487 / 747
うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【1】
チャリンチャリン。
しおりを挟む
アルバート王子は兎も角、レアンドロ王子か。
昨日と言い、遭遇率がやけに高い気がする。もしかしてストーカーされているのだろうか? いや、まさかね。
というか、折角久々にアン姉に身内だけで会えたというのに何で他人がやって来るかなぁ。
しかも、内心不満たらたらなのに更に追い打ちが来たというね。
目の前にはレアンドロ王子が持ってきたという見舞いの品々がずらりと並べられて行く。嫌味な程の豪華さに圧倒される。
――私達のお土産が見劣りするじゃん、やめて欲しいんだけど。
こちらの心中を他所に、レアンドロ王子はエスパーニャの王族は当たり前に絹をおむつに使うとドヤ顔だ。
絹ねぇ……着古して変色したような絹を洗って切って、使い捨て尻拭き等に再利用するといいという話は前世でも聞いたことがあるが。真っ新な絹を使うとは何と勿体ないことをするんだ。
得意顔を浮かべている所悪いが、綿の方がおむつには向いていると思うぞ。
つーか、時折こちらを鼻息荒そうな顔で得意気にチラ見してくるのが激しくムカつくんですけど。
前世のアニメに出て来た、百数十万円もするラジコンを自慢する系の鼻持ちならない金持ちのクソガキちゃまを思い出す。
身包み剥いでシバいてやったら、「うわーん、ママー!」って泣き出さないかな。
しかしお祝いの席ということもあり、私は余所行きの笑顔を絶やさず空気を読んで黙っていた。
目の前のこいつの背後には大陸銀が唸っているのだ。つまり、これからマリーちゃんが揺さぶってチャリンチャリンする為の大事な大事な金の生る木――多少は大目に見てやらねばな。
「男の子でも女の子でも、元気に生まれて来て欲しいですわ」
脳内でレアンドロ王子をジャンプさせて、ポケットの中身をカツアゲしていたところに聞こえて来たアン姉の言葉。
――いかんいかん、神聖な妊婦の前で聖女たる私がこんな黒い考えをしては。
我に返った私。少し反省していると、気が付けば目の前にレアンドロ王子がやってきていた。
「それにしても、ザイン殿の奥方が聖女様の姉君だったとは」
世間は狭いだの運命なのかだの言いながら、膝をつくなり拒否する間も無く私の片手を取る。
手の甲に口付けを落とされた。
感じる生温かい唇の感触とギラギラとした眼差しに背筋がぞわりとする。
相手がいくらイケメンであっても、嫌悪感が湧くときは湧くものだなぁ、という考えが脳裏にちらりと過った。
「まあ、レアンドロ殿下。御戯れを」
金の生る木でなかったら、その顔面を踏みつけていたところだ。
早よ手を離せ、という意味を込めるも、手はそのままだ。
「戯れなど……」
何時でも聖女様のことを崇拝しております、と懇願するような目をするレアンドロ王子。
純粋に信仰心なのか、それとも――。
困惑しつつ精神感応を使おうかと考えた矢先、アルバート王子が窘める。
頭が理解していても体が付いて行かないと答えるレアンドロ王子。
――意識せず習慣化している、ということか?
