。
豪華景品が当たるビンゴ大会は最初戸惑われたけれど、最後には大盛り上がり。
おお、次のイベントは私の出番か。
「さて、皆様。これより幸せの贈り物を天から撒きます。お席ではちょっと不便ですので、贈り物を受け取りたい方は広い芝生の方へお越しくださいませ」
今度は何をするのだろう? とワクワクした表情の客達が移動する。
「ぶつからないように離れて下さい! 小さなお子様はお母様の傍へ!」
さて、幸せの雨を降らせようか愚民共。今日ばかりはお前達が施す役だ。
私はクスリと笑って精神感応を使った。
水鳥達は嘴に、そしてカラス達は足にそれを掴む。飛び上がってある程度の高度まで来ると離して落下させた。
鈴と造花のチャームが長い房やリボンをたなびかせながら落ちて行く。
続けて小袋に入ったクッキーや飴も。
下に居る貴族達は歓声を上げながらそれをキャッチしたり拾ったりして大騒ぎである。
特に女性と子供は大喜び。
って、トラス王やサリューン枢機卿も混ざってる――!?
そこだけぽっかりと半径二メートル位空いているのは流石であった。
***
「それでは花婿花嫁達が退場致します。皆様、拍手を以ってお見送り下さいませ」
そろそろ披露宴もお開きという事で、私達はその場を移動する。来賓達を見送る為に玄関へ先回りするのだ。
それも普通の移動じゃない。パレードをするのである。
タンタンタカタカタンタン! タンタンタカタカタンタン!
楽団が軽快な音楽を奏で始め、パレードの服装に着替えて来た劇団の役者達が舞い踊って人々の目を楽しませる。
私とグレイはリディクトに乗って先頭を、そしてアナベラ姉と義兄アールはその後ろをオープン馬車で――って、何故ここに愛馬が!?
リディクトが居る筈のそこに、聖女仕様の愛馬が何故。
――しかもこんな衆目の前で!
私があわあわとしていると、
「マリー様の馬は我らをおいて他にはおりませぬ!」
「グレイ様にマリー様、どうぞお乗り下さいませ。我らからの『さぷらいず』にございます!」
「大丈夫ですよー、三人ですからー」
前脚、後ろ脚、そして中脚――ご丁寧にも二人乗り用の鞍でスレイプニル仕様になっていた。
「お前ら……」
というか、リディクトはどうした。内心焦っていると、グレイがクスリと笑う。
「折角だから乗らせて貰おうか、マリー。どうせ結婚式だけのものだって思われてるだろうから大丈夫だよ」
さあ、と手を伸ばされる。ちらりと後ろを見ると、幸い招待客はこれも余興なのだろうと思ってくれているようだった。
日常使用しているとは分からないならセーフである。
えいままよ、と前に乗り込む。今度は間違えずにちゃんと横乗りだ。グレイが後ろに跨った。
「ハイヨー!」
「「「ぶひひひーん!」」」
招待客の中を祝福を受けながら走り出す私達。
馬がハリボテである事や、目付きのヤバさに拍手をしながらクスクスと笑っている人も居たが、私達にはこういうので丁度良いのかも知れない。
それでも少しでもインパクトを和らげようと、招待客の目を楽しませる為に放っていたクジャクや愚民共を集め、精神感応を使う。
メァオー、メァオー、バサァー。
クジャク達が示し合わせたように一斉に尾羽を開き、招待客達は驚きと感動のどよめきを上げた。
続いて愚民共に命じると、音楽に合わせてお尻を振り振り、羽をバサバサ、可愛らしいダンスを踊る。
そこへ興奮した小型犬のガスィーちゃんとヘヒルちゃんが乱入し、愚民共は一斉に空へと飛び立った。
競馬でいうなら最後の直線だ。披露宴会場がぐんぐん遠くに離れて行く。
春の日差しに優しく包まれた私達は、何となく顔を見合わせて笑い合う。
そして、幸せの真っ只中で蕩けるようなキスを交わしたのだった。
貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。 終
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これにて一旦終幕とさせて頂きます。
長らくの連載でしたが、読んで下さりありがとうございました。
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