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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【2】
もしかして、今がチャンス?
――海賊退治急がないとヤバいかも。
お茶会がお開きになった後、夕方近く。
私は自室のソファでゆったりと寝ころびながらエスパーニャ王国の透視をしていた。
エスパーニャ王国は神聖アレマニア帝国と深い結びつきがあり、それは教会も例外ではなく、不寛容派の勢力が強いようだ。王都では、今や住民の四割近くが疱瘡に倒れていた。
不寛容派の中心人物はアレホ大司教というおっさん。こいつはフォウツ司祭監修の疱瘡に効きもしない薬をとんでもない値段で売っており、転売や偽薬も横行している。
僅かなミゲル枢機卿派の修道士達は、不寛容派の目から逃れるようにスラムや裏路地でこそこそ種痘を広め、苦心しているようだった。
それでも種痘を受ける者が全く居ない訳ではなく、僅かに増えてはきているらしい。まあ、修道士の精神を読んでの感想だけど。
感染者が四割弱で済んでいるのは彼らのお蔭だと私は思う。
一方のミゲル枢機卿は今トラス王国との国境近くで滅茶苦茶頑張っていた。そのお蔭か、神の刻印の効果もだんだん実証されつつある模様。
ただ、それが王都にも広まっていく頃には犠牲者の数がどえらい事になりそうな予感がしている。
王族の中ではレアンドロ王子が唯一と言って良い程の神の刻印賛成派(多分)である。
海賊退治を終えて早く王都に戻って種痘を推進して貰わないと困るのだ。
人が死ねばその分エスパーニャ市場や砂糖の需要も減る。それは避けたい。
そう思って、レアンドロ王子率いる艦隊と、アルビオンの海賊ヒューズ・ドレイクを透視してみたところ。
「もしかして、今がチャンス?」
毒竜率いる海賊艦隊が、エスパーニャの無敵艦隊からそう遠く離れていない無人島に隠れるように停泊しているのが見えた。
この絶好の好機を逃す理由はない。
私はすぐさまその情報をイメージとしてレアンドロ王子に送る。
うむ、これでよし、と。
後は頼んだぞ。
***
朝起きたら、隣にグレイが寝ていた。熟睡してるところに戻って来たのだろう。
昨日は結局、カレドニア女王リュサイは夕食に顔を出さなかった。
ヴェスカルの祖父ルードヴィッヒ卿はと言えば、ヴェスカルと旧交を温める他、種痘を受ける為に暫く我が家に滞在する事が決定。新年、ヴェスカルが聖女専属侍祭に任じられる晴れ姿も見たいだろうし。
それにしても、ベッドに入って来たの全然気が付かなかったわ。
あれだけの規模の商会の大締め作業。ましてやグレイは商会長である。昨夜は相当遅かったんだろうと思う。
「ふむ……」
ベッドの上で胡坐をかき、腕を組んで私は考える。
何せ労基法も碌に無いこの世界である。グレイのタスクを減らし効率化する方策を考えた方が良いのかも知れない。
これから商会ももっともっと大きくなりグローバル企業となる予定なのだし、何よりグレイが過労死したら私のだらだらニート計画も水の泡になってしまうのだから。
そんな気持ちでグレイの寝顔を見つめる。
ふと悪戯心が湧いた私は彼の柔らかい赤毛に手を伸ばした。
――さわさわ。
髪や頬をそっと撫でても起きない。いばら姫――眠れる森の美女オーロラ姫のようだなグレイ。
そう言えばペローのいばら姫の元ネタのような話があったな。
イタリアの軍人か詩人が書いた本だったか、『太陽と月とターリア』とかいう。
オーロラ姫ならぬターリア姫だが、元ネタの話では王子は真実の愛のキスなんて生ぬるいもんじゃなく、眠るターリア姫を見て性欲を我慢できずレイ……『愛の果実を摘む』のだ。
夢もへったくれもあったもんじゃないが、まあそれが現実というものだ。
で、ターリア姫はそれで眠ったまま双子を妊娠出産する訳だが――未婚の初対面、しかも意識不明の相手に対し、あの物語の王子はとんだ変態性犯罪者なのである。
だがしかし。
私はグレイと夫婦な訳だから寝ているところに色々と悪戯(婉曲表現)しても無罪なのだよ、ぐへへ。
どこまでやったら起きるかなー♪
ついばむようなキスを繰り返していると、二、三度程で彼の瞼が開かれ、翡翠色が見えた。
