貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン

文字の大きさ
420 / 758
うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【1】

某おかめ印のアレ。

 文官採用面接が終わり、横領犯共及び紛れ込んでいたスパイやなんかをドナドナし、尋問の上で牢にぶち込み片付けた後。

 「やれやれ、やっと帰られましたよ。正直なところ、もう二度とお会いしたくありませんね」

 アルバート第一王子がそんなことを言いながらひょっこりと戻って来た。
 いつものポーカーフェイスも隠す気もなくげっそりとした顔である。何でも、あのゴリラ野郎アーダム皇子は船に乗るまでも時間稼ぎなのかウホウホごねまくったらしい。

 「往生際の悪さにほとほとくたびれました。お陰で私も『オコノミ』を食べられたのは良かったですけどね……」

 『黒鶏亭』という所で食べたのですが、とても美味しかったです。流石に八本足入りは受け付けませんでしたが。

 そう言って肩を竦めるアルバート王子。

 「それにしても、色々面白い話を聞けて良かったと思います。マリーが作ったというあのソースは素晴らしいものでしたしね。王宮でも食べられたら、と思った程ですよ」

 恐らくピエールに聞いたのだろうが……どんな話を聞いたのだろう。
 その時、グレイの目がキラリと光ったような気がした。

 「アルバート殿下。そんなにお気に召して頂けたのならば、当家より人を王宮に派遣してオコノミ作りを宮廷料理人に教えることも可能です。いかがでしょう、庭園で気軽にオコノミを楽しむ昼食会などをなされては?」

 突然のグレイの申し出に、アルバート王子は若干戸惑っているようだった。

 「門外不出の秘伝のソースと伺いましたが、良いのですか?」

 頼み込んだのですがどうしても売っては貰えなかったのですよ、という。まあ確かに相手が相手だし、今はお墨付きを与えた上でソースも一から作らせているしなぁ。売る程の量は無い。

 「ソースも定期的に仕入れる契約を結んで下さるのであれば融通可能です。殿下がお望みであればお売り致しましょう。丁度、アーダム皇子の妹皇女殿下がご滞在だと伺っております。カレドニアの女王陛下もいらっしゃることですし、殿下が召し上がって来た美食として話の種にはなるかと」

 お許しを頂けるならば急がせますし、費用等も最初はこちらで全て手配致します。殿下は許可を下さるだけで良いのです。

 微笑んで手揉みせんばかりのグレイ。
 あ、商人あきんどや。商人あきんどの顔をしてはる。

 まあ彼が考えていることは精神感応使うまでもなく何となく理解出来るので、私は微笑みながら頷いていた。
 第一王子殿下が喜ばれた美食として、社交界にオコノミが広まるのだ。これ以上の宣伝はない。
 アルバート王子はそうして下さるのであれば、と礼を言って休むべく客室へ戻って行った。

 残された私達。
 父サイモンがじろりとグレイを見た。

 「……そう言えば、アルジャヴリヨンにも店を出して欲しいと民から要望があったのだが?」

 「ええ、義父様。勿論そちらも忘れてはおりません。王都への出店も同時に行いましょう」

 グレイはホクホク顔をしていた。
 話がトントン拍子に進んで行く。私はふと思い出して口を開いた。

 「であれば、いっそ株式会社にして、ソースを作る工場を作った方が良さそうね。
 オコノミを売るのは人に任せて、私達は契約書を用意してソースを売る。どうかしら?」

 オコノミが普及すればする程ソースが売れるというやり方である。
 前世のそういう商売を思い出しながら言うと、グレイはそういう商売もあったんだね、と感心していた。
 スレイマンとヤンを呼んで、デーツやソヤの輸入量を増やす手配を頼む。私は手に入りやすい材料で作れるソースレシピ等を幾つかピックアップして書き出すことにした。


***


 引き続き、武官採用試験が行われたのだが。
 文官採用試験の話をギャヴィンから聞いたのか、何とアルバート王子も興味を示して見学を申し出てきた。
 クロヴラン・ピュトロワとパトリュック・カルカイムには早速領政に携わって貰っている。新たに採用された文官達に、ギャヴィンはもう少し引継ぎをしてくれるということだったのでアルバート王子の滞在延期が決定。

 筆記試験の後、数日間かけた勝ち抜き戦のトーナメント形式の実技試験が行われた。
 アルバート第一王子殿下もご臨席、という触れ込みに、彼らはダージリン伯爵家以外にも王族に取り立てて貰える可能性にいっそう張り切っていた。

 結果。

 「聖女様、そしてヨハン卿、シュテファン卿。このロイジウス・ウーファー、戻って参りました!」

 勝ち抜いて優勝に輝いたのは、修道騎士ロイジウス・ウーファーだった。

 「教皇猊下には聖女様にお仕えするのならば好きにしても良い、と温かいお言葉を賜っております」

 戻って来た時、試験の噂を聞いて急ぎ準備をして採用試験の申し込みを済ませたらしい。
 筆記試験の結果も優秀だった。
 成程、ロイジウスならば表向きの軍人として適任だろう。
感想 1,014

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」