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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【1】
前触れもなく落とされる爆弾。
「こ、これ……気付かれたら」
「大丈夫、普通気付かないわ。だって縦読みするなんて普通思いつかないだろうしグレイだって気付いてなかったじゃない。そうそう、『猫大好き』っていうのは縦読みがあるって符丁なのよ。様式美ね」
「義父様……サイモン様にお見せしないと」
透視能力で確認すると、父はまだ起きていて執務室に居た。
訪ねて手紙を見せると、意外にも面白そうにニヤリと笑ってGOサインを出す。
ただし追伸の符丁は不要との事。縦読み仕込みの手法はうちの秘密の手紙や隠密騎士達に使わせたいらしい。
「義父様、大丈夫でしょうか……」
「ふっ、もし気付いても何も言えまいよ。恥知らずな手紙を送って来たのは向こうだ、偶然だと言い張ればいいのだからな」
私は父にペンを借りる。
追伸欄を以下のように書き換える事で手紙の草案とした。
『そもそも私は色を問わず薔薇が好きなんですの。花に関しては個人的な好みの問題かと存じます。
私の自慢の姉アナベラが赤薔薇姫と称されているのはご存じ? 私は赤薔薇が大好きですし、下品とも思いません。それに、白薔薇にタチアオイは存在感が争ってしまっていまいち合わぬかと感じておりますわ。
そうそう、キャンディ伯爵家の城の庭園にはささやかなタンジーの花が蕾を付けておりますの。こちらの方が白薔薇の添え花として相応しいかと。』
ちなみにタンジーという黄色い小さな花は夏真っ盛りに咲く。花言葉は『婦人の美徳』『あなたとの戦いを宣言する』『抵抗』の意味。
そう、私は『夫のグレイどころかアナベラ姉まで馬鹿にしやがって! やるならこちらも夫を立てるという婦人の美徳を懸けて戦いを辞さないが? ああん?』と意思表示をしたのである。
相手の今後の出方次第では花開く事になるというメッセージだ。
***
一夜明け、次の日の朝。
寛容派の神聖アレマニア貴族ご一行は結局朝食の席にも姿を現さなかった。
予想通り真夜中過ぎに起き出して軽食を所望したそうで、まだ夢の中なのだろう。
朝食後――ゴリラ野郎への返事の見直しと清書を済ませた私は、グレイと父に相談の上で直接精神感応を使ってメティに連絡する事にした。
驚くメティに近況を軽く報告する。
イドゥリースが賢者に認定された事を宮廷に一早く伝えて欲しいとも。そしていざという時は私の親友だと言って構わないと伝えた。
ただ、その場合――人質にされる可能性があるので、アレマニアの皇子にはくれぐれも気を付ける様にと警告。困った事があれば三夫人に頼れとも。
夫人達にも連絡し、メティの事を頼んでおいた。心強い返事を貰えて安心する。さてお次は――
『……いきなり声が頭の中に響くというのは心臓に悪いですね』
精神感応で呼びかけたアルバート第一王子は、雷に打たれたように体をびくりとさせていた。
『手紙、読みましたわ。急ぎなのでこちらでお返事としますわね』
私はメティにしたのと同じように、賢者認定儀式が無事終わった事等をさっくりと伝える。
メティの立場確立の為に、その事を宮廷に伝えるのは聖女の親友である彼女という事にして欲しいとも。
数日後にちゃんとした使者が王宮に報告に上がれば、メティが私の親友であるという裏付けがなされるという訳である。
『分かりました。それ、私も利用させて貰って宜しいですよね? 正直辟易しているんです』
精神感応で伝わって来るアルバート第一王子の声は、つい本音が出てしまうのだろう。耳で聞く抑揚のない声と違って、感情が込められていた。これは相当うんざりしているな、と思う。
『ああ、アルバート殿下にはもう一つ効果的な材料をお伝えしますわ』
私はアレマニア帝国の怪しい行商人達を捕らえたことを話した。
『彼らはキーマン商会の従業員の家族を狙って人質にしようとしていたのですわ。アーダム第一皇子の命で私を誘拐しようとしていた、と吐きましたの。
その疑惑を使えばあの糞ゴリ……アーダム皇子を多少大人しくさせる事が出来ると思いますわ。証拠を引き渡す訳にはいきませんが、噂程度でも効果はあるかと』
