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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【2】
実は追い込み漁になってた件。
「あっ……」
シュテファンが声を上げる。私も視線をそちらへ戻すと、リュサイ達の姿がテラスから消えていた。
部屋へ戻ってしまったのだろう。
ただ単に、少し外の空気を吸いに出ただけではないだろうか。
ならばよくある日常の風景だと考えるのが普通だ。
確かにあの時話を聞かれはしたが、その事ですぐ彼らに何か出来るとは思い難い。
考え得る事としては……母ティヴィーナに取り入るとか、『花嫁修業』もどきを邪魔するとか。皇女エリーザベトを殺してしまえ……は最悪の場合だが、仮にも一国の女王がそんなことをするとは思えないし、第一うちの警備体制がそれを許さないだろう。
緊急性があるとは思えない。
それなのに、前脚は何故そんなに警戒しているのか。そもそも――
「お前……探って来ると言っても、カレドニアの言葉で話していれば難しいのでは?」
「……カレドニアの言葉に明るい雪山の民をアルトガルに頼み手配してございますれば」
私のツッコミに少し悔しそうに言う前脚。隠密騎士だけで間に合わない事が悔しいようだ。
「たまたまその者が傍におらなかった時ですが、警護の者より言葉は分からねど不穏な様子だったと聞いております」
「やはり探って参ります」
しばしお傍を離れる事をお許しください、とヨハンは屋敷へと走って行く。私は肩を竦めると、シュテファンと共に池へ向かうのだった。
***
チチ、チチ、チチィーッ、パッ
ピュイッピュー
木の梢のあちらこちらから小鳥達の鳴き声のする中、池に着く。
案の定というか。
ピギャーピギャー!
クワクワクワクワ!
ギャギャギャ!
前々からそうなんじゃないかと疑惑を抱いていたが、やはり先程の小鳥達が愚民共に知らせていたのだろう(確信)。
既に集まっていた奴らは私達の姿を見るなり騒ぎ始めた。うむ、今日はまだ餌やりをしていないからな!
「お前達! 腹が減っているのは分かるがもう少し待て!」
サリーナが来るまでの辛抱である。精神感応で愚民共に伝えると少し落ちついたのでシュテファンに餌付けをさせ、私は釣り糸を垂れた。
「……」
スィー……
当たりを待ち始めて暫く。
何故か、愚民共はやや遠巻きに私を中心とした同心円状に散開し、時折鳴いたり翼をばたつかせながら泳ぎ始めた。
……だんだんその輪が狭まっているのは気のせいだろうか? 餌が到着するが早いか釣り妨害が早いか、みたいな。
と。
「ふぎゃっ!? シュテファン!!」
「はっ!」
いきなり物凄い勢いで引っ張られた。強い、これは……大物!
竿を持って行かれそうになり、堪らず後ろ脚へ声を掛けるとすぐさま共に竿を持って引っ張り始めた。
「おお、パイクだ、大きいですよマリー様!」
「これは立派な、クネルにして貰いましょうぞ!」
シュテファンの歓声に続く第三者の声に振り向くと、何時の間にか大鹿のヘルフリッツが傍でタモを持っている。
タモで無事確保されたその魚は草の上にどさりと投げ出され、ビチビチとのたうち始めた。
少し大人しくなってきたところで、私はまじまじと観察する。
「ふむ……食べた事はあったが見るのは初めてだ……顎がしゃくれてるな」
一メートル近くあるだろうか。一瞬、アリゲーターガーかと思った……ビジュアルが何か似てる。
というか、これを食べていたんだな。家族分昼食の一品として賄えそうだ。
シュテファン曰く、普通はシャンブリル川のような大きな川にいるものだが、ここまでの大きさのがうちの池に居るのは珍しいという。
ほう、この魚がねぇ。
「マリー様!」
呼び声に顔を上げると、サリーナが背後に前脚を従えてこちらへ向かっている姿が見えた。
「魚は鮮度が命、昼食に間に合わせる為にもこちらは一足先に厨房へお持ちしましょう」
ヘルフリッツが気を利かせてパイクを手に屋敷へと駆け戻って行く。
私はお礼を言って見送り、サリーナから餌袋を受け取る。
先程の釣りで疲れたので、今日は袋を開き、お遊び無しで中身を豪快にぶちまけるに留めた。
「……それで。どうだった?」
待ちに待った餌に殺気立ち狂喜乱舞して群がる愚民共を横目に、私は釈然としない様子の前脚に問いかける。
「『異常なし、特に警戒すべき話はしていなかった』とのことでした……かの者が嘘を吐いていなければ、ですが。それよりも、ガリア王国のメテオーラ姫様がリュサイ様をお訪ねしておりました。その、お忍びにて第一王子殿下も共に」
は? メティとアルバート殿下が来てる!? しかも今絶賛センシティブ中なリュサイ様のとこに?
「私達がリュサイ様のお部屋に着いた時にはもう、リュサイ様とのお話は既に終わっていたようですが……お声掛けすると、メテオーラ様はマリー様にお会いして話したい事があるのだという事でしたわ。
今現在庭遊びをなされているとお伝えしたところ、それならばマリー様と昼食を共にしたい、と。それまでは喫茶室にて歓談しながら待つ、とのご伝言でした」
「っ、すぐ戻るわ!」
ちょっと不味いかも知れない。
万が一、誤解された内容を相談という形でメティ達に伝えられて、それが更に広まったら。
ちょっと……いや、かなり困る!
