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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【1】
宮廷恋愛模様。
結局、オディロン王、サリューン枢機卿、アルバート王子、メティは受けることを決めた。一方、まだ悩んでいる様子のレアンドロ王子と皇女エリーザベト。
まあ、じっくりお考えになって……と私は彼らに時間を与えることにした。
話は終わったところでさあ帰ろうとしたところ、「もう行ってしまうの? 色々話を聞きたいのに……」とメティに引き留められ。
父サイモンを見ると、それならそれで宮廷で色々と用事を済ませるので好きにするがいいということだったので、私は貴賓室を辞してトゥラントゥール宮殿の庭園の片隅でお茶をすることにしたのであった。
王や枢機卿は、父サイモンらと話があるらしい。エヴァン修道士も残っていたことから、恐らく誘拐の件等の詳細な報告をしたりするのだろう。
アルバート王子、レアンドロ王子、皇女エリーザベトとは途中まで同行することに。
「あの……聖女様。先程の『種痘』なるものは、カレル卿も受けられたのでしょうか?」
おずおずと切り出す皇女。私は「ええ、勿論です」と頷いた。
先程家族にも接種したと言った筈だけど、聞いていなかったのだろうか。
そこへ、レアンドロ王子がゴホン、とわざとらしく咳払いをする。
「本日は宮廷にお見えになっていないようですが、もしや体調などを崩されているとか? その、『種痘』を受けたことで」
「いいえ、兄は――」
私が説明しようとした時、貴族令嬢達の一団がそこを通りかかった。
彼女達はアルバート王子を認めると、皆一斉に淑女の礼を取る。
「これはアルバート殿下。皆様方も、ごきげん麗しく……」
「ありがとう。本日は特に催事が無かったと思うのですが、姫君達は何処へ?」
「私達は刺繍や詩の朗読を行う会に向かうところですわ。もし、殿下達のご臨席があれば皆喜ぶのですが」
「嬉しいお言葉ですが、生憎本日は忙しく……」
「……残念ですわ」
そんな会話をよそに、他の令嬢達はレアンドロ王子達を見てキャピキャピ燥いでいる。
前世の、二次でも三次でも他人の恋愛模様を見てあれこれ喜ぶタイプの人が居たな、と思い出した。
「それにしてもエリーザベト殿下は、レアンドロ殿下とそうして並ばれるととってもお似合いですわね」
「本当に!」
「エリーザベト殿下、トゥラントゥール宮殿にはもう慣れられまして?」
令嬢の一人がにこやかに声を掛ける。しかしどこか含みがあるような……。
観察していると、エリーザベト皇女は完璧な微笑みを浮かべた。
「宮殿の皆様には大変心配りをして頂いて感謝しております。カレル卿にも大変お世話になって……」
ふむ……探るなら今だろうか。
「皇女殿下、兄は十分におもてなし出来ておりますでしょうか。神聖アレマニア帝国のやんごとなき姫君に、何か失礼をしていなければ良いのですが」
「いえ、そんな。とても良くして頂いておりますわ」
頬を染めてはにかむ皇女。これはカレル兄に好意を持っていそうだな。
ちらりとレアンドロ王子を窺うと、無表情だが険しい眼差しになっていた。
うーむ。こちらは敵意を持っている、と。
「……それは宜しゅうございました。しかしレアンドロ殿下がいらっしゃる今、エスコート役としての兄はお役御免ですわね」
「あ……そうですわね。カレル卿にお礼を申し上げなければ」
顔を曇らせ、寂しそうに言うエリーザベト皇女。一方、レアンドロ王子は眼差しを和らげる。少し機嫌が直ったようだった。
と、一人の令嬢が恐る恐る声を掛けて来る。
「もしかして……聖女様でいらっしゃいますか?」
私が「そうですわ」と頷くと、貴族令嬢達は「お、お戻りになられたのですね!」「お会い出来て嬉しゅうございます!」とびしりと礼を取った。
何だか……恐れられてる? アルバート王子の時より気合入っているように見えるのは気のせいだろうか。
精神感応を使うと、彼女らは父親から「エリザベル嬢のようになりたくなくば聖女様には逆らうな。決して機嫌を損なうな」等と言い含められていた模様。失礼な話である。
「刺繍や詩、素敵ですわね。楽しんで下さいませ」と当たり障りのない言葉を掛けると、彼女達はホッとしたように口々にありがとうございますと礼を言う。
先程の令嬢が意を決したように口を開いた。
「聖女様、カレル様はご一緒にはいらっしゃらなかったのですか?」
「ええ。今日は兄達のお休みなんですの。父や私が戻って緊張が緩んだのでしょうね。今朝は兄二人とも旅行に行ったりのんびりしたい等ととぼやいておりましたわ。兄カレルも今頃釣りでもして羽を伸ばしているかと」
「それはようございましたわ。何かと気を張っていらっしゃったご様子でしたもの」
「……」
別の令嬢の一人が相槌を打ちながら皇女エリーザベトに流し目を送る。
レアンドロ王子が小さく鼻を鳴らし、皇女は気落ちしたように俯いて黙っていた。
成程、この令嬢達は麗しき月光の君たるカレル兄崇拝者である、と。だからレアンドロ王子とお似合いだと言い、皇女の相手がカレル兄にとって負担なのだと仄めかしたのか。
「聖女様に私達一同よりお願いがございますの。カレル様にあまりご無理をなさらぬようにとお伝え下さいまし」
私が承諾すると、令嬢達は「御前失礼致します、」と再び礼を取る。