『自分の身の潔白を証明しに行く! と逆効果になったらどうするのです?』
即座に切り返される。確かに言いそうだ。
『疑わしきは聖女に近付ける訳にはいかない、と頑張って突っぱねて下さいまし。今、アーダム皇子と敵対的な――寛容派貴族のお客様をお招きしておりますの。そのお客様とのお話合いの結果が出るまで、少しの間で構いませんわ』
『……分かりましたよ。貸し一つにしては、少々返し過ぎている気がするのですが』
『あら、殿下のお命はそれしきの価値でしたの?』
揶揄するように言えば、アルバート第一王子は溜息を吐いた。
『これは手厳しい。正直死ぬ程嫌ですが、頑張ってみましょう』
流石の王子もゴリラ相手には精神的に追い詰められているらしい。
少し申し訳ないが、ここは踏ん張って頑張って欲しい。
***
手紙の事も片付いたので、昨日と同じメンバーでサロンに集まる。
アレマニアの客人達もその頃にはちゃんと起きていたようだ。
社交辞令的な挨拶を交わした後、相手方いきなりがばりと頭を下げてきた。
「聖女様、どうか伏してお願い申し上げます。やはりヴェスカル殿下を次期アレマニア皇帝に! それが一番穏当なのです!」
ヴィルバッハ辺境伯オスカーが悲鳴を上げるように嘆願する。
しかし私は冷ややかな視線を返した。
「それで、ヴェスカルは傀儡皇帝となって幸せな人生を送るとでも仰りたいのかしら?」
「それは……きちんとした摂政を置いて」
歯切れ悪そうなウィルバッハ辺境伯。そこへ「聖女様」とズィクセン公爵ラインハルトが力の籠った眼差しで私を見つめ、静かに口を開いた。
「皇帝選挙を……我が国の行く末を、聖女様はどのようにお考えか」
「出来れば寛容派の有力貴族に立候補して貰いたいですわね」
「幼いヴェスカルは、私達の大事な家族なんです。本人も皇帝にはなりたくないと言っていますし、私もマリーも将来は本人の望む好きな道を歩んで欲しいと思っています」
グレイの補足に私は頷いた。
寛容派の有力貴族が立候補するなら聖女のお墨付きが欲しいというのなら与えても構わない、そう言うもズィクセン公爵は重々しく首を横に振る。
「残念ながら。聖女様のお墨付きを頂いて寛容派貴族の誰かが皇帝になれたとしても、国は纏まらぬでしょう。
何より野心的なアーダム皇子や敵対勢力が実権を握る事を恐れる不寛容派の皇族も黙っておりません。そうなれば国の分裂の憂き目に遭い、我が神聖アレマニア帝国百万の民は――」
「そもそも、実際の国政は議会を通じて行われますわよね? お飾りであっても皇帝は必要なのかしら?」
多少空位になっても、議会が運営され政治を行えるのならばそこまで問題ではないのでは?
そう問うと、ズィクセン公爵は顔を顰めた。グレイが慌てて口を開く。
「かつて、皇帝不在の時代があったんだよ、マリー。諸侯が好き勝手に振舞って、帝国の秩序は乱れたっていう歴史があるんだ」
「グレイ猊下の仰る通りです。形だけであっても、正統なる血筋の皇帝は求心力として必要かと私は考えております」
「形だけでの皇帝で良いのなら、寛容派不寛容派にあまり関わりのない適当な人物を皇帝にして議会で国政を運営すれば宜しいのではなくて?」
「お言葉ですが聖女様、ヴェスカル様が現皇帝陛下の血を引いていらっしゃるという事実が重要なのです。適当な人物で解決するのならば最初から私共はこちらに参っておりません」
ズィクセン公爵はやや険を含んだ眼差しを向けて来た。少し怒らせてしまったか。
「そこまで皇帝の血筋というものが重要だったとは存ぜず、不勉強で失礼を申しましたわ。お許し下さいまし」
素直に謝罪を述べて頭を垂れると、「分かって下されば良いのです」と肩を落とすズィクセン公爵ラインハルト。
「適当な人物……いや、待てよ? アーダム殿下は論外、ヴェスカル殿下もならぬという事であれば」
ウィルバッハ辺境伯オスカーが何やらブツブツ言っている声。次の瞬間、彼は何かを思いついたようにズィクセン公爵の方を向いた。
「そうだ、ズィクセン卿! この方法があった! 我らは、我ら寛容派貴族は――グレイ猊下を皇帝候補に推挙すれば良いのですぞ!」
