280 / 758
うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【1】
霊感商法って儲かるよね。
「それで、だ。今話した事はけして他言してはならぬ我が家の機密。分別がつく年齢になるまでは明かされぬものであり、イサークやメルローズが知る事になるのは後何年かしてからだな。特にマリー、お前はくれぐれも気を付けるように」
ピンポイントでビシリと私に指先を向ける父サイモン。
何という事だ!
「酷い、父! 私の事信用してないのね!?」
わざと顔を覆ってよよよ、と泣き真似をすると、「そりゃあそうだろう」とカレル兄の声。
「大体お前は人に聞かれたら不味いような内容でもすぐポンポン口にするからな。うっかり口を滑らすのはマリーが一番可能性が高い」
小突いて来るカレル兄の腕を振り払った私はぷくっと頬を膨らませた。
「ちょっと酷くない!? 私だってちゃんと弁えてるわよ!」
「いやいや、カレルの言う通りだ」
トーマス兄が追い打ちをかけてくる。酷い。
「グレイ、グレイなら私の味方よね!?」
縋るように振り向くと、「ごめん、この事に関しては擁護出来そうにない……」と気まずそうにそっと目を逸らされた。
カレル兄がドヤ顔で肩を竦める。
「そら見ろ」
――四面楚歌とはこのことか。畜生め!
***
キャンディ伯爵家の薔薇園に設えられたテーブルの上には美味しそうな紅茶とお菓子。
麗らかな昼下がりにも関わらず、私はむくれながら刺繍をし、その隣に座るグレイは新聞を片手に読んでいた。
「もう、皆酷いったらないわ! グレイの裏切り者!」
そんなにポンポンヤバい事を言ってたのだろうか。いや、言ってたとしても私はニートだし、基本外に出ないし。
特に聞かれたら不味い事なんて、安心できる人にしか言ってないつもりだけど。
前世でITの仕事をしてきた私はコンプライアンス違反などしない!
ぶーたれながら刺繍布にブスブス針を刺していると、グレイが新聞から目を離して苦笑いを浮かべる。
「ごめんって。いい加減機嫌を直してよ、マリー。サイモン様は、マリーがイサーク様やメリー様に一番接する機会が多いから念押ししたんだと思う。それだけの危険な内容だったもの」
「私、これでも前世で秘密が多い仕事してたし、社外秘だってちゃんと守ってたのよ?」
「うん。マリーが秘密を守れないっていう訳じゃないよ? 前世の記憶があるマリーの感覚はちょっと特殊なんだよ。マリーにとって当たり前の何でもない事でも僕達にとってはそうではなかったりする。だからマリーが気を付けているつもりでも危なっかしく見えるんだ」
サイモン様も兄君達もマリーの事を心配してるんだよ、とグレイは瞳を揺らした。
その紳士な眼差しを受けた私の頬に熱が上がる。
「ずるいわ、グレイ。そう言われたら怒るに怒れないじゃない」
「うん。僕はずるい男だよ。機嫌を直して、僕の大事な奥様」
そう言って悪戯っぽく微笑んだグレイは私を引き寄せ唇を重ねた。
暫くしてゆっくりとお互いの身を離す。
頭にすっかり血が上った私は、恥ずかしさを誤魔化すように話題を探した。
「と、ところでさっきから熱心に新聞を読んでいたど、何か面白い記事でもあったのかしら?」
「ああ、うん。隣国の神聖アレマニア帝国の動きがどうもきな臭いんだって。下手したら戦争が起こるかも知れない」
教会の歴史、マリーも勉強した事があると思う。『太陽神の恩赦状』って知ってる?