ならばやっぱりお国柄のものだということが出来る。
私は呆れてレアンドロ王子を見た。
「エスパーニャ王国の男性は皆殿下のような方ばかりなんですの?」
「さあ……確かめてごらんになりますか?」
流れるような自然な返事。
――あ、やっぱり社交辞令だわ。
それならこちらもそれなりの返事をするまでである。
婚約者である皇女エリーザベトや他の令嬢を持ち出して、彼女らに恨まれてしまう等と茶化すように返すと、レアンドロ王子は笑ってあっさりと引き下がった。
ふう……こんな調子だとエスパーニャ王国の恋愛は色々大変そうだな。これが日常茶飯事だと、相手の本音が分からなくなりそうだ。
アン姉に疱瘡の流行や種痘の話をする間、こっそりと握られた手をさり気なく布巾で拭く。
冗談として流して済んだが……レアンドロ王子が見せた、ギラギラした眼差しが引っかかっていた。
王族にとって、聖女は利用価値があるのは確かだ――オス麿やアーダム皇子の件もあったし、気を付けておくとするか。
昨日と言い、遭遇率がやけに高い気がする。もしかしてストーカーされているのだろうか? いや、まさかね。
というか、折角久々にアン姉に身内だけで会えたというのに何で他人がやって来るかなぁ。
しかも、内心不満たらたらなのに更に追い打ちが来たというね。
目の前にはレアンドロ王子が持ってきたという見舞いの品々がずらりと並べられて行く。嫌味な程の豪華さに圧倒される。
――私達のお土産が見劣りするじゃん、やめて欲しいんだけど。
こちらの心中を他所に、レアンドロ王子はエスパーニャの王族は当たり前に絹をおむつに使うとドヤ顔だ。
絹ねぇ……着古して変色したような絹を洗って切って、使い捨て尻拭き等に再利用するといいという話は前世でも聞いたことがあるが。真っ新な絹を使うとは何と勿体ないことをするんだ。
得意顔を浮かべている所悪いが、綿の方がおむつには向いていると思うぞ。
つーか、時折こちらを鼻息荒そうな顔で得意気にチラ見してくるのが激しくムカつくんですけど。
前世のアニメに出て来た、百数十万円もするラジコンを自慢する系の鼻持ちならない金持ちのクソガキちゃまを思い出す。
身包み剥いでシバいてやったら、「うわーん、ママー!」って泣き出さないかな。
しかしお祝いの席ということもあり、私は余所行きの笑顔を絶やさず空気を読んで黙っていた。
目の前のこいつの背後には大陸銀が唸っているのだ。つまり、これからマリーちゃんが揺さぶってチャリンチャリンする為の大事な大事な金の生る木――多少は大目に見てやらねばな。
「男の子でも女の子でも、元気に生まれて来て欲しいですわ」
脳内でレアンドロ王子をジャンプさせて、ポケットの中身をカツアゲしていたところに聞こえて来たアン姉の言葉。
――いかんいかん、神聖な妊婦の前で聖女たる私がこんな黒い考えをしては。
我に返った私。少し反省していると、気が付けば目の前にレアンドロ王子がやってきていた。
「それにしても、ザイン殿の奥方が聖女様の姉君だったとは」
世間は狭いだの運命なのかだの言いながら、膝をつくなり拒否する間も無く私の片手を取る。
手の甲に口付けを落とされた。
感じる生温かい唇の感触とギラギラとした眼差しに背筋がぞわりとする。
相手がいくらイケメンであっても、嫌悪感が湧くときは湧くものだなぁ、という考えが脳裏にちらりと過った。
「まあ、レアンドロ殿下。御戯れを」
金の生る木でなかったら、その顔面を踏みつけていたところだ。
早よ手を離せ、という意味を込めるも、手はそのままだ。
「戯れなど……」
何時でも聖女様のことを崇拝しております、と懇願するような目をするレアンドロ王子。
純粋に信仰心なのか、それとも――。
困惑しつつ精神感応を使おうかと考えた矢先、アルバート王子が窘める。
頭が理解していても体が付いて行かないと答えるレアンドロ王子。
――意識せず習慣化している、ということか?
ならばやっぱりお国柄のものだということが出来る。
私は呆れてレアンドロ王子を見た。
「エスパーニャ王国の男性は皆殿下のような方ばかりなんですの?」
「さあ……確かめてごらんになりますか?」
流れるような自然な返事。
――あ、やっぱり社交辞令だわ。
それならこちらもそれなりの返事をするまでである。
婚約者である皇女エリーザベトや他の令嬢を持ち出して、彼女らに恨まれてしまう等と茶化すように返すと、レアンドロ王子は笑ってあっさりと引き下がった。
ふう……こんな調子だとエスパーニャ王国の恋愛は色々大変そうだな。これが日常茶飯事だと、相手の本音が分からなくなりそうだ。
アン姉に疱瘡の流行や種痘の話をする間、こっそりと握られた手をさり気なく布巾で拭く。
冗談として流して済んだが……レアンドロ王子が見せた、ギラギラした眼差しが引っかかっていた。
王族にとって、聖女は利用価値があるのは確かだ――オス麿やアーダム皇子の件もあったし、気を付けておくとするか。
253
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。