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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【2】
グレイ・ダージリン(147)
『疱瘡の病の原因が神の刻印ではない証を立てよ』
エスパーニャ王ロレンツォが言い放った言葉。
神の刻印を広めるには、王に証を立てねばならない。それには――
エスパーニャの王宮を辞したミゲル・バレンシア枢機卿は、散々悩み抜いた末に側近達の猛反対を押し切って疱瘡の発生地域であるトラス王国との国境近くへと向かう事を決めた。
刻印が疫病の原因の疑いがあると思われている以上、己が身を以って証明するしかないと考えたのである。
それに、王都では気味悪がられた刻印も、疫病蔓延地域なら藁にも縋る思いで受け入れる者も居るかも知れない。
王宮を辞した後、ミゲルは自室で一人祈りを捧げていた。
あの日聖地の大聖堂で見た聖女降誕節の光景が、つい昨日見たかのように脳裏に鮮やかに蘇る。
先代教皇の息子というだけで大司教位に就けているアブラーモ。
その悍ましい罪が暴かれた挙句、聖女様に暴言を吐き無礼を働いたその時。
天の使いであるありとあらゆる鳥達が聖女様の元に馳せ参じてアブラーモ一派を攻撃したかの光景は、今でもミゲルの脳裏に焼き付いて離れないでいた。
普通ならば人を恐れる筈の野生の鳥達が、まるで最初から飼い慣らされていたかのように侍るその奇跡の様は、正しく聖女様が神の娘である事の証明。
陽光の中に佇み、黄金に輝く聖女様の姿を見れば、誰しも畏敬の念を抱かずにはいられないだろう。
そんな光景を目にしても尚、正直に言えばミゲルには疑いと迷いがあった。
疱瘡の病を防ぐという『神の刻印』についてサングマ教皇から知らされた時、ミゲルとて素直に信じた訳ではないのだ。
ミゲルは懊悩する。本当に神の刻印は自分を疫病から守ってくれるのか。
疱瘡の病渦巻く地域に飛び込む事を想像するだに、恐ろしくて堪らなかった。
縋るような思いで聖典を手に取る。
迷った時に啓示を得る為いつもしているように任意のページを開いた。
「……『死者が蘇った事に恐れる人々に、聖なる乙女は厳かに告げた。「何を恐れるのです。人の生き死には神の御手に委ねられています。他ならぬ神がこの者を生かした、ただそれだけなのです」』」
ミゲルの口が読み上げたのは、偶然にも『聖女記』の一節。初代聖女様の御言葉。
一介の修道士だった頃から何度も読んだ、初代聖女様が死者の胸を押し口に息を吹き込む事で生き返らせたという奇跡の話。
ここにきて、ミゲルは自分が初代聖女様の生きた古の時代に生きているような錯覚を覚えていた。
初代聖女様を否定した者達は、総じて破滅の運命が訪れている事ははっきり聖典に記録されている。
聖典を読んでいる時、何故そうした不信心者が出るのかと不思議に思っていたが、今なら実感として分かる。
それまで培ってきた常識に反する事は容易には信じがたい。
ミゲルでさえそうなのだ。俗世に染まり堕落しきった者達は尚更。
――行くか、逃げるか。
迷いの中、ミゲルはそっと刻印のあるあたりを撫でる。
聖地で受けた刻印は、聖女様の腕から直接分けられたものだという。
ただ一つ、言えることは。
――古の時代、聖女様を信じなかった愚か者に成り下がる訳にはいかない。
神が望むならば、たとえ疫病の中に飛び込んだとしても自分は生きるだろう。
「私の生き死にもまた、神の御手に。神が私を生かすのならば、何を恐れるというのか!」
両掌を天に向けて誰にという訳でもなく枢機卿ミゲルは叫んだ。
今こそ太陽神への、聖女様への信仰心が試されている。
目を閉じ、長い事祈りを捧げたミゲルは覚悟を決めた。
自身の命の終わりまで神を信じ抜く事、そして疫病の渦へ飛び込む事を決意したのだ。
ミゲルは先ず、エスパーニャ王都で同行者を探した。
未だ疫病の魔の手が及ばぬ王都。
アレホ大司教の喧伝する薬に靡く者達が大勢いる中での人員確保は困難を極めたが、少しでも刻印を広めて疱瘡の病を食い止めねばという使命感がミゲルを突き動かしていた。
王都から遠ざかるにつれ、病を恐れ逃れる人々が増えて行く。
その流れに逆らうように進むミゲル一行は、行き倒れる疱瘡の病人や死者に出くわす頻度が次第に増えて行った。