――あっ。
私は邪な心を誤魔化すように微笑んだ。
「おはよう、グレイ。夕べは随分遅かったのね」
そのまま、頬擦りをする。これでゲスな心は永遠にバレることはないだろう。
マリーちゃんは可愛い新妻、マリーちゃんは……と自己暗示をかける。
「うん、おはようマリー。今日は日課には行かないの?」
「まだ時間があるからゆっくりするつもりよ。外はまだ暗いし寒いしぃっ!?」
言い終わらない内に、グレイに布団ごとがばりと抱き込まれた。
そのまま背後から私を抱きしめた状態で、肩のところに顔を埋めるグレイ。
「……グレイ?」
「マリーの匂い、落ち着くね。昨日は本当、疲れたよ……」
そう言って溜息を吐いたグレイは、昨日の出来事を話し始めた。
「……それで、アルビオン人のラドさんのこと覚えてる? トラス大学へ行くと言ってた彼だよ。驚いた事に臨時の仕事をしに来ていたんだ。ジャンが言うには計算も帳簿付けも凄く優秀なんだって」
サイア達を迎えに行った帰り道で一緒になった羊毛商人見習いだった彼のことか。それこそ童話に出てくる典型的王子様みたいな容姿をしていたし、勿論覚えている。
そう言えばイサークも来年には大学へ、という話を父や母がしていたな。
今の大学の状況について、現大学生であるラドに訊いてみるのも良いかも知れない。
義兄アールから持ち掛けられた、銀行のエスパーニャ支店を任せられる人材について相談の話を最後にグレイは語り終えた。
そんなにラドが優秀なら、エスパーニャの銀行を任せられないかと思ったけど、グレイの言う通り大学での勉強を疎かにさせる訳にはいかない。
仕方ない、この件はミゲル枢機卿に相談するとしよう。
その後、私からも昨日の出来事を話していく。
そうだった、今日はリュサイが落ち着いて話が出来るかどうか様子を見に行かねば。
ルードヴィッヒ卿の事について訊かれたので家に滞在していると話す。
そう言えば、ルードヴィッヒ卿、昨日グレイに挨拶したいと言っていたな。
朝食を終えたらその場を設けよう。
あれから一晩経ったがレアンドロ王子はどうなっただろうか。
そう思って遠隔視をしてみると。
「あ」
「どうしたの?」
海に浮かぶ数多の木切れ、無人島傍に停泊する無敵艦隊。
ヒューズ・ドレイクの海賊船は拿捕されていた。レアンドロは無事、毒竜を倒したのだ。
お茶会がお開きになった後、夕方近く。
私は自室のソファでゆったりと寝ころびながらエスパーニャ王国の透視をしていた。
エスパーニャ王国は神聖アレマニア帝国と深い結びつきがあり、それは教会も例外ではなく、不寛容派の勢力が強いようだ。王都では、今や住民の四割近くが疱瘡に倒れていた。
不寛容派の中心人物はアレホ大司教というおっさん。こいつはフォウツ司祭監修の疱瘡に効きもしない薬をとんでもない値段で売っており、転売や偽薬も横行している。
僅かなミゲル枢機卿派の修道士達は、不寛容派の目から逃れるようにスラムや裏路地でこそこそ種痘を広め、苦心しているようだった。
それでも種痘を受ける者が全く居ない訳ではなく、僅かに増えてはきているらしい。まあ、修道士の精神を読んでの感想だけど。
感染者が四割弱で済んでいるのは彼らのお蔭だと私は思う。
一方のミゲル枢機卿は今トラス王国との国境近くで滅茶苦茶頑張っていた。そのお蔭か、神の刻印の効果もだんだん実証されつつある模様。
ただ、それが王都にも広まっていく頃には犠牲者の数がどえらい事になりそうな予感がしている。
王族の中ではレアンドロ王子が唯一と言って良い程の神の刻印賛成派(多分)である。
海賊退治を終えて早く王都に戻って種痘を推進して貰わないと困るのだ。
人が死ねばその分エスパーニャ市場や砂糖の需要も減る。それは避けたい。
そう思って、レアンドロ王子率いる艦隊と、アルビオンの海賊ヒューズ・ドレイクを透視してみたところ。
「もしかして、今がチャンス?」
毒竜率いる海賊艦隊が、エスパーニャの無敵艦隊からそう遠く離れていない無人島に隠れるように停泊しているのが見えた。
この絶好の好機を逃す理由はない。
私はすぐさまその情報をイメージとしてレアンドロ王子に送る。
うむ、これでよし、と。
後は頼んだぞ。
***
朝起きたら、隣にグレイが寝ていた。熟睡してるところに戻って来たのだろう。