そう続けたグレイに私は頷いた。
「ええ。前世でも同じような歴史があったわ。ほんの百年ぐらい前の、割と最近の歴史よね。金で罪がチャラになるって触れ込みでただの紙切れを大金で買って貰えるぼろい霊感詐欺商売よね」
そう、『太陽神の恩赦状』とはつまり『免罪符』『贖宥状』と同じようなものなのである。
これを学んだ時は宗教の考える事はどこも似たようなものなのだな、という事。人間の業である。
「ぼろい霊感詐欺商ば……うん、その通りだね。『太陽神の恩赦状』の存在で、金さえ払えば罪にならないという事がまかり通った。心ある神の僕は聖典にはそのような事は記されていない、これは教会の横暴だと眉を顰め、糾弾し――神への信仰の在り方が問われる事になった。
そして当時の教会は批判され、信仰と聖典さえあれば教会や修道士等要らないという聖典派が分離し、人々は聖典派を歓迎するようになった。
教会は求心力が低下して、慌てて内部改革をして自浄に努めようとしたのだけれど、そこでも聖典派を異端とする不寛容派と聖典派の信仰を認め融和を主張する寛容派に分かたれた。前教皇は不寛容派で、今のサングマ教皇猊下は寛容派。このトラス王国も寛容派の勢力が強い。そう、教会って一枚岩じゃない」
そう言ってグレイは新聞をテーブルに伏せ、その上に腕を組んだ。
「あの聖地で出くわした……アブラーモ大司教、覚えてる?」
「覚えてるわ。脂身満載の癖に燃え残りやがった薄汚い豚野郎よね」
「……前教皇とアブラーモ大司教は神聖アレマニア帝国出身なんだ。神聖アレマニア帝国は、皇帝及び半数の選帝侯・諸侯が不寛容派で、その他が寛容派や日和見主義が占めているんだそうだよ。
不寛容派の神聖アレマニア皇帝と寛容派のサングマ教皇猊下はあまり折り合いが良いとは言えないね」
「選帝侯って確か、神聖アレマニア皇帝を選ぶ選挙権を持ってるのよね」
前世のローマを思わせる古代帝国では、選挙が行われていたという。その古代帝国の後裔を名乗る神聖アレマニア帝国もその選挙制度にあやかってそういう制度になっているそうだ。
「不寛容派が優勢だった昔と違って、今は選帝侯は寛容派と不寛容派に分かれてしまっている。皇帝が在位中はせいぜい水面下で争うぐらいでまだ良いけれど、皇太子の指名――つまり次期皇帝選挙が数年後に迫っているらしい」
そこで繰り広げられるのは、旧教皇派と現教皇派の勢力争いでもある。次期皇帝候補はどちらかを選ばなければならないだろう。いずれにせよ、争いは避けられず、激化するのは必至。
「成る程、それで戦争が起こるかも知れないって事なのね」
内乱ってやつ。
「だけどそこを利用して上手くやれば儲けられるわね、グレイ」
戦争をするのも金がいる。
つまり神聖アレマニア帝国諸侯はかなり経済的に裕福だって事だ。
「その通り。だから情報は大事なんだよマリー」
「透視が必要になったら言ってね……うふふ」
特に不寛容派の勢力は『太陽神の恩赦状』とやらでたっぷりため込んだ財産で潤っている事だろう。
一般的な新婚夫婦の会話としては少し色気がないが、私達にとっては心弾む楽しい内容である。
私とグレイは顔を見合わせると、にっこりと微笑み合った。
ピンポイントでビシリと私に指先を向ける父サイモン。
何という事だ!
「酷い、父! 私の事信用してないのね!?」
わざと顔を覆ってよよよ、と泣き真似をすると、「そりゃあそうだろう」とカレル兄の声。
「大体お前は人に聞かれたら不味いような内容でもすぐポンポン口にするからな。うっかり口を滑らすのはマリーが一番可能性が高い」
小突いて来るカレル兄の腕を振り払った私はぷくっと頬を膨らませた。
「ちょっと酷くない!? 私だってちゃんと弁えてるわよ!」
「いやいや、カレルの言う通りだ」
トーマス兄が追い打ちをかけてくる。酷い。
「グレイ、グレイなら私の味方よね!?」
縋るように振り向くと、「ごめん、この事に関しては擁護出来そうにない……」と気まずそうにそっと目を逸らされた。
カレル兄がドヤ顔で肩を竦める。
「そら見ろ」
――四面楚歌とはこのことか。畜生め!
***
キャンディ伯爵家の薔薇園に設えられたテーブルの上には美味しそうな紅茶とお菓子。
麗らかな昼下がりにも関わらず、私はむくれながら刺繍をし、その隣に座るグレイは新聞を片手に読んでいた。
「もう、皆酷いったらないわ! グレイの裏切り者!」
そんなにポンポンヤバい事を言ってたのだろうか。いや、言ってたとしても私はニートだし、基本外に出ないし。
特に聞かれたら不味い事なんて、安心できる人にしか言ってないつもりだけど。
前世でITの仕事をしてきた私はコンプライアンス違反などしない!
