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うら若き有閑貴族夫人になったからには、安穏なだらだらニート生活をしたい。【2】
深夜(ハイ)で書いたラブレターは明日の朝読み直すべし。
義兄アールが手をってくれた打ってくれたお陰で憂いも無くなった。キーマン商会コスタポリ支店の報告書を見せて貰って、更に遠隔透視能力を使って直接コスタポリの様子を視た所、すっかり街が生まれ変わって大変な賑わい様である。
義兄アールとアナベラ姉夫婦に見送られた馬車の中で、大主教の訪問をグレイに報告しておいた。
ナヴィガポールに倣ってダージリン領都クードルセルヴの名物としてヘーゼルナッツや馬、温泉にちなんだお菓子を開発しようとか、そんな取り留めも無い雑談をしていると、ふとグレイが思い付いたように言った。
「ティヴリー子爵はあれからどうなったか知っている?」
問われて透視すると、奴はある一室で隠密騎士達に囲まれて事ある毎に「声が小さぁい!」等と駄目出しをされながら、ヤケクソのように聖典の朗読をしているところだった。
メイソンの時の失敗を踏まえ、隠密騎士達に洗脳のやり方を教えたんだっけ。
精神支配のやり方は何も特殊な調教だけじゃない。教えたのは、敗戦の折に中国で捕まった日本人が共産に染まった手法である。
隠密騎士達は、実験的に今回のティヴィリー子爵に行ってみることにしたらしい。
まず、徹底的に恐怖や人格否定という鞭を味あわせて精神を弱らせる。次にこちらの思想に靡くような言動を見せたところですかさず称賛という飴を与える。
精神を疲労困憊にした後、例えば『キャンディ伯爵家や聖女様の素晴らしい所を10ページ程書いてみなさい』とでもやるのだろう。
その内容の添削をし、是非の比率に留意しながら欠点を論って最初に戻る――こちらの思想に染まるまで、これを延々と繰り返すのだ。
忠犬に仕上がったところで「かつての間違った自分を知って恥じ、悔い改めた事で貴方は立派な人間に生まれ変わった。そんな人間にこそ、栄光が与えられる」等と仕事を任せフィニッシュである。
「全てが終わった時、子爵はきっと、心を改めてくれて、私達の仲間になってくれると思うわ♪」
元々隠密騎士として培われて来た拷問のノウハウも手伝って、ティヴィリー子爵が折れるのもそう遠くない未来だろう。
大学時代にエスパーニャ語も教養として習得していたようだし、仕上がり次第ではエスパーニャ関連を担当させても良いかも知れない。
私の言葉が別の意味に聞こえたというグレイ。うふふ、それはきっと気のせいよ。
そう言うと、グレイの表情が盛大に引き攣った。
「ボクハ何モ聞カナカッタ……」
そう言って右側(私から見れば左側)の窓の傍に座り直し、外の風景を眺め始める。
嫌だわグレイ。少しばかり左に偏ってみただけじゃないの。
***
……なんてね。
家に帰ったらもう寝るだけ、と呑気に考えていた一時が私にもありました。
「マリー様、珈琲です」
「ありがとうサリーナ、後は自分でやるからカート置いといて!」
後ついでにこの部屋に誰も近づけないように警備に伝えて――特に父とかな! 説教とか今日だけは勘弁して欲しい。
サリーナが去った後、私は景気づけに珈琲をブラックで呷った。口に広がるカフェインの苦みが眠気を駆逐してくれる。
私がいつもの紅茶ではなく、珍しく珈琲を所望したのは――只今絶賛書類と格闘中だからである。
何の書類かと言えば。明日サリューン・フォワ枢機卿と外務大臣が我が家に来るらしい。聖女の庇護に入った国々の件なのだと。
そうした国々について、私には一つの心づもりがあった。国際連合的な組織を作るのである。
私なりの世界秩序(MWO:マリーちゃんワールドオーダー)を作り上げる――支配の道具の一つとして。
粗方書き終わった私は、珈琲にミルクと砂糖を加えてカフェオレを飲みながら一休み。後は見直しと複製作業だけだ。
これで、国際的組織で銀行券が基軸通貨になれば……。
「マリー様、そろそろお休みに――」
「うふふふふふふっ……!」
ノックと共に入って来て私を見るなりドン引きしたサリーナ曰く。
机の上の蝋燭の光に浮かび上がった私の笑う様は、まるで魔物に憑りつかれたような不気味さだったそうな。
手早く寝間着に着替えさせてくれる彼女の後頭部を眺めながら、前世深夜作業でさんざんお世話になった……カフェイン中毒死者すら出た、化物の名を持つエナジードリンクの事を思い出す。
そう……実際憑りつかれていたのだよ、カフェインによる『深夜ハイ』という魔物にな!