前触れもなく落とされる、とんでもない爆弾発言。
「「「は、はああああ――っ!?」」」
一瞬の後、全員の驚愕の声がサロンを揺るがした。
「大丈夫、普通気付かないわ。だって縦読みするなんて普通思いつかないだろうしグレイだって気付いてなかったじゃない。そうそう、『猫大好き』っていうのは縦読みがあるって符丁なのよ。様式美ね」
「義父様……サイモン様にお見せしないと」
透視能力で確認すると、父はまだ起きていて執務室に居た。
訪ねて手紙を見せると、意外にも面白そうにニヤリと笑ってGOサインを出す。
ただし追伸の符丁は不要との事。縦読み仕込みの手法はうちの秘密の手紙や隠密騎士達に使わせたいらしい。
「義父様、大丈夫でしょうか……」
「ふっ、もし気付いても何も言えまいよ。恥知らずな手紙を送って来たのは向こうだ、偶然だと言い張ればいいのだからな」
私は父にペンを借りる。
追伸欄を以下のように書き換える事で手紙の草案とした。
『そもそも私は色を問わず薔薇が好きなんですの。花に関しては個人的な好みの問題かと存じます。
私の自慢の姉アナベラが赤薔薇姫と称されているのはご存じ? 私は赤薔薇が大好きですし、下品とも思いません。それに、白薔薇にタチアオイは存在感が争ってしまっていまいち合わぬかと感じておりますわ。
そうそう、キャンディ伯爵家の城の庭園にはささやかなタンジーの花が蕾を付けておりますの。こちらの方が白薔薇の添え花として相応しいかと。』
ちなみにタンジーという黄色い小さな花は夏真っ盛りに咲く。花言葉は『婦人の美徳』『あなたとの戦いを宣言する』『抵抗』の意味。
そう、私は『夫のグレイどころかアナベラ姉まで馬鹿にしやがって! やるならこちらも夫を立てるという婦人の美徳を懸けて戦いを辞さないが? ああん?』と意思表示をしたのである。
相手の今後の出方次第では花開く事になるというメッセージだ。
***
一夜明け、次の日の朝。
寛容派の神聖アレマニア貴族ご一行は結局朝食の席にも姿を現さなかった。
予想通り真夜中過ぎに起き出して軽食を所望したそうで、まだ夢の中なのだろう。
朝食後――ゴリラ野郎への返事の見直しと清書を済ませた私は、グレイと父に相談の上で直接精神感応を使ってメティに連絡する事にした。
驚くメティに近況を軽く報告する。
イドゥリースが賢者に認定された事を宮廷に一早く伝えて欲しいとも。そしていざという時は私の親友だと言って構わないと伝えた。
ただ、その場合――人質にされる可能性があるので、アレマニアの皇子にはくれぐれも気を付ける様にと警告。困った事があれば三夫人に頼れとも。
夫人達にも連絡し、メティの事を頼んでおいた。心強い返事を貰えて安心する。さてお次は――
『……いきなり声が頭の中に響くというのは心臓に悪いですね』
精神感応で呼びかけたアルバート第一王子は、雷に打たれたように体をびくりとさせていた。
『手紙、読みましたわ。急ぎなのでこちらでお返事としますわね』
私はメティにしたのと同じように、賢者認定儀式が無事終わった事等をさっくりと伝える。
メティの立場確立の為に、その事を宮廷に伝えるのは聖女の親友である彼女という事にして欲しいとも。
数日後にちゃんとした使者が王宮に報告に上がれば、メティが私の親友であるという裏付けがなされるという訳である。
『分かりました。それ、私も利用させて貰って宜しいですよね? 正直辟易しているんです』
精神感応で伝わって来るアルバート第一王子の声は、つい本音が出てしまうのだろう。耳で聞く抑揚のない声と違って、感情が込められていた。これは相当うんざりしているな、と思う。
『ああ、アルバート殿下にはもう一つ効果的な材料をお伝えしますわ』
私はアレマニア帝国の怪しい行商人達を捕らえたことを話した。
『彼らはキーマン商会の従業員の家族を狙って人質にしようとしていたのですわ。アーダム第一皇子の命で私を誘拐しようとしていた、と吐きましたの。
その疑惑を使えばあの糞ゴリ……アーダム皇子を多少大人しくさせる事が出来ると思いますわ。証拠を引き渡す訳にはいきませんが、噂程度でも効果はあるかと』
『自分の身の潔白を証明しに行く! と逆効果になったらどうするのです?』