シュテファンが声を上げる。私も視線をそちらへ戻すと、リュサイ達の姿がテラスから消えていた。
部屋へ戻ってしまったのだろう。
ただ単に、少し外の空気を吸いに出ただけではないだろうか。
ならばよくある日常の風景だと考えるのが普通だ。
確かにあの時話を聞かれはしたが、その事ですぐ彼らに何か出来るとは思い難い。
考え得る事としては……母ティヴィーナに取り入るとか、『花嫁修業』もどきを邪魔するとか。皇女エリーザベトを殺してしまえ……は最悪の場合だが、仮にも一国の女王がそんなことをするとは思えないし、第一うちの警備体制がそれを許さないだろう。
緊急性があるとは思えない。
それなのに、前脚は何故そんなに警戒しているのか。そもそも――
「お前……探って来ると言っても、カレドニアの言葉で話していれば難しいのでは?」
「……カレドニアの言葉に明るい雪山の民をアルトガルに頼み手配してございますれば」
私のツッコミに少し悔しそうに言う前脚。隠密騎士だけで間に合わない事が悔しいようだ。
「たまたまその者が傍におらなかった時ですが、警護の者より言葉は分からねど不穏な様子だったと聞いております」
「やはり探って参ります」
しばしお傍を離れる事をお許しください、とヨハンは屋敷へと走って行く。私は肩を竦めると、シュテファンと共に池へ向かうのだった。
***
チチ、チチ、チチィーッ、パッ
ピュイッピュー
木の梢のあちらこちらから小鳥達の鳴き声のする中、池に着く。
案の定というか。
ピギャーピギャー!
クワクワクワクワ!
ギャギャギャ!
前々からそうなんじゃないかと疑惑を抱いていたが、やはり先程の小鳥達が愚民共に知らせていたのだろう(確信)。
既に集まっていた奴らは私達の姿を見るなり騒ぎ始めた。うむ、今日はまだ餌やりをしていないからな!
「お前達! 腹が減っているのは分かるがもう少し待て!」
サリーナが来るまでの辛抱である。精神感応で愚民共に伝えると少し落ちついたのでシュテファンに餌付けをさせ、私は釣り糸を垂れた。
「……」
スィー……
当たりを待ち始めて暫く。
何故か、愚民共はやや遠巻きに私を中心とした同心円状に散開し、時折鳴いたり翼をばたつかせながら泳ぎ始めた。
……だんだんその輪が狭まっているのは気のせいだろうか? 餌が到着するが早いか釣り妨害が早いか、みたいな。
と。
「ふぎゃっ!? シュテファン!!」
「はっ!」
いきなり物凄い勢いで引っ張られた。強い、これは……大物!
竿を持って行かれそうになり、堪らず後ろ脚へ声を掛けるとすぐさま共に竿を持って引っ張り始めた。
「おお、パイクだ、大きいですよマリー様!」
「これは立派な、クネルにして貰いましょうぞ!」
シュテファンの歓声に続く第三者の声に振り向くと、何時の間にか大鹿のヘルフリッツが傍でタモを持っている。
タモで無事確保されたその魚は草の上にどさりと投げ出され、ビチビチとのたうち始めた。
少し大人しくなってきたところで、私はまじまじと観察する。
「ふむ……食べた事はあったが見るのは初めてだ……顎がしゃくれてるな」
一メートル近くあるだろうか。一瞬、アリゲーターガーかと思った……ビジュアルが何か似てる。
というか、これを食べていたんだな。家族分昼食の一品として賄えそうだ。
シュテファン曰く、普通はシャンブリル川のような大きな川にいるものだが、ここまでの大きさのがうちの池に居るのは珍しいという。
ほう、この魚がねぇ。
「マリー様!」
呼び声に顔を上げると、サリーナが背後に前脚を従えてこちらへ向かっている姿が見えた。
「魚は鮮度が命、昼食に間に合わせる為にもこちらは一足先に厨房へお持ちしましょう」
ヘルフリッツが気を利かせてパイクを手に屋敷へと駆け戻って行く。
私はお礼を言って見送り、サリーナから餌袋を受け取る。
先程の釣りで疲れたので、今日は袋を開き、お遊び無しで中身を豪快にぶちまけるに留めた。
「……それで。どうだった?」
待ちに待った餌に殺気立ち狂喜乱舞して群がる愚民共を横目に、私は釈然としない様子の前脚に問いかける。
「『異常なし、特に警戒すべき話はしていなかった』とのことでした……かの者が嘘を吐いていなければ、ですが。それよりも、ガリア王国のメテオーラ姫様がリュサイ様をお訪ねしておりました。その、お忍びにて第一王子殿下も共に」
は? メティとアルバート殿下が来てる!? しかも今絶賛センシティブ中なリュサイ様のとこに?
「私達がリュサイ様のお部屋に着いた時にはもう、リュサイ様とのお話は既に終わっていたようですが……お声掛けすると、メテオーラ様はマリー様にお会いして話したい事があるのだという事でしたわ。
今現在庭遊びをなされているとお伝えしたところ、それならばマリー様と昼食を共にしたい、と。それまでは喫茶室にて歓談しながら待つ、とのご伝言でした」
「っ、すぐ戻るわ!」
ちょっと不味いかも知れない。
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