昨日は結局、カレドニア女王リュサイは夕食に顔を出さなかった。
ヴェスカルの祖父ルードヴィッヒ卿はと言えば、ヴェスカルと旧交を温める他、種痘を受ける為に暫く我が家に滞在する事が決定。新年、ヴェスカルが聖女専属侍祭に任じられる晴れ姿も見たいだろうし。
それにしても、ベッドに入って来たの全然気が付かなかったわ。
あれだけの規模の商会の大締め作業。ましてやグレイは商会長である。昨夜は相当遅かったんだろうと思う。
「ふむ……」
ベッドの上で胡坐をかき、腕を組んで私は考える。
何せ労基法も碌に無いこの世界である。グレイのタスクを減らし効率化する方策を考えた方が良いのかも知れない。
これから商会ももっともっと大きくなりグローバル企業となる予定なのだし、何よりグレイが過労死したら私のだらだらニート計画も水の泡になってしまうのだから。
そんな気持ちでグレイの寝顔を見つめる。
ふと悪戯心が湧いた私は彼の柔らかい赤毛に手を伸ばした。
――さわさわ。
髪や頬をそっと撫でても起きない。いばら姫――眠れる森の美女オーロラ姫のようだなグレイ。
そう言えばペローのいばら姫の元ネタのような話があったな。
イタリアの軍人か詩人が書いた本だったか、『太陽と月とターリア』とかいう。
オーロラ姫ならぬターリア姫だが、元ネタの話では王子は真実の愛のキスなんて生ぬるいもんじゃなく、眠るターリア姫を見て性欲を我慢できずレイ……『愛の果実を摘む』のだ。
夢もへったくれもあったもんじゃないが、まあそれが現実というものだ。
で、ターリア姫はそれで眠ったまま双子を妊娠出産する訳だが――未婚の初対面、しかも意識不明の相手に対し、あの物語の王子はとんだ変態性犯罪者なのである。
だがしかし。
私はグレイと夫婦な訳だから寝ているところに色々と悪戯(婉曲表現)しても無罪なのだよ、ぐへへ。
どこまでやったら起きるかなー♪
ついばむようなキスを繰り返していると、二、三度程で彼の瞼が開かれ、翡翠色が見えた。
――あっ。
私は邪な心を誤魔化すように微笑んだ。
「おはよう、グレイ。夕べは随分遅かったのね」
そのまま、頬擦りをする。これでゲスな心は永遠にバレることはないだろう。
マリーちゃんは可愛い新妻、マリーちゃんは……と自己暗示をかける。
「うん、おはようマリー。今日は日課には行かないの?」
「まだ時間があるからゆっくりするつもりよ。外はまだ暗いし寒いしぃっ!?」
言い終わらない内に、グレイに布団ごとがばりと抱き込まれた。
そのまま背後から私を抱きしめた状態で、肩のところに顔を埋めるグレイ。
「……グレイ?」
「マリーの匂い、落ち着くね。昨日は本当、疲れたよ……」
そう言って溜息を吐いたグレイは、昨日の出来事を話し始めた。
「……それで、アルビオン人のラドさんのこと覚えてる? トラス大学へ行くと言ってた彼だよ。驚いた事に臨時の仕事をしに来ていたんだ。ジャンが言うには計算も帳簿付けも凄く優秀なんだって」
サイア達を迎えに行った帰り道で一緒になった羊毛商人見習いだった彼のことか。それこそ童話に出てくる典型的王子様みたいな容姿をしていたし、勿論覚えている。
そう言えばイサークも来年には大学へ、という話を父や母がしていたな。
今の大学の状況について、現大学生であるラドに訊いてみるのも良いかも知れない。
義兄アールから持ち掛けられた、銀行のエスパーニャ支店を任せられる人材について相談の話を最後にグレイは語り終えた。
そんなにラドが優秀なら、エスパーニャの銀行を任せられないかと思ったけど、グレイの言う通り大学での勉強を疎かにさせる訳にはいかない。
仕方ない、この件はミゲル枢機卿に相談するとしよう。
その後、私からも昨日の出来事を話していく。
そうだった、今日はリュサイが落ち着いて話が出来るかどうか様子を見に行かねば。
ルードヴィッヒ卿の事について訊かれたので家に滞在していると話す。
そう言えば、ルードヴィッヒ卿、昨日グレイに挨拶したいと言っていたな。
朝食を終えたらその場を設けよう。
あれから一晩経ったがレアンドロ王子はどうなっただろうか。
そう思って遠隔視をしてみると。
「あ」
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