即座に切り返される。確かに言いそうだ。
『疑わしきは聖女に近付ける訳にはいかない、と頑張って突っぱねて下さいまし。今、アーダム皇子と敵対的な――寛容派貴族のお客様をお招きしておりますの。そのお客様とのお話合いの結果が出るまで、少しの間で構いませんわ』
『……分かりましたよ。貸し一つにしては、少々返し過ぎている気がするのですが』
『あら、殿下のお命はそれしきの価値でしたの?』
揶揄するように言えば、アルバート第一王子は溜息を吐いた。
『これは手厳しい。正直死ぬ程嫌ですが、頑張ってみましょう』
流石の王子もゴリラ相手には精神的に追い詰められているらしい。
少し申し訳ないが、ここは踏ん張って頑張って欲しい。
***
手紙の事も片付いたので、昨日と同じメンバーでサロンに集まる。
アレマニアの客人達もその頃にはちゃんと起きていたようだ。
社交辞令的な挨拶を交わした後、相手方いきなりがばりと頭を下げてきた。
「聖女様、どうか伏してお願い申し上げます。やはりヴェスカル殿下を次期アレマニア皇帝に! それが一番穏当なのです!」
ヴィルバッハ辺境伯オスカーが悲鳴を上げるように嘆願する。
しかし私は冷ややかな視線を返した。
「それで、ヴェスカルは傀儡皇帝となって幸せな人生を送るとでも仰りたいのかしら?」
「それは……きちんとした摂政を置いて」
歯切れ悪そうなウィルバッハ辺境伯。そこへ「聖女様」とズィクセン公爵ラインハルトが力の籠った眼差しで私を見つめ、静かに口を開いた。
「皇帝選挙を……我が国の行く末を、聖女様はどのようにお考えか」
「出来れば寛容派の有力貴族に立候補して貰いたいですわね」
「幼いヴェスカルは、私達の大事な家族なんです。本人も皇帝にはなりたくないと言っていますし、私もマリーも将来は本人の望む好きな道を歩んで欲しいと思っています」
グレイの補足に私は頷いた。
寛容派の有力貴族が立候補するなら聖女のお墨付きが欲しいというのなら与えても構わない、そう言うもズィクセン公爵は重々しく首を横に振る。
「残念ながら。聖女様のお墨付きを頂いて寛容派貴族の誰かが皇帝になれたとしても、国は纏まらぬでしょう。
何より野心的なアーダム皇子や敵対勢力が実権を握る事を恐れる不寛容派の皇族も黙っておりません。そうなれば国の分裂の憂き目に遭い、我が神聖アレマニア帝国百万の民は――」
「そもそも、実際の国政は議会を通じて行われますわよね? お飾りであっても皇帝は必要なのかしら?」
多少空位になっても、議会が運営され政治を行えるのならばそこまで問題ではないのでは?
そう問うと、ズィクセン公爵は顔を顰めた。グレイが慌てて口を開く。
「かつて、皇帝不在の時代があったんだよ、マリー。諸侯が好き勝手に振舞って、帝国の秩序は乱れたっていう歴史があるんだ」
「グレイ猊下の仰る通りです。形だけであっても、正統なる血筋の皇帝は求心力として必要かと私は考えております」
「形だけでの皇帝で良いのなら、寛容派不寛容派にあまり関わりのない適当な人物を皇帝にして議会で国政を運営すれば宜しいのではなくて?」
「お言葉ですが聖女様、ヴェスカル様が現皇帝陛下の血を引いていらっしゃるという事実が重要なのです。適当な人物で解決するのならば最初から私共はこちらに参っておりません」
ズィクセン公爵はやや険を含んだ眼差しを向けて来た。少し怒らせてしまったか。
「そこまで皇帝の血筋というものが重要だったとは存ぜず、不勉強で失礼を申しましたわ。お許し下さいまし」
素直に謝罪を述べて頭を垂れると、「分かって下されば良いのです」と肩を落とすズィクセン公爵ラインハルト。
「適当な人物……いや、待てよ? アーダム殿下は論外、ヴェスカル殿下もならぬという事であれば」
ウィルバッハ辺境伯オスカーが何やらブツブツ言っている声。次の瞬間、彼は何かを思いついたようにズィクセン公爵の方を向いた。
「そうだ、ズィクセン卿! この方法があった! 我らは、我ら寛容派貴族は――グレイ猊下を皇帝候補に推挙すれば良いのですぞ!」
前触れもなく落とされる、とんでもない爆弾発言。
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