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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【1】
奥ゆかしい日本人の嗜み。
グレイと部屋に戻った私は、メティからの手紙を開いてみた。
『私の親友 マリー
キャンディ伯爵領ではいかがお過ごしかしら?
実は、マリーに相談があってペンを執りました。
宮殿に客分として滞在中の神聖アレマニア帝国のアーダム皇子殿下が、妹君をアルバート殿下にどうかと持ちかけていらっしゃるのだけれど、その縁組に国益があると乗り気になった勢力がだんだん増えて来て……それで、私の立場がちょっと困ったものになってしまっているの。
アーダム殿下は本気のようで、神聖アレマニア帝国から妹姫を呼び寄せようとしているわ。
私、他に相談出来る人も居なくて。どうしたらいいかしら?
切実に貴女の救いを求める友 メティ』
「……」
私が精神感応能力でアルバート第一王子に何とかしろと言えばいいんだろうけど……待てよ、王子本人からの手紙もあったな。
「グレイ、アルバート殿下からの手紙を読んで欲しいのだけれど……」
そう頼むと、彼は手紙を広げて内容をかいつまんで教えてくれた。
メティの手紙と同じく、やはりアーダム皇子に縁談をゴリ押しされて困っていると。また、アーダム皇子をこれ以上抑えるのは難しいかも知れないという内容だった。
「最初、マリーに会うまで国に帰らないって粘っていたのが、キャンディ伯爵領まで行って拝謁を申し込みたいという要求に変わってきているんだって」
デブランツ大司教も、『神聖アレマニア帝国は太陽神への信仰篤き国、アーダム皇子殿下の敬虔な信仰心を止めて下さるな』と擁護していると書いてあるそうだ。
信仰心を盾にするとは性質の悪いことだ。
「トラス王国内を他国の王族が旅をするのは危険だと理由付けて押し止めているけど、信仰心を盾にされた上に『アルバート殿下と騎士団が聖女様の下までご一緒して下されば』と逆に頼み込まれているらしい」
「のらりくらり引き伸ばしてくれているんだろうけど……時間の問題ね。この手紙って、何日前ぐらいのものかしら?」
「早馬で来たし、四日前位かなぁ」
「……凄く嫌だけど、こうなったらアーダム皇子からの手紙も気になるわね」
「そうだね……僕が読もう。朗読するけど、いい?」
グレイは手紙を開いて読み始めた。
「『聖女マリアージュ・キャンディ殿
祖国の神聖アレマニア帝国より御身にお会いせんと遥々馬を駆ってこのトラス王国まで参りましたが、運悪く入れ違いになったそうで非常に残念に存じます。
去年、聖女殿がこの世に再臨されたという知らせに私は胸を躍らせておりました。
せめてという事で聖女殿の絵姿を見せて頂いたのですが、何と白薔薇の蕾の如く清楚で美しい女性なのだろう、と感動を受けております。
お会いこそは出来ませんでしたが、幸いにもアルバート殿に客人として招かれました。
先日はトゥラントゥール宮殿の薔薇庭園にて、聖女殿がお好きだというお茶を頂くお茶会なるものにお招き頂きました。
庭園には色とりどりの薔薇が咲き誇っておりましたが――私は隅に隠れるように咲いている、一際気高く美しい佇まいの白薔薇に心を奪われました。
我がアレマニア帝国の宮殿の庭は、今の季節の目ぼしい花はお恥ずかしながらタチアオイぐらいで味気ないものです。しかし、この最上の一厘の白薔薇だけでも所望して頂いて帰る事が出来ればどんなに素晴らしい事かと想像を巡らせております。
私が思うに、白薔薇というものはその気高さを損なう下品な赤い薔薇の隣ではなく、淡く柔らかく咲く上品なタチアオイの傍にこそあって真価を発揮するのだと存じます。
聖女殿の王都へのお戻りを神に祈って。
アーダム・フォン・ズィルバーブルク』」
朗読していく内――グレイの顔が次第に険しくなっていく。私も全身に鳥肌が立っていた。それ以上に込み上げてくる怒り。
怒りを抑えて気合いを入れる為、私はテーブルにダン! と拳を打ち付けた。
「糞ゴリラァァァ! やっぱりばっちい手紙だったわね、悍ましいわ!」
それもその筈。
まず、宛名が旧姓になっている事に加え、『恋をするには若すぎる』という意味の『白薔薇の蕾』。
『結婚は早すぎたのではないか、聖女が既婚者であるのは認めない』という意志が込められている。
白薔薇を聖女と見立てているとすれば、『下品な赤い薔薇』というのは赤い髪のグレイの事を揶揄しているのは間違いない。
タチアオイの花言葉は色問わず『高貴』『威厳』『熱烈な恋』『野心』と言った意味。
つまりアーダム皇子は聖女が居るべきは高貴な自分の傍であるべきだ、と無礼な手紙を寄越してきたのだ。夫であるグレイの存在はまるっと無視して!