道中、刻印を受けに来たのは決まって貧しい者達だった。
彼らから話の聞き取りをした修道士曰く、「どうせ俺達には薬を買う金もない。刻印を完全に信じている訳じゃないが、このまま疱瘡で死ぬよりはマシ」なのだと。
行く先々の修道院ではミゲルは枢機卿だというのに刻印の安全性が不明だという理由で宿泊を断られた。
修道院には連日人々が列を成している。
こっそり内部を覗かせると、薬を高額の寄付と引き換えに渡していたそうだ。
一定以上の金を持っている人々は、刻印を眉唾だと敬遠しアレホ大司教の手の者が高値で売る薬をこぞって買い求めていたのである。
勿論それで疱瘡が予防出来る筈もなく――薬を買い求める金持ち達の中に、発症を待つばかりの交易商人も混ざっていた。
やがて、アルビオン、北方諸国、神聖アレマニアの港町や国境の町で高熱を出し倒れた者が出始める事になる。
そしてその町々を中心として、死の疫病は同心円状に各国を蝕み始めていたのである。
***
「神の刻印は、本当に……」
王都を発って幾日経っただろうか。
枢機卿ミゲル・バレンシアの一行は、とうとうトラス王国との国境近くまでたどり着いていた。
信じられないことに、一人の病人も出すことなく。
「猊下、やはり数日前のあの噂は真実だったのでしょう」
側近の一人が興奮したように話す。
数日前の噂とは、聖女様は一人の司祭に啓示を与え、疱瘡の病人を抱えたカナールの民を受け入れ看病するようにと命じられたというもの。
神の刻印を受けていた司祭達は病人を看病したにも関わらず、病に冒されることはなかったそうだ。
更に聖女が直々にカナールの民を迎えに来て、彼らに許しと祝福を与え信仰の民として迎え入れたのだと。
国境として聳え立っている山々の頂を見つめ、ミゲルの心は奮い立つ。
希望の炎が燃え上がった。
「太陽神のお導きに感謝を――私は間違っていませんでした。聖女様もまた、御身を以て刻印の力を示された。これを神の奇跡と言わずに何というのか!」
刻印を受けている自分達もまた、神の加護を得ている。
目の前の霧が一気に晴れ渡るような心地で、枢機卿ミゲル・バレンシアは祈りの所作をして一行を振り返った。
「さあ、行きましょう。私達の使命を果たすのです」
エスパーニャ王ロレンツォが言い放った言葉。
神の刻印を広めるには、王に証を立てねばならない。それには――
エスパーニャの王宮を辞したミゲル・バレンシア枢機卿は、散々悩み抜いた末に側近達の猛反対を押し切って疱瘡の発生地域であるトラス王国との国境近くへと向かう事を決めた。
刻印が疫病の原因の疑いがあると思われている以上、己が身を以って証明するしかないと考えたのである。
それに、王都では気味悪がられた刻印も、疫病蔓延地域なら藁にも縋る思いで受け入れる者も居るかも知れない。
王宮を辞した後、ミゲルは自室で一人祈りを捧げていた。
あの日聖地の大聖堂で見た聖女降誕節の光景が、つい昨日見たかのように脳裏に鮮やかに蘇る。
先代教皇の息子というだけで大司教位に就けているアブラーモ。
その悍ましい罪が暴かれた挙句、聖女様に暴言を吐き無礼を働いたその時。
天の使いであるありとあらゆる鳥達が聖女様の元に馳せ参じてアブラーモ一派を攻撃したかの光景は、今でもミゲルの脳裏に焼き付いて離れないでいた。
普通ならば人を恐れる筈の野生の鳥達が、まるで最初から飼い慣らされていたかのように侍るその奇跡の様は、正しく聖女様が神の娘である事の証明。
陽光の中に佇み、黄金に輝く聖女様の姿を見れば、誰しも畏敬の念を抱かずにはいられないだろう。
そんな光景を目にしても尚、正直に言えばミゲルには疑いと迷いがあった。
疱瘡の病を防ぐという『神の刻印』についてサングマ教皇から知らされた時、ミゲルとて素直に信じた訳ではないのだ。
ミゲルは懊悩する。本当に神の刻印は自分を疫病から守ってくれるのか。
疱瘡の病渦巻く地域に飛び込む事を想像するだに、恐ろしくて堪らなかった。
縋るような思いで聖典を手に取る。
迷った時に啓示を得る為いつもしているように任意のページを開いた。
「……『死者が蘇った事に恐れる人々に、聖なる乙女は厳かに告げた。「何を恐れるのです。人の生き死には神の御手に委ねられています。他ならぬ神がこの者を生かした、ただそれだけなのです」』」
