貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン

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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【2】

グレイ・ダージリン(194)

 静寂の中、誰かの大きな溜息の音が落ち。
 「恐れながら、」と声を発したのはヤニック・ディブロマ先代伯爵だった。

 「聖女様、これは途方も無く、また大変なことです……歴史上二つの国同士が同盟を結ぶことはあれど、多数の国が集まって組織を作るという前例は無かったのですから」

 「【国際連合】、それが実現すれば世界は平和に近付きますね!」

 ヴァランタン・ディブロマ伯爵令息が感動したように言う。しかしその隣の現伯爵ヴァンサン卿は難しい顔をして腕を組み、思考を働かせているようだった。
 きっと、【国際連合】の持つ裏の顔について考えているのだろう。
 事実、先程サリューン枢機卿が読み上げたマリーの言葉は表向きに過ぎない。

 「失礼ながら、そのような組織であれば力ある大国ばかりが有利になるのでは?」

 挙手をしてそう言ったのは、北方諸国の一つ、イスフォル王国の使者――確かヘンリク・シグルドソン・ファルク子爵――だった。僕はどきりとする。同じ質問を僕も彼女にしたからだ。

 「確かに、【国際連合】の運営資金は加盟国に国の規模に応じて拠出して貰いますので、大国程有利になりがちではありますわね。
 ただし、忘れてはならないのは、【国際連合】は国際平和と秩序を実現するための組織だということ。大国にはそれだけの責任と義務も課せられることになりますわ」

 そこへ「成程、」とカレドニア王国の外交官タイグ・フレイザー卿が相槌を打つ。

 「という事は、解決に当たるべき問題が何かあった場合、大国である程より多くの資金・物資・兵の供出を求められる――そのような理解で宜しいでしょうか」

 「ええ、その通りですわフレイザー卿」

 マリーは頷く。
 連合に属する大国が傍若無人に振舞えば、その他の国から非難を受けることになる。小国でも集まれば大国に対抗出来るのだから。
 大国には『常任理事』という肩書と相応の権限を与えつつも、同時に義務を課しその力を抑える。
 小国はその安全を頼みにするが故に【国際連合】に依存するようになる。

 『銀行券の流通と同じよ。国家間の力の平衡パワーバランスを調整し、支配する為の機構って訳。後は資金洗浄マネーロンダリングもしやすくなるし、色々便利だと思うわ~♪』

 そう言って悪い笑みを浮かべていた今朝のマリー。
 話を聞いていた侍女のナーテが一応サイモン様に知らせに走ったけれど……結局詳しい説明をする時間は無かったなと考えながらちらりと義父様の方を見た僕は――背筋が凍り付いた。

 ――うわっ! 一見笑顔に見えるけど、眉間に思い切り皺が寄ってる! この話し合いが早く終わったとしても、休めなさそうだよマリー。

 そんな僕と険しい顔のサイモン様に気付いた様子も無く、マリーは聖女然と慈悲深い僕からすれば胡散臭い微笑みを浮かべている。

 「お話を続けますわね。世界平和と秩序の為には、各国との距離から見て中心に近く守りが固い地――傭兵国家という中立に近い立場を踏まえ、【国際連合】の本部は山岳国家ヘルヴェティアに置くことが望ましい。
 そして、教会もまた各国に跨り中立に近い組織。【国際連合】の運営に関わる職員や各国の窓口となる代表者は外交等相応の知識をお持ちの聖職者を起用するのが相応しい――そう、私は考えています。
 例えば、トラス王国であればサリューン枢機卿が代表になりますわね」

 その言葉を聞いた北方小国群の使者達は、お互いに顔を見合わせた。

 「……まあ、そういうことならば」

 「大国に対抗する為には、小国同士の結束が大事ということか」

 「聖女様の庇護を真っ先に願い出たのはヘルヴェティアであることだし、傭兵国家が中立に近いというのは一理ありますな」

 その後行われた話し合いで、結果的にほぼマリーの意見が通る事になった。
 ただ一つ、【国際連合】という名称以外は。

 馬の脚二人ヨハンとシュテファンが「歴史に残るのであれば、マリー様の功績と分かる、それなりの相応しい名称の方が良いのでは」と異議を唱えたのだ。

 マリーの反対を他所よそに、全員がもっともだと頷いて案を出し合った結果、決まったのは――『聖女の祝福を受けし国家連合』。

 「『……てことは、あちらのアルファベットに照らし合わせると略称はUNBSになるわよね。ウンブス、うん、ブス――ウ●コブス!? いや、ウンが連合国だから、ブス連合国じゃないのよ!』」

 異世界の言葉だろうか、僕に分からない言葉をぶつぶつ呟いているマリー。
 一応僕はマリーの意志を尊重して原案を推したけれど、気に入らなかったのかな。
 良い名称だと思うんだけど。
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