そして、「エスパーニャの王子殿下と神聖アレマニア帝国の皇女殿下がトラス王国のトゥラントゥール宮殿で手と手を取り合う……」「何ともロマンチックで素敵ですわ!」等と聞こえよがしに噂し合いながら去っていった。
まあ、じっくりお考えになって……と私は彼らに時間を与えることにした。
話は終わったところでさあ帰ろうとしたところ、「もう行ってしまうの? 色々話を聞きたいのに……」とメティに引き留められ。
父サイモンを見ると、それならそれで宮廷で色々と用事を済ませるので好きにするがいいということだったので、私は貴賓室を辞してトゥラントゥール宮殿の庭園の片隅でお茶をすることにしたのであった。
王や枢機卿は、父サイモンらと話があるらしい。エヴァン修道士も残っていたことから、恐らく誘拐の件等の詳細な報告をしたりするのだろう。
アルバート王子、レアンドロ王子、皇女エリーザベトとは途中まで同行することに。
「あの……聖女様。先程の『種痘』なるものは、カレル卿も受けられたのでしょうか?」
おずおずと切り出す皇女。私は「ええ、勿論です」と頷いた。
先程家族にも接種したと言った筈だけど、聞いていなかったのだろうか。
そこへ、レアンドロ王子がゴホン、とわざとらしく咳払いをする。
「本日は宮廷にお見えになっていないようですが、もしや体調などを崩されているとか? その、『種痘』を受けたことで」
「いいえ、兄は――」
私が説明しようとした時、貴族令嬢達の一団がそこを通りかかった。
彼女達はアルバート王子を認めると、皆一斉に淑女の礼を取る。
「これはアルバート殿下。皆様方も、ごきげん麗しく……」
「ありがとう。本日は特に催事が無かったと思うのですが、姫君達は何処へ?」
「私達は刺繍や詩の朗読を行う会に向かうところですわ。もし、殿下達のご臨席があれば皆喜ぶのですが」
「嬉しいお言葉ですが、生憎本日は忙しく……」
「……残念ですわ」
そんな会話をよそに、他の令嬢達はレアンドロ王子達を見てキャピキャピ燥いでいる。
前世の、二次でも三次でも他人の恋愛模様を見てあれこれ喜ぶタイプの人が居たな、と思い出した。
「それにしてもエリーザベト殿下は、レアンドロ殿下とそうして並ばれるととってもお似合いですわね」
「本当に!」
「エリーザベト殿下、トゥラントゥール宮殿にはもう慣れられまして?」
令嬢の一人がにこやかに声を掛ける。しかしどこか含みがあるような……。
観察していると、エリーザベト皇女は完璧な微笑みを浮かべた。
「宮殿の皆様には大変心配りをして頂いて感謝しております。カレル卿にも大変お世話になって……」
ふむ……探るなら今だろうか。
「皇女殿下、兄は十分におもてなし出来ておりますでしょうか。神聖アレマニア帝国のやんごとなき姫君に、何か失礼をしていなければ良いのですが」
「いえ、そんな。とても良くして頂いておりますわ」
頬を染めてはにかむ皇女。これはカレル兄に好意を持っていそうだな。
ちらりとレアンドロ王子を窺うと、無表情だが険しい眼差しになっていた。
うーむ。こちらは敵意を持っている、と。
「……それは宜しゅうございました。しかしレアンドロ殿下がいらっしゃる今、エスコート役としての兄はお役御免ですわね」
「あ……そうですわね。カレル卿にお礼を申し上げなければ」
顔を曇らせ、寂しそうに言うエリーザベト皇女。一方、レアンドロ王子は眼差しを和らげる。少し機嫌が直ったようだった。
と、一人の令嬢が恐る恐る声を掛けて来る。
「もしかして……聖女様でいらっしゃいますか?」
私が「そうですわ」と頷くと、貴族令嬢達は「お、お戻りになられたのですね!」「お会い出来て嬉しゅうございます!」とびしりと礼を取った。
何だか……恐れられてる? アルバート王子の時より気合入っているように見えるのは気のせいだろうか。
精神感応を使うと、彼女らは父親から「エリザベル嬢のようになりたくなくば聖女様には逆らうな。決して機嫌を損なうな」等と言い含められていた模様。失礼な話である。
「刺繍や詩、素敵ですわね。楽しんで下さいませ」と当たり障りのない言葉を掛けると、彼女達はホッとしたように口々にありがとうございますと礼を言う。
先程の令嬢が意を決したように口を開いた。
「聖女様、カレル様はご一緒にはいらっしゃらなかったのですか?」
「ええ。今日は兄達のお休みなんですの。父や私が戻って緊張が緩んだのでしょうね。今朝は兄二人とも旅行に行ったりのんびりしたい等ととぼやいておりましたわ。兄カレルも今頃釣りでもして羽を伸ばしているかと」
「それはようございましたわ。何かと気を張っていらっしゃったご様子でしたもの」
「……」
別の令嬢の一人が相槌を打ちながら皇女エリーザベトに流し目を送る。
レアンドロ王子が小さく鼻を鳴らし、皇女は気落ちしたように俯いて黙っていた。
成程、この令嬢達は麗しき月光の君たるカレル兄崇拝者である、と。だからレアンドロ王子とお似合いだと言い、皇女の相手がカレル兄にとって負担なのだと仄めかしたのか。
「聖女様に私達一同よりお願いがございますの。カレル様にあまりご無理をなさらぬようにとお伝え下さいまし」
私が承諾すると、令嬢達は「御前失礼致します、」と再び礼を取る。
そして、「エスパーニャの王子殿下と神聖アレマニア帝国の皇女殿下がトラス王国のトゥラントゥール宮殿で手と手を取り合う……」「何ともロマンチックで素敵ですわ!」等と聞こえよがしに噂し合いながら去っていった。
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