「……なかなか好戦的な手紙だね」
手紙を畳みながら、冷ややかな眼差しになるグレイ。
「マリー様、やはり我らが首級を挙げて来るべきかと!」
「トラス王国内に居る今が好機です!」
「どうされます~?」
何時の間にかバルコニーに佇む三つの影。私は少し冷静さを取り戻す。手紙には返事を書かねばなるまい。
「お待ち、それは最後の手段よ。ところで贈り物とは何だったのかしら?」
「白薔薇にタチアオイをあしらった宝石細工のブローチでした」
独り言のような問いに答えたのはサリーナだった。彼女は実際に目にしたらしい。
「そう……高級過ぎるゴミね。心底要らないしムカつくわ」
売られた喧嘩は買ってやろう。私はペンを執り暫し考えた。
『神聖アレマニア帝国 第一皇子アーダム殿下
初めまして。聖女マリアージュと申します。お手紙に驚き、
じっとしておられず。直ぐに侍女に命じて用意させ、返事の筆
を執りました。お手紙の宛名――殿下は私が人妻であることを
知らされていらっしゃらなかったかと存じます。
礼儀として、人妻に過ぎたる贈り物はお返しいたします。
現在、私は実家であるキャンディ伯爵家の領地におりま
すわ。夫との新婚旅行を兼ねて王都を出ましたの。ええ、
矢も楯も堪らず。屋敷では刺繍をしたり、美しい詩を
朗読したり。都会では色々と煩わしい事も多いもの。
浮世の憂さを忘れさせてくれる旅は素晴らしいですわね。
遥々トラス王国に殿下が私を訪ねていらしたのは何故でしょう。
予想もつかぬ知らせに心乱れておりますわ。ただ、今は
帰ろうにも今すぐは都合付きませんの。
ええ、本当に申し訳ないと思っております。重ね重ね、
礼儀を失してしまった事……深くお詫び申し上げますわ。
マリアージュ・ダージリン
追伸 私、猫が大好きなんですの。』
「ふむ……出来たわ。グレイ、どうかしら?」
書き上げた手紙を渡すと、ざっと目を通したグレイは口をへの字に曲げた。
「……言葉だけ見れば礼儀は尽くしているけど。何だか文章作法がなっていない奇妙な手紙だね。改行するところもおかしいし、この追伸も意味不明」
「勿論わざとよ。ね、何で改行するところがおかしいと思う?」
「理由でもあるの?」
「うふふ♪ 前世では、『縦読み』という文化があったのよね」
そう、縦読みを仕込むのは奥ゆかしい日本人の嗜み。
表音文字で書かれた手紙。改行された文章の頭文字を繋げると――
『はじをしれ、げすやろう、はよかえれ』
となる。
グレイも気付いたのだろう。さっと視線を手紙の上下に走らせた後、あっと声を上げた。
『私の親友 マリー
キャンディ伯爵領ではいかがお過ごしかしら?
実は、マリーに相談があってペンを執りました。
宮殿に客分として滞在中の神聖アレマニア帝国のアーダム皇子殿下が、妹君をアルバート殿下にどうかと持ちかけていらっしゃるのだけれど、その縁組に国益があると乗り気になった勢力がだんだん増えて来て……それで、私の立場がちょっと困ったものになってしまっているの。
アーダム殿下は本気のようで、神聖アレマニア帝国から妹姫を呼び寄せようとしているわ。
私、他に相談出来る人も居なくて。どうしたらいいかしら?
切実に貴女の救いを求める友 メティ』
「……」
私が精神感応能力でアルバート第一王子に何とかしろと言えばいいんだろうけど……待てよ、王子本人からの手紙もあったな。
「グレイ、アルバート殿下からの手紙を読んで欲しいのだけれど……」
そう頼むと、彼は手紙を広げて内容をかいつまんで教えてくれた。
メティの手紙と同じく、やはりアーダム皇子に縁談をゴリ押しされて困っていると。また、アーダム皇子をこれ以上抑えるのは難しいかも知れないという内容だった。
「最初、マリーに会うまで国に帰らないって粘っていたのが、キャンディ伯爵領まで行って拝謁を申し込みたいという要求に変わってきているんだって」
デブランツ大司教も、『神聖アレマニア帝国は太陽神への信仰篤き国、アーダム皇子殿下の敬虔な信仰心を止めて下さるな』と擁護していると書いてあるそうだ。
信仰心を盾にするとは性質の悪いことだ。
「トラス王国内を他国の王族が旅をするのは危険だと理由付けて押し止めているけど、信仰心を盾にされた上に『アルバート殿下と騎士団が聖女様の下までご一緒して下されば』と逆に頼み込まれているらしい」
「のらりくらり引き伸ばしてくれているんだろうけど……時間の問題ね。この手紙って、何日前ぐらいのものかしら?」
「早馬で来たし、四日前位かなぁ」
「……凄く嫌だけど、こうなったらアーダム皇子からの手紙も気になるわね」
「そうだね……僕が読もう。朗読するけど、いい?」
グレイは手紙を開いて読み始めた。
「『聖女マリアージュ・キャンディ殿
