貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン

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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【1】

チャリンチャリン。

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 アルバート王子は兎も角、レアンドロ王子か。
 昨日と言い、遭遇率がやけに高い気がする。もしかしてストーカーされているのだろうか? いや、まさかね。
 というか、折角久々にアン姉に身内だけで会えたというのに何で他人がやって来るかなぁ。
 しかも、内心不満たらたらなのに更に追い打ちが来たというね。

 目の前にはレアンドロ王子が持ってきたという見舞いの品々がずらりと並べられて行く。嫌味な程の豪華さに圧倒される。

 ――私達のお土産が見劣りするじゃん、やめて欲しいんだけど。

 こちらの心中を他所に、レアンドロ王子はエスパーニャの王族は当たり前に絹をおむつに使うとドヤ顔だ。

 絹ねぇ……着古して変色したような絹を洗って切って、使い捨て尻拭き等に再利用するといいという話は前世でも聞いたことがあるが。真っ新な絹を使うとは何と勿体ないことをするんだ。
 得意顔を浮かべている所悪いが、綿の方がおむつには向いていると思うぞ。

 つーか、時折こちらを鼻息荒そうな顔で得意気にチラ見してくるのが激しくムカつくんですけど。

 前世のアニメに出て来た、百数十万円もするラジコンを自慢する系の鼻持ちならない金持ちのクソガキちゃまを思い出す。
 身包み剥いでシバいてやったら、「うわーん、ママー!」って泣き出さないかな。

 しかしお祝いの席ということもあり、私は余所行きの笑顔を絶やさず空気を読んで黙っていた。
 目の前のこいつレアンドロ王子の背後には大陸銀が唸っているのだ。つまり、これからマリーちゃんが揺さぶってチャリンチャリンする為の大事な大事な金の生る木――多少は大目に見てやらねばな。

 「男の子でも女の子でも、元気に生まれて来て欲しいですわ」

 脳内でレアンドロ王子をジャンプさせて、ポケットの中身をカツアゲしていたところに聞こえて来たアン姉の言葉。

 ――いかんいかん、神聖な妊婦の前で聖女たる私がこんな黒い考えをしては。

 我に返った私。少し反省していると、気が付けば目の前にレアンドロ王子金の生る木がやってきていた。

 「それにしても、ザイン殿の奥方が聖女様の姉君だったとは」

 世間は狭いだの運命なのかだの言いながら、膝をつくなり拒否する間も無く私の片手を取る。
 手の甲に口付けを落とされた。

 感じる生温かい唇の感触とギラギラとした眼差しに背筋がぞわりとする。
 相手がいくらイケメンであっても、嫌悪感が湧くときは湧くものだなぁ、という考えが脳裏にちらりと過った。

 「まあ、レアンドロ殿下。御戯れを」

 金の生る木でなかったら、その顔面を踏みつけていたところだ。
 早よ手を離せ、という意味を込めるも、手はそのままだ。

 「戯れなど……」

 何時でも聖女様のことを崇拝しております、と懇願するような目をするレアンドロ王子。
 純粋に信仰心なのか、それとも――。
 困惑しつつ精神感応を使おうかと考えた矢先、アルバート王子が窘める。
 頭が理解していても体が付いて行かないと答えるレアンドロ王子。

 ――意識せず習慣化している、ということか?

 ならばやっぱりお国柄のものだということが出来る。
 私は呆れてレアンドロ王子を見た。

 「エスパーニャ王国の男性は皆殿下のような方ばかりなんですの?」

 「さあ……確かめてごらんになりますか?」

 流れるような自然な返事。

 ――あ、やっぱり社交辞令だわ。

 それならこちらもそれなりの返事をするまでである。
 婚約者である皇女エリーザベトや他の令嬢を持ち出して、彼女らに恨まれてしまう等と茶化すように返すと、レアンドロ王子は笑ってあっさりと引き下がった。
 ふう……こんな調子だとエスパーニャ王国の恋愛は色々大変そうだな。これが日常茶飯事だと、相手の本音が分からなくなりそうだ。

 アン姉に疱瘡の流行や種痘の話をする間、こっそりと握られた手をさり気なく布巾で拭く。
 冗談として流して済んだが……レアンドロ王子が見せた、ギラギラした眼差しが引っかかっていた。
 王族にとって、聖女は利用価値があるのは確かだ――オス麿やアーダム皇子の件もあったし、気を付けておくとするか。
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