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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【2】
グレイ・ダージリン(172)
「そう言えば、福袋ありがとうねぇ? 帰って家族皆で開けるのが楽しみだわぁ~!」
僕と共にマリー達の会話を聞いていた三魔女の内、不意にピュシス夫人が話しかけてきた。他の二人、エピテミュア夫人とホルメー夫人も「私も待ち切れませんわ!」「そうざますわね!」と話に加わる。
マリーとマーリオ殿下の会話に加わる機会を伺いながら、こちらはこちらで話す事にしたようだ。
まあマリーの能力に加えて椅子に掛けた彼女達三人がここに居座っていれば、後ろ暗い所がないトラス貴族であってもおいそれと話に割って入ったりは出来ないだろう。
実際視線はちらちらと感じるけれど、誰も近寄って来ない。三魔女恐るべし。
福袋……特に三魔女相手の内容は特に気を遣えとジャン・バティストに口を酸っぱくして言って用意させたから、きっと満足して貰えるとは思うけれど……。
「そう言って頂けて、私も嬉しいです。こちらこそ、急なお願いを聞いて下さり大変感謝しております。
福袋は、注意深くご用意しましたが……もし万が一何か内容に問題がありましたら、ご遠慮無く私にお伝え下さいね」
万全を期してはいる筈だけど、万が一の保険を掛けた僕の言葉に、ピュシス夫人が代表して「いいのよぉ~」と笑って扇を広げる。
そしてちらりとマリーの方を見ると、内緒話をするように僕の耳へと近付けた。
「……カラスちゃんが大人しくしているところを見ると、マーリオ殿下の為人は大丈夫そうですわねぇ?」
……まあ、確かに。
ちらりとカラスのリーダーを見ると、呑気に羽繕いをしている。
マリーが聖女の能力でマーリオ殿下の内面を覗いて安全だと判断したのだろうからこそ、僕も傍に控えている皆も様子を窺うのみでいられるんだけれど。
マリーとマーリオ殿下の話に耳を澄ますと、やっと僕にも分かる内容になっていた。
「うふふ、東方から取り寄せたオコメという穀物で作った、おにぎりという美味しい料理がありますの。
宜しければ我が家に遊びにいらっしゃいませんか? きっとお気に召すと思います、ご馳走致しますわ」
「えっ、ほほほ本当に美味しい料理を食べさせて貰えるのかな? なら、聖女様のおうちに行きたいんだな!」
……しかしいきなり家に誘うなんて。マリーなりに理由があるんだろうけど、ちょっと距離を詰め過ぎじゃないかな。
「ねぇ、マリーちゃん。おにぎりってどんな料理なの?」
「私も興味あるわぁ!」
エピテミュア夫人とピュシス夫人が話に加わったところで、マリーはあっと声を上げた。
「ごめんなさい、つい夢中で話し込んでしまって……!
おにぎりというのは、炊いたオコメに具を加えて三角に成形したものなんですの。サンドウィッチのように、携帯にも便利、手軽に食べられる料理なんですのよ。
そうだわ、ご都合が宜しければ三夫人も食べにいらっしゃいませんか? マーリオ殿下、お三方もご一緒で構いませんわよね?」
「ひひ、人は多い方が楽しいと思うんだな!」
「んまあマーリオ殿下、ご同席をお許し下さり感謝致しますわぁ!」
「私も楽しみ! キャンディ伯爵家の料理は美味しいものばかりだもの!」
嬉しそうなピュシス夫人とエピテミュア夫人。しかしホルメー夫人は緊張した面持ちだった。
「マーリオ殿下! 先程は、知らなかったこととは言え……ご無礼をしてしまい大変申し訳なかったざますわ」
「ぶ、無礼?」
「殿下があまりにも可愛らしくお食べになっていたので、私が昔可愛がっていた子豚のコシィにようだと言ってしまったことざます」
えっ、ホルメー夫人そんな事を言ったの!?