「書き物はもう終わりです。これ以上は差し障るので明日に。必要であれば私やカール達も手伝いますから」
うむ……確かに深夜(ハイ)で書いたラブレターは明日の朝読み直すべしって言うし、大人しく今日は寝るとするか。
義兄アールとアナベラ姉夫婦に見送られた馬車の中で、大主教の訪問をグレイに報告しておいた。
ナヴィガポールに倣ってダージリン領都クードルセルヴの名物としてヘーゼルナッツや馬、温泉にちなんだお菓子を開発しようとか、そんな取り留めも無い雑談をしていると、ふとグレイが思い付いたように言った。
「ティヴリー子爵はあれからどうなったか知っている?」
問われて透視すると、奴はある一室で隠密騎士達に囲まれて事ある毎に「声が小さぁい!」等と駄目出しをされながら、ヤケクソのように聖典の朗読をしているところだった。
メイソンの時の失敗を踏まえ、隠密騎士達に洗脳のやり方を教えたんだっけ。
精神支配のやり方は何も特殊な調教だけじゃない。教えたのは、敗戦の折に中国で捕まった日本人が共産に染まった手法である。
隠密騎士達は、実験的に今回のティヴィリー子爵に行ってみることにしたらしい。
まず、徹底的に恐怖や人格否定という鞭を味あわせて精神を弱らせる。次にこちらの思想に靡くような言動を見せたところですかさず称賛という飴を与える。
精神を疲労困憊にした後、例えば『キャンディ伯爵家や聖女様の素晴らしい所を10ページ程書いてみなさい』とでもやるのだろう。
その内容の添削をし、是非の比率に留意しながら欠点を論って最初に戻る――こちらの思想に染まるまで、これを延々と繰り返すのだ。
忠犬に仕上がったところで「かつての間違った自分を知って恥じ、悔い改めた事で貴方は立派な人間に生まれ変わった。そんな人間にこそ、栄光が与えられる」等と仕事を任せフィニッシュである。
「全てが終わった時、子爵はきっと、心を改めてくれて、私達の仲間になってくれると思うわ♪」
元々隠密騎士として培われて来た拷問のノウハウも手伝って、ティヴィリー子爵が折れるのもそう遠くない未来だろう。
大学時代にエスパーニャ語も教養として習得していたようだし、仕上がり次第ではエスパーニャ関連を担当させても良いかも知れない。
私の言葉が別の意味に聞こえたというグレイ。うふふ、それはきっと気のせいよ。
そう言うと、グレイの表情が盛大に引き攣った。
「ボクハ何モ聞カナカッタ……」
そう言って右側(私から見れば左側)の窓の傍に座り直し、外の風景を眺め始める。
嫌だわグレイ。少しばかり左に偏ってみただけじゃないの。
***
……なんてね。
家に帰ったらもう寝るだけ、と呑気に考えていた一時が私にもありました。
「マリー様、珈琲です」
「ありがとうサリーナ、後は自分でやるからカート置いといて!」
後ついでにこの部屋に誰も近づけないように警備に伝えて――特に父とかな! 説教とか今日だけは勘弁して欲しい。
サリーナが去った後、私は景気づけに珈琲をブラックで呷った。口に広がるカフェインの苦みが眠気を駆逐してくれる。
私がいつもの紅茶ではなく、珍しく珈琲を所望したのは――只今絶賛書類と格闘中だからである。
何の書類かと言えば。明日サリューン・フォワ枢機卿と外務大臣が我が家に来るらしい。聖女の庇護に入った国々の件なのだと。
そうした国々について、私には一つの心づもりがあった。国際連合的な組織を作るのである。
私なりの世界秩序(MWO:マリーちゃんワールドオーダー)を作り上げる――支配の道具の一つとして。
粗方書き終わった私は、珈琲にミルクと砂糖を加えてカフェオレを飲みながら一休み。後は見直しと複製作業だけだ。
これで、国際的組織で銀行券が基軸通貨になれば……。
「マリー様、そろそろお休みに――」
「うふふふふふふっ……!」
ノックと共に入って来て私を見るなりドン引きしたサリーナ曰く。
机の上の蝋燭の光に浮かび上がった私の笑う様は、まるで魔物に憑りつかれたような不気味さだったそうな。
手早く寝間着に着替えさせてくれる彼女の後頭部を眺めながら、前世深夜作業でさんざんお世話になった……カフェイン中毒死者すら出た、化物の名を持つエナジードリンクの事を思い出す。
そう……実際憑りつかれていたのだよ、カフェインによる『深夜ハイ』という魔物にな!
「書き物はもう終わりです。これ以上は差し障るので明日に。必要であれば私やカール達も手伝いますから」
うむ……確かに深夜(ハイ)で書いたラブレターは明日の朝読み直すべしって言うし、大人しく今日は寝るとするか。
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