ミゲルの口が読み上げたのは、偶然にも『聖女記』の一節。初代聖女様の御言葉。
一介の修道士だった頃から何度も読んだ、初代聖女様が死者の胸を押し口に息を吹き込む事で生き返らせたという奇跡の話。
ここにきて、ミゲルは自分が初代聖女様の生きた古の時代に生きているような錯覚を覚えていた。
初代聖女様を否定した者達は、総じて破滅の運命が訪れている事ははっきり聖典に記録されている。
聖典を読んでいる時、何故そうした不信心者が出るのかと不思議に思っていたが、今なら実感として分かる。
それまで培ってきた常識に反する事は容易には信じがたい。
ミゲルでさえそうなのだ。俗世に染まり堕落しきった者達は尚更。
――行くか、逃げるか。
迷いの中、ミゲルはそっと刻印のあるあたりを撫でる。
聖地で受けた刻印は、聖女様の腕から直接分けられたものだという。
ただ一つ、言えることは。
――古の時代、聖女様を信じなかった愚か者に成り下がる訳にはいかない。
神が望むならば、たとえ疫病の中に飛び込んだとしても自分は生きるだろう。
「私の生き死にもまた、神の御手に。神が私を生かすのならば、何を恐れるというのか!」
両掌を天に向けて誰にという訳でもなく枢機卿ミゲルは叫んだ。
今こそ太陽神への、聖女様への信仰心が試されている。
目を閉じ、長い事祈りを捧げたミゲルは覚悟を決めた。
自身の命の終わりまで神を信じ抜く事、そして疫病の渦へ飛び込む事を決意したのだ。
ミゲルは先ず、エスパーニャ王都で同行者を探した。
未だ疫病の魔の手が及ばぬ王都。
アレホ大司教の喧伝する薬に靡く者達が大勢いる中での人員確保は困難を極めたが、少しでも刻印を広めて疱瘡の病を食い止めねばという使命感がミゲルを突き動かしていた。
王都から遠ざかるにつれ、病を恐れ逃れる人々が増えて行く。
その流れに逆らうように進むミゲル一行は、行き倒れる疱瘡の病人や死者に出くわす頻度が次第に増えて行った。
道中、刻印を受けに来たのは決まって貧しい者達だった。
彼らから話の聞き取りをした修道士曰く、「どうせ俺達には薬を買う金もない。刻印を完全に信じている訳じゃないが、このまま疱瘡で死ぬよりはマシ」なのだと。
行く先々の修道院ではミゲルは枢機卿だというのに刻印の安全性が不明だという理由で宿泊を断られた。
修道院には連日人々が列を成している。
こっそり内部を覗かせると、薬を高額の寄付と引き換えに渡していたそうだ。
一定以上の金を持っている人々は、刻印を眉唾だと敬遠しアレホ大司教の手の者が高値で売る薬をこぞって買い求めていたのである。
勿論それで疱瘡が予防出来る筈もなく――薬を買い求める金持ち達の中に、発症を待つばかりの交易商人も混ざっていた。
やがて、アルビオン、北方諸国、神聖アレマニアの港町や国境の町で高熱を出し倒れた者が出始める事になる。
そしてその町々を中心として、死の疫病は同心円状に各国を蝕み始めていたのである。
***
「神の刻印は、本当に……」
王都を発って幾日経っただろうか。
枢機卿ミゲル・バレンシアの一行は、とうとうトラス王国との国境近くまでたどり着いていた。
信じられないことに、一人の病人も出すことなく。
「猊下、やはり数日前のあの噂は真実だったのでしょう」
側近の一人が興奮したように話す。
数日前の噂とは、聖女様は一人の司祭に啓示を与え、疱瘡の病人を抱えたカナールの民を受け入れ看病するようにと命じられたというもの。
神の刻印を受けていた司祭達は病人を看病したにも関わらず、病に冒されることはなかったそうだ。
更に聖女が直々にカナールの民を迎えに来て、彼らに許しと祝福を与え信仰の民として迎え入れたのだと。
国境として聳え立っている山々の頂を見つめ、ミゲルの心は奮い立つ。
希望の炎が燃え上がった。
「太陽神のお導きに感謝を――私は間違っていませんでした。聖女様もまた、御身を以て刻印の力を示された。これを神の奇跡と言わずに何というのか!」
刻印を受けている自分達もまた、神の加護を得ている。
目の前の霧が一気に晴れ渡るような心地で、枢機卿ミゲル・バレンシアは祈りの所作をして一行を振り返った。
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