祖国の神聖アレマニア帝国より御身にお会いせんと遥々馬を駆ってこのトラス王国まで参りましたが、運悪く入れ違いになったそうで非常に残念に存じます。
去年、聖女殿がこの世に再臨されたという知らせに私は胸を躍らせておりました。
せめてという事で聖女殿の絵姿を見せて頂いたのですが、何と白薔薇の蕾の如く清楚で美しい女性なのだろう、と感動を受けております。
お会いこそは出来ませんでしたが、幸いにもアルバート殿に客人として招かれました。
先日はトゥラントゥール宮殿の薔薇庭園にて、聖女殿がお好きだというお茶を頂くお茶会なるものにお招き頂きました。
庭園には色とりどりの薔薇が咲き誇っておりましたが――私は隅に隠れるように咲いている、一際気高く美しい佇まいの白薔薇に心を奪われました。
我がアレマニア帝国の宮殿の庭は、今の季節の目ぼしい花はお恥ずかしながらタチアオイぐらいで味気ないものです。しかし、この最上の一厘の白薔薇だけでも所望して頂いて帰る事が出来ればどんなに素晴らしい事かと想像を巡らせております。
私が思うに、白薔薇というものはその気高さを損なう下品な赤い薔薇の隣ではなく、淡く柔らかく咲く上品なタチアオイの傍にこそあって真価を発揮するのだと存じます。
聖女殿の王都へのお戻りを神に祈って。
アーダム・フォン・ズィルバーブルク』」
朗読していく内――グレイの顔が次第に険しくなっていく。私も全身に鳥肌が立っていた。それ以上に込み上げてくる怒り。
怒りを抑えて気合いを入れる為、私はテーブルにダン! と拳を打ち付けた。
「糞ゴリラァァァ! やっぱりばっちい手紙だったわね、悍ましいわ!」
それもその筈。
まず、宛名が旧姓になっている事に加え、『恋をするには若すぎる』という意味の『白薔薇の蕾』。
『結婚は早すぎたのではないか、聖女が既婚者であるのは認めない』という意志が込められている。
白薔薇を聖女と見立てているとすれば、『下品な赤い薔薇』というのは赤い髪のグレイの事を揶揄しているのは間違いない。
タチアオイの花言葉は色問わず『高貴』『威厳』『熱烈な恋』『野心』と言った意味。
つまりアーダム皇子は聖女が居るべきは高貴な自分の傍であるべきだ、と無礼な手紙を寄越してきたのだ。夫であるグレイの存在はまるっと無視して!
「……なかなか好戦的な手紙だね」
手紙を畳みながら、冷ややかな眼差しになるグレイ。
「マリー様、やはり我らが首級を挙げて来るべきかと!」
「トラス王国内に居る今が好機です!」
「どうされます~?」
何時の間にかバルコニーに佇む三つの影。私は少し冷静さを取り戻す。手紙には返事を書かねばなるまい。
「お待ち、それは最後の手段よ。ところで贈り物とは何だったのかしら?」
「白薔薇にタチアオイをあしらった宝石細工のブローチでした」
独り言のような問いに答えたのはサリーナだった。彼女は実際に目にしたらしい。
「そう……高級過ぎるゴミね。心底要らないしムカつくわ」
売られた喧嘩は買ってやろう。私はペンを執り暫し考えた。
『神聖アレマニア帝国 第一皇子アーダム殿下
初めまして。聖女マリアージュと申します。お手紙に驚き、
じっとしておられず。直ぐに侍女に命じて用意させ、返事の筆
を執りました。お手紙の宛名――殿下は私が人妻であることを
知らされていらっしゃらなかったかと存じます。
礼儀として、人妻に過ぎたる贈り物はお返しいたします。
現在、私は実家であるキャンディ伯爵家の領地におりま
すわ。夫との新婚旅行を兼ねて王都を出ましたの。ええ、
矢も楯も堪らず。屋敷では刺繍をしたり、美しい詩を
朗読したり。都会では色々と煩わしい事も多いもの。
浮世の憂さを忘れさせてくれる旅は素晴らしいですわね。
遥々トラス王国に殿下が私を訪ねていらしたのは何故でしょう。
予想もつかぬ知らせに心乱れておりますわ。ただ、今は
帰ろうにも今すぐは都合付きませんの。
ええ、本当に申し訳ないと思っております。重ね重ね、
礼儀を失してしまった事……深くお詫び申し上げますわ。
マリアージュ・ダージリン
追伸 私、猫が大好きなんですの。』
「ふむ……出来たわ。グレイ、どうかしら?」
書き上げた手紙を渡すと、ざっと目を通したグレイは口をへの字に曲げた。
「……言葉だけ見れば礼儀は尽くしているけど。何だか文章作法がなっていない奇妙な手紙だね。改行するところもおかしいし、この追伸も意味不明」
「勿論わざとよ。ね、何で改行するところがおかしいと思う?」
「理由でもあるの?」
「うふふ♪ 前世では、『縦読み』という文化があったのよね」
そう、縦読みを仕込むのは奥ゆかしい日本人の嗜み。
表音文字で書かれた手紙。改行された文章の頭文字を繋げると――
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