すわ、国際問題か!? と内心焦る僕。しかしマーリオ殿下はふるふると首を横に振った。
「そ、そ、それは気にしてないんだな。ガ、ガリアでは沢山酷い事を言われてるから、慣れてるから、気にしないで欲しいんだな」
「まああ、慈悲深いお方なのね? この国でお困りのことがあれば私達、お力になりますわ!」
「あ、ありがとうなんだな。みみみ皆さんは、ぼ、ぼ、僕みたいなのにとっても優しいんだな」
それを聞いて、僕はガリア王国でのマーリオ殿下の置かれた状況を何となく察してしまった。マーリオ殿下の傍に控えている、ビアッジョ卿と名乗った人物も涙ぐんでいる。
そんな環境下で性格が歪んでしまってもおかしくないのに、このように寛大で優しい子供に育っているのはきっと奇跡なんだろう。
何となくマリーを見ると、目が合った。
『この子は優しいだけじゃなくて素晴らしい天才なのよ、グレイ。是非ともイサークのお友達になって欲しいわ。帰ったら詳しく話すわね』
『うん、分かった』
そこへメテオーラ様がピロス公爵を伴ってやって来て、僕達に挨拶がてらマーリオ殿下を回収して行った。
それを見送った後、「そろそろ私達も失礼しますわぁ」と三魔女達が立ち上がる。
その時、ホルメー夫人が広間に視線を巡らせて首を傾げた。
「……それにしても、予想外ざますわね。ガリア王太子殿下は直ぐにでも追って来ると思っていたざます」
そう言えば……。
僕も広間を見渡してガリア王太子を探してみる。
けれど、その姿はどこにも見当たらなかった。
僕と共にマリー達の会話を聞いていた三魔女の内、不意にピュシス夫人が話しかけてきた。他の二人、エピテミュア夫人とホルメー夫人も「私も待ち切れませんわ!」「そうざますわね!」と話に加わる。
マリーとマーリオ殿下の会話に加わる機会を伺いながら、こちらはこちらで話す事にしたようだ。
まあマリーの能力に加えて椅子に掛けた彼女達三人がここに居座っていれば、後ろ暗い所がないトラス貴族であってもおいそれと話に割って入ったりは出来ないだろう。
実際視線はちらちらと感じるけれど、誰も近寄って来ない。三魔女恐るべし。
福袋……特に三魔女相手の内容は特に気を遣えとジャン・バティストに口を酸っぱくして言って用意させたから、きっと満足して貰えるとは思うけれど……。
「そう言って頂けて、私も嬉しいです。こちらこそ、急なお願いを聞いて下さり大変感謝しております。
福袋は、注意深くご用意しましたが……もし万が一何か内容に問題がありましたら、ご遠慮無く私にお伝え下さいね」
万全を期してはいる筈だけど、万が一の保険を掛けた僕の言葉に、ピュシス夫人が代表して「いいのよぉ~」と笑って扇を広げる。
そしてちらりとマリーの方を見ると、内緒話をするように僕の耳へと近付けた。
「……カラスちゃんが大人しくしているところを見ると、マーリオ殿下の為人は大丈夫そうですわねぇ?」
……まあ、確かに。
ちらりとカラスのリーダーを見ると、呑気に羽繕いをしている。
マリーが聖女の能力でマーリオ殿下の内面を覗いて安全だと判断したのだろうからこそ、僕も傍に控えている皆も様子を窺うのみでいられるんだけれど。
マリーとマーリオ殿下の話に耳を澄ますと、やっと僕にも分かる内容になっていた。
「うふふ、東方から取り寄せたオコメという穀物で作った、おにぎりという美味しい料理がありますの。
宜しければ我が家に遊びにいらっしゃいませんか? きっとお気に召すと思います、ご馳走致しますわ」
「えっ、ほほほ本当に美味しい料理を食べさせて貰えるのかな? なら、聖女様のおうちに行きたいんだな!」
……しかしいきなり家に誘うなんて。マリーなりに理由があるんだろうけど、ちょっと距離を詰め過ぎじゃないかな。
「ねぇ、マリーちゃん。おにぎりってどんな料理なの?」
「私も興味あるわぁ!」
エピテミュア夫人とピュシス夫人が話に加わったところで、マリーはあっと声を上げた。
「ごめんなさい、つい夢中で話し込んでしまって……!
おにぎりというのは、炊いたオコメに具を加えて三角に成形したものなんですの。サンドウィッチのように、携帯にも便利、手軽に食べられる料理なんですのよ。
そうだわ、ご都合が宜しければ三夫人も食べにいらっしゃいませんか? マーリオ殿下、お三方もご一緒で構いませんわよね?」
「ひひ、人は多い方が楽しいと思うんだな!」
「んまあマーリオ殿下、ご同席をお許し下さり感謝致しますわぁ!」
「私も楽しみ! キャンディ伯爵家の料理は美味しいものばかりだもの!」
嬉しそうなピュシス夫人とエピテミュア夫人。しかしホルメー夫人は緊張した面持ちだった。
「マーリオ殿下! 先程は、知らなかったこととは言え……ご無礼をしてしまい大変申し訳なかったざますわ」
「ぶ、無礼?」
「殿下があまりにも可愛らしくお食べになっていたので、私が昔可愛がっていた子豚のコシィにようだと言ってしまったことざます」
えっ、ホルメー夫人そんな事を言ったの!?
すわ、国際問題か!? と内心焦る僕。しかしマーリオ殿下はふるふると首を横に振った。
「そ、そ、それは気にしてないんだな。ガ、ガリアでは沢山酷い事を言われてるから、慣れてるから、気にしないで欲しいんだな」
「まああ、慈悲深いお方なのね? この国でお困りのことがあれば私達、お力になりますわ!」
「あ、ありがとうなんだな。みみみ皆さんは、ぼ、ぼ、僕みたいなのにとっても優しいんだな」
それを聞いて、僕はガリア王国でのマーリオ殿下の置かれた状況を何となく察してしまった。マーリオ殿下の傍に控えている、ビアッジョ卿と名乗った人物も涙ぐんでいる。
そんな環境下で性格が歪んでしまってもおかしくないのに、このように寛大で優しい子供に育っているのはきっと奇跡なんだろう。
何となくマリーを見ると、目が合った。
『この子は優しいだけじゃなくて素晴らしい天才なのよ、グレイ。是非ともイサークのお友達になって欲しいわ。帰ったら詳しく話すわね』
『うん、分かった』
そこへメテオーラ様がピロス公爵を伴ってやって来て、僕達に挨拶がてらマーリオ殿下を回収して行った。
それを見送った後、「そろそろ私達も失礼しますわぁ」と三魔女達が立ち上がる。
その時、ホルメー夫人が広間に視線を巡らせて首を傾げた。
「……それにしても、予想外ざますわね。ガリア王太子殿下は直ぐにでも追って来ると思っていたざます」
そう言えば……。
僕も広間を見渡してガリア王太子を探してみる。
けれど、その姿はどこにも見当たらなかった。
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