貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン

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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【2】

サタナエル様からのお年玉。

 惰眠を貪るのは心地良きかな。

 王宮での新年の儀の疲れが出たのだろう。次の日サリーナに起こされた時は既に日は高く昇っていた。
 もっと寝ていたいんだけど、第二王子ジェレミーが来たからそうもいかないらしい。
 来るとしてもてっきり午後か夕方かなと思っていた。予想より早く来たんだな、と思いながらサリーナに着替えさせられる。

 そういえば、夢現にグレイと誰かが会話してて、何か言われたような?
 返事はしたものの内容ははっきりとは覚えていない。初夢であるのなら、せめて富士山か鷹かなすび、七福神の宝船とか――そういうお目出度い夢の方が良かった。

 「ほら、行くよマリー!」

 むぅ……。

 叩き起こされた不満や眠気を抱えながらグレイに引きずられるように行った先。キャンディ伯爵邸の玄関では、家族全員が揃っていた。

 「昨日の今日で皆様もお疲れなのに、大変申し訳ない事をしました」

 本当にな、と言いたいのを堪えて私はにこやかに淑女の礼を取って挨拶をする。その後は昼食まで時間があるからと喫茶室で休んで貰うようだ。
 正直まだ眠いし、そこまで付き合っていられない。私はグレイにその旨を囁くと、柔らかいベッドの待つ自室へと戻ったのだった。


***


 『R・O・W・D! R・O・W・D!』

 観客でごった返した空間で人々がコルナサインを掲げながらコールしてい。
 思えばライブの夢は久々だ。
 ちなみに『R・O・W・D』とは、Ruler Of the World世界の支配者 Diableディアブルの略称だ。
 真っ暗だったステージに光が当たり、Diableディアブルメンバーの姿が浮かび上がる。
 私の崇拝するヴォーカルのサタナエル様がこちらを見てニヤリと悪い笑みを浮かべると、マイクに唇を近づけた。

 「新曲行くぜ――『黒眼組合』」

 そのハスキーがかった色っぽい声の直後、ベースがビートを刻み始める。

 「『金と名誉と欲望、手にした奴らの末路
 這い上がれるのは魂を売った奴らだけ
 誰かが囁く悪魔の儀式、選ばれし者の輪へようこそ』」

 おお……こ、この歌詞はあの事だな!

 「『右目と左目、どちらを隠すか選べ
 暗闇で笑ってる片目のパンダ共
 どいつもこいつも掟に従い、名も顔もない
 黒眼組合! 血の契りで結ばれし奴隷』」

 コルナサインを掲げ飛び跳ねながら、私は曲に酔いしれた。世のダークサイドを歌うかなり際どい内容だが、誰にも媚びず不慮の事故で片目に怪我もしない彼らだからこそ歌えるのだろう。

 ――素晴らしい。流石はサタナエル様、Diableディアブル最高過ぎかよ!

 「『生贄の子羊を捧げ、その血肉を啜り食らえ
 若返る欲望の祭り、終わらぬ闇夜が続いてゆく
 優性思想、君臨する者共の狂夢
 ゴム人間を見つけ出せ、歪んだ真実がそこにある』」

 暫く新曲を楽しみ、サタナエル様が歌い終わった瞬間、ライブハウスも観客も消え失せて闇の空間が広がった。居るのは私とサタナエル様――私を聖女とした神様だけである。

 「サタナエル様、最高でした!」

 「ふっ、これはお年玉代わりの褒美だ、雌豚よ。それより――聖女の能力について伝えておくべき事がある。今年、疱瘡によってお前への信仰心が増えるだろう。人々の信仰を集めれば集める程、聖女の能力が増え、また強化されるのだ」

 ――ただ、その能力の内容については信仰心の傾向にもよるが。

 そうサタナエル様は言った。

 「ええと、信仰心の傾向というと、具体的には?」

 「今時点で言えるのは、種痘を推し進めた事により、病を癒す力が備わる可能性が高いだろう」

 「ああ、そういう……」

 前世の聖人も、病を癒すっていうのがあったっけ。それ以外では心霊系だろうか。あんまり心霊系は得意じゃないんだけど……。
 まあ、病を癒す力が可能性高いんなら良しとするか。

 「今年も大変な事が色々と起こるだろうが、我が栄光の為に励むが良い、雌豚よ……」

 えっ!? 待ってくださいサタナエル様!

 「――その色々、っていうのをもそっと詳しく!」

 気が付くと、私は自室でガバリと起き上がっていた。伸ばした手は虚しく宙を掴む。ああ、訊きそびれた……というか、未来の事だから明かしては行けないとか? どうもそんな気がする。

 ふう、と腕を布団の上に落とすと、自室の扉がノックされた。
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