ぶーたれながら刺繍布にブスブス針を刺していると、グレイが新聞から目を離して苦笑いを浮かべる。
「ごめんって。いい加減機嫌を直してよ、マリー。サイモン様は、マリーがイサーク様やメリー様に一番接する機会が多いから念押ししたんだと思う。それだけの危険な内容だったもの」
「私、これでも前世で秘密が多い仕事してたし、社外秘だってちゃんと守ってたのよ?」
「うん。マリーが秘密を守れないっていう訳じゃないよ? 前世の記憶があるマリーの感覚はちょっと特殊なんだよ。マリーにとって当たり前の何でもない事でも僕達にとってはそうではなかったりする。だからマリーが気を付けているつもりでも危なっかしく見えるんだ」
サイモン様も兄君達もマリーの事を心配してるんだよ、とグレイは瞳を揺らした。
その紳士な眼差しを受けた私の頬に熱が上がる。
「ずるいわ、グレイ。そう言われたら怒るに怒れないじゃない」
「うん。僕はずるい男だよ。機嫌を直して、僕の大事な奥様」
そう言って悪戯っぽく微笑んだグレイは私を引き寄せ唇を重ねた。
暫くしてゆっくりとお互いの身を離す。
頭にすっかり血が上った私は、恥ずかしさを誤魔化すように話題を探した。
「と、ところでさっきから熱心に新聞を読んでいたど、何か面白い記事でもあったのかしら?」
「ああ、うん。隣国の神聖アレマニア帝国の動きがどうもきな臭いんだって。下手したら戦争が起こるかも知れない」
教会の歴史、マリーも勉強した事があると思う。『太陽神の恩赦状』って知ってる?
そう続けたグレイに私は頷いた。
「ええ。前世でも同じような歴史があったわ。ほんの百年ぐらい前の、割と最近の歴史よね。金で罪がチャラになるって触れ込みでただの紙切れを大金で買って貰えるぼろい霊感詐欺商売よね」
そう、『太陽神の恩赦状』とはつまり『免罪符』『贖宥状』と同じようなものなのである。
これを学んだ時は宗教の考える事はどこも似たようなものなのだな、という事。人間の業である。
「ぼろい霊感詐欺商ば……うん、その通りだね。『太陽神の恩赦状』の存在で、金さえ払えば罪にならないという事がまかり通った。心ある神の僕は聖典にはそのような事は記されていない、これは教会の横暴だと眉を顰め、糾弾し――神への信仰の在り方が問われる事になった。
そして当時の教会は批判され、信仰と聖典さえあれば教会や修道士等要らないという聖典派が分離し、人々は聖典派を歓迎するようになった。
教会は求心力が低下して、慌てて内部改革をして自浄に努めようとしたのだけれど、そこでも聖典派を異端とする不寛容派と聖典派の信仰を認め融和を主張する寛容派に分かたれた。前教皇は不寛容派で、今のサングマ教皇猊下は寛容派。このトラス王国も寛容派の勢力が強い。そう、教会って一枚岩じゃない」
そう言ってグレイは新聞をテーブルに伏せ、その上に腕を組んだ。
「あの聖地で出くわした……アブラーモ大司教、覚えてる?」
「覚えてるわ。脂身満載の癖に燃え残りやがった薄汚い豚野郎よね」
「……前教皇とアブラーモ大司教は神聖アレマニア帝国出身なんだ。神聖アレマニア帝国は、皇帝及び半数の選帝侯・諸侯が不寛容派で、その他が寛容派や日和見主義が占めているんだそうだよ。
不寛容派の神聖アレマニア皇帝と寛容派のサングマ教皇猊下はあまり折り合いが良いとは言えないね」
「選帝侯って確か、神聖アレマニア皇帝を選ぶ選挙権を持ってるのよね」
前世のローマを思わせる古代帝国では、選挙が行われていたという。その古代帝国の後裔を名乗る神聖アレマニア帝国もその選挙制度にあやかってそういう制度になっているそうだ。
「不寛容派が優勢だった昔と違って、今は選帝侯は寛容派と不寛容派に分かれてしまっている。皇帝が在位中はせいぜい水面下で争うぐらいでまだ良いけれど、皇太子の指名――つまり次期皇帝選挙が数年後に迫っているらしい」
そこで繰り広げられるのは、旧教皇派と現教皇派の勢力争いでもある。次期皇帝候補はどちらかを選ばなければならないだろう。いずれにせよ、争いは避けられず、激化するのは必至。
「成る程、それで戦争が起こるかも知れないって事なのね」
内乱ってやつ。
「だけどそこを利用して上手くやれば儲けられるわね、グレイ」
戦争をするのも金がいる。
つまり神聖アレマニア帝国諸侯はかなり経済的に裕福だって事だ。
「その通り。だから情報は大事なんだよマリー」
「透視が必要になったら言ってね……うふふ」
特に不寛容派の勢力は『太陽神の恩赦状』とやらでたっぷりため込んだ財産で潤っている事だろう。
一般的な新婚夫婦の会話としては少し色気がないが、私達にとっては心弾む楽しい内容である。
私とグレイは顔を見合わせると、にっこりと微笑み合った。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。
しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。